生活者との対話の中で、企業担当者の表情が変わる瞬間があります。
「その言葉、いいですね。」
「その表現なら、この商品の良さが伝わりそうです。」
生活者が何気なく話した一言が、商品の価値を見事に表していた。そんな場面は決して珍しくありません。
ところが数か月後、完成した営業資料やホームページを見ると、その言葉がどこにも使われていないことがあります。
別の表現に置き換わっていたり、商品の機能説明に戻っていたり、時には、その気づきそのものが消えてしまっていることもあります。
私は、このような場面を何度も見てきました。
価値が見つからないことが、問題なのではありません。
企業では、生活者の声を聞く機会が増えています。
アンケートを実施する。
展示会や店頭で感想を聞く。
それでも、「良い商品なのに伝わらない」という悩みは、なかなかなくなりません。
その原因は、生活者の声が足りないことだけではないと私は考えています。
生活者との対話で琴線に触れる言葉や表現が見つかっても、それが商品、営業、広報、ホームページまで引き継がれなければ、生活者には届きません。
私は、マーケティングを「入り口」と「出口」で考えています。
私は企業の方へ、マーケティングには「入り口」と「出口」があるとお話ししています。
生活者との対話や観察を通じて、誰に、どのような価値を、どの言葉で届けるのかを確かめる段階です。
商品、営業、広報、Web、売り場などを通じて、見つけた価値を実際に生活者へ届ける段階です。
入り口では、次のようなことを確かめます。
- なぜ、この商品が選ばれたのか
- どのような場面で価値を感じているのか
- 本当は何に安心し、何に迷っているのか
- 商品の良さを、生活者はどのような言葉で表すのか
一方、出口には次のような活動があります。
- 商品やサービス
- パッケージ
- 営業資料
- ホームページ
- 展示会や店頭
- SNS、広報、広告
出口はもちろん大切です。
しかし、入り口で見つけた価値が途中で失われてしまえば、出口に多くの予算をかけても、本来伝えるべきことが伝わらなくなります。
「て・に・を・は」一つで、商品の印象は変わります。
生活者との対話では、言葉をとても慎重に扱います。
なぜなら、「て・に・を・は」が一つ違うだけでも、商品の印象や受け取られ方が変わることがあるからです。
同じような意味に見える二つの表現でも、生活者にとってはまったく異なる印象になることがあります。
企業が考えた整った表現よりも、生活者が会話の中で自然に話した一言の方が、商品の価値を的確に表していることもあります。
だから入り口では、一つひとつの言葉を慎重に確認します。
どの表現が生活者の実感に最も近いのか。
その言葉を聞いたとき、どのような情景が浮かぶのか。
商品の印象が、意図しない方向へ変わっていないか。
ところが、営業資料やホームページ、広報物を制作する段階になると、その言葉が十分に検討されないまま書き換えられてしまうことがあります。
もちろん、媒体に合わせて表現を整えることは必要です。
しかし、読みやすく整えることと、言葉が持っていた意味を変えてしまうことは同じではありません。
生活者の言葉に含まれていた温度や場面まで消えてしまえば、入り口で見つけた価値も一緒に失われてしまいます。
部署をまたぐたびに、価値が少しずつ変わってしまう。
企業の中では、入り口と出口を担当する部署が異なることがあります。
商品開発部門が生活者の声を聞き、営業部門が提案資料を作り、広報部門が発信内容を考え、Web担当者がホームページを制作する。
それぞれの部署は、真剣に仕事をしています。
しかし、担当部署が変わるたびに、生活者との対話で見つけた価値が少しずつ別のものへ変わってしまうことがあります。
最初は生活者の暮らしや気持ちを表していた言葉が、いつの間にか商品の機能説明へ戻ってしまう。
社内で使い慣れた言葉へ置き換えられ、生活者には伝わりにくい表現になってしまう。
その結果、入り口では慎重に検討したはずなのに、出口ではほとんど考慮されていないということが起こります。
入り口で見つけた価値を、出口まで届ける。
私たちは、生活者との対話だけを行う会社ではありません。
対話の中で見つけた価値や言葉を、商品、営業、広報、ホームページなどで一貫して活かせるようにすることを大切にしています。
だから、必要に応じて営業にも同行します。
売り場を見ます。
展示会での伝え方を一緒に考えます。
営業資料やホームページについても話し合います。
生活者との対話は、調査報告書を作るためだけのものではありません。
入り口で見つけた価値を企業の中で共有し、実際の商品や伝え方へ反映して、生活者へ届けるために行うものです。
中小企業では、一つの気づきが会社全体へ広がりやすい。
私は、中小企業との仕事に面白さを感じています。
一つの気づきが、比較的早く会社全体へ広がるからです。
「ホームページにも、この言葉を入れよう。」
「展示会での説明も見直そう。」
「商品の見せ方も変えてみよう。」
社長や担当者がその場で判断し、部門を越えて動き始めることがあります。
入り口から出口までを一つの流れとして捉えられると、生活者との対話で得た気づきが、比較的早く目に見える変化につながります。
商品だけでなく、営業資料、Webサイト、売り場、展示会での説明まで変わっていく。
その変化を企業の方と一緒に見られることが、中小企業との仕事の大きな魅力だと感じています。
生活者の言葉を集めるだけでは、十分ではありません。
大切なのは、たくさんの意見を集めることではありません。
その中から商品の価値を表す言葉を見つけ、企業の中で共有し、出口まで丁寧に届けることです。
入り口だけでも、出口だけでもありません。
入り口で見つけた価値を、出口まで届ける。
それが、私たちが大切にしているマーケティングです。
生活者の声を、営業や広報まで活かせていますか。
生活者の声は集めているものの、商品開発だけで止まっている。営業資料やホームページでは、別のメッセージになってしまっている。
そのような課題がありましたら、現在の状況から一緒に整理します。
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