実務の位置づけは 価値共創マーケの基本と導入ガイド をご参照ください。
ターゲットもポジショニングも決めたのに
ターゲットは明確にした。
ペルソナも作った。
競合との違いも整理した。
それでも、商品の反応が弱い。
会議では、こんな話が出ます。
「ターゲットをもっと絞った方がいいのでは」
「若い人向けに表現を変えよう」
「競合より分かりやすい違いが必要だ」
しかし、ターゲットを細かく設定し直しても、状況が変わらないことがあります。
その原因は、STP戦略そのものではなく、
社内で決めた顧客像を、実際の生活者の行動や言葉で確かめていないこと
にあるかもしれません。
この記事で考えること
- STP戦略を立てても選ばれない理由
- 企業が想定する顧客像と、実際の生活者とのズレ
- STPを生活者の現実に合わせて更新する方法
1. ターゲットを決めたのに、なぜ選ばれないのか
STP戦略は、「誰に」「どのような価値を」「どんな立ち位置で届けるか」を整理するための基本的な考え方です。
しかし、STPを決めたことと、生活者が実際に選ぶ理由を理解できたことは同じではありません。
よく起きる状態
- ターゲットに合わせて商品を作ったのに、反応が弱い
- 広告は見られているのに、購入につながらない
- 想定していなかった人が購入している
- 競合との違いは説明できるのに、選ばれる理由が弱い
- ペルソナに合わせた表現が、実際の顧客には響かない
このとき、STPをさらに細かく作り直す前に、 現在の顧客仮説が実際の選択行動と合っているかを確かめる必要があります。
2. STP戦略とは何か
STPは、次の3つの頭文字を取ったマーケティングのフレームワークです。
Segmentation|市場を分ける
年齢、地域、行動、価値観などの違いから、市場をいくつかの集団へ整理します。
Targeting|届ける相手を決める
どの市場や顧客層へ優先的に届けるのかを決めます。
Positioning|選ばれる立ち位置を決める
競合と比べたとき、どのような価値で認識されたいかを整理します。
STPは、限られた資源をどこへ集中させるかを考えるうえで、今も有効です。
大切なのは、STPを「事実」ではなく「仮説」として扱うこと
STPは市場や顧客を整理するための見取り図です。
実際の生活者を完全に表すものではありません。
3. STPは顧客の現実ではなく、企業側の仮説
企業が作るターゲット像やペルソナは、 調査データ、営業情報、過去の顧客、社内の経験などをもとに作られます。
それ自体は必要な作業です。 ただし、一度作った顧客像が社内で共有されると、 いつの間にか「仮説」ではなく「顧客はこういう人だ」という事実のように扱われることがあります。
顧客像が固定されると起きること
- 1 顧客の発言を、ペルソナに合うように解釈する
- 2 想定外の購入者を「例外」として扱う
- 3 設定したターゲットに合わない意見を軽視する
- 4 商品を使う場面や選び方の変化を見落とす
市場も生活者も変化します。 STPも、一度決めて終わりではなく、現実に合わせて更新する必要があります。
4. STPと現実がずれる4つの理由
理由1|属性を、選ぶ理由だと思ってしまう
「30代女性」「子育て世帯」は分類です。 同じ属性でも、使う場面、困りごと、優先順位は異なります。
理由2|顧客像を一度決めたまま更新しない
商品を見せたとき、売り場へ置いたとき、 実際に使われたときの反応が反映されていません。
理由3|顧客の発言を答えとして扱う
「安い方がいい」「軽い方がいい」という言葉の背景を掘り下げず、 そのまま仕様へ置き換えます。
理由4|競合との違いを選ぶ理由だと思う
他社と違っていても、 生活者の暮らしに関係のない違いであれば選ばれません。
STPが機能しないのではありません
STPを支える顧客理解が、社内で作った仮説のまま止まっていることが問題です。
5. 実際に「選ぶ人」は誰なのか
商品を買う人と、選択に影響する人と、実際に使う人が同じとは限りません。
企業が購入者だけを見てターゲットを設定すると、 実際の意思決定に関わる人を見落とすことがあります。
ターゲットを見直すときは、年齢や性別だけでなく、 購入、選択、使用に誰が関わっているのかを確認する必要があります。
6. 同じ人でも、場面によって選び方は変わる
同じ人でも、いつ、どこで、誰と使うかによって、商品の評価は変わります。
自宅用なら量を重視し、贈答用なら見た目を重視する。
一人で食べるときと、家族で分けるときでは、価格の受け止め方も変わります。
「30代女性」や「健康志向層」という分類だけでは、 こうした場面による変化は捉えにくくなります。
ターゲットを考えるときは、 誰かだけでなく、どんな場面かまで具体的にすることが大切です。
7. 社内だけでは顧客像を更新しにくい理由
社内で顧客理解を深めようとしても、企業の中にいるからこそ見えにくいことがあります。
商品知識が解釈の枠になる
開発背景や機能を知っているため、 顧客の発言を自社に都合よく解釈しやすくなります。
企業が用意した選択肢で聞く
A案かB案かを聞くと、 企業が決めた枠の中でしか答えが返ってきません。
部門ごとに見ている顧客が違う
営業、企画、開発、経営が、 それぞれ別の情報をもとに顧客像を描いています。
必要なのは、社外の正解をもらうことではありません
企業側も実際の生活者と同じ場面を見て、 自分たちの仮説と現実のズレを確認することです。
8. STPを生活者の現実に合わせて更新する4つの手順
-
1
STPを仮説として整理する
誰に、どんな場面で、どのような価値を届ける想定なのかを言葉にします。
-
2
実際の生活者の行動を確かめる
買う人、使う人、影響する人が想定どおりか、 売り場や使用場面で確認します。
-
3
ズレを商品・言葉・売り場に分ける
顧客像が違うのか、価値が伝わっていないのか、 購入場面が違うのかを切り分けます。
-
4
小さく試し、STPを更新する
ターゲット、価値提案、表現、売り場を修正し、 反応を見ながら再び仮説を更新します。
生活者との対話や観察は、STPの代わりではありません
STPで整理した仮説を、生活者の現実に近づけるための確認方法です。
フレームワークを捨てるのではなく、現場の反応で更新し続けます。
9. まとめ|更新されないSTPに限界がある
この記事の要点
- STPは今も有効なマーケティングの基本フレーム
- STPは顧客の現実ではなく、企業側が作る仮説
- 属性と選ぶ理由を混同すると、顧客像が浅くなる
- 買う人、使う人、影響する人は同じとは限らない
- 同じ人でも、場面によって選び方や評価は変わる
- 生活者の行動を確認し、小さく試しながらSTPを更新する
STP戦略そのものが限界なのではありません。
一度作ったターゲットやポジショニングを、 顧客の現実そのものとして扱い続けることに限界があります。
市場を整理し、仮説を作る。
実際の生活者の行動や場面を確かめる。
そのズレから、商品や伝え方を修正する。
この循環によって、STPは社内資料の中にある顧客像ではなく、 実際に選ばれる価値を考えるための生きた仮説になります。
ターゲットは決めた。でも、なぜ反応が弱いのか分からない。
STPもペルソナも整理した。
競合との違いも言葉にした。
それでも、生活者の反応が想定と違う。
そのような段階から、 現在の顧客仮説と実際の選択行動を照らし合わせ、 商品・伝え方・売り場のどこを見直すべきかを一緒に整理します。
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