この記事は価値共創マーケティングの全体像(基本・ポイント・導入法)で紹介しているテーマの一部を掘り下げた内容です。実務で使えるコツや事例を中心に解説します。
考え抜いているのに売れない。
その原因は、努力不足ではなく「考え方の閉じ方」にあるかもしれません。
会議を重ね、競合を調べ、差別化も考えた。なのに反応が弱い。
そんなときに見直したいのは、アイデアの量ではなく、「誰と一緒に考えたか」です。
企画職にとって、「考えること」は武器です。ですが、その武器が強すぎるあまり、生活者の現実から少しずつ離れてしまうことがあります。
この記事では、自分たちだけで考えすぎるとなぜ売れにくくなるのか、そしてそこから抜け出すためにどう発想を切り替えればよいのかを、企画実務の視点で整理します。
こんな状態に心当たりはありませんか?
- 会議では盛り上がったのに、市場では反応が薄い
- 顧客視点で考えたつもりなのに、どこか刺さらない
- 調査はしているのに、企画が無難にまとまってしまう
- 完成度は高いが、「欲しい理由」が弱い
- 企画書はきれいなのに、現場で熱が生まれない
はじめに:「考え抜いたのに売れない」という苦しさ
「何度も会議で検討を重ねた」「競合分析もした」「差別化も意識した」。それでも売れない。 企画に関わる人ほど、この悔しさを深く味わいます。
なぜなら企画職は、考えること自体が仕事だからです。仮説を立て、整理し、比較し、選び、言語化する。その積み重ねで商品やサービスの輪郭をつくっていきます。
けれども現実には、よく考えた企画ほど売れるとは限りません。 むしろ、社内で考え抜いたものほど、お客様の実感から少しずつ離れてしまうことがあります。
問題なのは「考えること」そのものではありません。
問題なのは、考える材料が社内の論理だけで閉じてしまい、生活者の文脈とつながらなくなることです。
1. 「自分たちで考え抜く」がズレやすい理由
顧客視点の“つもり”が、いつの間にか社内視点になっている
企画担当者の多くは、顧客のことを真剣に考えています。だからこそ厄介なのですが、真剣に考えるほど、いつの間にか 「自分たちなりに解釈した顧客像」で企画が進んでしまうことがあります。
たとえば、「忙しい人向け」「子育て世代向け」「健康意識の高い人向け」といった言葉は便利ですが、その言葉だけでは生活のリアルは見えません。 同じ“忙しい人”でも、朝が苦しい人もいれば、夜が崩れやすい人もいる。面倒を減らしたい人もいれば、気持ちを上げたい人もいる。 その違いを見ないまま企画すると、発想はどうしても平均点に寄っていきます。
よくあるズレ
- 「便利そう」だが、実際の困りごとには届いていない
- 「差別化」はできているが、使う理由が弱い
- 「正しい企画」だが、感情が動かない
市場調査が“発見の道具”ではなく“確認の道具”になっている
調査自体が悪いわけではありません。問題は、調査の使い方です。 多くの現場では、調査が「まだ見えていないものを発見するため」ではなく、すでに社内で考えた仮説を補強するために使われがちです。
アンケートや定量調査は、全体傾向を見るには有効です。ですが、質問の立て方そのものが企業側の発想に引っ張られていると、返ってくる答えもまた、その枠の中に収まります。 すると、企画者は「数字も取れているから大丈夫」と安心できますが、本当の意味での生活実感や、想定外の気づきには出会いにくくなります。
その結果、調査→分析→企画という流れが、閉じた最適化サイクルになり、見た目は整っているのに売れない企画が生まれてしまうのです。
2. なぜ「完成度が高いのに売れない商品」が生まれるのか
完成している
スペックも整理され、訴求点も明確。資料も整っていて、社内説明もしやすい。
でも、選ばれない
「悪くない」で終わりやすく、わざわざ手に取りたくなる理由が弱い。記憶にも残りにくい。
完成度が高すぎると、生活者が入り込む“余地”がなくなる
売れない商品は、品質が低いから売れないとは限りません。 むしろ、社内で丁寧に考え抜かれた商品ほど、きれいにまとまりすぎていて、生活者が自分ごととして入り込む余白がないことがあります。
人が商品を選ぶとき、見ているのは機能だけではありません。 「これ、私に合っていそう」「自分の困りごとを分かってくれている」「なんだか気持ちがいい」。 そうした小さな共感の積み重ねが、最終的な選択につながります。
逆に言えば、どれだけ論理的に正しくても、感情が動く余白がなければ、企画は強くなりません。
“想像の中の顧客”とだけ対話している
企画の場でよく起きるのが、「お客様はこう思うはず」「このターゲットならこう感じるのでは」という会話です。 一見、顧客を考えているように見えますが、それが実際の対話や観察に基づいていないと、結局は社内の想像力の範囲を出ません。
机上企画に陥る典型パターン
- 顧客像が“ペルソナ”のままで、生きた人物になっていない
- 使う場面・買う場面・迷う場面が具体的に見えていない
- 「なぜそれを選ぶのか」より「どう売るか」が先に立っている
- 現場の違和感や小さな不満が設計に反映されていない
こうなると、企画はどこかで似たような方向に収束します。 結果として、悪くはないが、選ばれる決め手に欠ける。そんな商品が生まれやすくなります。
3. 企画職に必要なのは、「もっと考える」より「もっと聴く」こと
生活者の“発言”だけでなく、“文脈”に触れる
売れる企画を考えるうえで大事なのは、表面的な要望を集めることではありません。 本当に見るべきなのは、その人がどんな暮らしの流れの中で困り、迷い、選び、納得しているかです。
たとえば「もっと簡単なものがほしい」という言葉があったとしても、その背景にはさまざまな事情があります。 時間が足りないのか。家族への気疲れがあるのか。失敗したくないのか。選ぶこと自体に疲れているのか。 同じ一言でも、背景が違えば企画の方向はまったく変わります。
「なぜその気持ちになるのか」に触れにいくことです。
価値は、頭の中だけでなく“場”の中から立ち上がる
優れたアイデアは、ひとりの天才的なひらめきからだけ生まれるわけではありません。 実際には、対話の中の何気ない一言、試作品への微妙な表情、雑談の流れで出た違和感など、場の中で起きる小さな反応が大きなヒントになることがよくあります。
つまり企画職に求められるのは、ひとりで正解を出す力だけではなく、価値が立ち上がる場を設計する力でもあるのです。
考えすぎる企画
社内で完成度を上げてから出す。ズレが見つかったときの修正コストが大きい。
共創的な企画
たたき台の段階で対話に出し、反応を見ながら磨く。想定外の価値を拾いやすい。
4. 企画職が取り入れたい「共創」の姿勢
完成品ではなく、たたき台を持っていく
優秀な企画担当者ほど、「完成度の高いものを見せたい」と考えます。 ですが、共創的な進め方では、その姿勢がかえって発見を減らすことがあります。
なぜなら、完成されたものを見せると、相手も“評価する側”になりやすいからです。 一方で、未完成のたたき台を見せると、「こうだったらどう?」「この場面だと困るかも」といった、より具体的で生きた反応が返ってきやすくなります。
つまり、未完成であることは弱さではなく、発見の入口です。
生活者を「調べる相手」ではなく「一緒に考える相手」と捉える
企画が伸びる現場では、生活者を“情報源”としてだけ扱いません。 「何を答えてくれる人か」ではなく、「一緒に考えることで何が見えてくるか」という目線で関わります。
この姿勢に変わると、インタビューの質も、試作への反応の見方も、社内共有の仕方も変わります。 顧客を“ターゲット”として眺めるのではなく、企画を磨くための“共創パートナー”として迎える。 その視点の転換が、企画の温度を大きく変えます。
5. 実践で使える:「考えすぎ」から抜け出す3つの問い
ここからは、企画会議やアイデア整理のときに実際に使いやすい問いを3つに絞って紹介します。 難しいフレームではなく、企画の方向が社内論理に閉じていないかを点検するための問いです。
このアイデアは、誰のどんな困りごとに触れているか?
抽象的なニーズではなく、生活の中の具体的な不便・迷い・気持ちの引っかかりに触れているかを見直します。 「誰に向けているか」だけでなく、どんな場面で、どんな気分のときに役立つのかまで言えるかがポイントです。
例:
・通勤時、荷物が多く片手がふさがる → 片手で扱いやすい設計
・子どもの歯みがき時間が毎日バトル → 楽しさをつくる仕掛け
これは本当に、机の上だけで考えた企画ではないか?
誰と話したか。どこを見たか。どんな現場に触れたか。 その企画の根拠が、会議室の中の推測だけでできていないかを確認します。
特に、企画がきれいにまとまっているときほど要注意です。 整っていることと、刺さることは別だからです。
この企画には、関わった人が語りたくなる要素があるか?
人が思わず話したくなる企画には、単なる機能以上の物語があります。 「一緒に考えた」「こんな声から生まれた」「試しながら育った」という背景は、共感や信頼を育てます。
その意味で、売れる企画とは、商品だけでなく語りたくなるプロセスまで含めて設計された企画とも言えます。
6. 企画職が明日から変えられる小さな実践
まずはここからで十分です
- 会議の前に、顧客の実際の発言や現場メモを1つ共有する
- 完成案ではなく、2~3割のたたき台で反応を見る
- 「どう売るか」の前に「なぜ欲しくなるか」を話す
- 調査結果の数字だけでなく、違和感や例外を拾う
- 企画書に“想定顧客”ではなく“生活場面”を書く
大きな仕組みをいきなり変える必要はありません。 まずは、企画の初期段階で生活者の文脈に触れる回数を増やすこと。 それだけでも、発想の質はかなり変わります。
おわりに:考えすぎるあなたへ
考えることは、企画職にとって大切な力です。 ですが、考え抜いたから売れるのではなく、ズレずに磨けたから売れるというのが実際のところです。
そのために必要なのは、「もっと頑張って考える」ことだけではありません。 生活者、現場、社内の他部署、試作品への反応――そうした他者の視点を取り入れながら、企画を開いていくことです。
企画の仕事は、ひとりで正解を出すことではなく、まだ見えていない価値が立ち上がる条件を整えること。 そう捉え直すと、企画はもっと強く、もっとしなやかになります。
「考えすぎる」こと自体が悪いのではありません。
ただ、考える相手が社内だけになったとき、企画は弱くなります。
これからの企画力は、ひとりで考え切る力よりも、一緒に考えながら価値を育てる力に近づいていくのかもしれません。
企画を社内だけで閉じず、生活者と一緒に磨いていきたい企業さまへ
こらぼたうんでは、生活者との対話や共創セッションを通じて、“考えた企画”を“選ばれる企画”へ育てる支援を行っています。
「調査はしているが企画に活かし切れない」「机上の発想から抜けたい」と感じている場合は、今の進め方を一度整理するだけでも次の打ち手が見えやすくなります。
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