ペルソナ設定の時代は本当に終わったのか?生活者を固定せず、理解を更新し続ける共創マーケティングの視点

生活者理解のアップデート

「ペルソナ設定の時代は終わった」。 マーケティングの現場では、時々このような言葉を耳にします。

たしかに、年齢、性別、職業、家族構成、年収、趣味、ライフスタイルなどを細かく設定し、 ひとりの架空の顧客像を作り込む従来型のペルソナ設定には、限界が見え始めています。

しかし、本当にペルソナ設定そのものが終わったのでしょうか。 こらぼたうんでは、少し違う見方をしています。

ペルソナ設定の時代が終わったのではありません。

終わったのは、生活者を固定的な人物像に押し込め、その像を正解のように扱う考え方です。

これからは、データと対話を行き来しながら、顧客理解を更新し続ける時代です。

ペルソナ設定はなぜ広がったのか

そもそもペルソナ設定は、マーケティングや商品開発において、とても有効な考え方でした。

「誰に向けた商品なのか」
「どんな人に使ってほしいのか」
「どんな悩みを持つ人に届けたいのか」

こうした問いに対して、社内で共通の顧客像を持つために、ペルソナは役立ちます。

たとえば、商品企画の担当者、営業担当者、広告担当者、デザイナー、開発担当者が、 それぞれ違う顧客像を思い浮かべていたら、商品やサービスの方向性はぶれてしまいます。

ある人は「価格に敏感な人」を想定し、別の人は「品質を重視する人」を想定し、 さらに別の人は「流行に敏感な人」を想定している。 この状態では、商品づくりも、広告表現も、売り場づくりも、統一感を失いやすくなります。

ペルソナ設定は、そうした社内のズレを減らすための道具でした。

ペルソナ設定の本来の役割は、生活者を決めつけることではありません。 「私たちは誰のために考えているのか」を社内で共有し、顧客視点に立ち戻るための補助線です。

その意味で、ペルソナ設定には今でも価値があります。 問題は、ペルソナを作ることそのものではありません。 問題は、作ったペルソナを固定し、生活者をその中に閉じ込めてしまうことです。

従来型ペルソナが限界を迎えた理由

従来型のペルソナ設定では、よく次のような情報が設定されます。

年齢、性別、職業、年収、家族構成、居住地、趣味、休日の過ごし方、価値観、悩み、情報収集の方法。

もちろん、これらの情報はまったく無意味ではありません。 しかし、これだけで生活者の選択を理解できるほど、今の消費行動は単純ではなくなっています。

同じ30代女性でも、価値観は大きく異なります。 同じ子育て世帯でも、暮らし方や買い物の基準は違います。 同じ中小企業の経営者でも、価格を重視する人もいれば、信頼関係を重視する人もいます。

さらに、同じ人であっても、状況によって選び方は変わります。

従来型の見方

  • 30代女性
  • 既婚
  • 子どもあり
  • 健康志向
  • 価格にも敏感

これから必要な見方

  • 今日は誰のために買うのか
  • どんな気分で選んでいるのか
  • 何と比較して迷っているのか
  • 何が不安で手が止まるのか
  • どんな言葉なら自分ごとになるのか

忙しい日には手軽さを重視する。 疲れている日には気分が上がるものを選ぶ。 家族と一緒のときには無難なものを選ぶ。 自分ひとりのときには少し冒険する。 誰かに贈るときには、話題性や意味を重視する。

このように、生活者の選択は属性だけでは説明できません。

大切なのは、その人がどんな属性かだけではなく、 どんな状況で、どんな気持ちで、何を期待して選んでいるのか という文脈です。

従来型のペルソナは、この文脈を十分に捉えきれないことがあります。 だから「ペルソナ設定の時代は終わった」と言われるのです。

しかし正確に言えば、終わったのはペルソナではなく、 属性中心で生活者をわかったつもりになることです。

固定されたペルソナ設定から、データ・対話・観察・共創を通じて生活者理解を更新していく考え方を比較して示したグラフィックレコーディング
固定されたペルソナで生活者を捉えるのではなく、データ・対話・観察・共創を通じて理解を更新し続けることが重要です。

生活者は「属性」ではなく「文脈」の中で選んでいる

こらぼたうんが大切にしているのは、生活者を「消費者」や「ターゲット」としてだけ見ないことです。

生活者は、ただ商品を買う人ではありません。 暮らしの中で迷い、選び、使い、感じ、誰かに話し、時には不満を持ち、時には応援してくれる存在です。

商品は、売り場で単独で選ばれているように見えて、実際には生活の文脈の中で選ばれています。

たとえば、ある食品を選ぶとき。 価格だけで選んでいるとは限りません。 味だけで選んでいるとも限りません。

「今日は疲れているから簡単に済ませたい」
「子どもが食べてくれそうなものがいい」
「少し罪悪感が少ないものを選びたい」
「冷蔵庫にあるものと合わせやすいものがいい」
「売り場で見たときに、なんとなく気分に合った」

こうした小さな理由が重なって、選択が生まれます。

しかし、ペルソナシートの中に「35歳、女性、既婚、子どもあり、健康志向」と書いただけでは、 この微妙な気持ちの揺れまでは見えてきません。

だからこそ、生活者理解には、属性だけではなく文脈が必要です。

どこで選ぶのか。 誰のために選ぶのか。 何と比較しているのか。 どんな気分のときに手に取るのか。 買ったあと、どんな場面で使うのか。 誰に話したくなるのか。

このような文脈を見ることで、初めて「選ばれる理由」が見えてきます。

データは重要。でも、データだけでは見えないものがある

現代のマーケティングでは、データ活用が欠かせません。

Webサイトのアクセス解析、購買履歴、検索キーワード、SNS投稿、口コミ、レビュー、 広告のクリック率、メールの開封率、問い合わせ内容など、企業は以前よりも多くの情報を得られるようになりました。

AIや分析ツールを使えば、膨大なデータから傾向を見つけることもできます。 これは非常に大きな進歩です。

データを見ることで、思い込みを減らすことができます。 どのページが読まれているのか。 どの商品が比較されているのか。 どのタイミングで離脱しているのか。 どんな言葉に反応しているのか。

こうした行動の事実は、マーケティングの精度を高めるうえで欠かせません。

しかし、データだけでは見えにくいものもあります。

たとえば、ある商品ページを見た人が、購入せずに離脱したとします。 データ上では、「閲覧したが購入しなかった」とわかります。 しかし、その理由はデータだけでは断定できません。

価格が高いと感じたのかもしれません。 違いがわからなかったのかもしれません。 今すぐ必要ではなかったのかもしれません。 家族に相談しようと思ったのかもしれません。 他社商品と比べるために離れたのかもしれません。

数字は行動を教えてくれます。 でも、その行動の背景にある気持ちや迷いまでは、数字だけでは見えにくいのです。

だからこそ、データと対話の両方が必要になります。

1 データで見る 行動・反応・傾向を把握する
2 対話で知る 迷い・感情・背景を聞く
3 観察でつかむ 売り場や暮らしの文脈を見る
4 共創で変える 価値や伝え方に反映する

この行き来が、これからの顧客理解には欠かせません。

ペルソナは「完成品」ではなく「仮説」である

これからのペルソナ設定で大切なのは、ペルソナを完成品として扱わないことです。

一度作ったペルソナを「この人が私たちの顧客です」と固定してしまうと、顧客理解は止まってしまいます。

本来、ペルソナは仮説です。

「今のところ、私たちはこのような人に価値を届けられるのではないか」
「この人は、こういう場面で困っているのではないか」
「この人には、こういう言葉が届くのではないか」

このような仮説として捉えるべきものです。 そして仮説である以上、検証が必要です。

実際の顧客の声を聞く。 売り場での反応を見る。 問い合わせ内容を確認する。 使っている場面を観察する。 購入前後の迷いや不安を聞く。 広告への反応を分析する。 想定と違っていた部分を見直す。

こうして、ペルソナは更新されていきます。

つまり、これからのペルソナは、作って終わりではありません。 生活者との接点を通じて、育て直していくものです。

こらぼたうんの視点で言えば、ペルソナ設定とは、生活者を決めつける作業ではなく、 生活者理解を深めるための出発点です。

「ターゲット」ではなく「共創パートナー」として見る

従来のマーケティングでは、顧客を「ターゲット」と呼ぶことが多くありました。

ターゲットとは、狙う対象です。 広告を届ける対象。 商品を買ってもらう対象。 売上をつくる対象。

もちろん、マーケティング上、誰に届けるのかを明確にすることは必要です。

しかし、価値共創マーケティングの視点では、顧客を単なるターゲットとしてだけ見るのではなく、 価値を一緒に育てるパートナーとして捉えます。

生活者は、企業がまだ気づいていない使い方を知っています。 企業が想定していない不満を持っています。 企業が見落としている選び方をしています。 企業が言語化できていない価値を感じ取っていることもあります。

だから、生活者の声は、単なる意見や感想ではありません。 商品やサービスをより良くするためのヒントであり、選ばれる理由を育てるための材料です。

ペルソナを作ることは、生活者を分類することではありません。 本来は、生活者に近づくための手段です。

しかし、ペルソナを作ったことで「顧客のことはわかった」と思ってしまうと、 かえって生活者から遠ざかってしまいます。

大切なのは、ペルソナを持ちながらも、実際の生活者に会い、話を聞き、反応を見て、 必要に応じて見直していくことです。

共創マーケティングでは、ペルソナをどう活かすのか

では、価値共創マーケティングでは、ペルソナをどのように活かせばよいのでしょうか。

まず、最初の仮説として使うことです。

商品やサービスを考えるとき、まったく顧客像がない状態では議論が散らばります。 そのため、最初に「誰のどんな悩みに向き合うのか」を仮説として置くことは有効です。

ただし、その仮説は固定しません。 次に、生活者との対話で確かめます。

想定した悩みは本当にあるのか。 その悩みはどのくらい切実なのか。 企業が考えている価値は、生活者にとっても価値なのか。 伝え方は自然か。 違和感はないか。 実際の暮らしの中で使う場面はあるのか。

こうした問いを、生活者との対話や観察を通じて確認します。

そして、得られた気づきをもとに、ペルソナを更新します。

「想定していた年齢層とは少し違った」
「価格よりも安心感を重視していた」
「機能よりも使う場面のイメージが重要だった」
「本人よりも家族の反応が選択に影響していた」
「買う理由より、買わない理由の方が重要だった」

こうした発見が、商品開発や売り場づくり、広告表現の改善につながります。

つまり、共創マーケティングにおけるペルソナは、固定された設計図ではありません。 生活者との対話を通じて更新される、仮説の地図です。

「ひとりの人物像」よりも「状況の解像度」が大切になる

これからの顧客理解では、ひとりの人物像を細かく作ること以上に、状況の解像度が重要になります。

たとえば、同じ人でも次のように状況が変われば、選び方は変わります。

  • 急いでいるとき
  • じっくり選べるとき
  • 自分のために買うとき
  • 家族のために買うとき
  • 誰かに贈るとき
  • 失敗したくないとき
  • 少し冒険したいとき
  • いつもの安心を求めるとき
  • 新しい気分を求めるとき

このような場面の違いを見ると、年齢や性別だけでは見えなかった選択の理由が見えてきます。

商品開発やマーケティングで本当に必要なのは、 「この人は何歳か」だけではありません。

「この人は、どんな場面で困るのか」
「どんな気持ちのときに選ぶのか」
「何が不安で、何が背中を押すのか」
「どんな言葉なら、自分ごととして受け取れるのか」

こうした状況の理解です。 ペルソナ設定を続けるなら、プロフィールを細かくするだけではなく、 生活場面や選択の文脈を丁寧に描く必要があります。

生活者理解は、社内の思い込みをほどく

ペルソナ設定には、社内の目線を合わせる効果があります。 しかし一方で、社内の思い込みを強めてしまう危険もあります。

「この商品は若い女性向けだ」
「この層は価格に敏感だ」
「この人たちは機能を重視するはずだ」
「このターゲットにはこの表現が刺さるはずだ」

こうした思い込みは、会議室の中ではもっともらしく聞こえます。

しかし実際に生活者と話してみると、まったく違う反応が返ってくることがあります。

企業側が強みだと思っていたことが、生活者には伝わっていない。 逆に、企業側があまり重視していなかった部分に、生活者が価値を感じている。 想定していた利用シーンとは違う場面で使われている。 価格が問題だと思っていたら、本当は違いが伝わっていないことが問題だった。

こうした発見は、ペルソナシートを見ているだけではなかなか得られません。

生活者と向き合うことで、社内の思い込みがほどけます。 そして、商品やサービスの見方が変わります。

これが、こらぼたうんが大切にしている共創の価値です。

ペルソナを超えて、選ばれる理由を育てる

これからのマーケティングで重要なのは、顧客を細かく分類することだけではありません。

それ以上に大切なのは、生活者との関係の中で、選ばれる理由を育てていくことです。

なぜ、この商品を選ぶのか。 なぜ、他社ではなくこの会社なのか。 なぜ、少し高くても買いたいと思うのか。 なぜ、誰かに話したくなるのか。 なぜ、また使いたいと思うのか。

これらの理由は、企業側が一方的に決めるものではありません。 生活者との接点の中で見えてくるものです。

商品を使った感想。 売り場での迷い。 パッケージを見たときの印象。 説明を聞いたときの反応。 使った後の小さな不満。 誰かにすすめるときの言葉。

こうしたひとつひとつの反応が、選ばれる理由を育てる材料になります。

ペルソナは、その入口として役立ちます。 しかし、ペルソナだけでは、選ばれる理由は完成しません。

選ばれる理由は、生活者との対話を通じて磨かれていきます。

まとめ:ペルソナ設定の時代が終わったのではない

「ペルソナ設定の時代は終わった」と言われる背景には、たしかに理由があります。

顧客ニーズは多様化しています。 購買行動は複雑になっています。 AIやデータ活用によって、顧客行動をより細かく把握できるようになりました。 属性だけで顧客を捉えることは、以前よりも難しくなっています。

しかし、だからといってペルソナ設定が完全に不要になったわけではありません。

この記事の要点

  • ペルソナ設定そのものが終わったわけではない
  • 終わったのは、生活者を固定的な人物像に押し込める考え方
  • ペルソナは正解ではなく、顧客理解のための仮説
  • これからは、データと対話を行き来しながら顧客理解を更新することが重要
  • 共創マーケティングでは、生活者をターゲットではなく共創パートナーとして捉える

終わったのは、ペルソナ設定そのものではありません。 終わったのは、生活者を固定的な人物像に押し込める時代です。

これから必要なのは、ペルソナを正解として扱うことではなく、仮説として持つこと。 そして、データと対話を行き来しながら、生活者理解を更新し続けることです。

データで行動を見る。 対話で背景を知る。 観察で文脈をつかむ。 共創で価値に変える。

その積み重ねによって、企業は生活者に近づくことができます。

ペルソナは、生活者を決めつけるためのものではありません。 生活者に近づくための入口です。

そして、価値共創マーケティングは、その入口からさらに一歩進み、 生活者とともに選ばれる理由を育てていくための実践です。

ペルソナ設定の時代が終わったのではなく、
生活者を固定的な人物像に押し込める時代が終わった。

これからは、データと対話を行き来しながら、顧客理解を更新し続ける時代です。

生活者理解を、机上のペルソナで終わらせないために

こらぼたうんでは、生活者との対話や観察を通じて、 商品・サービス・売り場・伝え方を一緒に見直す 価値共創マーケティングの実践支援を行っています。

ペルソナを作って終わりにするのではなく、 生活者の声や文脈から「選ばれる理由」を育てたい方は、お気軽にご相談ください。

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