長年、企業と生活者が一緒になって、新しい商品やサービス、新しい価値を考える仕事をしてきました。
その中で、強く感じていることがあります。
何をするか、どのように進めるかも大切ですが、「誰と一緒に取り組むか」が、その後の共創を大きく左右するということです。
これは、私自身が誰と仕事をしたいか、という話ではありません。企業が価値共創に取り組むとき、社内でどのような人たちがチームを組むのか。そのことが、とても大切だと感じているのです。
共創は、企業側のチームづくりから始まっています
こらぼたうんでは、企業と一般生活者が同じ場で考え、新しい価値を見つけ、育てていく取り組みを行っています。
生活者の方々との対話が中心になる仕事ですが、実はその前に、企業側に共創チームをつくっていただきます。
商品開発、営業、製造、企画など、さまざまな部署の方々が参加されます。経営者が加わることもあります。もちろん、それぞれの専門知識や経験は大切です。
ただ、私がそれと同じくらい、あるいはそれ以上に大切だと思っていることがあります。
人が好きであること。
相手を一人の人間として尊重できること。
自分と違う意見にも耳を傾けられること。
そして、一緒に考えることを楽しめること。
特別な能力ではなく、人としてごく当たり前のことなのかもしれません。でも、この当たり前のことが、対話の質に大きく関わってきます。
ありがたいことに、これまでこらぼたうんと一緒に取り組んでくださった企業担当者には、人が好きで、優しい方が本当に多くいらっしゃいました。そういう方々がいる場では、生活者の方々との間にも自然と良い空気が生まれていきます。
生活者は、企業の人たちをよく見ています
一方で、忘れられない経験もあります。
以前、ある大企業との共創セッションで、企業側から7人ほどの担当者が参加されたことがありました。
その中に、この取り組みにあまり関心がないように見える方がいらっしゃいました。ご本人の意思とは関係なく参加することになったのかもしれません。
セッションが進んでいる最中、その方がゴルフのスイングを練習するような動作を始めたのです。
驚きました。そして何より気になったのは、参加してくださっていた生活者の方々の反応でした。その担当者の様子を、ちらちらと見ていたのです。
それまでの場の空気が、一気に冷めてしまったように感じました。
生活者の方々は、貴重な時間を使って参加してくださっています。暮らしのこと、商品を使った経験、時には個人的な思いや気持ちまで、率直に話してくださいます。
その方々の目の前で、話を聞く姿勢を見せない。それは、あまりにも失礼だと思いました。
私は強く注意し、これ以上この取り組みを続けることはできないとお伝えしました。そして、その日限りで終了することにしました。
相手はクライアントです。仕事を失うことになっても、仕方がないという思いでした。
そのような状態で続けても、良い成果は期待できません。何より、参加してくださっている生活者の方々に申し訳ないからです。
場の空気は、そこにいる人たちがつくります
ここまで極端なことは、そう何度もありません。ただ、長年この仕事をしていると、言葉や態度で場の雰囲気が変わることを何度も経験します。
話を聞くときの表情。ちょっとした相づち。質問の仕方。自分とは違う意見への反応。
一つひとつは小さなことですが、生活者の方々は、そうした空気を敏感に感じ取っています。
企業側が心から興味を持って話を聞いていると、最初は遠慮がちだった生活者の方も、少しずつ自分の経験や気持ちを話し始めます。
企業担当者が「それは面白いですね」と身を乗り出し、そこから会話が広がる。いつの間にか、企業と生活者という立場を越えて、一緒に考えている。
私は、そんな瞬間が大好きです。
共創は、質問して答えてもらうだけの仕事ではありません。お互いを尊重し、安心して考えを交わせる関係があってこそ、見えてくるものがあると思っています。
共感とは、同じ意見になることではありません
共創の場では、企業と生活者の意見が食い違うこともあります。同じ商品を使っていても、人によって感じ方は違います。
私は、共感とは、相手の意見に何でも賛成することではないと思っています。
大切なのは、「なぜそう感じるのだろう」「どうしてそう考えるのだろう」と、その背景にある経験や気持ちを理解しようとすることです。
違う意見を否定せず、かといって無理に合わせるのでもなく、お互いの考えを率直に伝え合う。そのやり取りから、企業側が当たり前だと思っていたことが、生活者には当たり前ではなかったと気づくことがあります。
その違いが、新しい発想の入口になるのです。
また、生活者の話を直接聞き、驚きや戸惑い、喜びを企業側のメンバー同士で共有する経験は、社内にも残っていきます。部署や役職を越えて、一緒に考える関係が生まれることもあります。
私は、そうして企業側の人たち自身が何かを感じ、仕事への向き合い方を少しずつ変えていくことにも、共創の大切な価値があると思っています。
お互いが納得して取り組むために
こらぼたうんは、決して多くの企業と取り組んでいるわけではありませんし、必ずしもその必要があるとも思っていません。
これまでにもご相談をいただきながら、考え方や進め方について率直にお話しし、取り組みを見送ったことが何度もあります。
それは、企業を一方的に選びたいからではありません。
最初から共創の考え方を理解している必要もありません。むしろ、話し合う中でお互いの理解が深まることは、いくらでもあります。
ただ、企業の方々にも生活者の方々にも、大切な時間を使っていただく以上、お互いの考え方を理解し、納得したうえで取り組むことが必要だと思っています。
ビジネスとしては、必ずしも上手なやり方ではないのかもしれません。それでも、仕事を受けること自体が目的ではないのです。
一緒に取り組む人たちが、真剣に向き合えること。その土台があってこそ、共創に意味が生まれると考えています。
誰をチームに迎えるか。そこから共創は始まっています
新しい価値を生み出そうとするとき、どんな手法を使うか、何人の生活者に参加してもらうか、どんなテーマで話し合うか、といったことに目が向きがちです。
もちろん、それらも大切です。
でも、その前に一度、考えていただきたいのです。
企業の中で、誰と共創チームを組むのか。
役職や部署、専門知識だけでなく、生活者の声に関心を持ち、違いを受け止め、一緒に考えることを楽しめる人たちに参加していただきたいと思います。
そうした人たちが同じ場に集まり、互いの気持ちや経験を共有できたとき、思いもよらなかった価値が生まれることがあります。
目の前の相手を、一人の人間として大切にする。
ごく当たり前のことですが、私は、そこから共創が始まるのだと思っています。
株式会社こらぼたうん
代表取締役 中間 祥二
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