OEMメーカーや素材メーカーなど、専門技術を持つ企業と、 商品を企画・販売するブランド企業。 それぞれの強みを持ち寄れば、商品開発の可能性は広がります。 ところが、企業同士で情報をやり取りしているだけでは、 新しい発想につながらないこともあります。
そこで考えたいのが、企業同士に生活者も加わり、同じ場で考える商品開発です。 専門家の知識と、実際に使う人の経験が出会うと、 最初の企画書にはなかった問いが生まれることがあります。
この記事では、企業間共創の基本、従来の分業との違い、 進め方と注意点を、OEMメーカーとブランド企業の協業を例に解説します。
企業間共創とは? 企業の強みを持ち寄って新しい価値を考えること
企業間共創とは、複数の企業がそれぞれの知識、技術、経験、顧客理解などを持ち寄り、 一社だけでは見つけにくい価値を一緒に生み出そうとする取り組みです。
たとえばOEMメーカーには、素材や製法、品質管理、技術上の制約などについての深い知見があります。 一方、ブランド企業には、顧客との接点、商品企画、売り場、販売方法などの知見があります。 どちらも商品開発に欠かせない強みです。
ただし、企業が集まって会議を開くだけで共創になるわけではありません。 お互いの知識を聞いて終わるのではなく、その場で問いを出し合い、 考えを変え、次に何を確かめるかを一緒に決めていくことが重要です。
企業間共創と、企業・生活者による共創は、どちらか一方を選ぶものではありません。
企業同士で技術や企画を深める場もあれば、企業と生活者が対話する場もあります。 商品開発の段階や課題に応じて、複数の企業と生活者が同じ場に参加する形も考えられます。
OEMメーカーとブランド企業の分業で、見落としやすいこと
一般的な商品開発では、ブランド企業が生活者の声を聞き、 その結果を整理してOEMメーカーへ伝えることがあります。 役割分担が明確で、効率的に進めやすい方法です。 この進め方自体が悪いわけではありません。
しかし、生活者の言葉を一度まとめてから別の企業へ伝えると、 その場の表情や迷い、何気ない質問が十分に伝わらないことがあります。
課題1 生活者の反応が、要約された情報になってしまう
「使いにくい」「もっと簡単なものがほしい」といった発言だけでは、 何に困っていたのか、どんな場面でそう感じたのかが分かりません。 その場で確かめられたはずの背景が、伝達の過程で抜け落ちることがあります。
課題2 専門メーカーの知識が、企画の後半まで出てこない
OEMメーカーの担当者にとって当たり前の技術や素材の知識が、 生活者には驚きにつながることがあります。 その知識が早い段階で共有されなければ、 新しい使い方や価値を考える機会を逃すかもしれません。
課題3 企業同士のやり取りが、仕様の確認に偏ってしまう
納期、価格、機能、品質などを詰めることはもちろん必要です。 ただ、それだけでは「そもそも誰の、どんな暮らしに役立つのか」という問いが後回しになる場合があります。
企業同士に生活者が加わると、商品開発はどう変わるのか
三者が同じ場にいる利点は、情報を早く共有できることだけではありません。 一人の発言に、別の立場の人がその場で反応し、次の問いが生まれることにあります。
素材・技術・製法・品質など、つくる立場の知識を持ち寄る。
商品企画・顧客接点・売り場・伝え方の視点を持ち寄る。
実際の使い方・暮らしの工夫・疑問・率直な反応を持ち寄る。
専門知識が、生活者の新しい発想を引き出す
専門メーカーが素材の特徴を説明したとき、生活者から 「それなら、こんな場面にも使えるのでは」といった新しい問いが生まれることがあります。 専門家にとっては日常的な知識でも、別の立場から見ると新鮮な情報になるのです。
生活者の反応が、企業側の前提を揺さぶる
企業側が重視していた機能に生活者があまり関心を示さず、 予想外の点に興味を持つこともあります。 その場で「なぜそう感じたのか」を聞ければ、 商品の価値や伝え方を見直すきっかけになります。
企業同士も、互いの見方を変えられる
ブランド企業が生活者の反応を直接見れば、企画の前提を考え直せます。 専門メーカーも、技術をどのような価値として届けられるかを考えることができます。 生活者から答えをもらうだけでなく、参加した企業の担当者自身が学び、変わっていくことにも意味があります。
企業間共創による商品開発を進める5つのステップ
いきなり大規模なプロジェクトにする必要はありません。 まずは小さなテーマを決め、関係する企業と生活者が一緒に確かめる場をつくる方法があります。
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何を確かめたいのか、問いを一つ決める
「この技術の価値は伝わるか」「どんな使い方が考えられるか」など、答えを決めつけない問いを設定します。
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必要な立場の人に参加してもらう
企画担当者だけでなく、技術を説明できる専門メーカーの担当者、実際の利用場面を語れる生活者などを選びます。
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説明だけで終わらせず、実物や試作品を囲む
サンプルや使い方の実演があると、抽象的な議論よりも具体的な疑問や反応が生まれやすくなります。
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想定外の質問や脱線を、すぐに切り捨てない
企画の目的から大きく外れない範囲で、思いがけない反応の背景を一緒に確かめます。
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出てきた仮説を持ち帰り、試して、もう一度確かめる
その場で出たアイデアをすぐに正解とせず、技術面・利用場面・事業性を確認し、必要に応じて次の対話へつなげます。
三者共創をうまく進めるために、気をつけたいこと
生活者を「評価する人」だけにしない
企業が完成した案を説明し、生活者が良し悪しを答えるだけでは、 通常の評価調査に近い形になります。 共創では、疑問を出したり、使い方を考えたり、試してみたりできる余地を残します。
専門家の説明が、一方通行にならないようにする
技術的な説明は大切ですが、難しい言葉が続くと生活者は質問しにくくなります。 途中で「どこが気になりましたか」「暮らしの中ではどうでしょう」と問いかけ、 対等に話せる場をつくります。
守秘義務と、アイデアの扱いを事前に整理する
複数企業が参加する場合、未公開技術や商品情報、知的財産の扱いは特に重要です。 何を開示できるか、記録をどう共有するか、成果物やアイデアをどう扱うかを、 開始前に関係者で確認しておく必要があります。
盛り上がったことと、商品化できることを分けて考える
対話が活発でも、すべての発想が商品になるわけではありません。 技術的な実現可能性、コスト、品質、需要などは別途検証が必要です。 共創の場は、正解を決める場というより、確かめる価値のある仮説を見つける場でもあります。
現場では何が起きたのか|現場ストーリー CASE031
こらぼたうんの現場ストーリーCASE031では、 OEM専門メーカー、PBメーカー、生活者が同じ場で考えた取り組みを紹介しています。
専門メーカーが当たり前だと思っていた知識に、生活者が驚き、質問する。 その反応を受けて企業側も考えを広げ、当初は想定していなかった方向へ話が進んでいきました。 情報を順番に伝えるだけでは生まれにくい、対話ならではの展開です。
専門メーカーの話から、思いもしなかった方向へ広がりました。
専門メーカー、ブランド企業、生活者。 それぞれの知識と経験が出会った現場で、何が起きたのかを物語として紹介しています。
現場ストーリー CASE031を読む →よくある質問
Q. 企業間共創は、大企業でなければ難しいですか?
いいえ。関係する企業が少人数でも、共通の問いを持ち、互いの知識を持ち寄ることから始められます。 重要なのは規模よりも、参加者がその場で考え、次の行動につなげられることです。
Q. 生活者を最初から参加させる必要がありますか?
必ずしもそうではありません。 技術面の検討を企業同士で進めた後、利用場面や価値を確かめる段階で生活者を交える方法もあります。 目的に応じて参加者とタイミングを決めます。
Q. OEMメーカーにとって、参加するメリットは何ですか?
自社の技術や素材が生活者にどう受け止められるかを直接知る機会になります。 ただし、必ず新商品につながるわけではなく、仮説を発見し検証する取り組みとして考えることが大切です。
まとめ|企業同士の知識を、生活者の暮らしとつなぐ
企業間共創による商品開発は、複数企業の技術や知識を集めることが出発点です。 そこに生活者の経験や疑問が加わると、企業側が気づいていなかった価値や使い方を考えるきっかけになります。
大切なのは、生活者の声を集めて報告することだけではありません。 企業も生活者も同じ場で考え、その場で生まれた問いを次の試作や検証につなげていくこと。 そうした積み重ねが、商品だけでなく、担当者の見方や企業同士の関係を変えることにもつながります。
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