マーケティングリサーチは、とても有効な手法です。目的が「実態把握」なら、専門性を持つ調査会社の活用が最適解になることも少なくありません。
ただし、価値共創はリサーチの延長ではありません。生活者から情報を集めるのではなく、対話を重ねながら仮説を育て、企画や改善、伝え方を一緒に形にしていく取り組みです。
「情報が欲しい」のか、「一緒に価値を育てたい」のか。
さらに言えば、効率よく答えを集めたいのか、時間をかけてでも選ばれる理由を見つけたいのか。ここを混同すると、共創は単なる意見収集になってしまいます。
調査(マーケティングリサーチ)と価値共創は、目的が違う
3行で定義します
調査:事実や意見を集め、判断材料を得る。
価値共創:対話を通じて仮説を育て、試し、変え、価値を一緒に形にする。
決定的な違い:得たいのは「データ」か、「関係と変化」か。
調査を否定しているのではありません。「調査で足りる課題」と「共創が必要な課題」は別——ただそれだけです。
調査は、「今どうなっているか」を把握するのが得意です。
一方、価値共創は、「これからどう良くするか」を一緒に試しながら決めるのが得意です。
つまり、調査は答えの“材料”を集める。共創は、材料をもとに意思決定と行動を変え、価値を形にしていく。
この違いをハッキリさせると、取り組みがブレず、成果が出やすくなります。
調査会社を使うべき時(=調査で十分に答えが出る)
- 市場規模・認知・満足度などの現状把握
- 仮説のスクリーニング(当たりをつける)
- 施策の効果検証(KPI追跡)
- 社内稟議・説明責任のための「数字」が必要なとき
こうした場面では、設計・回収・分析の専門性を持つ調査会社が頼りになります。
逆に言えば——ここを「共創」と呼び始めると、生活者は一気に“作業モード”に入ります。
価値共創が必要な時(=データでは埋まらない“ズレ”がある)
- 価値提案が刺さらない(理由がわからない)
- 改善しても続かない/リピートが増えない
- 「選ばれる理由」が言語化できていない
- 社内の納得が揃わず、動きが止まる
- データ不足ではなく「解釈の不足」
- 一度きりではなく「関係の不足」
- 把握ではなく「変化の不足」
- 数字ではなく「意思決定の不足」
価値共創は、生活者の声を集めることがゴールではありません。
対話から得た気づきが、企画・表現・提供のしかたに反映され、現場の意思決定と行動が変わる。ここまで含めて、初めて「共創」です。
※この「共創の成否を左右する企業側の姿勢」については、こちらの記事でも体系的に整理しています:
価値共創マーケティングの成否を左右する:企業姿勢の重要性
遠回りに見える対話が、一番の近道になることがある
インターネット調査やアンケートは、短期間で多くの回答を集められる、とても効率の良い方法です。 数百人、数千人の傾向を把握したいときや、仮説の当たりをつけたいときには、大きな力を発揮します。
一方、価値共創では、数人の生活者と何時間も対話を重ねることがあります。 一つの言葉について「それはどういう意味ですか」「なぜそう感じたのですか」「実際にはどんな場面でしたか」と、何度も行き来します。 回答数だけを比べれば、決して効率的とは言えません。
しかし、商品やサービスの目的は「調査を終えること」ではありません
本当に大切なのは、生活者に選ばれる価値を見つけ、企画や改善として実現することです。
調査では高い評価を得たのに、発売すると選ばれない。 顧客の要望を反映したのに、特徴のない商品になってしまう。 数字は揃っているのに、社内で解釈が分かれ、企画が前に進まない。
こうしたことが起きるのは、回答が足りないからとは限りません。 回答の背景にある暮らし、感情、迷い、使う場面まで理解できていないことが原因の場合があります。
- 短期間で多くの回答を集められる
- 数値で比較しやすい
- 現状や傾向を把握しやすい
- 判断材料を揃えやすい
- 言葉の奥にある理由まで理解できる
- 企画の方向性を早い段階で修正できる
- 社内で生活者像を共有しやすくなる
- 発売後の手戻りや迷いを減らせる
つまり、調査そのものは効率的でも、商品開発全体では遠回りになることがあります。 逆に、共創はその場では時間がかかっても、後の迷いや手戻りを減らし、結果として価値づくりの近道になることがあります。
定型的な集計や情報整理は、できるだけ効率化する。 その一方で、人の本音や選ばれる理由を理解する場面には、必要な時間をかける。
効率は時間を短くします。対話は未来の遠回りを減らします。
こらぼたうんが生活者との対話を大切にするのは、非効率を好んでいるからではなく、その時間が後の意思決定と実行の質を高めると考えているからです。
生活者が本気になる3つのスイッチ
生活者が「ただ答える」から「一緒に考える」へ切り替わる瞬間があります。
それはインセンティブだけでは生まれません。企業の本気が、体験として伝わったときに起きます。
実際、こらぼたうんでは協力会員である こらぼれーたー の皆さんにご協力いただき、パイロット的に共創を試すことがあります。その際、企業側が「何を良くしたくて」「この対話をどう活かしたいのか」を熱意と誠意をもって投げかけると、報酬(インセンティブ)に関わらず参加が集まり、対話の質が一段上がることが少なくありません。
※ポイントは「報酬(インセンティブ)だから集まる」ではなく、参加が“貢献”や“参画”として実感できる設計になっているかどうかです。
自分の声が「形」になった痕跡を見つけたとき、参加は“作業”から“誇り”に変わります。
- 結果や学びを返す(短くてもいい)
- 採用/不採用に関わらず「どこに効いたか」を示す
- 次の参加導線を用意する(継続対話)
「この企業は本気だ」と伝わると、人は自然に“ちゃんと答えたい”モードになります。
- 問いの“なぜ”を添える(何の意思決定に使うか)
- 主語の曖昧さや引っかけを避け、敬意が伝わる文章にする
- ありがとう+扱い方の説明(インセンティブより態度が効く)
自分の声が製品やサービスを通じて還元され、暮らしが少し良くなると感じたとき、協力は長く続きます。
- 「誰の何を良くしたいか」を最初に共有する
- 参加がどう反映されたかを、短くても返す
- “協力者”として扱い、データ扱いしない
生活者の本気は、報酬で買うものではない
企業姿勢が「体験」として伝わったときに育ちます。
そして、その体験は設計できます。
共創の成否を分けるのは「企業姿勢が伝わる設計」
共創を掲げながら失敗する多くのケースは、熱意が足りないのではなく、熱意が“伝わらない設計”になっています。
- 受け止める:聞いて終わらせず、解釈し、次の一手に繋げる
- やり切る:途中でやめず、一定期間“継続”して学びを積む
- 共有する:結果・学び・変化を返し、参加者の誇りを育てる
さらに深掘りしたい方は、こちらもどうぞ:
価値共創マーケティングの成否を左右する:企業姿勢の重要性
結論:必要なのは、データか、対話か、それとも両方か
目的が「実態把握」なら、調査会社の活用が最適解です。
目的が「選ばれる価値を一緒に育てたい」なら、生活者との対話と共創が必要です。
そして実際の商品開発では、調査で全体を捉え、対話で理由を深掘りし、共創で形にするなど、両方を組み合わせることも有効です。
判断基準は、これだけです
「何が起きているか」を知りたいのか、「なぜ起きているか」を理解したいのか、「これから何をつくるか」を一緒に考えたいのか。
実態把握には調査、背景理解には対話、価値の実現には共創。目的に応じて使い分けることが大切です。
「調査結果はあるのに、選ばれない理由がわからない」
「対話や共創に進むべきか判断できない」
そんな段階でも問題ありません。こらぼたうんでは、課題の見立て、調査で把握すること、対話で深掘りすること、共創で形にすることを整理し、自社に合った進め方を一緒に考えます。
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