共創マーケティングで顧客の声を活かす方法/売れない原因は“独りよがり”?

この記事は 価値共創マーケティングの全体像 の一部を掘り下げています。

売れない原因は、商品の弱さだけではありません。

むしろ見落とされやすいのは、企業が「売りたいもの」と、顧客が「本当に求めていること」のあいだに生まれるズレです。

企業は商品やサービスを売ろうとします。けれども顧客にとって、商品やサービスはあくまで、自分の暮らしを良くしたり、困りごとを解決したり、満足や安心を得たりするための手段です。

「いいモノなのに売れない」の裏側にある“落とし穴”

「自信を持ってつくった商品なのに、なぜ売れないんだろう?」

この問いは、多くの中小企業や個人事業主にとって切実な悩みです。 機能も品質も悪くない。価格も極端に高いわけではない。販促も一通り行っている。 それでも、思うように選ばれない。

そのとき、つい見直したくなるのは、広告、価格、販売チャネル、キャンペーン、見せ方です。 もちろん、それらも大切です。

しかし、もっと根本的に見直すべきことがあります。

それは、「企業が売りたい理由」と「顧客が買いたい理由」が一致しているかという点です。

企業が商品や売上を見ている一方で、顧客は商品を使った後の自分の成功や幸福を見ていることを示し、その目的のズレを共創マーケティングで重ね直す流れを描いた図解
企業が「売りたい理由」と、顧客が「買いたい理由」のズレを、共創マーケティングで重ね直す流れ

企業側は、どうしても売上、利益率、在庫回転、販売数量といった数値を見ます。 経営において数値を診ることは大切です。 しかし、数値そのものを目的にして意思決定してしまうと、商売の方向が少しずつズレていきます。

たとえば、利益率の高い商品ばかりを「おすすめ商品」として前面に出す。 自社都合で開発した商品を、パッケージや売り文句だけ変えて並べる。 数字上は合理的に見えても、生活者から見ると「この店は本当に自分たちのことを考えているのだろうか」と感じられてしまうことがあります。

顧客は、商品そのものを欲しがっているのではありません。
その商品を通じて、自分の成功、安心、満足、楽しさ、幸福を得たいのです。

ここを見誤ると、企業は「商品を多く売ること」を目的にしてしまいます。 一方で顧客は、「自分にとって良い状態になること」を目的にしています。 この目的のズレが、売れない原因の根っこにあることは少なくありません。

つまり、売れない原因は、必ずしも商品力の不足だけではありません。 顧客にとっての目的を見失った“独りよがり”のマーケティングになっている可能性があるのです。

そこで重要になるのが、顧客の声を聞くだけで終わらせず、対話を通じて価値を一緒に育てていく 共創マーケティングという考え方です。

数値を見ることと、数値で決めることは違う

売上、利益率、客数、購入頻度、リピート率。 これらの数値は、経営に欠かせない大切な情報です。

ただし、数値はあくまで結果を確認するための通知表です。 「なぜその数字になったのか」を考える材料であって、顧客不在の意思決定を正当化するものではありません。

数値を目的にした経営

利益率が高いものを売る。回転率を上げる。短期的に売上をつくる。 一見合理的でも、顧客にとっての価値が置き去りになりやすい。

顧客価値を目的にした経営

顧客が何に困り、何を良くしたいのかを起点にする。 結果として支持され、売上や利益が後からついてくる。

数値を見て改善することは必要です。 しかし、数値を上げることだけを目的にすると、手段と目的が入れ替わります。

本来、商品やサービスは顧客の暮らしや仕事を良くするための手段です。 ところが企業側が「売ること」を目的にしてしまうと、顧客にとっては企業の都合が透けて見えます。

現代の生活者は、その違和感にとても敏感です。 ネット上で情報を比較し、口コミを読み、自分の意見を発信することもできます。 だからこそ、見せかけの販売テクニックだけでは、長く支持されることは難しくなっています。

問い直すべきなのは、「何を売るか」だけではなく、「誰のどんな良い状態に貢献するのか」です。

共創マーケティングとは?──“売る”から“一緒につくる”へ

共創マーケティングとは、企業と顧客が対等なパートナーとして関わり、商品やサービスの価値を一緒につくりあげていくマーケティングの考え方です。

従来のマーケティングでは、企業がターゲットを設定し、ニーズを分析し、それに合わせて商品を提供する流れが中心でした。 もちろん、この考え方にも意味があります。

しかし、生活者の価値観が多様化し、「これが欲しい」と明確に言語化されていない時代には、企業側の分析だけでは見えないことが増えています。

共創マーケティングでは、顧客を単なる購買対象としてではなく、価値を一緒に育てる参加者として捉えます。

  • 開発段階で生活者の声を聞く
  • 試作品を使ってもらい、違和感や使い方を確認する
  • 店頭や暮らしの場面で、どのように選ばれているかを観察する
  • 商品コンセプトや伝え方を、生活者の言葉から見直す
  • 改善した内容を共有し、さらに反応を聞く

つまり、共創マーケティングは「顧客の声を聞きました」で終わる活動ではありません。 顧客の声を起点に、商品、売り場、伝え方、使われ方を見直し、価値を一緒に育てていくプロセスです。

このアプローチは、特に中小企業や地域企業、ニッチな商品を扱う企業にとって、大きな武器になります。 大量広告で勝つのではなく、顧客との近さを活かして「選ばれる理由」を磨けるからです。

独りよがりマーケティングの特徴と落とし穴

独りよがりのマーケティングは、決して悪意から生まれるわけではありません。 むしろ、多くの場合は「良いものをつくりたい」「自社の商品をもっと知ってほしい」という真面目な思いから始まります。

しかし、顧客の暮らしや使用場面から離れたまま考え続けると、少しずつズレが生まれます。

① 顧客の使い方を想定していない

企業が想定している使い方と、顧客が実際に使う場面が違っていることはよくあります。 企業側は「便利な機能」だと思っていても、生活者にとっては使いにくい、面倒、必要性を感じないということもあります。

② 売る側の“こだわり”が強すぎる

開発者や作り手のこだわりは大切です。 しかし、そのこだわりが顧客にとっての価値と一致していなければ、単なる作り手都合になってしまいます。 機能を詰め込みすぎる、専門的すぎる、説明しないと良さが伝わらない商品は、この落とし穴に入りやすくなります。

③ 顧客の声を聞いたつもりになっている

アンケートを取った、レビューを見た、営業担当から話を聞いた。 それだけで「顧客理解ができている」と考えてしまうことがあります。 しかし、本音や背景は、数字や短いコメントだけでは見えにくいものです。

④ 数値の改善が目的になっている

売上を上げる、利益率を高める、在庫を減らす。 これらは経営上必要なことですが、それ自体が目的になると、顧客にとっての価値が後回しになります。 その結果、「売りたいものを売る」発想が強くなり、顧客との距離が開いていきます。

独りよがりから抜け出すには、顧客の声を単なる確認材料として扱うのではなく、自社の商品やサービスの意味を見直すきっかけとして受け止めることが大切です。

共創マーケティングが顧客の声をどう活かすのか?

顧客の声を活かすというと、アンケート結果を集計したり、要望をそのまま商品に反映したりすることをイメージするかもしれません。

しかし、共創マーケティングで大切なのは、声をそのまま採用することではありません。 その声の奥にある理由や背景を読み解き、商品やサービスの価値を高めることです。

ステップ1:声を「拾う」──直接対話・観察・共感

まずは、生活者の声に触れる機会を増やします。 アンケートだけではなく、対話や観察を通じて、言葉になりきらない違和感や期待を拾っていきます。

  • 購入者へのヒアリング
  • 店頭での行動観察
  • 買い物同行による選び方の確認
  • SNSの投稿やレビューの読み解き
  • 営業や店頭スタッフが聞いた小さな声の共有

ステップ2:声を「深める」──なぜそう感じたのかを探る

「かわいい」「使いやすい」「ちょっと違う」「なんとなく好き」。 生活者の言葉は、必ずしも論理的に整理されているわけではありません。 だからこそ、「なぜそう思ったのか」「どんな場面でそう感じたのか」を深掘りする必要があります。

ステップ3:声を「育てる」──共創ワークショップや座談会

一人の声をきっかけに、複数の生活者と対話することで、共通する感覚や新しい発見が見えてきます。 企業側の仮説と生活者の実感を重ね合わせることで、商品やサービスの改善ポイントがより具体的になります。

ステップ4:声を「形にする」──商品・売り場・伝え方に反映する

  • プロトタイプや試作品に反映する
  • パッケージやネーミングを見直す
  • 売り場での見せ方を変える
  • 商品説明を生活者の言葉に近づける
  • 改善内容を発信し、声をくれた顧客に共有する

重要なのは、顧客の声を「意見」として処理するのではなく、価値を育てるための材料として扱うことです。

顧客の声は、ときに断片的です。 矛盾しているように見えることもあります。 しかし、その奥には、暮らしの中で感じている不便、不安、期待、喜びが隠れています。

共創マーケティングとは、顧客の声を集める活動ではなく、顧客の声から「選ばれる理由」を一緒に育てる活動です。

成功事例:生活者と開発した「本当に使いたい歯ブラシ」

たとえば、ある若手起業家が立ち上げた歯ブラシブランドでは、立ち上げ当初から「共創」をブランドの核に据えていました。

市販の歯ブラシに対して、生活者からはさまざまな声がありました。

  • 毛が硬すぎて歯ぐきが痛い
  • 持ち手が滑りやすくて使いづらい
  • 毎日使うものなのに、気分が上がらない
  • パッケージのごみが気になる

こうした生活者のリアルな声を、ひとつひとつ丁寧に拾い、改良を重ねていきました。

主な改良ポイント:

  • 歯ぐきを傷つけにくい、超極細毛ブラシを採用
  • 滑りにくく手にフィットするラバーグリップ設計
  • 毎日使いたくなるデザイン性の向上
  • プラごみを減らす、環境に配慮した簡易包装

さらに、開発過程をオープンに共有しながら、生活者と継続的に対話しました。

「改良前と後でどこが違うか」 「どのパッケージなら手に取りたくなるか」 「毎日使うものとして、どんな気持ちになりたいか」

こうした問いかけを重ねることで、商品だけでなく、ブランドに対する共感の輪も広がっていきました。

その結果、発売前から熱量の高い“共創ファン”が生まれ、初回ロットは好調な反応を得ることができました。

この事例からわかるのは、顧客の声を活かすとは、単に要望を聞いて商品に足すことではないということです。

顧客の声を通じて、商品が生活の中でどんな意味を持つのかを見直し、企業と顧客の目的を近づけていくこと。 それが共創マーケティングの本質です。

共創を取り入れるために、まずできること

共創マーケティングというと、大がかりなプロジェクトを想像するかもしれません。 しかし、最初から大きく始める必要はありません。

むしろ大切なのは、日々の顧客接点の中にある小さな声を見逃さないことです。

小さな声に耳を傾ける

店頭での会話、問い合わせ、SNSのコメント、営業先での雑談などに、改善のヒントがあります。

話せる場をつくる

座談会、モニター会、常連顧客との対話など、率直に話してもらえる場をつくります。

小さく形にする

限定商品、試作品、売り場改善など、すぐ試せる範囲から反映し、反応を確認します。

最初の一歩は、「顧客に聞く」ではなく「顧客と考える」こと

顧客に聞くことは大切です。 しかし、質問票を渡して回答を集めるだけでは、表面的な情報で終わってしまうことがあります。

本当に大切なのは、顧客の言葉をきっかけにして、企業側も一緒に考えることです。 なぜそう感じたのか。 どんな場面で困っているのか。 どんな表現なら伝わるのか。

この対話の中で、企業が見落としていた価値の芽が見えてきます。

顧客の声を商品企画や改善にどうつなげるかを、全体の流れで整理して読みたい方は、 顧客の声を“当たり商品”につなげる方法|「聞くだけ」で終わらせない商品企画の進め方 もあわせてご覧ください。

顧客の声は、企業と顧客の目的のズレを直す手がかり

顧客の声を聞く意味は、単に商品改善のアイデアを得ることだけではありません。

もっと大きな意味では、企業と顧客の目的のズレを確認することにあります。

企業は、つい「どう売るか」を考えます。 しかし顧客は、「これを買うことで自分がどう良くなるか」を見ています。

企業は商品を見ています。 顧客は、その商品を使った後の自分の状態を見ています。

この違いを理解しないまま販促だけを強めても、顧客の心には届きません。 かえって「売り込みが強い」「企業側の都合を感じる」と受け止められることもあります。

だからこそ、顧客の声を聞くことは、単なる調査ではなく、自社の商売の向きが顧客の幸福や成功に向いているかを確かめる機会でもあります。

数値は経営の通知表です。
顧客の声は、進む方向を見失わないための現場のサインです。

売上や利益は大切です。 しかし、それは顧客にとっての価値が生まれた結果として得られるものです。

先に利益を目的にすると、顧客との距離が開く。 先に顧客の成功や幸福を目的にすると、結果として支持が生まれる。

この順番を間違えないことが、これからの商売ではますます重要になります。

まとめ:独りよがりから抜け出すには、「対話」と「共感」が鍵

売れない原因は、必ずしも商品そのものの欠陥とは限りません。

「誰のために、どんな価値を届けたいのか」 「顧客は、その商品によってどんな良い状態になりたいのか」 「企業が売りたい理由と、顧客が買いたい理由は重なっているのか」

ここが曖昧なままでは、どれだけ良い商品でも、顧客の心には届きにくくなります。

共創マーケティングは、顧客と一緒に「欲しいと思える商品」「応援したくなるブランド」「選ばれる理由」を育てていくアプローチです。

小さな声に耳を傾けるところから、共創は始まります。 それは、たったひとつの声を起点に、大きなファンづくりへとつながる可能性を秘めています。

今、必要なのは“もっと売る”ことだけではありません。

本当に必要なのは、“もっと聴く”こと。 そして、顧客にとっての価値を一緒に見つけ直すことです。

「売れない原因が、独りよがりかもしれない」と感じたら

「自信を持って出したのに反応が弱い」 「顧客の声は聞いているつもりでも、企画や売り方に活かしきれていない」 「売上や利益を追うほど、顧客との距離が開いている気がする」 そんな段階でも大丈夫です。

こらぼたうんでは、生活者との対話設計声の拾い方・読み解き方次の改善や商品企画へのつなぎ方まで、 状況に合わせて一緒に整理しています。

※ 「売れない理由を整理したい」「顧客の声をどう活かせばよいか見直したい」「自社都合の商品企画になっていないか確認したい」といった初期段階のご相談にも対応しています。

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