新商品案を決めきれないとき|社内投票の前に確かめたい5つのこと

新商品案を決めきれない企業の方へ

新商品の企画会議で、案が3つまで絞られた。 どれも悪くなく、それぞれに良さがあり、社内でも意見が分かれている。

営業は「売りやすい案」を推し、開発は「技術を活かせる案」を選び、 経営層は「利益が出やすい案」を重視する。 議論を重ねても結論が出ず、最後は多数決や上司の判断で決める。

新商品開発では、このような場面が少なくありません。 しかし、本当に必要なのは、社内で一番人気の案を選ぶことではありません。

その商品が、生活者のどのような暮らしの中で選ばれるのか。
最後の1案を決める前に、ここまで確かめる必要があります。

本記事では、新商品案を決めきれないときに、 社内投票や最終決裁の前に確認したい5つのことを整理します。

なぜ、新商品案を決めきれなくなるのか

企画案を決められない原因は、アイデアの質が低いからとは限りません。 むしろ、どの案にも一定の魅力があるからこそ、判断が難しくなります。

営業の視点

取引先へ説明しやすく、売り場へ導入しやすい案を選びます。

開発の視点

技術を活かしやすく、品質や実現可能性の高い案を選びます。

経営の視点

売上、利益、投資回収の可能性を重視します。

企画・デザインの視点

新しさや世界観、見た目の完成度を重視します。

誰かが間違っているわけではありません。 それぞれが、自分の仕事から見える範囲で合理的に判断しています。

問題は、判断する視点が異なるまま、 「どの案が一番良いか」を決めようとしていることです。 この状態で多数決をすると、最も票を集めた案は決められても、 その商品が実際に選ばれる理由までは確認できません。

多数決では、生活者が選ぶ案は分からない

社内投票は、意見をまとめる方法としては便利です。 しかし、社内で人気の案と、市場で選ばれる案は同じとは限りません。

企業側は、商品の機能、技術、原価、実現可能性を知っています。 一方、生活者が見ているのは次のような現実です。

  • 自分に必要か
  • どんなときに使うか
  • 今使っているものより良いか
  • その価格を払う理由があるか
  • 家族にも受け入れられるか
  • 買った後に使い続けられるか

商品案を決める前には、社内評価だけでなく、 生活者の暮らしに入ったときにどう見えるかを確かめる必要があります。

確かめたいこと1:誰の、どのような場面に入る商品なのか

最初に確認したいのは、ターゲットの年齢や性別だけではありません。

その人が、いつ、どこで、誰と、どのような気持ちで使うのか。

たとえば食品であれば、朝に一人で食べるのか、 仕事の合間に食べるのか、家族で分けるのか、 来客時に出すのか、自分へのご褒美として食べるのかによって、 求められる量、価格、包装、味、見せ方は変わります。

「20代女性向け」という説明だけでは、商品案を選ぶための判断材料としては足りません。 複数の案があるなら、それぞれについて、

  • どのような生活場面に入るのか
  • その場面は実際に存在するのか
  • すでに別の商品で満たされていないか

を具体的に考える必要があります。

確かめたいこと2:競合商品と並んだとき、選ぶ理由があるか

企画会議では、商品案単体の魅力を比較しがちです。 しかし、実際の売り場やWebサイトでは、商品は必ず何かと比較されます。

  • 似た商品
  • いつも買っている商品
  • より安い商品
  • 知名度のある商品
  • 買わないという選択肢

「この商品は良いか」だけでなく、 他の商品ではなく、これを選ぶ理由があるかを確かめなければなりません。

機能が少し優れているだけでは、買い替える理由にならないかもしれません。 見た目が新しくても、使う場面が分からなければ棚へ戻される可能性があります。 価格が安くても、「自分には必要ない」と思われれば選ばれません。

案を比較するときは、商品案同士だけでなく、 市場にある選択肢の中で見てもらうことが重要です。

確かめたいこと3:価格を払う理由が伝わるか

新商品案を選ぶとき、価格は重要な判断材料になります。 ただし、単に安い案が選ばれやすいとは限りません。

この内容なら、その金額を払ってもよいと思えるか。

高いと言われたときも、すぐに値下げすべきとは限りません。

  • 容量が多すぎる
  • 使い切れるか不安
  • 他の商品との違いが分からない
  • 特別な日に使う商品なのか、日常品なのか分からない
  • 品質や作り手のこだわりが伝わっていない

といった理由で、価格への納得感が生まれていない可能性があります。

複数案を比較するときは、「いくらなら売れるか」「どの案が安く作れるか」だけでなく、

  • どの価値に対してお金を払うのか
  • どのように説明すれば納得できるのか
  • 誰にとってその価格が妥当なのか

まで確かめる必要があります。

確かめたいこと4:説明を変えると、評価も変わるか

案そのものに問題があるのではなく、伝え方によって評価が変わることがあります。

  • 機能を中心に説明する
  • 使用場面を中心に説明する
  • 作り手の背景を伝える
  • 家族にとっての価値を伝える
  • 使用後の変化を伝える

最初の説明で評価が低かったからといって、その企画案をすぐに捨てる必要はありません。 生活者が判断できなかった理由が、 商品の問題なのか、説明不足なのか、比較の仕方なのか、 利用場面の分かりにくさなのかを切り分ける必要があります。

企画案を決める前には、複数の伝え方を試し、 どの部分で理解や納得が変わるかを見るとよいでしょう。

「前より選びやすい」と言われるまで、もう一度考えました。

最初の確認では、コンセプトの意図は伝わっていても、 「自分に必要な商品なのか判断しにくい」という迷いが残っていました。

そこで企業側は、評価の高低だけで結論を出さず、 なぜ選びにくかったのかを整理し、コンセプトや伝え方を修正しました。 さらに、前回と同じ生活者へもう一度提示し、 「前より選びやすい」という反応が得られるまで確かめました。

現場ストーリー CASE014を見る →

確かめたいこと5:小さく試してから決められないか

商品案を一つに決めるとき、最初から完全な正解を選ぼうとすると、判断が難しくなります。

決める前に、小さく試すことはできないか。
  • 簡単な試作品を使ってもらう
  • パッケージ案だけ見てもらう
  • 売り場を想定して比較してもらう
  • キャッチコピーを変えて反応を見る
  • 少量だけ作って試してもらう
  • Web画面やモックアップを操作してもらう

企画会議の段階では、すべてを完成させる必要はありません。 むしろ、完成していない段階だからこそ、生活者の反応を見ながら修正できます。

大切なのは、どの案が一番人気だったかだけを見ることではありません。

  • どこで迷ったか
  • 何が分からなかったか
  • 何と比較したか
  • どの場面を想像したか
  • どの言葉で評価が変わったか

まで確認することです。

新商品案を決める前に確認したい5つの視点を、利用場面・競合との違い・価格への納得・伝え方・小さな検証の5項目で整理した図解
最後の1案を決める前に、人気投票ではなく「選ばれる理由」を5つの視点から確かめます。

生活者に「どの案が良いですか」と聞くだけでは足りない

複数案を生活者へ見せるとき、単純に人気投票をするだけでは、 社内投票と大きく変わりません。

「A案、B案、C案の中で、どれが好きですか」と聞けば回答は得られます。 しかし、その回答だけで商品を決めるのは危険です。

「好き」と「買う」は違います。 見た目は好きでも、価格が高ければ買わないかもしれません。 自分では使いたくても、家族が使わなければ購入しないかもしれません。 興味はあっても、使う場面がなければ選ばれません。

生活者に案を見てもらうときは、

  • どんなときに使いたいか
  • 今使っているものと比べてどうか
  • 誰と使うか
  • どこに置くか
  • いくらなら納得できるか
  • 何が分からないか
  • 買わないとしたら、なぜか

まで聞くことが重要です。

採用しない判断も、商品開発の重要な成果

新商品開発では、必ず何かを発売しなければならないと思いがちです。 しかし、生活者との対話や試用を通じて、

  • 今は発売しない
  • 一度企画を戻す
  • 対象者を変える
  • 用途を絞る
  • 商品ではなく伝え方だけ変える
  • 既存商品を改善する

という判断になることもあります。

これは失敗ではありません。 発売後に大きな損失を出す前に、企画段階で違和感を見つけられたということです。

良いコンセプトでした。でも、製品化は見送りました。

生活者との対話では、コンセプトそのものへの評価は悪くありませんでした。 しかし、実際に使う場面、購入する理由、価格への納得感まで確かめると、 暮らしの中へ入る姿が十分に見えてきませんでした。

そこで企業側は、金型や量産へ進む前に製品化を見送りました。 進めるためだけでなく、進めない判断をするためにも生活者との対話は役立ちます。

現場ストーリー CASE008を見る →

商品化を決めることだけが、企画会議の成功ではありません。 「今は進めない」という判断も、重要な成果です。

企画案を選ぶための簡易チェックリスト

最後の1案を決める前に、次の項目を確認してみてください。

  • 誰が使うかだけでなく、いつ、どこで使うかが見えている
  • 現在使われている商品との違いが説明できる
  • 競合ではなく、この案を選ぶ理由がある
  • 価格を払う理由が分かる
  • 家族や周囲の人の反応も想定できている
  • 商品の価値が、生活者の言葉でも説明できる
  • 伝え方を変えたときの反応を確かめている
  • 小さな試作品やモックアップで確認している
  • 採用しない条件も決めている
  • 発売後に何を検証するか決めている

多くの項目に答えられない場合は、 まだ「決める段階」ではなく、「確かめる段階」かもしれません。

まとめ|最も人気の案ではなく、選ばれる理由が見える案を選ぶ

新商品案を決めきれないとき、社内投票や上司の判断で結論を出すことはできます。 しかし、それだけでは生活者に選ばれるかどうかは分かりません。

決める前に確かめたいのは、次の5つです。

  1. 誰の、どのような場面に入る商品なのか
  2. 競合商品と並んだとき、選ぶ理由があるか
  3. 価格を払う理由が伝わるか
  4. 説明を変えると、評価も変わるか
  5. 小さく試してから決められないか

新商品案を決めることは、最も優れた案を当てることではありません。 生活者との対話や観察を通じて、選ばれる可能性のある案を見つけ、 確かめながら育てることです。

そして、確かめた結果として「今は発売しない」という判断もあり得ます。 大切なのは、社内で一番人気の案ではなく、 生活者の暮らしの中で、選ばれる理由が見える案を選ぶことです。

新商品案を決めきれず、会議が止まっている方へ

こらぼたうんでは、生活者との対話、試作品の確認、 買い物場面の観察などを通じて、複数の商品案を比較し、 次に何を確かめるべきかを整理しています。

営業、開発、経営で意見が分かれている。 調査ではどの案も高評価で決められない。 上司の好みや多数決で決まりそう。 発売するか見送るかも含めて判断したい。 そのような段階からご相談いただけます。

企画案が完成していなくても問題ありません。 「何を決められずにいるのか」を整理するところから始められます。

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