共創チームはメンバー選びで決まる──一方的に参加させても本音は生まれない

価値共創マーケティングの実践視点

共創マーケティングでは、ワークショップの進め方やアイデア発想の手法に目が向きがちです。 しかし実際には、その前段階である「誰をその場に入れるか」が、成果を大きく左右します。 どれだけ仕事ができる人でも、その人の存在によって周囲が萎縮してしまえば、 生活者の本音も、社員の小さな違和感も、場に出てこなくなってしまうからです。

「できる人」が、必ずしも共創に向いているとは限らない

企業の中で新しいプロジェクトを立ち上げるとき、まず候補に挙がりやすいのは 仕事ができる人です。

商品知識がある人。 営業成績が良い人。 社内で発言力がある人。 判断が速く、成果を出してきた人。 こうした人がプロジェクトに入ること自体は、もちろん悪いことではありません。

ただ、価値共創マーケティングの現場では、単純に「優秀な人を集めればよい」とは言い切れません。 なぜなら、共創の場では正解を知っている人が答えを出すのではなく、 まだ言葉になっていない生活者の違和感や、社員の中にある小さな気づきを、 対話を通じて拾い上げていく必要があるからです。

その場では、強すぎる正解、強すぎる発言力、強すぎる判断力が、 かえって周囲の発言を止めてしまうことがあります。

共創チームづくりで大切なのは、単に能力の高い人を集めることではありません。 周囲が安心して話せる空気をつくれる人を集めることです。

最近では、「ブリリアントジャーク」という言葉も聞かれるようになりました。 仕事はできるけれど、周囲を萎縮させたり、チームの空気を壊したりする人を指す言葉です。

「そんな人は外せ」という表現は少し乱暴に聞こえるかもしれません。 しかし、共創マーケティングの現場に置き換えると、納得できる部分もあります。 なぜなら、共創の場では個人の優秀さ以上に、場全体が開いていることが重要になるからです。

場を萎縮させる人がいると、何が起きるのか

共創の場では、生活者の声、社員の気づき、現場の違和感、まだ整理されていないアイデアが出てきます。 それらは最初からきれいな意見として出てくるわけではありません。

「なんとなく気になる」 「うまく言えないけれど、少し違和感がある」 「自分だけかもしれないけれど、こう感じた」 そうした曖昧な言葉の中に、選ばれる理由の種が隠れていることがあります。

ところが、場の中にすぐ否定する人、結論を急ぐ人、上から評価する人がいると、 参加者は発言する前に自分の言葉を飲み込んでしまいます。

「そんな意見を言ったら、的外れだと思われるかもしれない」
「まだ考えがまとまっていないから、黙っておこう」
「どうせ最後は声の大きい人が決めるのだろう」
「今ここで反対意見を言うと、あとで面倒なことになるかもしれない」

このような空気が生まれると、共創の場は一気に閉じていきます。 表面上は会議が進んでいるように見えても、本音は出ていません。 意見も出ていますが、無難な意見に偏ります。 アイデアも出ていますが、誰かに評価されやすい範囲に収まります。

つまり、場を萎縮させる人がいると、失われるのは単なる雰囲気ではありません。 発言の量、違和感の質、アイデアの広がり、生活者理解の深さが失われていきます。

小学生の班づくりに見る、安心感と成果の関係

少し身近な話に置き換えてみます。

小学生のころ、班を作るときに「好きな者同士で組んでよい」と言われた経験がある方も多いのではないでしょうか。 もちろん、教育の観点では、いつも好きな者同士でよいとは限りません。 偏りも出ますし、苦手な人と協力する経験も必要です。

しかし一方で、好きな者同士で班を作ったとき、結果として楽しかったり、 自然に役割分担ができたり、思った以上に良い成果が出たりした経験もあるのではないでしょうか。

それは、単に仲が良かったからではありません。 安心して話せる関係があったからです。

安心して話せるから、思いついたことを言える。
否定されにくいから、試してみようと思える。
役割を押し付けられないから、自然に自分の動き方を見つけられる。
楽しいから、少し面倒なことにも前向きに取り組める。

これは、企業の共創チームにも通じる部分があります。

共創チームは、仲良しグループを作ればよいという話ではありません。 しかし、参加者同士に最低限の信頼があり、安心して発言できる状態がなければ、 本音や違和感は出てきません。

部署や役職のバランスだけでメンバーを決めると、見た目は整ったチームになります。 しかし、実際には誰も本音を言わない、誰もリスクを取らない、 誰も生活者の声を自分ごととして受け止めない場になることがあります。

共創に必要なのは、単なる形式的な多様性ではありません。 違いがあっても、安心して出し合える関係性です。

共創チームに必要なのは、能力だけではなく“場への影響”

共創チームづくりにおいて、場を閉じるチームと場を開くチームの違いを対比し、誰を集めるかが本音やアイデア創発に影響することを示したグラレコ
共創チームは「能力順」ではなく、「場を開く力」で選ぶ。

共創マーケティングでは、生活者との対話や観察を通じて、 商品やサービスが選ばれる理由を探っていきます。 そこでは、専門知識や分析力も必要です。 しかし、それ以上に重要になるのが、参加者一人ひとりの場への影響です。

その人がいることで、周囲が話しやすくなるのか。 その人がいることで、生活者の言葉を丁寧に聞けるのか。 その人がいることで、若手や他部署の人が意見を出しやすくなるのか。 その人がいることで、場が前向きに広がるのか。

こうした視点は、共創チームを作るうえで非常に大切です。

共創チームは、能力順で選ぶのではなく、場を良くする順で考える。

もちろん、能力が不要という意味ではありません。 ただし、共創の場では「できる人」よりも、 周囲の力を引き出せる人のほうが重要になる場面があります。

たとえば、自分の意見を強く主張するよりも、 生活者の何気ない一言に「それ、どういう意味ですか?」と聞ける人。 すぐに判断するよりも、「もう少し聞いてみましょう」と待てる人。 他人のアイデアを奪うのではなく、「それに加えると、こういう可能性もありますね」と広げられる人。

こうした人がいると、場の空気は変わります。 生活者も話しやすくなります。 社員も自分の気づきを出しやすくなります。 結果として、表面的な意見ではなく、深いインサイトに近づきやすくなります。

一方的な命令で参加させても、本音は生まれにくい

クライアント企業で共創プロジェクトを始める際、 「誰を参加させるか」はとても重要なテーマです。

しかし実際には、上司から一方的に命じられて参加するケースもあります。 「このメンバーで進めてください」 「各部署から一人ずつ出してください」 「忙しいと思うけれど、会社の方針なので参加してください」 という形です。

もちろん、企業活動である以上、業務として参加することは自然です。 すべてを完全な自主参加にすることは難しい場合もあります。

ただし、参加者の気持ちが最初から 「やらされている」 「自分には関係ない」 「余計な仕事が増えた」 という状態では、共創は始まりにくくなります。

共創マーケティングでは、生活者の声を聞くだけでなく、 それを自社の課題や可能性として受け止める必要があります。 そのためには、参加者自身が 「この場に関わる意味」を感じていることが大切です。

一方的に参加させられた人は、どうしても受け身になりやすくなります。 生活者の発言を聞いても、自分ごととして受け止めにくい。 アイデアを出す場面でも、責任を持って広げにくい。 社内に持ち帰って動かす段階でも、熱量が続きにくい。

だからこそ、共創チームを作るときには、できるだけ 「なぜこの取り組みを行うのか」 「参加者に何を期待しているのか」 「どのような意味があるのか」 を丁寧に共有する必要があります。

共創は、命令だけでは動きません。 人が自分の言葉で考え、他者の声に耳を傾け、 そこから新しい価値を見つけようとするときに動き始めます。

手挙げ制・リーダー推薦・小さく始める意味

共創チームづくりの流れとして、目的共有、手挙げ制、リーダー推薦、小さなチームでの開始、生活者の声の共有、社内への広がりまでを段階的に示したグラレコ
共創チームづくりは、目的共有から小さく始め、生活者の声を通じて社内に実感を広げていく。

では、共創チームのメンバーはどのように決めればよいのでしょうか。

理想を言えば、まずは手を挙げてもらうことです。 「生活者の声を聞いてみたい」 「商品づくりをもう少し顧客視点で考えたい」 「今の売り方に違和感がある」 「部署を超えて考える場に参加してみたい」 そうした小さな関心を持つ人がいるなら、その人は共創チームの重要な候補になります。

ただし、企業によっては手挙げ制だけではメンバーが集まらないこともあります。 その場合は、現場をよく見ているリーダーや上司に、 「この人なら場に良い影響を与えそうだ」 という視点で推薦してもらう方法もあります。

ここで大切なのは、単に役職や担当業務で選ばないことです。 もちろん、商品開発、営業、マーケティング、販売、品質管理など、 関係する部署の視点は必要です。 しかし、それだけでなく、その人がどのように場に関わるかを見る必要があります。

手挙げ制が向いている場合

  • 新しい取り組みに関心を持つ社員がいる
  • 部署横断で前向きな人材を集めたい
  • やらされ感を減らしたい
  • 小さく試すプロジェクトから始めたい

リーダー推薦が向いている場合

  • 社内でまだ共創の意味が浸透していない
  • 必要な部署から参加者を出す必要がある
  • 現場をよく知る人を選びたい
  • 場に良い影響を与える人を見極めたい

もう一つ大切なのは、最初から大きく始めすぎないことです。 共創の経験がない企業では、いきなり大人数を集めるよりも、 小さなチームで始めたほうがうまくいく場合があります。

少人数で生活者の声を聞き、気づきを共有し、 小さな仮説を立て、試してみる。 その経験を通じて、社内に「これは意味がありそうだ」という実感が生まれます。

共創は、最初から大きな制度にする必要はありません。 むしろ、最初は熱量のある小さなチームから始めるほうが、 その後の広がりにつながりやすくなります。

共創チームに入れたい人/慎重に考えたい人

共創チームのメンバーを考えるときには、 「どの部署の人を入れるか」と同時に、 「どのような姿勢の人を入れるか」を見ることが大切です。

以下は、共創チームづくりの際に参考にしたい視点です。

共創チームに入れたい人 慎重に考えたい人
生活者の声を素直に聞ける人 生活者の声をすぐに「特殊な意見」と片づける人
小さな違和感を面白がれる人 すぐに正解・不正解で判断する人
他人の発言に乗って広げられる人 自分の意見で場を支配しようとする人
わからないことを、わからないと言える人 常に自分が正しいと見せようとする人
部署や立場を超えて考えられる人 自部署の都合だけで判断する人
発言していない人にも気を配れる人 声の大きさや役職で場を動かす人

ここで誤解してはいけないのは、「厳しい意見を言う人は入れてはいけない」という話ではないことです。

共創の場にも、現実的な視点や厳しい指摘は必要です。 ただし、それは相手を萎縮させるためではなく、 アイデアをより良くするために使われるべきものです。

同じ厳しい意見でも、 「それは無理です」と切り捨てるのと、 「実現するには、この条件を考える必要がありますね」と前に進めるのでは、 場への影響がまったく違います。

共創チームに必要なのは、甘い雰囲気ではありません。 安心して本音を出し合いながら、現実的に前へ進める空気です。

まとめ:共創は、誰を集めるかから始まっている

価値共創マーケティングというと、生活者との対話、ワークショップ、アイデア発想、商品開発、検証など、 実施段階の手法に目が向きがちです。

しかし、その前に考えるべきことがあります。 それは、誰とその場をつくるのかということです。

仕事ができる人を集めることは大切です。 けれど、それだけでは共創はうまくいきません。 周囲を萎縮させる人、結論を急ぎすぎる人、生活者の声を軽く扱う人が場にいると、 本音や違和感は出にくくなります。

一方で、場を開ける人、他人の声を受け止められる人、 小さな気づきを面白がれる人がいると、共創の場は動き始めます。

この記事の要点

  • 共創チームは、能力だけでなく「場への影響」で考えることが大切
  • 周囲を萎縮させる人がいると、本音や違和感が出にくくなる
  • 安心して話せる関係性は、アイデアや気づきの質を高める
  • 一方的な命令で参加させると、やらされ感が生まれやすい
  • 手挙げ制やリーダー推薦を組み合わせ、小さく始めることが有効
  • 共創は、ワークショップ当日ではなく、メンバー選びから始まっている

共創マーケティングで大切なのは、生活者の声を聞くことだけではありません。 その声を、社内の誰が、どのような姿勢で受け止めるのか。 そして、その気づきをどのようにチームで育てていくのか。

その意味で、共創チームづくりは単なる人選ではありません。 価値を生み出す場の土台づくりです。

共創は、誰か一人の優秀さで進むものではありません。 生活者の声に耳を傾け、社員同士が安心して気づきを出し合い、 そこから新しい価値を育てていく営みです。

だからこそ、共創チームは「誰を入れるか」から丁寧に考える必要があります。 その小さな設計が、後の成果を大きく左右します。

共創チームづくりから、一緒に設計しませんか

こらぼたうんでは、生活者との対話や共創ワークショップだけでなく、 その前段階となるチームづくり、参加者設計、場の進め方まで含めて支援しています。 「どのようなメンバーで始めればよいか」「社内をどう巻き込めばよいか」といった段階からご相談いただけます。

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