これからの商品づくりやサービス開発に必要なのは、完成してから評価を取る進め方だけではありません。途中の段階から生活者と対話し、違和感も手応えも受け取りながら、少しずつ価値を育てていく。そんな進め方が、今の時代にはますます大切になっています。
商品やサービスを考えるとき、これまでは 「まず企業側で企画をまとめる」 「ある程度形にする」 「最後に調査やテストで確かめる」 という流れが一般的でした。
もちろん、この進め方自体が悪いわけではありません。社内で方針を決め、一定の完成度まで持っていくことが必要な場面もあります。
ただ、実際の現場を見ていると、このやり方だけではうまくいかないことが増えていると感じます。調査では反応が悪くなかった。社内でも筋が通っていた。それでも、いざ世の中に出してみると、思ったほど響かない。そんなことは決して珍しくありません。
そのほうが、暮らしの中で本当に届く価値に近づきやすくなります。
なぜ「作ってから確かめる」だけでは足りなくなってきたのか
大きな理由のひとつは、企業の中で見えている景色と、生活者が日々の暮らしの中で感じている実感のあいだに、どうしてもズレが生まれやすいからです。
企業は真剣に考えています。技術もあります。経験もあります。過去のデータもあります。ですが、それだけでは見えないものがあります。暮らしの中で感じている小さな不便さ、言葉にはなっていない違和感、本人もまだ整理できていない気持ちの動きは、会議室の中だけではつかみにくいのです。
見えにくいのは「評価」ではなく「文脈」
完成した案を見せれば、「良い」「悪い」という反応は取れます。ですが、本当に重要なのは、その商品やサービスがどんな場面で、どんな気持ちで受け止められるのかという文脈です。そこまで見ないと、価値の輪郭ははっきりしません。
たとえば、機能としては優れていても、「自分の暮らしの中で使うイメージが湧かない」と感じられれば、なかなか選ばれません。反対に、企業側が脇役だと思っていたポイントが、生活者にとっては強く心を動かす理由になることもあります。
こうしたズレや発見は、完成してから確認するだけでは見えにくいものです。だからこそ、途中の段階から生活者と関わりながら、少しずつ価値を確かめていく必要があります。
「作りながら一緒に育てる」とはどういうことか
「一緒に育てる」という言葉を聞くと、生活者に商品開発を丸投げするようなイメージを持たれることがあります。ですが、そうではありません。
企業には、技術があります。実現する力があります。品質を守る責任があります。一方で、生活者には、使う側だからこそわかる感覚があります。暮らしの中での位置づけや、ちょっとした違和感、説明されなくても「なんとなくいい」と感じるポイントがあります。
大切なのは、この両方を早い段階から重ねていくことです。企業だけで考え切るのでもなく、生活者の声をそのまま正解にするのでもなく、行き来しながら輪郭を整えていく。そのプロセスが、「作りながら一緒に育てる」ということです。
- 仮説を持って動き出す
最初から完璧な正解を求めすぎず、まずは方向性を仮置きします。 - 途中段階で生活者と対話する
完成形ではなく、アイデアや試作の段階から反応を受け取ります。 - 言葉だけでなく空気やつぶやきも拾う
何気ない一言や表情の変化に、企画のヒントが眠っていることがあります。 - 社内の解釈とすり合わせる
その場の反応を、企業の技術・制約・目指す方向と照らし合わせて整理します。 - また磨いて、また確かめる
一度で決め切るのではなく、小さく修正しながら前に進めていきます。
大事なのは、最初から正解を持っている前提で進めないことです。
対話の中で見えてきた違和感や可能性を受け止め、企画に戻し、また確かめる。この往復があるからこそ、納得感のある価値に近づいていきます。
従来型の進め方との違い
従来型:作ってから確かめる
- 社内で企画を固めてから見せる
- 評価の中心は「良いか悪いか」になりやすい
- ズレに気づくのが遅れやすい
- 平均点は取れても、深い共感に届きにくい
共創型:作りながら一緒に育てる
- 途中段階から生活者と関わる
- 評価だけでなく文脈や違和感が見える
- 小さく軌道修正しながら進められる
- 暮らしに根ざした価値へ育ちやすい
この違いは、単に進め方の違いではありません。企業が生活者をどう見ているかの違いでもあります。最後に評価だけをもらう相手なのか、それとも価値を一緒に見つけていく相手なのか。この姿勢の違いが、結果にも表れてきます。
生活者は「答えをくれる人」ではなく、「気づきを一緒につくる相手」
調査の世界では、生活者に「何が欲しいですか」「どこが不満ですか」と尋ねることがよくあります。もちろん、それ自体には意味があります。ただ、そこで返ってくる答えは、多くの場合、今見えている選択肢の延長線上にあるものです。
生活者自身も、自分の本当の気持ちや違和感を最初からきれいに言葉にできるわけではありません。だからこそ、本当に大事なのは、問いを投げて答えを回収することではなく、対話や試行錯誤の中で、本人も気づいていなかった感覚が少しずつ立ち上がってくることです。
現場で見えやすい「本音の入口」
- 「それ、便利そう」ではなく「その場面、あるかもしれませんね」という反応
- 説明された価値より、何気なく目が留まったポイント
- 企業が想定していなかった使い方の話
- はっきり否定はしないけれど、どこか引っかかっている空気
- 「自分ならこうしてほしい」という自然なつぶやき
こうしたものは、アンケート結果の数字だけではつかみにくいものです。ですが、商品やサービスを本当に良くするヒントは、むしろこういうところにあります。
こらぼたうんでは、生活者を単なる調査対象としてではなく、価値を一緒に見つけ、育てていく相手として捉えています。そこに立つと、聞き方も、場のつくり方も、進め方も変わってきます。
調査の役割は「答え合わせ」から「ヒント探し」へ変わっていく
ここで誤解してほしくないのは、「共創が大事だから調査はいらない」という話ではないことです。調査は今後も必要です。ただ、その役割は少し変わっていくはずです。
これまでは、調査を「意思決定の根拠を取るもの」として使う場面が多かったかもしれません。ですが、それだけにしてしまうと、調査が最後の判定役のようになり、途中で見えてきた小さな可能性や尖った価値が、平均点の中に埋もれてしまうことがあります。
これからの調査は、共創を助ける役割へ
調査は「何を作るかを最初に決め切るためのもの」ではなく、暮らしのヒントを拾い、共創の中で生まれた仮説をどこまで広げられそうか確かめるものとして使ったほうが、実務に合いやすくなります。
つまり、 「調査してから作る」 ではなく、 「ヒントを拾う → 対話しながら形にする → 必要に応じて確かめる → また改善する」 という順番です。
この順番に変わるだけで、調査はずいぶん生きたものになります。調査が“止めるための材料”ではなく、“育てるための材料”になっていくのです。
商品だけでなく、社内の見え方も変わっていく
共創の面白さは、商品やサービスが磨かれることだけではありません。実務ではむしろ、企業担当者の見え方が変わることのほうが大きい場合もあります。
生活者と直接話す。反応をその場で受け取る。一緒に考える。その中で、「自分たちはここを強みだと思っていたけれど、相手は別のところに価値を感じていたんだ」と気づくことがあります。
この気づきは、レポートを読むだけではなかなか起こりません。場にいて、空気を感じて、相手の言葉を自分の耳で聞くからこそ、腹落ちします。そして、その体験をした担当者は、その後の企画の立て方や問いの持ち方が変わっていきます。
共創で起きやすい社内の変化
- 生活者の声を“情報”ではなく“実感”として受け取れるようになる
- 社内の思い込みや前提に気づきやすくなる
- 企画・開発・営業の見ている景色をつなぎやすくなる
- 「売るため」だけではなく「育てるため」の視点が生まれる
- 単発の商品開発で終わらず、次のテーマにもつながりやすくなる
こらぼたうんが大事にしているのも、商品だけを形にすることではなく、企業の中に“生活者と一緒に考える感覚”を育てることです。これが根づいてくると、共創は一度きりのイベントではなく、企業の力として積み上がっていきます。
「作りながら改善する」は、今の時代に合った進め方
変化のスピードが速い今、最初から全部決め切るやり方は、どうしても苦しくなります。市場も価値観も流動的で、昨日の正解が今日もそのまま通用するとは限りません。
そんな中で求められるのは、最初から完璧な答えを持つことよりも、途中で柔らかく修正しながら、納得感のある形に育てていく力です。それは、ただ早く出すという意味でのスピード感とは少し違います。
本当に必要なのは、関わりながら、確かめながら、育てながら進むことです。一見すると手間がかかるように見えるかもしれません。ですが、完成してから大きなズレに気づくより、途中で小さく修正できるほうが、結果としてずっと健全です。
この記事のポイント
- 完成してから評価を取るだけでは、暮らしの文脈や潜在的な違和感は見えにくい
- 生活者は「答えをくれる人」ではなく、価値を一緒に見つけていく相手
- 調査は不要になるのではなく、「答え合わせ」から「ヒント探し」へ役割が変わる
- 作りながら一緒に育てる進め方は、商品だけでなく社内の見え方も変えていく
- 今の時代には、最初から正解を決め切るより、対話しながら価値を育てる力が重要になる
最後に
企業が一方的に考え、最後に評価だけをもらう。そんな進め方では、拾いきれないものが増えています。
今必要なのは、完成品を見せて答え合わせをすることよりも、途中の段階から対話を重ね、違和感も手応えも一緒に受け取りながら、少しずつ形にしていくことです。
生活者は、答えを与えてくれる存在ではありません。価値を一緒に見つけ、育てていく相手です。そして企業に求められるのも、最初から正解を出し切る力だけではなく、対話の中で仮説を磨き、柔らかく修正しながら、価値を育てていく力なのだと思います。
「作ってから確かめる」のではなく、作りながら一緒に育てる。
この感覚が広がっていくと、商品やサービスのつくり方だけでなく、企業と生活者の関係そのものも、少しずつ変わっていくはずです。
共創の進め方を、自社に合う形で考えたい方へ
「生活者の声を活かしたいが、アンケートや調査だけでは限界を感じている」
「商品やサービスを、作って終わりではなく、対話しながら育てていきたい」
そんな場合は、こらぼたうんが共創の場づくり・進め方の設計・実践支援を一緒に考えます。
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