長年、OEM(相手先ブランドによる製造)を手がけてきたメーカーには、大きな強みがあります。
ものづくりの技術、品質管理、生産体制、コストへの対応力。そして、取引先企業からの要望に応え、商品を形にしてきた経験です。
こうした強みを活かして、「そろそろ自社ブランドの商品をつくりたい」と考える企業も少なくありません。
しかし、実際に取り組み始めると、思うように進まないことがあります。
商品をつくることはできる。品質にも自信がある。それなのに、何をつくればよいのか、誰に売ればよいのか、どのように商品の良さを伝えればよいのかが、なかなか決まらない。
これは決して不思議なことではありません。
OEMと自社ブランドでは、商品づくりの出発点が違うからです。
自社ブランドを立ち上げる前に、まず確かめておきたいことを整理します。
1. OEMメーカーは「顧客の要望に応えること」に長けている
OEMメーカーにとって、これまでの顧客は主に商品を発注する企業でした。
取引先から「こういう商品をつくりたい」「この機能を実現したい」「この価格に収めたい」という要望を受け、それを実現する。
難しい要求に応えることで信頼が生まれ、技術やノウハウも蓄積されていきます。
ところが、自社ブランドでは事情が変わります。
今度は、商品を発注してくれる企業が、何をつくるべきか教えてくれるわけではありません。
誰の、どのような困りごとを解決するのか。どんな場面で使われ、なぜ選んでもらえるのか。
それを自分たちで考え、確かめ、判断する必要があります。
つまり、 「企業の要望を形にする力」と「生活者が求める価値を見つける力」は、必ずしも同じではない のです。
商品づくりの出発点を比較すると
取引先企業の要望を受け、求められた品質・機能・価格の商品を形にする。
生活者の困りごとや使い方を自ら理解し、誰にどんな価値を届けるかを決める。
2. 自社ブランドづくりで、最初につまずきやすい3つのこと
① つくれるものから商品を考えてしまう
「この技術を使えば、こんな商品がつくれる」
「これまでOEMで製造してきた商品を、自社ブランドでも販売できないだろうか」
こうした発想は自然です。蓄積された技術や設備を活かすことは、経営上も重要でしょう。
ただし、つくれることと、生活者が欲しいと思うことは別です。
技術や品質が優れていても、生活者にとって必要性が感じられなければ、購入にはつながりません。
自社の強みを否定する必要はありませんが、 その強みが生活者にとってどんな価値になるのか を確かめる必要があります。
② 「品質が良い」ことを最大の売りにしてしまう
OEMメーカーは、品質に対する意識が高い企業が多いものです。
しかし、生活者が商品を選ぶとき、必ずしも品質の高さだけで判断しているわけではありません。
使いやすさ、手入れのしやすさ、収納のしやすさ、見た目、価格、生活になじむこと。
選ぶ理由は、さまざまです。
例えば、メーカーが耐久性の高さを最大の特徴だと考えていても、生活者は毎日使うときの手軽さに魅力を感じているかもしれません。
これは仮の例ですが、 メーカーが伝えたい良さと、生活者が買いたいと思う理由は、必ずしも一致しない ことを示しています。
③ 商品ができてから売り先を探し始める
商品が完成してから、販売先を探し始める。
これも自社ブランドづくりで起こりやすいことです。
しかし、小売店には限られた売場があり、すでに多くの商品が並んでいます。
いくら品質が良くても、誰に売れる商品なのか、既存商品とどう違うのか、なぜその売場で取り扱う価値があるのかを説明できなければ、採用は難しくなります。
自社ブランドでは、商品を考える段階から、どこで、誰に、どのように届けるのかを検討しておくことが大切です。
3. 自社ブランドを立ち上げる前に確かめたい5つのこと
それでは、最初に何を考えればよいのでしょうか。
私は、少なくとも次の5つを整理しておくことが重要だと考えています。
- ① 誰のための商品なのか 年齢や性別だけでなく、どんな生活をしていて、どんな場面で困っているのか。その人の姿を具体的に考えます。
- ② その人は、今どうやって問題を解決しているのか 競合商品を使っているのか、不便を我慢しているのか、そもそも問題だと感じていないのか。今の行動を知ることで、新しい商品が必要とされる理由が見えてきます。
- ③ 自社の技術や強みは、どんな価値につながるのか 技術の優位性をそのまま説明するのではなく、使う人にとっての便利さ、安心、楽しさなどに置き換えて考えます。
- ④ 生活者は、どのような条件なら購入したいと思うのか 価格、サイズ、デザイン、使いやすさなど、購入を左右する条件を確かめます。「良い商品ですね」という評価だけでなく、実際に購入したいと思えるかが重要です。
- ⑤ どこで売り、どのように事業として成立させるのか 販売チャネル、想定価格、製造原価、流通経費、利益率、必要な販売数量なども考えます。生活者に喜ばれる商品であっても、継続して提供できる事業にならなければ、自社ブランドとして育てていくことは難しくなります。
この5つは、一度決めたら終わりではありません。商品を試し、生活者の反応を確かめながら、何度も見直していくものです。
4. 生活者の声を聞くだけでは、十分ではない
ここで気をつけたいことがあります。
自社ブランドづくりでは「顧客の声を聞きましょう」とよく言われます。
もちろん、大切なことです。
しかし、欲しい商品を質問して、答えてもらうだけでは、十分とは限りません。
生活者自身も、自分が本当に求めていることを、最初から明確に言葉にできるとは限らないからです。
例えば、今使っている商品について「特に不満はありません」と答えていても、実際の使い方を見ていると、ちょっとした不便を当たり前のこととして受け入れている場合があります。
あるいは、メーカーが便利だと考えた機能が、生活者にとってはそれほど重要ではないこともあります。
大切なのは、生活者が何を言ったかだけではなく、どんな行動をしていて、何を感じているのかまで理解することです。
そのためには、対話だけでなく、実際の使用場面を観察したり、試作品を使ってもらったりすることも役立ちます。
5. 生活者と一緒に考えることで、商品づくりの視点が変わる
こらぼたうんでは、企業と生活者が直接対話し、ともに考える取り組みを大切にしています。
それは、生活者から商品アイデアを集めることだけが目的ではありません。
企業の担当者自身が、生活者の暮らしや商品に対する考え方を知り、これまでとは違う視点で商品を見られるようになることにも、大きな意味があります。
OEMメーカーには、長年培ってきた技術やものづくりの知識があります。
そこに生活者の視点が加われば、技術の活かし方そのものが変わることがあります。
この発想の変化は、ひとつの商品を生み出すだけでなく、次の商品を企画するときにも活きていきます。
そして、企業自身が生活者の反応をもとに判断できるようになることが、自社ブランドを育て続ける力につながると考えています。
6. 最初から大きな投資をする必要はない
自社ブランドを立ち上げようとすると、ブランド名、ロゴ、パッケージ、Webサイト、販売体制など、考えることが数多くあります。
しかし、最初からすべてを整える必要はありません。
まずは、どんな生活者に、どんな価値を提供できそうなのかという仮説をつくる。
可能であれば、簡単な試作品や既存技術を活用したサンプルを用意し、実際に使ってもらう。
その反応をもとに、商品だけでなく、価格や伝え方、販売方法についても考え直す。
こうした小さな検証を重ねることで、量産や販促への大きな投資を判断するための材料が増えていきます。
もちろん、小さく試せば必ず成功するわけではありません。
しかし、十分な確認をしないまま商品を完成させるよりも、早い段階で課題に気づける可能性があります。
7. OEMから自社ブランドへ。変わるのは商品だけではない
OEMメーカーが自社ブランドを立ち上げることは、単に自社の名前で商品を販売することではありません。
これまでは、取引先企業から示された要望を満たすことが重要でした。
自社ブランドでは、生活者のことを自ら知り、何をつくるかを考え、販売した後も反応を確かめながら改善していく必要があります。
つまり、ものづくりの技術だけでなく、 商品を考え、判断し、育てていく企業のあり方そのものが問われる のです。
OEMで培った技術は、大きな財産です。
その技術を、生活者が求める価値につなげることができれば、自社ブランドづくりの可能性は広がります。
大切なのは、まず商品をつくることではありません。
自分たちは誰の、どのような暮らしに役立ちたいのか。
そこから考え始めることが、自社ブランドへの第一歩になるのではないでしょうか。
自社ブランドを検討しているOEMメーカーの皆様へ
こんなお悩みはありませんか。
- 自社の技術を活かして商品をつくりたいが、何から始めればよいかわからない
- 商品アイデアはあるものの、生活者に求められるか確信が持てない
- 自社ブランドに取り組んでいるが、商品企画や販売の進め方に迷っている
こらぼたうんでは、こうしたご相談にも対応しています。
企業が持つ技術や強みを大切にしながら、生活者との対話や観察を通じて、どのような価値を届けられるのかを一緒に考えます。
商品をつくる前の段階からでも構いません。まずは、現在の状況やお考えをお聞かせください。
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