サービスドミナントロジックとは――価値共創の考え方

商品をつくることと、価値が生まれることは同じではありません。

良い商品をつくったのに、思うように選ばれない。便利な機能を増やしたのに、生活者には響かない。そんなとき、商品そのものではなく、使う人の暮らしの中で価値がどう生まれているかを考える手がかりになるのが、サービスドミナントロジック(SDL)です。

この記事では、SDLの基本的な意味と従来の考え方との違いを説明したうえで、生活者との対話や観察を通じて実務に活かす方法を、こらぼたうんの現場経験とともに紹介します。

1. サービスドミナントロジック(SDL)とは?

サービスドミナントロジック(Service-Dominant Logic)は、マーケティング研究者のスティーブン・L・ヴァーゴ(Stephen L. Vargo)とロバート・F・ラッシュ(Robert F. Lusch)が2004年に提唱した考え方です。

簡単にいえば、企業が商品に価値を詰め込んで顧客に渡す、という見方だけではなく、顧客を含むさまざまな人や組織が関わり、利用の中で価値が生まれると捉えます。

ここでいう「サービス」は接客業のことではありません

SDLでいうサービスとは、持っている知識や能力を他者のために役立てることです。モノを扱う製造業も、技術や知識を製品という形で役立てていると考えます。

SDLの基本となる3つの視点

  • 価値は、受益者(商品やサービスから便益を得る人)を含む複数の主体によって共創される。
  • 人や企業は、それぞれの知識、経験、道具などの資源を組み合わせている。
  • 何を価値と感じるかは、最終的に受益者自身の経験や状況によって決まる。

例えば同じコーヒーでも、仕事の合間に気持ちを切り替える一杯と、家族と語らう時間をつくる一杯では、感じる価値が異なります。飲み物の品質だけでなく、それを使う場面や人との関係にも目を向ける考え方です。

理論の参考:Service-Dominant Logic 公式サイト「Foundations」

2. モノ中心の考え方とは何が違うのでしょうか

従来のモノ中心の考え方では、機能や性能、価格など、企業が商品に備えたものに注目しがちです。もちろん、それらは今でも重要です。

SDLは、それらを否定するのではなく、商品が暮らしの中でどう使われ、何に役立っているのかまで視野を広げます。

観点モノ中心の見方SDLの見方
着目点商品の機能・性能・価格それらを活用したときに生まれる価値
顧客完成品を受け取る人価値が生まれる過程に関わる人
価値の判断企業が考える商品価値を重視利用者自身の経験や状況を重視
企業の役割商品を開発・提供する価値につながる提案や資源を提供する

例えば、便利な調理器具でも、収納場所がなくて使わなくなれば、企業が想定した価値は十分に実現しません。反対に、想定外の工夫によって日々の調理が楽になり、企業が予想していなかった価値が生まれることもあります。

大切な区別があります。

SDLにおける「価値共創」は、企業と顧客が必ず会議やワークショップで直接話すことを意味しません。顧客が商品を自分の暮らしの中で使い、ほかの資源と組み合わせて価値を生むことも、この考え方で捉えられます。

3. SDLから商品開発・マーケティングを考える

企業が「この機能が優れている」「この品質なら選ばれるはずだ」と考えていても、生活者は別の理由で商品を選んだり、選ばなかったりします。

だからこそ、商品開発やマーケティングでは、企業が考える価値だけでなく、生活者の使い方や迷い、使わなかった理由を確かめることが重要になります。

商品開発

機能を追加する前に、どんな場面で役立ち、何が負担になっているかを見る。

売り場・伝え方

性能を説明するだけでなく、生活者が自分の暮らしを想像できる言葉を考える。

営業・社内連携

商品情報だけでなく、生活者が感じた価値や利用場面も共有する。

購入後の改善

使った感想だけでなく、使われない場面や予想外の使い方にも目を向ける。

SDLが示すのは、顧客との直接対話が唯一の方法だということではありません。購買データ、観察、顧客サポートの記録など、利用場面を理解する手段は複数あります。その中で、本人と一緒に振り返り、まだ言葉になっていない背景を探ることは、こらぼたうんが重視してきた方法です。

4. 価値共創マーケティングは、SDLを実務に活かす一つの方法です

ここで、理論と実践方法を分けて考えたいと思います。

SDLは、価値の捉え方

価値が誰との関係で、どのような場面に生まれるのかを考える理論的な枠組みです。

こらぼたうんの共創は、実践方法

生活者と企業が直接向き合い、対話・観察・試行を通じて価値の背景を確かめ、商品や伝え方の改善につなげます。

両者は同じものではありません。こらぼたうんの価値共創マーケティングは、SDLの視点を商品開発や販路・伝え方の見直しに活かすための、一つの具体的なアプローチです。

また、生活者の声をそのまま商品化するという意味でもありません。生活者が感じたことの背景を企業担当者も一緒に考え、企業が持つ技術や経験と重ねて、次に試す仮説をつくります。

共創の場で気づきが生まれても、それだけで商品や組織が変わるわけではありません。社内で判断し、試し、必要ならもう一度生活者と確かめる。その往復が大切です。

5. 暮らしの中で価値を確かめる――現場ストーリーと実践ステップ

完成していないからこそ、暮らしの中で試してもらいました。

ある共創セッションでは、まだ完成していない試作品を生活者に持ち帰ってもらい、普段の暮らしの中で使ってもらいました。

次に集まったときに分かったのは、企業が想定していなかった使い方や置き場所、家族の反応、そして「使わなかった理由」でした。その場で触った感想だけでは見えなかったことです。

企業はその体験をもとに試作品を見直し、改良したものを同じ生活者に再び使って確かめてもらいました。

ここで確認できたのは、暮らしの中での使われ方を知ることで、商品の形や説明を見直す手がかりが生まれたことです。販売成果まで実証されたという話ではありません。

現場ストーリー CASE013を詳しく読む

まずは小さく、5つの手順で確かめます

  1. 確認したい場面を一つ決める

    「いつ使われているのか」「なぜ手に取らないのか」など、問いを絞ります。

  2. 生活者の行動や経験を確かめる

    対話、買い物同行、自宅での使用など、テーマに合う方法を選びます。

  3. 言葉の背景を一緒に考える

    要望をそのまま採用するのではなく、場面・迷い・感情を整理します。

  4. 企業の強みと重ねて試す

    試作品や売り場、説明の仕方など、改善案を小さく形にします。

  5. もう一度、利用場面で確かめる

    想定どおりだったか、別の使われ方がないかを検証し、必要に応じて修正します。

大切なのは、顧客の声を集めた数だけではなく、企業担当者自身が利用場面を理解し、その理解を次の判断や行動に結びつけることです。

6. まとめ|価値は、使う人の暮らしの中で育つ

サービスドミナントロジックは、商品の価値を機能や価格だけで捉えるのではなく、使う人の経験や状況、周囲の人や資源との関わりから考える視点を与えてくれます。

そして企業がその価値に近づく方法は、一つではありません。データから学ぶことも、暮らしの現場を観察することも、生活者と直接対話することもできます。

こらぼたうんが大切にしているのは、生活者と企業担当者が同じ場で考え、試し、次の改善につなげることです。商品だけでなく、担当者の見方や判断が変わることにも意味があると考えています。

価値は、つくって渡せば完成するものではありません。使われる場面を知り、確かめ、育てていく。その積み重ねが「選ばれる理由」につながっていきます。

よくある質問

Q. SDLと価値共創マーケティングは同じですか?

いいえ。SDLは価値の生まれ方を捉える理論的な枠組みで、価値共創マーケティングはその視点を実務に活かすアプローチの一つです。

Q. 価値共創には、生活者との直接対話が必須ですか?

SDLの理論上は必須ではありません。一方、こらぼたうんでは、生活者との直接対話や観察を重要な実践方法として位置づけています。

自社の商品が、暮らしの中でどんな価値になっているか確かめませんか?

「商品の良さは説明できるのに、なぜ選ばれないのか分からない」「生活者の声を商品や売り場の改善につなげたい」。そうした段階からご相談いただけます。商品・サービスの状況を伺い、生活者との対話や観察をどこから始めるとよいか、一緒に整理します。

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