企業と生活者が一緒になって、新しい商品やサービスを考える。
そんな仕事を長年続けていると、取り組みを始める前に、必ずと言っていいほど話題になることがあります。
「どんな生活者の方々に参加していただくか」
ということです。
実は私は、この参加者の選び方をとても大切にしています。
まずは年齢や性別から考えることが多いのですが
企業の方々と参加者について話し合うと、最初に出てくるのは、年齢や性別、家族構成、居住地域といった条件です。
「30代から40代の子育て世代の女性」
「普段からこの商品を使っている人」
「これから購入する可能性が高い人」
といった具合です。
特に大手企業の担当者の方々は、これまでさまざまなマーケティング調査を経験されています。
ですから、まず属性から考えるのは、ごく自然なことなのだと思います。
もちろん、私もその考え方を否定するつもりはありません。商品やテーマによっては、どうしても必要な条件もあります。
ただ、私はいつも、少し違うことを提案させていただきます。
「今回の商品やテーマに興味があって、面白そうだから参加してみたい、という方々を中心に考えてみませんか」
ということです。
「参加してみたい」という気持ちを大切にしたい
こらぼたうんの共創では、基本的に生活者の方々に謝金をお支払いする形をとっていません。
そのため、参加してくださる方々の多くは、商品やテーマそのものに興味を持ち、「ちょっと面白そう」「一緒に考えてみたい」という気持ちで来てくださいます。
私は、この気持ちをとても大切にしています。
もちろん、興味があるからといって、必ず良いアイデアが生まれるわけではありません。
でも、こうした方々は、やはり熱量が違います。
ご自身の経験を積極的に話してくださったり、商品について新しい使い方を提案してくださったり。
企業の方々の説明に対して、「それはちょっと違うんじゃないですか」と率直に意見を伝えてくださることもあります。
そういうやり取りをきっかけに、思いがけない方向へ話が広がることがあります。
最初から用意した質問に答えていただくだけでは、なかなか出てこない話です。
ベビー用品なのに、赤ちゃんがいないお母さんたちにも参加していただいた
以前、ベビー用品について生活者の方々と一緒に考えたことがあります。
ベビー用品ですから、普通に考えれば、現在赤ちゃんを育てている方々に参加していただくことになります。
もちろん、そうした方々にも参加していただきました。
でも、あるグループでは、お子さんがすでに大きくなったお母さんたちにも参加していただいたのです。
すると、面白い話がたくさん出てきました。
「あの頃は必要だと思っていたけれど、今考えるといらなかったかもしれない」
「こうしておけばよかった」
「こんなものがあったら助かったのに」
今まさに子育てをしている方とは、少し違う視点です。
また、赤ちゃんを育てている方と、お子さんが大きくなった方に、同じチームで考えていただいたこともあります。
そうすると、いわゆる先輩ママの経験談をきっかけに、自然と会話が始まるのです。
「そうなんですか?」
「うちはこうなんですけど、どうしていました?」
そんなやり取りから、次々と話が広がっていきました。
こちらが一つひとつ質問しなくても、生活者同士でどんどん話してくださいます。
もちろん、話が盛り上がれば、それで良いというわけではありません。
でも、そういう自然な会話の中には、企業側が最初から質問項目として用意していなかったような、商品づくりのヒントがたくさん隠れています。
もし最初から「現在赤ちゃんがいる方」という条件だけで参加者を決めていたら、出会えなかったかもしれない話です。
私は、こういう経験を何度もしてきました。
だからこそ、参加者を考えるときに、最初に決めた属性だけにこだわりすぎないようにしているのです。
誰を迎えるかだけでなく、誰と誰に一緒に考えてもらうか
ベビー用品の例で、もう一つ大切だと感じたことがあります。
それは、参加していただく方々の組み合わせです。
現在子育てをしている方には、今まさに感じている不便さや悩みがあります。
一方、子育てを経験された方には、少し時間が経ったからこそ気づくことがあります。
それぞれの話にも価値がありますが、その方々が一緒になって話し始めると、また違う発見が生まれます。
誰かの話を聞いて、別の人が自分の経験を思い出す。
その話を聞いて、さらに別の人が質問する。
そうして会話が広がるうちに、最初は誰も考えていなかったことが見えてくる。
私は、こうしたやり取りを何度も経験してきました。
ですから、参加者を考えるときには、その人がテーマに興味を持っているかどうかだけでなく、どのような経験や考え方を持つ人たちと一緒に考えていただくかも大切にしています。
誰を迎えるか。 そして、誰と誰に一緒に考えてもらうか。
その組み合わせによって、見えてくるものが変わることがあるのです。
調査と共創では、少し目的が違うのかもしれません
これまで一緒に取り組んできた大手企業の担当者の中には、マーケティング調査を数多く経験されてきた方々がいらっしゃいます。
中には、調査は十分に行っているけれど、そこからなかなか新しい発想につながらない、と感じている方もいらっしゃいました。
もちろん、調査は大切です。
どのような人が商品を購入するのか。どんな人に受け入れられそうなのか。市場にどの程度の可能性があるのか。
そうしたことを把握するために、調査が必要な場面はたくさんあります。
一方で、私たちが生活者の方々と一緒に考えるときには、必ずしも最初から答えを見つけようとしているわけではありません。
むしろ、企業も生活者も、まだ気づいていないことを見つけたい。
そのために、いろいろな経験や考え方を持つ人たちと、一緒に話し、考え、試してみたいのです。
ですから、参加していただく人の選び方も、少し違ってくるのだと思います。
「買ってくれる人」と「一緒に考える人」は、同じでなくてもいい
新しい商品やサービスを企画するとき、「誰に買っていただくか」を考えることは、もちろん大切です。
でも、私は以前から、少し違うことを感じています。
「誰に買ってもらうか」と「誰と一緒に考えるか」は、必ずしも同じでなくてもよいのではないか。
ベビー用品の例でも、今まさに赤ちゃんを育てている方々だけではなく、子育てを経験された方々から、たくさんのヒントをいただきました。
違う世代の人かもしれませんし、これまでその商品を使ったことがない人かもしれません。
そういう人たちの何気ない一言が、商品を考え直すきっかけになることもあります。
もちろん、そこで見つかったアイデアが、実際にどのような人に受け入れられるのかは、また別に考える必要があります。
でも、新しい可能性を探す段階では、もう少し自由であってもよいのではないでしょうか。
誰と一緒に考えるか
私たちは、どうしても最初に決めた条件や、これまでの経験を基に物事を考えがちです。
それは自然なことですし、決して悪いことではありません。
ただ、ときにはその枠から少し離れてみる。
これまで想定していなかった人の話を聞いてみる。
その商品に興味を持ち、一緒に考えてみたいと思ってくれる人を迎えてみる。
そして、違う経験や考え方を持つ人たちに、一緒に考えていただく。
そんなことから、思いがけない発見が生まれることがあります。
長年この仕事を続けてきましたが、私は今でも、参加者を考えるときには、その人の年齢や性別だけでなく、どんなことに興味を持ち、どんな経験をしてきたのかを大切にしたいと思っています。
誰と一緒に考えるか。
その選び方ひとつで、見えてくるものが変わることがある。
だからこそ、これからも大切にしていきたいことの一つです。
株式会社こらぼたうん
代表取締役 中間 祥二
🗒️ コラム・運営視点 一覧へ