顧客アンケートやインタビューを実施したのに、出てきた意見がバラバラ。
「結局、どの意見を採用すればよいのか分からない」と、かえって社内の議論が止まってしまうことがあります。
ある人は「もっと安くしてほしい」と言い、別の人は「価格が上がっても品質を高めてほしい」と言う。
「種類を増やしてほしい」という意見がある一方で、「種類が多すぎて選べない」という声も出てくる。
こうなると、顧客に聞いたことが判断材料になるどころか、社内で決められない理由になってしまいます。
しかし、これは顧客に聞いたこと自体が間違いなのではありません。
多くの場合、混乱の原因は、顧客の言葉をそのまま「答え」として扱ってしまうことにあります。
顧客の声は、商品やサービスをどう変えるべきかを直接教えてくれる完成された答えではありません。
その人が、どのような場面で迷い、何を気にし、なぜその言葉を口にしたのかを考えるための手がかりです。
顧客の意見を集めたのに、なぜ決められなくなるのでしょうか
顧客の声を集めると、さまざまな意見が出てきます。それ自体は自然なことです。
顧客は、それぞれ異なる暮らし方、経験、購入目的、予算、使い方を持っています。
そのため、同じ商品について聞いても、正反対の意見が出ることがあります。
意見が分かれる例
- もっと機能を増やしてほしい
- 機能が多くて使いにくい
- 価格を下げてほしい
- 高くても品質を上げてほしい
- 種類を増やしてほしい
- 選択肢が多すぎて選べない
社内で起きやすいこと
- 担当者ごとに都合のよい意見を選ぶ
- 多数意見だけを採用しようとする
- 声の大きい人の意見に引っ張られる
- 結論が出ず、調査結果が保留になる
- 最終的に従来案へ戻ってしまう
問題は、意見が分かれたことではありません。
何を確かめるために顧客へ聞いたのか、どの基準で判断するのかが、社内で共有されていないこと が問題なのです。
「今回、何を決めるために聞くのか」という社内の問いを明確にしておくことが重要です。
「顧客が言ったから採用する」では、判断を誤ることがあります
顧客の発言は、その人が感じていることを知る大切な情報です。
ただし、発言の表面だけを見て、そのまま商品やサービスへ反映するのは危険です。
「もっと安くしてほしい」
本当に価格だけが問題なのでしょうか。
商品の違いが分からない、失敗したくない、使い切れるか不安、今の生活で必要性を感じられないなど、価格以外の迷いが含まれている可能性があります。
「もっと機能を増やしてほしい」
本当に新機能を求めているとは限りません。
現在の使い方が分かりにくい、手順が面倒、目的の操作へたどり着けないなど、既存機能の使いにくさを別の言葉で表していることもあります。
「デザインを変えてほしい」
色や形の好みだけとは限りません。
家の中で置き場所に困る、人に見られたくない、生活感が出る、家族が使いにくいなど、暮らしの中での扱われ方が関係している可能性があります。
「種類を増やしてほしい」
選択肢の少なさではなく、自分に合う商品が分からないことが問題かもしれません。
種類を増やすことで、かえって選びにくくなる場合もあります。
そのため、顧客の言葉を聞いたときに必要なのは、すぐに採用するか、否定するかを決めることではありません。
なぜその言葉が出たのか。その人は、どの場面で何に困っていたのか。
言葉の背景まで確かめることで、初めて企業側が検討できる材料になります。
「高い」という言葉を、価格の問題だと思い込んでいました。
生活者から出た「高い」という言葉を掘り下げると、単純な値段への不満ではなく、商品の違いや選ぶ理由が分かりにくいことが見えてきました。
現場ストーリーを見る声を集める前に、社内で決めておきたいこと
顧客へ聞く前に、企業側で商品やサービスのすべてを決めておく必要はありません。
むしろ、決めきれない部分があるからこそ、顧客との対話や観察が役立ちます。
ただし、少なくとも次の点は整理しておく必要があります。
顧客へ聞く前に整理したい4つのこと
- 今回、何を決めるために聞くのか
- どこまで変更でき、どこは変更できないのか
- 誰の、どのような場面を確かめたいのか
- 結果を受けて、誰がどのように判断するのか
たとえば、「新商品の評価を聞く」という目的だけでは広すぎます。
「商品の魅力が伝わっているかを確かめたい」のか、「売場で違いを理解して選べるかを確かめたい」のか、「実際の生活で無理なく使い続けられるかを確かめたい」のかによって、見るべき場面も、聞く内容も変わります。
顧客へ何を質問するかを考える前に、企業側が何に迷っているのかを言葉にすることが大切です。
顧客の声を、社内の判断材料へ変える4つの視点
1 発言だけでなく、場面を確かめる
「どう思いますか」と評価を聞くだけではなく、いつ、どこで、誰と、どのように使うのかを具体的に振り返ってもらいます。
同じ発言でも、使われる場面によって意味が変わるからです。
2 言葉と行動の違いを見る
「使いやすい」と答えていても、実際には説明書を何度も確認しているかもしれません。
「欲しい」と言っていても、売場では手に取らないこともあります。
発言だけでなく、迷った場所、手が止まった瞬間、選ばなかった理由を観察します。
3 意見ではなく、共通する迷いを探す
出てきた要望を件数順に並べるだけではなく、異なる発言の奥に、共通する迷いや不安がないかを考えます。
「安くしてほしい」と「違いが分からない」は、どちらも選ぶ確信を持てないことから出ている可能性があります。
4 小さく見せ直して、もう一度確かめる
一度聞いただけで結論を出さず、説明、見せ方、使い方、売場での伝え方などを少し変え、反応がどう変わるかを確かめます。
顧客の声を正解として採用するのではなく、仮説をつくり直す材料として使います。
調査結果を共有しても、会議で使われない理由
顧客の声を集めた後、報告書を作成して社内へ共有しても、商品改善や営業、広報、Webサイトの見直しにつながらないことがあります。
その理由の一つは、報告書が顧客の意見を整理した資料で終わっているからです。
企業が本当に必要としているのは、発言の一覧ではありません。
- 自社が想定していたことと、実際の使われ方はどこが違ったのか
- 顧客は、どの場面で判断に迷っていたのか
- 商品の問題なのか、伝え方の問題なのか
- 社内のどの部門が、何を見直す必要があるのか
- 次に何を試し、何を確かめるのか
ここまでつながって初めて、顧客の声が社内の意思決定に使えるようになります。
顧客の暮らしで起きていることと、自社が次に判断すべきことをつなぐことです。
まとめ:顧客に聞く目的は、答えを決めてもらうことではありません
顧客に聞くと混乱するのは、意見が多いからではありません。
顧客の言葉をそのまま正解として扱い、何を確かめるために聞いたのか、どのように判断するのかが整理されていないことが、混乱の原因です。
顧客は、企業の代わりに商品やサービスの答えを決める人ではありません。
企業だけでは気づきにくい使われ方、迷い、選ばれない理由を見つけ、社内にまだない仮説を生み出す相手です。
顧客の声を集めることが目的になっていないか。集めた声を、社内の判断や次の行動へつなげられているか。
顧客へ聞く前に、まず企業側の迷いを整理することから始める必要があります。
顧客に何を聞けばよいか、決めきれないときに
「アンケートを実施したが、結果をどう判断すればよいか分からない」
「顧客へ聞きたいが、何を確かめればよいか整理できていない」
「商品、伝え方、売場のどこに原因があるのか見えない」
そのような段階からご相談いただけます。
調査を実施することを前提にせず、まず企業側が何に迷い、何を現場で確かめる必要があるのかを一緒に整理します。
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