私がいなくても、対話が始まる。そんな共創の場が好きです。

共創セッションを何度か重ねていると、 私が進行しなくても、企業担当者と生活者の皆さんが 自然に話し始めることがあります。

まるで昔からの知り合いのように、 笑いながら、時には真剣に、 目の前のテーマについて話し合っている。

私は、そんな光景を見るのがとても好きです。

最初からそうだったわけではありません。

初めの頃は、企業担当者も生活者も、 少し遠慮があります。 企業は質問する側、生活者は答える側。 どうしても、そんな関係になりがちです。

でも、何度か一緒に考え、話し合ううちに、 少しずつ関係が変わっていきます。

そして、いつの間にか、 私が何もしなくても皆さんが盛り上がっている。

そんなとき、共創の場をつくってきて よかったなと思うのです。

「聞く人」と「答える人」から、一緒に考える仲間へ

企業と生活者が初めて顔を合わせるとき、 どうしても立場の違いがあります。

企業担当者は、生活者が何を感じ、 何を求めているのかを知りたい。

生活者は、企業からの問いかけに、 自分の経験や考えを伝えようとする。

もちろん、それも大切な対話です。

ただ、私が目指しているのは、 そこからもう一歩進んだ関係です。

企業担当者が生活者に気軽に問いかける。 生活者も、遠慮なく自分の考えを伝える。

時には、生活者から企業担当者に質問が飛び、 企業の事情や商品・サービスのつくり方を知ることで、 さらに新しい意見が生まれる。

どちらかが一方的に聞いたり、 答えたりするのではなく、 同じテーマについて一緒に考えるようになる。

そんな関係が少しずつ育っていくことを、 大切にしています。

対話を生み出すのは、話し方の技術だけではない

共創セッションでは、参加者が安心して話せる 雰囲気をつくることも、 ファシリテーターの大切な役割です。

質問の仕方や、意見の引き出し方、 話し合いの進め方にも工夫が必要です。

ただ、どれだけ上手に進行しても、 それだけで本当の意味での対話が 生まれるとは限りません。

私が大切にしているのは、 参加者同士が、お互いの考えに関心を持つことです。

「どうして、そう思ったんですか?」

「それは面白いですね」

「だったら、こんな方法はどうでしょう?」

そんなやり取りが、私を介さずに始まる。

誰かに質問されたから答えるのではなく、 相手の話を聞いて、 自分も何かを伝えたくなる。

その言葉を受けて、 また誰かが考え始める。

そうしたやり取りが続くようになると、 場の雰囲気も変わっていきます。

私は、その変化をとても大切にしています。

一緒に目指すものがあるから、関係が育っていく

もう一つ大切にしているのは、 参加者が一緒に取り組むテーマを持っていることです。

ただ仲良くなるために集まっているわけではありません。

もっと使いやすい商品・サービスにしたい。

こんな商品・サービスがあったら面白い。

どうすれば、もっと多くの人に 喜んでもらえるだろう。

そんなテーマについて、 企業担当者も生活者も、 それぞれの経験や知恵を持ち寄ります。

企業には、商品・サービスを生み出し、 提供するための技術や経験があります。

生活者には、日々の暮らしの中で感じていることや、 実際に使い、体験しているからこそ 分かることがあります。

どちらかが教える側で、 どちらかが教わる側というわけではありません。

お互いに知らないことがあり、 お互いに伝えられることがある。

そして、一緒に考える中で、 最初には思いつかなかったアイデアが 生まれることもあります。

共通のテーマに向き合うことで対話が生まれ、 対話を重ねることで、 さらに一緒に考えたいことが増えていく。

そんな関係になっていくのだと思います。

共創の成果は、商品・サービスだけではない

共創セッションには、 商品・サービスをより良くするという目的があります。

新しいアイデアが生まれたり、 これまで気づかなかった課題が見つかったりすることも、 大切な成果です。

でも、私はそれだけではないと思っています。

企業担当者が、生活者の言葉を 自然に受け止められるようになる。

生活者も、企業の事情や思いを理解したうえで、 自分の考えを伝えるようになる。

そして、企業担当者自身が、 生活者と一緒に考えることの面白さを 感じるようになる。

こうした経験は、 セッションが終わった後にも 残っていくのではないでしょうか。

一つの商品・サービスが良くなることは、 もちろん嬉しいことです。

でも、その経験を通じて、 企業担当者が生活者との向き合い方を変え、 次の商品・サービスづくりにも生かしていけたら、 もっと嬉しい。

良い商品・サービスを一つ生み出すだけでなく、 良い商品・サービスを生み出し続けられる企業になっていく。

私は、共創にはそんな可能性もあると思っています。

私がいなくても、皆さんが話している

セッションを重ねていくと、 開始前から企業担当者と生活者が 楽しそうに話していることがあります。

私が何か話題を振らなくても、 自然に会話が始まっている。

テーマについて話し始めると、 誰かの発言に別の誰かが反応して、 また話が広がっていく。

そんなとき、私は少し離れたところから、 その様子を見ていることがあります。

ファシリテーターとしては、 出番が少なくなっているのかもしれません。

でも、それが嬉しいのです。

企業と生活者という立場を超えて、 昔からの知り合いのように、 一緒に考え、笑い合い、 時には真剣に意見を交わしている。

もちろん、仲良くなることだけが目的ではありません。

親しい関係になっても、 違う意見は違うと言える。 相手の考えを尊重しながら、 自分の思いも伝えられる。

そんな関係であってほしいと思います。

そして、そのような関係が生まれることも 大切にしながら、 私は共創の場をつくっています。

私がいなくても、企業担当者と生活者が 自然に話し合っている。

そんな光景を見るたびに、 共創って面白いな、と思うのです。

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