商品企画では魅力があると思っていたのに、営業からは「これでは売りにくい」と言われる。
デザインは使いやすさを重視し、営業は小売店への提案や売り場での伝わり方を気にしている。
こうしたすれ違いは、誰かの能力や意欲が足りないからとは限りません。
同じ商品・サービスを、異なる立場から見ていることが一因です。
この記事では、企画・デザイン・営業・マーケティングが生活者の声を共通の出発点にして、
商品・サービスの価値を一緒に育てるための具体的な方法を紹介します。
営業を巻き込むと共創は加速する──現場発のアイデアで売れるチームに変える
「噛み合わせ」を整えたあと、実際に発売後の提案が動くところまで落とし込むなら、こちらの記事が実践編になります。
▶ 実践編を読む(営業を共創チームに入れる設計)目次
1. なぜ「部署横断の噛み合わせ」が成果を決めるのか
企画・デザイン・営業・マーケティングは、同じ商品の成功を目指していても、日々気にしていることが違います。 企画は商品の価値・仕様・採算、デザインは見た目や使いやすさ、営業は卸先・小売店への提案や売り場での伝わり方、マーケティングは顧客理解や購入のきっかけを見ています。 これは対立ではなく、価値を成立させるための“必要条件の分担”です。
噛み合わせが取れていないと、典型的にはこうなります。「良い価値なのに伝わらない」「売れるのに続かない」「続くのに出会えない」。 部門ごとの最適化が、全体最適を崩してしまう状態です。
・衝突の多くは価値観の対立ではなく「観測点の違い」。
・噛み合わせは“仲良くする”ではなく「受け渡しを設計する」こと。
・生活者の語りを媒介にすると、前提が揃い意思決定が速く・深くなる。
現場ストーリー|実際の支援事例
売ってもらう前に、営業にも同じテーブルに座ってもらいました。
ある商品開発では、企画や開発だけでなく、営業担当者にも生活者との対話へ参加してもらいました。 営業は通常、完成した商品をどう提案するか、取引先へどう説明するかを考える立場です。 しかし今回は、商品が固まる前から同じテーブルに座ってもらいました。
生活者が商品をどのように受け取り、どこで迷い、何に価値を感じるのか。 その言葉を営業担当者が直接聞いたことで、企画側と営業側の間にあった解釈のズレが小さくなりました。 社内資料だけでは伝わりにくかった背景や感情も、生活者自身の言葉なら共有できます。
その結果、営業は完成品を受け取って売るだけではなく、 生活者の言葉を社内やバイヤーへつなぐ役割として商品開発へ関わるようになりました。 企画・開発・営業が同じ現実を見たことで、部署ごとの視点が一つの価値へ噛み合い始めた事例です。
現場ストーリー CASE007を見る →2. すれ違いの正体:視点と時間軸のズレ
すれ違いの一因は、重視する場面と時間軸の違いです。 マーケティングは「どう知ってもらい、買ってもらうか」、デザインは「使うときにどう感じるか」、営業は「小売店やバイヤーにどう説明し、売り場でどう扱ってもらうか」、企画は「商品として無理なく続けられるか」を考えます。 どれも大切な視点ですが、共有しないまま進めると、部門ごとに異なる結論になりかねません。
重要なのは、短期と長期を“対立”させないこと。短期の約束が体験で裏切られると離脱が増え、体験が良くても出会いが弱ければ利用開始に至りません。 こらぼたうんでは、購入前の期待・購入時の判断・使用後の実感がつながるよう、生活者の言葉を部門間で共有することを大切にしています。
「綿密な体験」だけでも、事業が続かなければ価値は届け続けられない。
3. ペルソナ解釈の違いを“同じ紙”に揃える
ここは噛み合わせの急所です。
マーケティングは「どんな人が、何をきっかけに興味を持つか」、デザインは「どんな場面で使い、何に困るか」、営業は「小売店がどのように提案・陳列すればお客様に伝わるか」という視点を持ちやすいものです。
同じ言葉でも中身が違うので、合意が崩れます。
そこでおすすめは、最初に3視点を同じ紙に並べること。1枚に揃えると、“ズレ”が会話可能になります。
- 顧客理解(マーケティング):誰が/どこで/何に困り、何をきっかけに商品を知るか
- 使う体験(デザイン):選ぶ前の期待、使いやすさ、使った後の満足や不満
- 売り場と提案(営業):卸先・小売店へ何を伝えるか、比較される商品や価格、売り場での説明の難しさ
- 生活者ヒアリングの「原文」を追記して、空白を埋める
4. 「届ける」と「使い続けてもらう」を一本の物語にする
商品・サービスの価値が伝わりやすくなるのは、商品紹介で伝えた魅力と実際に使ったときの感覚が一致しているときです。 逆に、どれかが別の物語を語ると、途中で止まります。
そのためには、企画・デザイン・営業・マーケティングの間で、生活者の反応や判断の根拠を共有できる短いメモや共通資料を用意すると役立ちます。 次章で、そのテンプレを紹介します。
パッケージや売り場の説明が分かりにくければ、生活者の反応を見ながら一つずつ改善します。
5. 噛み合わせの核心:3部門の“受け渡し成果物”テンプレ
部署横断で行き違いが生じる原因の一つは、話し合った内容を次の担当者へどう受け渡すかが曖昧なことです。
口頭合意だけで進めると、次の工程で解釈がズレ、戻り工数が増えます。
以下は、その受け渡しに使える4つの資料の例です。すべてを作る必要はありません。会社の規模や課題に合わせて、まず一つから始められます。
① 体験カンバス(1枚)
知る→選ぶ→使う→また選ぶ
“約束”と“実感”を一致させる
生活者の原文/成功条件/つまずき3点/次の一歩
デザイン+マーケ
(営業は導入障壁を追記)
② 提案の1行(刺さる定義)
誰に何がどう良いか
営業が“自分の言葉”で言える形
比較軸/言い換え例/NG表現/反論FAQ
営業
(マーケはコピー整形)
③ 導入摩擦リスト(3つまで)
止まる場所を特定
“動かない理由”を先に潰す
小売店での説明/売り場の置き方/価格の納得感/使い始めの分かりにくさ
企画+営業
(デザインは摩擦削減)
④ 90日ミニロードマップ
何をいつ検証するか
短期→中期→長期を接続
売り場での説明改善/試作品の確認/次回の販売・使用状況の検証
企画
(全員で合意)
・噛み合わせは「会議の回数」ではなく「受け渡しの質」で決まる。
・必要な資料を「顧客の体験/伝える価値/購入時の迷い/次の改善」の観点で選ぶ。
・小さな会社なら、複数の役割を一人が兼ねてもかまわない。大切なのは視点を欠かさないこと。
6. 会議が増えるほど遅くなる…を防ぐ「週次15分」の会議体
部署横断は、やり方を間違えると「合意のための合意」で遅くなります。
そこで一つの方法は、長い会議を増やすよりも短い打ち合わせで、共有資料と次の行動だけを確認することです。
「週次15分」はあくまで例であり、少人数の会社なら必要なときだけ集まる方法でも構いません。
6-1. 週次15分の固定フォーマット
- 先週:変えたこと(3分):コピー/導入手順/同梱物/FAQなど
- 数字:1つだけ見る(4分):短期 or 中期の指標を1つに絞る
- 声:原文を1つ読む(4分):生活者/営業現場の一言(要約しない)
- 今週:1つだけ直す(4分):摩擦を1つ削る(手順短縮・言い換え・導線改善)
意思決定が必要なら、その場で“誰がいつまでに決めるか”だけ決めて終えます。
なお、こうした部署横断の噛み合わせを支える前提として、企業担当者と生活者が同じ場で語り合い、 価値の芽を見つけていく考え方については、 👉価値共創セッションは、企業と生活者の“ワイガヤ”から始まる でも紹介しています。
7. 共創ワークショップの進め方(実践テンプレ)
7-1. 進行例(約100分・参加人数や目的に応じて調整)
- 目的共有(10分):何を確かめ、どんな判断につなげたいかを確認。
- 生活者との対話(30分):購入前の迷い、使用体験、日常の使い方を聞く。
- 視点の違いを整理(20分):企画・デザイン・営業それぞれが気づいた点を同じ紙に並べる。
- 共有資料づくり(30分):商品の価値、売り場での説明、改善すべき点、次の確認方法を整理。
- 次の一歩を決める(10分):売り場POP、パッケージ、試作品、営業資料など一つを選ぶ。
7-2. 成果の可視化フォーマット
- 1ページ・体験メモ:「知ったきっかけ→買うときの迷い→使った実感→もう一度選ぶ理由」を一枚に。
- 阻害要因リスト:価格・不安・使用想像の壁を3件以内で特定し、除去策をセット。
- 改善予定表:誰が、いつまでに、商品説明・売り場・使い方などの何を確認するかを簡潔に記録。
7-3. よくある落とし穴と回避策
- “議論メイン”で持ち帰りが増える → 当日中に成果物(4点)を確定し、翌週のミニ実装を決める
- 生活者の声が一般論化する → “固有名詞の瞬間”を拾い、コピーや手順に直結させる
- 部門間の責任押し付け → 受け渡し成果物のオーナーを明確にし、更新会で差分を確認する
8. 想定例:生活者の使い方を、商品企画と売り場に反映する
※ここでは連携の流れを説明するための想定例を紹介します。こらぼたうんの実際の支援事例や成果数値を示すものではありません。
例えば、ある家庭用品メーカーが「使い方の違い」を生活者との対話で知ったとします。 企画担当者は商品の用途を広げるヒントとして受け止め、デザイン担当者はパッケージの説明不足に気づき、営業担当者は売り場で何を伝えれば選びやすいかを考えます。
同じ生活者の言葉を聞いていても、部門ごとに着目する点は異なります。 そこで「誰が、どんな場面で、何に価値を感じたか」を一枚に整理し、商品説明・パッケージ・売り場での提案を同じ方向に合わせます。 変更した表現が本当に伝わるかは、小さく試して確かめます。
9. 短期KPIと長期KPIの交差点を“やさしく”見える化する
噛み合わせは「雰囲気」だけだと続きません。
そこで、短期(今の反応)と長期(使い続けてもらえるか)をつなぐ指標を置くと、会話がぶれにくくなります。
※ここでは難しい話ではなく、「どこで止まっているか」を見つけるための“目安”として使います。
(売り場で手に取られるか/購入につながっているか)
(説明が分かりやすいか/使い始めに困っていないか)
(リピート購入・継続利用・紹介が起きているか)
- 約束(伝えたこと)と実感(使った感想)がズレると、短期は取れても途中で離脱しやすくなります
- 手間・不安・分かりにくさを減らし、実際の使用者の反応を確認します
- 再購入や継続利用につながる理由を確かめ、商品・サービスの改善に反映します
10. 共通ゴールを共有するための合意文言
そのために、短期施策と長期設計を対立させず、相互補完とする。
この一文を、プロジェクトの冒頭と節目で読み合わせるだけで、議論の基調が安定します。
「勝ち方」を揃えた上で進めると、部署横断の意思決定が速くなります。
11. まとめ:噛み合うほど、価値は跳ねる
価値が跳ねるのは、派手なアイデアが出た瞬間ではなく、噛み合わせが取れて“受け渡しが成立した”瞬間です。
企画・デザイン・営業・マーケティングが生活者の言葉を同じ場で共有し、必要な情報を次の担当者へ渡せるようになると、判断のズレを減らし、改善に取り組みやすくなります。
共創は、アイデア出しや調査の上位互換ではなく、ユーザーとビジネスの両輪を回す“運用”です。
「同じ生活者の声を聞く」「大切なことを一枚に整理する」「次の改善につなげる」。この小さな積み重ねが、商品・サービスの価値を育てる土台になります。
12. よくある質問(FAQ)
人数に決まった正解はありません。少人数なら役割を兼ねてもよく、生活者も発言しやすい人数から始めます。重要なのは、それぞれの声を十分に聞ける進め方です。
年齢や性別だけでなく、使う場面、購入経験、利用頻度などを踏まえて選びます。今のお客様だけでなく、買わなかった人の視点が必要な場合もあります。
長い会議を増やすより、短い打ち合わせで「前回から変わったこと」「生活者の反応」「次に試すこと」を確認します。週次15分は一例です。役割を兼ねる小規模企業なら、必要なときに集まる方法でも十分です。
短期では「商品を知ってもらえたか・購入されたか」、使用後は「説明どおりに使えたか・満足しているか」、長期では「もう一度選ばれたか」を確認します。商品・サービスの特性に合わせて、無理なく測れる指標を選ぶことが大切です。
部署横断の共創が噛み合わず、前に進まないと感じたら
企画・デザイン・営業・マーケが関わっているのに、会議だけ増えて前進しない。
同じ方向を向いているつもりでも、見ている景色や判断軸がズレている。
そんな段階でも大丈夫です。
こらぼたうんでは、生活者の声を起点にした共通理解づくり、商品企画・売り場・伝え方への落とし込み、部門間で次の一歩を決める場づくりまで、実践で回る形に一緒に整えます。
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