JBPは一般に、メーカーと小売が共通目標を持ち、売上や利益、売場価値を一緒につくるための共同計画として語られます。 その考え方自体はとても重要ですし、流通変化が進む今、ますます意味を持つテーマだと思います。
ただ、ここで一つ現実的な問いが出てきます。「そのJBPは、実務として誰が回すのか?」という問いです。 理屈としてはメーカーと小売が直接深く組む形がわかりやすい一方で、日本の流通現場では、メーカーと小売だけで動かすよりも、 卸が中核に入ったほうが回りやすい場面が少なくありません。
この記事の要点
JBPはメーカーと小売の二者協業として語られることが多いですが、日本の流通実務では 卸がハブになったほうが、計画を机上で終わらせず、売場・物流・店舗運営まで含めて動かしやすい場合があります。 さらに、そこに生活者視点が加わると、JBPはより実践的な価値共創へ広がっていきます。
まず、JBPの一般的な理解を整理する
JBPとは、Joint Business Plan(ジョイント・ビジネス・プラン)の略です。 一般には、メーカーと小売が共通の目標を持ち、売上や利益、カテゴリー成長、売場価値の向上を一緒に考えて進める共同計画として理解されています。
つまりJBPは、価格やリベートの条件交渉だけではなく、「どうすれば双方の成果をつくれるか」を話し合う考え方です。 この意味では、従来の商談より一歩深い取り組みと言えるでしょう。
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図1:一般的なJBPは「メーカーと小売の共同計画」として理解されることが多いです。
ただ、現場で考えると二者だけでは回りにくいことがある
ここからが実務の話です。JBPの考え方は重要なのですが、実際に動かそうとすると、 メーカーと小売の二者だけでは回りにくい場面が少なくありません。
メーカーは自社中心になりやすい
どうしても自社ブランド、自社SKU、自社の投資回収に発想が寄りやすくなります。
小売は売場全体を見ている
カテゴリー全体、棚全体、店舗作業、来店客全体まで見なければならず、視点の幅が違います。
実装の壁が後から出やすい
棚替え、物流、欠品、販促、店舗オペレーションなど、机上では見えにくい壁が出てきます。
小売側の負担も大きい
複数メーカーとそれぞれ深いJBPを行うのは、現場から見るとかなり重い取り組みです。
もちろん、メーカーと小売の直接協働が不要という話ではありません。 ただ、二者だけでは見えにくい論点や、つなぎにくい実務があるということです。
JBPが止まりやすいのは、考え方が悪いからではなく、「誰が全体をつなぎ、実装まで落とし込むのか」が曖昧なまま進みやすいからなのかもしれません。
そこで重要になるのが「卸が中核になる」という視点
日本の流通実務を考えると、JBPをメーカーと小売の二者関係だけで捉えるより、 卸が中核に入ったほうが回りやすい場面が多いように思います。
卸は、単なる中継ではなく「全体をつなぐ位置」にいる
複数メーカー、複数カテゴリー、小売現場、物流や供給の現実を横断して見やすいのが卸の強みです。 だからこそ、JBPを机上の構想で終わらせず、売場に落とし込む翻訳役・調整役・実装役として機能しやすいのです。
図2:卸は、メーカーと小売の間にいるだけでなく、実務をつなぐハブとして機能しやすい立場にあります。
卸が中核になると動きやすい理由
1.複数メーカー・複数カテゴリーを横断して見られる
メーカーはどうしても自社商品・自社ブランド寄りになりやすい一方、卸は複数メーカーを横断して見やすい立場です。 そのため、小売にとっての棚全体・カテゴリー全体の現実に寄せた提案がしやすくなります。
2.小売現場の負担やオペレーションを踏まえやすい
どの店舗で実施できるか、棚替えの負荷はどうか、物流や欠品に無理が出ないか。 こうした現場の実装条件まで考えやすいのは、卸が関わる大きな強みです。
3.メーカー間の利害をある程度整理しやすい
メーカー主導だけだと、自社配荷や自社棚の話に寄りやすくなります。 卸が入ることで、多少なりとも売場全体最適、カテゴリ全体最適に寄せた議論がしやすくなります。
4.小売にとって窓口を束ねやすい
小売側から見れば、複数メーカーが個別に深い提案を持ち込むより、卸が束ねてくれたほうが受けやすい場面があります。 特に実行段階では、この整理力が大きな意味を持ちます。
5.計画を実装に落とす“翻訳役”になりやすい
メーカーの戦略を小売現場に伝わる形に直し、小売の現場課題をメーカーが理解できる形に戻す。 この往復の翻訳ができることが、卸が中核に入る最大の価値かもしれません。
ただし、卸が入れば自動的にうまくいくわけではない
ここも大事です。卸が中核になる形が意味を持つのは、卸が単なる中継役で終わらない場合です。
弱い形の卸:メーカーの要望を流すだけ、小売の依頼を取り次ぐだけ、条件調整だけで終わる
強い形の卸:売場全体を見立て、提案を束ね、実装条件を整え、検証まで回せる
つまり、価値があるのは「卸が間にいること」そのものではなく、 卸が企画・設計・実装まで踏み込めることです。
卸は、物流の要であるだけでなく、価値設計のハブにもなり得ます。 この視点で見ると、JBPの可能性はかなり広がってきます。
さらに面白いのは、生活者視点ともつながること
ここで、前回の記事で触れた「JBPを企業同士の共同計画で終わらせず、生活者を含む価値共創へ広げる」という視点につながってきます。
卸が中核に入ると、複数売場・複数業態・複数メーカーを横断して見やすいため、 生活者の声や行動文脈を、売場全体の改善提案に落とし込みやすくなるのです。
図3:卸がハブになると、生活者視点をメーカー・小売の双方に翻訳しやすくなり、JBPはより実践的な価値共創へ近づきます。
ここがこの記事の核心です
JBPをメーカーと小売の二者協業としてだけ捉えるのではなく、 卸をハブにした協働として見直すことで、計画は現場で動きやすくなります。 さらにそこに生活者視点まで入ると、JBPは単なる流通施策ではなく、価値共創マーケティングへと深まっていきます。
では、どんなテーマから始めるとよいのか?
卸が中核に入るJBPは、最初から壮大にやるより、テーマを絞って始めたほうが現実的です。
カテゴリー単位の棚改善
複数メーカー横断で、買いやすさや回転を見直しやすいテーマです。
地域特性に合う売場提案
店舗ごとの違いや来店客の特性を踏まえた設計に向いています。
生活者視点の導線見直し
高齢者、子育て層など、実際の暮らしの視点を売場改善に反映できます。
複数メーカー横断の提案
メーカー単独では難しい、売場全体最適の視点をつくりやすくなります。
ESGや地域密着テーマ
小売方針と生活者価値をつなげやすく、共感を生みやすいテーマです。
定番の見直し
新商品導入だけでなく、既存売場の質を上げる取り組みにも向いています。
大切なのは、「メーカー対小売」の形にこだわりすぎないことかもしれません。 誰が全体をつなぎ、誰が実装まで落とし込み、誰が生活者視点を持ち込むのか。 その設計こそが、これからのJBPでは重要になってくるのだと思います。
まとめ
JBPは一般に、メーカーと小売の共同計画として理解されます。 その考え方はこれからの流通変化の中でますます大切になるはずです。
ただし、日本の流通実務では、メーカーと小売だけで深い協働を回すよりも、 卸が中核になったほうが動きやすい場面が多くあります。
卸は、複数メーカー・複数カテゴリー・小売現場・物流や供給の現実を横断して見やすく、 計画を現場に落とし込む翻訳役になりやすいからです。
さらに、そこに生活者視点まで組み込めば、JBPは単なる企業間の計画にとどまらず、 価値共創マーケティングへ発展しうる仕組みになります。
これからのJBPは、「メーカーと小売の二者協業」だけでなく、 卸をハブにした共創として捉え直したほうが、日本の流通実務には合っているのかもしれません。
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