企業担当者と生活者が生活用品の試作品を囲み、率直な意見を交わしている様子

Field Stories|CASE 008

良いコンセプトでした。
でも、製品化は見送りました。

生活者との対話から、魅力的な商品コンセプトが生まれました。 その考え方をもとに試作品をつくり、何度も改良を重ねました。 しかし、継続して参加していた生活者の反応は、 最後まで十分なものにはなりませんでした。 妥協して発売するのではなく、企業が選んだのは、 大きな投資へ進む前に製品化を見送ることでした。

テーマ:試作検証と製品化の判断 形式:生活者との継続的な共創セッション 企業名・商品名は非公開

Prologue

すべての共創プロジェクトが、製品化へ進むわけではありません。

生活者との対話を重ねると、 企業の中だけでは見つからなかった発想や、 新しい商品コンセプトが生まれることがあります。

そのコンセプトをもとに試作品をつくり、 生活者の反応を確かめながら改良していく。

うまくいけば、 商品は少しずつ選ばれる形へ近づいていきます。

しかし、試作を重ねても、 最後まで納得できる状態に届かないこともあります。

つくるためだけではなく、つくらない方がよいと判断するためにも、対話はあります。

Scene 01

はじまりは、期待できる商品コンセプトでした。

生活用品を製造している企業との取り組みでした。

生活者との対話を重ねる中で、 暮らしの中にある不便や、 既存の商品では十分に満たされていない思いが見えてきました。

そこから生まれたコンセプトは、 企業側にとっても納得感のあるものでした。

誰の、どのような困りごとを解決するのか。 どんな価値を届ける商品なのか。

進む方向は、以前よりも明確になっていました。

この考え方なら、今までにない商品になりそうです。

生活者が求めていたことにも、きちんと応えられそうです。

このコンセプトを、実際の形にしてみましょう。

企業は、そのコンセプトに沿って、 最初の試作品をつくることにしました。

Scene 02

コンセプトが良くても、試作品が同じ価値を届けられるとは限りません。

できあがった試作品を、 これまで継続してセッションに参加していた生活者に見てもらいました。

コンセプトを一緒に育ててきた方々です。 商品が目指していることも、 それまでの経緯も理解しています。

企業側には、 試作品を見た生活者が前向きに反応してくれるのではないかという期待がありました。

しかし、返ってきた反応は、 想像していたほど強いものではありませんでした。

考え方は良いと思います。でも、これを実際に使いたいかというと迷います。

試作品を見ると、最初に聞いた魅力が少し弱く感じます。

今使っているものから替える理由までは、まだ見えません。

コンセプトには共感していても、 実際の商品として目の前に置かれると、 十分に欲しいとは思えない。

その違いが、試作品によって見えてきました。

Scene 03

一度の反応だけで、すぐにあきらめたわけではありません。

最初の試作品で十分な反応が得られなかったからといって、 その場で製品化を断念したわけではありません。

生活者がどこに違和感を覚えたのか。 コンセプトの価値が、どこで弱くなっているのか。 形、使い方、サイズ、仕上がりなど、 何を変えれば魅力が伝わるのか。

企業側は意見を持ち帰り、 試作品を改良しました。

そして再び、生活者に確認してもらいました。

前より良くなっています。でも、まだ決め手がありません。

使えそうではありますが、ぜひ欲しいとまでは思いません。

もう少し何かが変わればと思うのですが、それが何かは難しいです。

改良によって評価された部分はありました。 しかし、商品の価値を大きく変えるほどの反応にはつながりませんでした。

企業の社長と企画担当者が複数の試作品と生活者の意見を確認し、製品化について慎重に検討している様子

Scene 04

試作を重ねるほど、止めにくくなることがあります。

商品開発には、 多くの時間と労力がかかります。

コンセプトを考え、 試作品をつくり、 何度も検討を重ねる。

ここまで取り組んだのだから、 何とか商品化まで進めたい。

そう考えるのは自然なことです。

かけてきた時間が長いほど、「ここで止めるのはもったいない」という気持ちも強くなります。

少し妥協すれば発売できるかもしれない。 販売してから改善すればよいかもしれない。

しかし、生活用品を量産するためには、 金型や製造準備など、 さらに大きな投資が必要になります。

十分に選ばれる理由が見つからないまま進めば、 商品をつくることはできても、 売り続けることは難しくなります。

Scene 05

社長が選んだのは、妥協して発売することではありませんでした。

何度か試作を繰り返しても、 生活者の反応は十分な状態には届きませんでした。

コンセプトそのものが間違っていたわけではありません。 改良してきた試作品にも、 良くなった部分はありました。

それでも、 大きな投資をして量産へ進むだけの確信は持てませんでした。

The Decision

中途半端な状態で製品化するよりも、ここで止める。

社長は、試作を続けてきた商品について、 製品化を見送る判断をしました。 これまでの取り組みを否定するためではなく、 さらに大きな投資へ進む前に、 商品として十分な価値を届けられるかを冷静に判断した結果でした。

商品化を見送れば、 それまでの時間や試作費用が戻ってくるわけではありません。

しかし、金型をつくり、 製造し、在庫を抱え、 営業が販売し続ける段階へ進む前に止めることができました。

それは、簡単ではありませんが、 経営として必要な判断でもありました。

Scene 06

製品化しなかったからといって、取り組みが無駄になったわけではありません。

今回の商品は、 最終的に市場へ出ることはありませんでした。

しかし、生活者との対話や試作の過程で、 多くのことが分かりました。

良いコンセプトと、 選ばれる商品は同じではないこと。

言葉では共感できても、 実際の形になると魅力が弱くなることがあること。

改良を繰り返せば、 必ず正解にたどり着くわけではないこと。

Before

良いコンセプトなら、製品化まで進めたい

生活者との対話から生まれたコンセプトを形にし、 市場へ届けることを目指していました。

After

価値が十分に届かないなら、投資前に止める

試作と検証の結果を受け止め、 妥協した商品を発売しないことも、 必要な経営判断だと考えました。

この経験は、 次の商品開発で何を確かめるべきか、 どの段階で判断すべきかを考える基準として残りました。

商品は残りませんでしたが、 判断のための視点は企業の中に残りました。

What We Found

共創の成果は、商品を生み出すことだけではありませんでした。

良いコンセプトでも、商品として成立するとは限らない

言葉では共感された価値も、 実際の形や使い方に置き換えたときに、 十分に伝わらないことがありました。

継続的な参加者だからこそ、変化を判断できる

コンセプトづくりから関わった生活者に 試作品を繰り返し確認してもらうことで、 改良後も残っている課題が見えてきました。

止める判断も、投資を守るための成果になる

金型や量産などの大きな投資へ進む前に、 十分な価値を届けられない可能性を確認し、 製品化を見送ることができました。

After the Project

商品は製品化されませんでした。 しかし、十分な反応が得られないまま妥協して発売するのではなく、 金型や量産に必要な大きな投資へ進む前に止めることができました。 生活者との対話は、商品をつくるためだけでなく、 つくらない方がよいと判断するためにも役立ちました。

つくることだけが、前へ進むことではありません。
大きな投資の前に止まることも、次へ進むための判断でした。

Free Consultation

その商品は、本当に製品化まで進むべきでしょうか。

良いアイデアやコンセプトができても、 実際の商品として十分な価値を届けられるとは限りません。 こらぼたうんでは、生活者との対話と試作検証を重ねながら、 進めるべき理由だけでなく、止めるべき兆候も一緒に確かめます。