商品開発では「まず顧客ニーズを把握しよう」とよく言われます。 使う人の困りごとや要望を知ることは、もちろん大切です。
ところが、顧客の声を聞き、改善を続けているのに、なぜか商品が選ばれない。 そんなことも起こります。
そこで考えたいのが、顧客が口にした要望に応えることと、顧客と一緒に新しい価値を見つけることは、必ずしも同じではないという点です。 この記事では、その違いを現場の事例とともに考えます。
1.顧客ニーズを把握しているのに、なぜ商品が売れないのか
「もう少し使いやすくしてほしい」「価格を抑えてほしい」「こんな機能が欲しい」。 顧客から寄せられる声には、商品をよくするための大切なヒントがあります。
ただし、その要望を一つひとつ商品に盛り込めば、必ず選ばれるようになるとは限りません。 改善を重ねた結果、機能は増えたけれど特徴が伝わりにくくなったり、競合商品と似たものになってしまったりすることもあります。
大切なのは、顧客の声を軽視することではありません。 その言葉が、どんな暮らしや困りごとから生まれたのかを理解することです。
2.顧客ニーズを追うだけでは足りない3つの理由
理由1.要望を満たしても、選ばれる理由になるとは限らない
使いやすさや安全性は、商品によっては欠かせない価値です。 しかし、競合も同じように改善を進めている場合、要望への対応だけでは違いが伝わりにくくなります。 生活者が「これがいい」と感じる理由は、機能だけでなく、使う場面や気持ちにも関わっています。
理由2.顧客自身も、求めていることを言葉にできない場合がある
「もっと便利にしてほしい」という言葉の奥には、「片づけるときが面倒」「家族と一緒に使いにくい」といった、より具体的な事情があるかもしれません。 要望をそのまま採用する前に、その言葉が出た理由をたどることが重要です。
理由3.今ある要望だけでは、新しい使い道を見落とすことがある
顧客への質問が既存の商品や使い方を前提としていると、まだ経験したことのない用途や可能性は、なかなか話題に上がりません。 企業が持つ技術や素材と、生活者の自由な発想が出会うことで、初めて見えてくる選択肢もあります。
3.顧客の言葉の奥にある「本当に求めていること」を理解する
例えば「使いにくい」という声があったとき、すぐに操作方法や形状を変える前に、少し立ち止まってみます。
- どの場面で使いにくいと感じたのか
- そのとき、何をしようとしていたのか
- 普段はどのように工夫しているのか
- 使いやすくなったら、どんな時間や行動が生まれるのか
実際の使い方を見たり、何気ない会話を重ねたりすると、最初の言葉だけではわからなかった背景が見えてくることがあります。 これは、単に質問を増やすこととは違います。 生活者の暮らしの中に入り、商品がどんな意味を持っているかを理解していくことです。
そして、その発見を企業の技術や発想と重ねることで、商品そのものだけでなく、使い方や伝え方を見直す道も開けてきます。
4.現場ストーリー|新素材の使い道が家族との会話から広がった
現場ストーリー CASE015|新素材の用途探索
社内では出なかった使い道が、家族との会話から生まれました。
あるメーカーには、新しい特徴を持つ素材がありました。 技術的な性能はわかっていても、生活者の暮らしの中で、どのような商品や使い方につながるのかは、まだ決まっていませんでした。
そこで共創の場では、完成した商品案を示すのではなく、素材そのものに触れてもらうことから始めました。 さらに参加者にはサンプルや素材の特徴を持ち帰ってもらい、家族や友人との何気ない会話の中で「何に使えそうか」を考えてもらいました。
次のセッションに集まったのは、参加者一人ひとりの意見だけではありません。 子ども、高齢の家族、仕事をしている友人など、さまざまな立場から生まれた用途のアイデアでした。 その中には、社内で想定していた分野とは異なる方向の発想も含まれていました。
この事例で興味深いのは、既存の顧客ニーズを確認するだけではなく、企業の素材と暮らしの視点を持ち寄って、新しい使い道の可能性を広げたことです。
現場ストーリー CASE015を詳しく読むもちろん、新しいアイデアが生まれたことと、商品化や販売の成功は別です。 実現できるかどうかは、技術、コスト、市場性などをさらに確かめなければなりません。 それでも、企業の中だけでは出てこなかった発想に出会えたことは、次の検討を始める重要な材料になります。
5.価値共創マーケティングは、顧客と一緒に新しい価値を育てる
価値共創マーケティングは、顧客ニーズを否定する考え方ではありません。 ニーズを大切にしながら、顧客がすでに言葉にできていることだけに答えを限定しない取り組みです。
企業には、技術や経験、商品に込めた思いがあります。 一方、生活者には、日々の暮らしの実感や、企業が知らない使い方があります。 その両方を持ち寄るところから、新しい価値が見つかることがあります。
共創を商品開発につなげる流れ
- 1.対話する — 生活者の困りごとや関心だけでなく、その背景にある暮らしを知る。
- 2.発見を共有する — 企業が想定していなかった使い方や、違和感、期待を一緒に整理する。
- 3.一緒に考える — 企業の技術や強みと生活者の視点を重ね、可能性を広げる。
- 4.試して確かめる — 商品案、使い方、売り方、伝え方などに反映し、実際の反応を確かめる。
ここで大切なのは、生活者からアイデアを集めて終わりにしないことです。 企業の担当者自身が新しい見方に出会い、何を残し、何を変えるかを考え、行動へつなげていく。 その積み重ねが、一つの商品だけでなく、その後の商品づくりにも活きていきます。
すべてを大掛かりに始める必要はありません。 一つの素材、一つの商品、一つの疑問から生活者と考えてみることも、十分に意味のある第一歩です。
6.まとめ|顧客ニーズを入口に、その先の可能性を見つける
顧客ニーズを知り、不満や不便を改善することは、商品開発の大切な基本です。 しかし、顧客が話した要望をそのまま採用するだけでは、まだ見えていない価値を取りこぼしてしまうことがあります。
なぜその言葉が出たのか。どんな暮らしの中で使われるのか。 企業の技術や思いと重ねたとき、別の使い道は生まれないか。 こうした問いを生活者と一緒に考えることで、商品づくりの可能性が広がります。
顧客ニーズは、答えではなく、新しい価値を考え始めるための入口にもなる。 それが、こらぼたうんが大切にしている価値共創マーケティングの考え方です。
顧客の声を聞いているのに、次の企画につながらないときは
「調査はしているけれど、新しい発想が出てこない」 「顧客の要望を取り入れても、似たような商品になってしまう」。 そんなときは、今ある商品や企画を出発点に、生活者との関わり方から一緒に考えることもできます。
まだ具体的な依頼内容が決まっていない段階でも構いません。
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