顧客の声を大切にすることと、顧客の言うとおりに商品をつくることは、同じではありません。
「もっと軽くしてほしい」「価格を下げてほしい」「種類を増やしてほしい」。商品企画の現場には、さまざまな要望が届きます。
もちろん、顧客の声は貴重な手がかりです。ただ、その言葉をそのまま仕様変更に結びつけると、本当に困っていることを見落としてしまう場合があります。
この記事では、要望の背景を読み解く3つの視点と、商品企画につなげる3ステップ、さらにどの要望を採用するかを判断する基準を、現場の事例とともに紹介します。
1.顧客の声をそのまま採用すると、なぜ商品企画がずれるのか
アンケート、インタビュー、営業担当者が聞いた声、店頭での会話。企業には、いろいろな形で生活者の意見が集まります。
それらを参考に改善したのに、「機能を増やしたが選ばれない」「要望に応えたのに購入につながらない」「顧客の声を取り入れるほど商品の特徴がぼやけた」ということがあります。
原因の一つは、顧客が口にした要望と、その人が解決したい問題を、同じものとして扱ってしまうことです。
例えば「もっと軽くしてほしい」と言われたら
企業は、素材を変えたり部品を減らしたりして、重量を下げようと考えるかもしれません。
しかし、実際には「片手で持ちにくい」「棚から取り出しにくい」「長時間持ち運ぶのが負担」「使用後の片づけが面倒」といった理由が隠れていることもあります。
そうであれば、軽量化よりも持ち手や収納方法、置き場所の工夫が役立つ可能性があります。もちろん、本当に重さが問題であれば軽量化が正しい改善策です。大切なのは、どちらなのかを確かめてから決めることです。
「使いにくい」「高い」と感じた本人の経験は大切にすべきです。一方、その原因や最適な解決策まで、本人が正確に説明できるとは限りません。
顧客がそう感じたことには意味がある。でも、口にした要望が、そのまま商品企画の答えになるとは限りません。
2.顧客の要望の奥にある理由を読み解く3つの視点
要望を理解するときは、その言葉だけを切り取らず、状況・行動・感情を一緒に見ていくと、背景が具体的になります。
状況を見る
いつ、どこで、誰と、どんな場面で使っていたのか。自宅では問題なくても、外出先では不便になることがあります。
行動を見る
どこで迷い、手が止まり、何をやり直したのか。持ち替えたり説明を読み直したりした場面に改善の手がかりがあります。
感情を見る
そのとき、面倒、不安、期待外れ、安心、心地よさなど、何を感じたのか。機能だけでは捉えきれない体験の価値が見えてきます。
例えば「種類を増やしてほしい」という声も、本当に品ぞろえが不足しているのか、今ある商品の違いがわからず、選びにくいのかで、必要な対応は変わります。
要望を尋ねるだけでなく、実際にどのように選び、使い、迷ったのかを観察する。必要なら、その場面を一緒に振り返る。そうすることで、言葉の奥にある理由を少しずつ確かめられます。
3.顧客の声を商品企画に活かす3ステップ
背景を理解したら、それをすぐに仕様書へ書き込むのではなく、小さな仮説と検証につなげます。
ステップ1|声の背景を整理する
「誰が、どんな場面で、何をしようとして、どこに困ったのか」を整理します。顧客の発言と、企業側が推測した理由は分けて記録しておくことが大切です。
例えば「軽くしてほしい」という発言と、「片手で扱いづらいことが問題かもしれない」という仮説は別に扱います。
ステップ2|改善仮説を複数考える
商品そのものを変える以外にも、パッケージ、売り場での見せ方、説明、使い方の提案などを候補にします。
この段階では、企業の技術や強み、コスト、実現可能性も踏まえて考えます。何を変えるかは、生活者の視点と企業側の判断を重ねて決めることが重要です。
ステップ3|小さく試して、もう一度確かめる
試作品を一つつくる、パッケージ案を見せる、商品説明を二つ比較してもらう。大規模な調査を始めなくても、確かめられることはあります。
元の要望に対して本当に使いやすくなったのか、選びやすくなったのかを、実際の場面や生活者の反応から確認します。必要なら、同じ人にも再び参加してもらい、改善前後の変化を見ます。
ここで使う材料は、新たに集める声だけではありません。既存顧客との会話、営業担当者が聞いた言葉、問い合わせ、店頭での様子など、すでに社内にある情報から始められます。
ただし、少人数の反応だけで市場全体のニーズを断定することはできません。小さな対話は、まず改善の方向性を探り、仮説を磨くために活かすのが適切です。
4.現場ストーリーCASE014|聞いて、考え直して、もう一度確かめる
Field Stories|実際の共創セッションから
「前より選びやすい」と言われるまで、もう一度考えました。
ある商品企画で、企業が考えたコンセプトを生活者に見せたところ、商品の良さは伝わっても「自分に必要なのか判断しにくい」という反応がありました。
企業はその言葉に合わせて説明を足すだけではなく、なぜ自分ごととして選びにくいのかを持ち帰って考えました。そしてコンセプトを修正し、次のセッションで同じ参加者にもう一度見てもらいました。
そこで返ってきたのが、「前より選びやすい」という言葉でした。
顧客の声を聞き、企業が考え、再び生活者と確かめる。一度の意見で結論を出さず、対話を重ねたことが、この事例の大切な点です。
なお、確認できたのはコンセプトへの反応の変化であり、販売実績の向上を示すものではありません。
5.どの要望を採用するか、企業が判断したい3つのこと
顧客の声を丁寧に読み解いても、すべての要望を商品に反映できるわけではありません。実際の商品企画では、何を採用し、何を見送るかの判断が必要です。
発言があっただけでなく、使用時の迷いや負担、繰り返し起きる不便などが確認できるか。どんな人に、どの程度重要な問題なのかを考えます。
企業が大切にしている価値や、商品の強みと合っているか。すべての意見に応じることで、かえって商品の個性や使い勝手を損なわないかも確認します。
改善によって生活者にどんな変化が生まれるか。その一方で、費用や製造上の制約、価格への影響がどの程度あるか。小さく検証できるかも判断材料です。
例えば「機能を増やしてほしい」という声があっても、追加した機能が一部の人しか使わず、操作を複雑にするのであれば、見送る判断もあり得ます。
一方、少数の声でも、特定の使用場面で深い困りごとを示しているなら、検証する価値があります。多数決でも、声の大きさでもなく、その背景にある課題と企業としての方向性で考えることが大切です。
企画会議で確認しておきたいこと
- 顧客の発言と、こちらの解釈を混同していないか
- 意見の多さや発言の強さだけで決めていないか
- 商品を変える前に、売り方や伝え方も検討したか
- 一度の反応だけで結論を出していないか
6.まとめ|顧客の声は、一緒に考えるための材料です
顧客の声を商品企画に活かすとは、言われたとおりに変更することではありません。
「なぜ、その言葉が出たのか」「どの場面で困ったのか」「本当は、どうなりたかったのか」を確かめる。そこから企業が仮説を立て、生活者と一緒に試し、必要に応じて考え直していくことです。
ときには、変えるべきものが商品本体ではなく、パッケージ、売り場、説明方法、使う場面の伝え方であることもあります。
顧客の声を大切にするからこそ、すぐに答えにしない。 背景を理解し、企業と生活者が一緒に考える。その積み重ねが、選ばれる理由を育てていきます。
顧客の声を、次の商品企画につなげたいときは
「要望が多くて優先順位を決められない」「意見を取り入れるほど商品の特徴がぼやける」「顧客の声を聞いたあと、何を試せばよいかわからない」。
こらぼたうんでは、生活者との対話や観察を通じて、声の背景を一緒に整理し、商品企画や伝え方を見直すための次の一歩を考えています。まだ改善内容が決まっていない段階でもご相談いただけます。
まずは課題の整理から。依頼を決める前のご相談も歓迎しています。
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