プロセスエコノミーだけでは語れない、価値共創の意味

商品が完成するまでの試行錯誤や作り手の思いに価値を見いだす「プロセスエコノミー」。 その考え方は、商品や企業を応援したくなる理由を考えるうえで、とても重要です。 しかし、企業と生活者が一緒に価値を育てる価値共創は、単に過程を公開したり、物語として伝えたりすることだけではありません。

この記事の結論

プロセスエコノミーは、完成までの過程を価値として伝える考え方です。

一方、価値共創は、企業と生活者がその過程に一緒に関わり、商品・サービス・関係性・選ばれる理由そのものを育てていく実践です。

企業が自分たちの挑戦や苦労を発信し、その姿に生活者が共感する。それも大切な関係です。 けれど価値共創では、生活者は完成までの物語を見る人、応援する人にとどまりません。 企業と同じ場で話し、迷い、試し、気づきを持ち寄る共創パートナーになります。

この記事でわかること

  • プロセスエコノミーの意味と、注目される背景
  • プロセスエコノミーと価値共創の違い
  • 「過程を見せる」だけでは届かない価値
  • 生活者と一緒に考えることで、企業や商品に起きる変化

プロセスエコノミーとは?完成品だけでなく「過程」に価値を見いだす考え方

プロセスエコノミーとは、完成した商品やサービスだけでなく、そこへ至るまでの試行錯誤、挑戦、失敗、改善、作り手の思いなど、過程そのものに価値を見いだす考え方です。

従来、商品は主に品質、機能、価格といった完成後の条件で比較されてきました。 しかし、機能や品質だけでは違いを感じにくい商品が増えるなかで、「何をつくったか」だけでなく、 「なぜつくったのか」「どのような思いで取り組んだのか」「どんな壁を乗り越えてきたのか」も、人が選ぶ理由になっています。

開発途中の試作品、失敗から得た学び、作り手の迷い、改善を続ける姿、利用者とのやり取り。 こうしたものが単なる舞台裏ではなく、ブランドへの共感や愛着を生む内容として受け止められます。

完成したものだけを提示するより、そこに至る物語を知ることで、生活者は商品や企業を身近に感じます。 「この人たちを応援したい」「完成まで見届けたい」という気持ちが生まれることもあるでしょう。 この意味で、プロセスエコノミーは今の時代に合った重要な視点です。

プロセスエコノミーと価値共創の違い

プロセスエコノミーと価値共創には、どちらも「完成品だけではなく、そこに至る過程を大切にする」という共通点があります。 ただし、生活者がその過程にどのような立場で関わるかには大きな違いがあります。

プロセスエコノミーと価値共創を比較すると

「過程を見てもらう」のか、「過程そのものを一緒につくる」のかが、大きな分かれ目です。

比較項目 プロセスエコノミー 価値共創
価値の中心 完成までの過程や物語 企業と生活者が一緒に考え、育てる過程
企業が行うこと 挑戦、試行錯誤、思い、舞台裏を伝える 生活者との対話や観察を通じて、前提や企画を見直す
生活者の立場 見る人、共感する人、応援する人 気づきや経験を持ち寄る共創パートナー
生まれやすい価値 共感、愛着、応援、物語への参加意識 新しい気づき、納得感、信頼、改善、選ばれる理由
ひとことで言うと 過程を価値として伝える 過程を共につくり、価値そのものを育てる

価値共創では、生活者は企業が用意した物語の受け手ではありません。暮らしの経験や違和感、工夫、迷いを持ち寄り、企業と一緒に新しい価値を見つける側になります。

たとえば、企業が「このような苦労を重ねて商品を完成させました」と発信するのは、過程を価値として伝える取り組みです。 そこに共感が生まれ、ファンや応援者が増えることもあります。

一方、価値共創では、その商品を完成させる前から生活者が関わります。 企業が決めた答えに感想を求めるだけではなく、 「本当に困っていることは何か」「どこに使いにくさがあるのか」「企業が気づいていない価値は何か」を一緒に探ります。

価値共創は、過程を価値に変えるだけではなく、過程の中で価値そのものを共につくる営みです。

プロセスエコノミーだけでは価値共創を語り切れない3つの理由

プロセスエコノミーは価値共創と相性のよい考え方ですが、それだけで価値共創の意味を説明することはできません。 理由は、大きく3つあります。

1

生活者が「見る人」にとどまらない

価値共創では、生活者は完成までの様子を見守るだけでなく、自分の経験や感覚を持ち寄り、方向性を考える過程に参加します。

2

商品だけでなく企業の見方も変わる

対話から得られるのはアイデアだけではありません。企業が当然だと思っていた前提や、顧客の見方そのものが変わります。

3

関係性も価値として育っていく

一緒に考えた経験は、企業への理解や信頼につながります。商品と同時に、企業と生活者の関係も育っていきます。

1.生活者は、企業の物語を見る人ではなく共創パートナーになる

過程を公開するだけであれば、基本的に物語の中心は企業や作り手です。 生活者は、その物語を見て、共感し、応援します。

価値共創では、生活者も過程の当事者です。 商品を使う場面、買うときの迷い、日常の工夫、言葉になりにくい違和感などを持ち寄り、 企業担当者と同じ目線で考えます。

企業がつくった案に「賛成か反対か」を答えるだけではありません。 企業側がまだ気づいていない問いを一緒に見つけることが、共創の出発点になります。

2.過程の中で、企業自身の見方や前提が変わる

価値共創の大きな意味は、生活者からアイデアを集めることではありません。 企業が、自分たちの思い込みや前提に気づき、生活者の現実と出会い直すことにあります。

社内で長く商品を扱っていると、「この機能が強みだ」「顧客はここを評価するはずだ」といった見方が固まりやすくなります。 経験があるからこそ持てる判断軸ですが、その判断軸が強くなりすぎると、使う人の実感とのズレに気づきにくくなります。

生活者との対話では、企業がこだわっていた部分がほとんど伝わっていなかったり、 反対に、企業が当たり前だと思っていた小さな工夫が高く評価されていたりします。 このズレに出会うことで、商品を見る角度や伝えるべき価値が変わります。

3.商品と同時に、企業と生活者の関係性が育つ

価値共創では、一緒に考える過程そのものが、企業と生活者の距離を変えていきます。

企業担当者は、生活者を「市場」や「ターゲット」としてではなく、 具体的な暮らしを持つ一人の人として見るようになります。 生活者の側も、企業の担当者が何に悩み、何を良くしようとしているのかを知ります。

「売りたい企業」と「買う消費者」という関係だけでは見えなかった互いの姿が、対話によって少しずつ見えてきます。 この理解が、信頼や納得感、愛着の土台になります。

価値共創は、生活者からアイデアを集める方法ではない

価値共創という言葉から、「消費者参加型の商品開発」や「アイデア募集」を思い浮かべる方もいるでしょう。 それらも共創的な取り組みの一部ですが、価値共創の意味をアイデア収集だけで捉えると、本質を見失いやすくなります。

生活者は、企業が求める完成された答えをそのまま持っているわけではありません。 「こんな商品が欲しいですか」と尋ねても、既に知っている商品の延長線上で答えることが多く、 本当に必要としている価値がそのまま言葉になるとは限りません。

大切なのは、発言を要望として回収することではなく、 なぜそう感じたのか、どんな場面で困るのか、どのような工夫をしているのかを一緒に掘り下げることです。

共創の現場で起きる、小さくて大きな変化

企業側が「この機能が一番の魅力です」と説明したとき、生活者から「便利そうですが、私は出しておく場所に困りそうです」という一言が出ることがあります。

その発言を単なる否定意見として処理するのではなく、どこに置くのか、いつ使うのか、使わないときはどうするのかを尋ねていくと、 機能ではなく収納性や出し入れのしやすさが、選ばれるための重要な条件だったと見えてきます。

価値共創で大切なのは、答えを集めることではなく、こうした会話から企業と生活者が一緒に問いを深めることです。

アンケートの数字だけでは、言葉の温度、言いよどみ、表情、迷い、言い換えのニュアンスまで受け取ることは困難です。 対話や観察を通じて初めて、「なぜそう答えたのか」「本当は何を大切にしているのか」が見えてきます。

生活者の声を情報として回収するのではなく、企業の見方を変えるきっかけとして受け止める。 そこに価値共創の大きな意味があります。

一緒に考える過程が、「選ばれる理由」を深くする

価値共創の現場で育つのは、商品やサービスの案だけではありません。 対話を重ねることで、企業が伝えたい価値と、生活者が実際に感じる価値の間にあるズレが少しずつ小さくなります。

企業の中だけで考えていると、機能、技術、競合比較、価格など、提供する側から見えやすい情報が中心になります。 生活者との対話が入ることで、 「どんな場面で役立つのか」「使うときにどんな不安があるのか」「なぜ今の方法を変えたくないのか」といった暮らしの文脈が加わります。

すると、売り文句も変わります。 企業が主張したい特徴を並べるのではなく、生活者が感じた安心、使いやすさ、嬉しさをもとに言葉を組み立てられるようになります。

▶ 地域住民と、店舗ができる前から一緒につくった事例

こらぼたうんが支援した店舗づくりでは、完成した店舗を地域住民に披露するのではなく、 スケルトンの段階から住民と対話し、店のあり方を一緒に考えました。

完成した店そのものだけでなく、「自分たちの地域の人と一緒につくってきた」という過程が、 店への理解、支持、信頼、口コミにつながりました。 これは過程を見せたからではなく、地域の人が過程の当事者になったからこそ生まれた価値です。

地域住民と店舗づくりを進めた価値共創マーケティング事例

価値共創は、「生活者に好かれるための取り組み」だけではありません。 生活者の実感を企画、商品、発信、売り方へ反映し、企業が提供する価値の精度を高める取り組みです。

価値共創によって、企業の中では何が変わるのか

価値共創による変化は、一度の対話で急に完成するものではありません。 気づきが見方を変え、見方の変化が商品や提案を変え、その積み重ねが信頼や選ばれる理由につながります。

対話から気づき、企業の見方、商品や提案、関係性、信頼、愛着、選ばれる理由へとつながる価値共創の変化の流れ
対話を起点に、気づき、見え方、商品・提案、関係性、信頼、愛着が育ち、「選ばれる理由」へつながっていく流れ。

価値共創の効果は、短期的な売上だけでは測り切れません。担当者の顧客理解、社内で使われる言葉、企画判断、発信内容などに変化が積み重なり、後から大きな差として表れます。

担当者の問いが変わる

以前は「どう売るか」から始まっていた会話が、 「どんな場面で使われるのか」「何が安心につながるのか」「使わない理由はどこにあるのか」へ変わります。

社内の議論が変わる

機能や競合比較だけでなく、生活者の暮らしや感情が議論に入るようになります。 「この機能を付けるべきか」だけではなく、 「この商品が、どんな場面でどんな気持ちを支えるのか」を考えられるようになります。

伝える言葉が変わる

企業が伝えたい特徴を一方的に並べるのではなく、生活者が実際に感じた価値を起点に表現をつくれるようになります。 その結果、説明ではなく、相手の暮らしに結びつく言葉が生まれやすくなります。

生活者との関係が変わる

生活者を調査対象や販売対象として見るだけでなく、一緒に価値を育てる相手として捉えられるようになります。 この関係性の変化は、一度の商品開発だけで終わらず、次の改善や新しい企画にもつながります。

価値共創は、正解を当てるための方法ではない

価値共創は、生活者と話せば必ずヒット商品が生まれるという魔法ではありません。 生活者の発言をそのまま商品にすれば成功する、という方法でもありません。

実際には、対話を重ねるほど簡単には答えが出ないことがわかります。 暮らし、習慣、感情、期待、ためらいは人によって異なり、ひとつの要望だけで整理できないからです。

だからこそ、企業だけで早く答えを決めるのではなく、一緒に問いを深めることに意味があります。 発言の表面だけで結論を出さず、背景にある理由や文脈を探りながら、どの価値を形にするべきかを考えていきます。

価値共創は、正解を教えてもらう方法ではなく、 企業と生活者が互いの見方を持ち寄り、より意味のある仮説を育てるための実践です。

プロセスエコノミーを価値共創へつなげるために

企業の試行錯誤や思いを発信することは、生活者との距離を縮める入口になります。 ただし、過程を一方的に発信するだけでは、企業が考えている価値の枠から外へ出にくいこともあります。

プロセスエコノミーを価値共創へつなげるには、発信に加えて、生活者が意見や経験を持ち寄れる場をつくることが大切です。

たとえば、完成前の試作品を見せて評価してもらうだけではなく、実際の使用場面を話してもらう。 「どちらが好きですか」と聞くだけではなく、なぜそう感じるのか、どこで迷うのかを対話する。 開発の物語を伝えるだけでなく、その後の改善に生活者の気づきを反映する。

こうした関わりが加わることで、生活者は単なる応援者から共創パートナーへ変わります。 企業がつくった過程に参加してもらうのではなく、これからの過程を一緒につくる関係が始まります。

よくある質問

プロセスエコノミーとは、簡単にいうと何ですか?

完成した商品やサービスだけでなく、開発途中の試行錯誤、挑戦、失敗、改善、作り手の思いなど、完成までの過程そのものにも価値を見いだす考え方です。

プロセスエコノミーと価値共創の一番大きな違いは何ですか?

生活者の立場です。プロセスエコノミーでは生活者は過程を見て共感・応援する立場になりやすいのに対し、価値共創では生活者も対話や試行錯誤に関わり、企業と一緒に価値を育てます。

価値共創は、消費者からアイデアを募集することですか?

アイデア募集だけではありません。生活者の発言や行動の背景を企業と一緒に読み解き、企業側の前提や企画を見直しながら、商品・サービス・伝え方を育てることが中心です。

価値共創は商品開発以外にも活用できますか?

活用できます。既存商品の改善、パッケージ、売り場、接客、サービス設計、情報発信、地域づくりなど、生活者の体験が関係する幅広いテーマで実践できます。

企業だけで生活者との共創を進めるのが難しいのはなぜですか?

自社の商品や前提をよく知っているほど、質問や解釈が企業側の都合に寄りやすいためです。また、生活者が企業担当者を前にすると、遠慮して正解らしい答えを選ぶこともあります。立場をそろえ、本音が出る場を設計し、発言の背景まで読み解く進行が重要です。

価値共創の意味は、「共に過程をつくること」にある

完成したものだけでは伝わらないことがあります。 数字だけでは見えてこないことがあります。 企業の中だけで考えていては、気づきにくい価値があります。

だから、生活者と対話する意味があります。 一緒に迷い、一緒に考え、企業側の前提も見直しながら、価値を育てる意味があります。

プロセスエコノミーは、「完成品だけでなく過程にも価値がある」と気づかせてくれる重要な考え方です。 しかし、価値共創が目指すのは、その過程を発信することだけではありません。

価値共創とは、企業と生活者が共に過程をつくることで、商品やサービスだけでなく、互いの理解、関係性、そして選ばれる理由を深くしていく営みです。

生活者との対話を、商品やサービスの改善につなげたい方へ

「顧客の声を聞いているのに、企画に活かし切れない」
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こらぼたうんでは、企業と生活者が同じ目線で話せる場の設計から、対話・観察で得られた気づきの整理、企画や発信への落とし込みまで支援しています。 まだ企画が固まっていない段階でも、現在のお悩みから一緒に整理できます。

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