SNSなどで、相手の矛盾を指摘し、言い負かす「論破」という言葉を見かけます。 論理的に考え、誤りを指摘することは必要です。 けれども、相手を負かすことが目的になると、その先の会話は続きにくくなります。
商品開発やマーケティングの現場で大切なのは、 正しさを競うことだけでなく、相手の言葉の奥にある思いや背景を理解することではないでしょうか。
私は、まだ言葉になっていない違和感を一緒にたどる「対話」にこそ、共創の可能性があると考えています。
1. 論破では、なぜ新しい価値が生まれにくいのか
相手の話が終わる前に矛盾を探す。 背景を聞く前に「それは違う」と結論を出す。 そうしたやり取りが続けば、人は次第に発言を控えるようになります。
「うまく説明できないから、黙っておこう」
「違う意見を出しても、否定されるだけかもしれない」
こうして失われるのは、単なる発言の数ではありません。 まだ整理されていない気づきや、小さな違和感です。 そこに商品やサービスを見直すヒントが隠れていることがあります。
もちろん、事実を検証したり、論点を明確にしたりすることは欠かせません。 問題なのは、「何が正しいか」を確かめる議論と、「誰が勝つか」を決めるやり取りが混同されることだと思います。
2. 対話は、まだ言葉にならない思いを引き出す
生活者と話していると、「なんとなく好き」「便利そうだけれど買うか迷う」といった曖昧な言葉が出てくることがあります。
そのときに「好きなのか、嫌いなのか」「買うのか、買わないのか」と二択で答えを求めると、そこで会話が終わってしまうかもしれません。
けれども、「どこが気になりましたか」「使うとしたら、どんな場面でしょう」と尋ねてみる。 すると、最初の言葉だけでは分からなかった、暮らしの場面や迷いの理由が見えてくることがあります。
相手の言葉を正すのではなく、相手の言葉を育てる。
その中から、新しい価値の種を見つける。
対話は、生活者の発言をそのまま商品に反映するためのものではありません。 言葉の背景を理解し、企業側の経験や技術とも重ねながら、何を変えるべきかを一緒に考えるためのものです。
3. 意見の違いが、創造性を生む
共創の場では、企業担当者と生活者の意見が必ずしも一致するわけではありません。 開発担当者には当たり前の使い方が、生活者には分かりにくいこともあります。 反対に、企業が重視していなかった点に生活者が魅力を感じることもあります。
そんなときに「こちらの説明が正しい」と結論づけるのではなく、なぜ見方が違うのかを確かめる。 異なる立場の気づきが重なることで、一人では思いつかなかった改善の方向性が見えることがあります。
相手に勝つことを優先すると
- 正解を急いで決めやすい
- 反対意見が出にくくなる
- 曖昧な気づきを見落としやすい
相手を理解することを優先すると
- 違いの背景を確かめられる
- 小さな違和感を共有できる
- 別の選択肢を一緒に考えられる
もちろん、対話を重ねれば必ず良いアイデアが生まれるわけではありません。 得られた気づきを仮説にし、試し、確かめる工程が必要です。 対話は答えそのものではなく、答えを探す出発点なのだと思います。
4. 本音が出る場をどうつくるか
「自由に話してください」と伝えるだけでは、本音は生まれません。 発言した途端に評価されたり、否定されたりする場では、生活者も社員も慎重になってしまいます。
対話の場で大切にしたいこと
- 発言を最後まで聞き、すぐに正誤を判定しない
- 「なぜそう感じたのか」と背景をたどる
- 少数意見や曖昧な表現も、その場で切り捨てない
- 意見を受け止めることと、無条件に採用することを分ける
- 気づきを持ち帰り、次に何を試すか決める
心理的安全性とは、仲良くすることでも、何でも賛成することでもありません。 違う意見や未完成のアイデアを、安心して出せる状態をつくることです。
そして、企業担当者自身が生活者の言葉に耳を傾け、考え方を見直す。 その経験が、商品を一度改善するだけでなく、次の企画や判断にも活きてくると考えています。
5. まとめ|相手の言葉を正すより、育てる
意見が違うとき、相手を説得する方が早いこともあるかもしれません。 それでも、新しい価値を探す場では、一度立ち止まって「なぜそう思うのだろう」と問いかけてみたいのです。
企業と生活者、営業と開発、作り手と使い手。 立場が違うからこそ、同じものを見ても感じることは異なります。 その違いを急いで消すのではなく、次の気づきにつなげる。
論破で会話を終わらせるのではなく、
対話を続けることで、まだ見えていない価値を一緒に探す。
こらぼたうんが大切にしたいのは、そんな共創の場です。
生活者との対話から、価値を見つけてみませんか?
商品やサービスの改善を考えているけれど、生活者が何に魅力を感じ、どこで迷っているのかが見えてこない。 そんなとき、実際の声や行動を一緒に確かめることから始められます。
こらぼたうんでは、生活者との対話や共創セッションを通じて、商品・サービス・売り場・伝え方を見直すお手伝いをしています。
🗒️ コラム・運営視点 一覧へ