技術系企業の担当者が、生活者へ製品や素材について説明している様子

Field Stories  |  CASE 002

「世界初」だけでは、伝わりませんでした。

世界初の技術。長年かけて開発した素材。他社にはまねできない性能。 企業にとって大切な事実を伝えても、生活者の表情は動きませんでした。 「だから、何がいいのですか」。その問いを重ねるうちに、技術は暮らしの価値へ変わり始めました。

テーマ:技術の価値・伝え方 形式:生活者との共創セッション ※複数の現場をもとに再構成

Prologue

技術のすごさを伝えるほど、生活者との距離が開いていきました。

技術系の企業との打ち合わせでは、よく耳にする言葉があります。

「この技術は世界で初めてです」
「これまでにない、すごい素材なんです」
「従来品と比べて、性能が大きく向上しています」

どれも、長い研究や開発の積み重ねによって生まれた大切な事実です。 企業担当者にとっては、それだけで十分に価値が伝わるはずの言葉でもあります。

しかし、生活者の表情はあまり動きませんでした。 技術を否定しているわけではありません。 ただ、その技術が自分の暮らしとどうつながるのかが、まだ見えていなかったのです。

Scene 01

企業が伝えたかったこと

セッションの冒頭、企業担当者は製品に使われている技術について説明しました。 特殊な製法、独自の素材、従来品にはない性能。 話す言葉には、自信と開発への誇りが込められていました。

けれど、丸テーブルを囲む生活者たちは、静かにうなずくだけでした。 驚いた様子も、使ってみたいという反応も、ほとんど見られません。

「これほどすごい技術なのに、なぜ反応がないのだろう」

企業担当者の胸に浮かんだ戸惑い

企業側から見れば、技術の新しさや性能の高さは明確な違いです。 しかし生活者には、それが自分にどのような良さをもたらすのか、 まだ受け取れる形になっていませんでした。

Scene 02

生活者が知りたかったこと

生活者から出てきたのは、技術を評価する言葉ではなく、 自分との接点を確かめるような質問でした。

「それを使うと、何が変わるのですか」
「今までの商品と、私にとって何が違うのでしょうか」

生活者から出てきた率直な疑問

これは「技術に興味がない」という意味ではありません。 生活者は、技術の名称や仕組みの前に、 その技術によって自分の時間、手間、安心、気持ちがどう変わるのかを知りたかったのです。

企業が話していたのは「技術がどれほど優れているか」。 生活者が知りたかったのは「それが私にとって、なぜ良いのか」。 同じ製品について話していても、見ている場所が違っていました。

Scene 03

「だから何?」を、何度も重ねる

そこで、技術の説明を一つずつ、暮らしとの関係まで掘り下げていきました。

「その性能が高いと、使う人にとって何が良いのでしょうか」
「それによって、どんな手間が減りますか」
「どんな場面で、良さを感じるのでしょうか」

技術を暮らしにつなぐための問い

同じ問いを何度か重ねるうちに、説明する言葉が少しずつ変わり始めました。

Technology

「特殊な素材を使っているため、耐久性が高い」

Benefit

「毎日使っても傷みにくく、買い替える回数を減らせる」

Life value

「長く安心して使えるので、買い替えの手間を気にしなくてよくなる」

その言葉が出たとき、生活者の表情が初めて変わりました。

「それは、いいですね。それなら使ってみたいです」

生活者の反応
技術系企業の担当者が製品素材を手に説明し、生活者から前向きな反応が生まれた共創セッションの様子
技術の説明が、生活者の暮らしにつながった瞬間。

Scene 04

簡単な言葉にすることへの抵抗

生活者の反応が変わっても、企業担当者がすぐに納得できるとは限りません。

「これほど高度な技術が、そんな普通の言葉になってしまうのでしょうか」

企業担当者の率直な思い

長い時間をかけて研究し、何度も失敗を重ねて完成させた技術です。 その価値が、日常的な短い言葉に置き換えられることに、 物足りなさや抵抗を感じるのは自然なことでした。

しかし、技術を暮らしの言葉へ置き換えることは、 技術を軽く扱うことでも、技術の価値を小さくすることでもありません。

Shift in perspective

技術を省くのではなく、生活者が受け取れる順番に変える。

最初に暮らしの中で得られる価値を伝え、 その価値を実現している理由として技術を説明する。 技術を隠したのではなく、伝える順番が変わったのです。

Scene 05

技術の説明から、暮らしの価値へ

その後、企業側の伝え方は少しずつ変わりました。

「どのような技術なのか」「どれほど性能が高いのか」だけではなく、 「誰のどんな困りごとを減らすのか」 「使う人の時間や気持ちがどう変わるのか」 「日常のどんな場面で良さを感じられるのか」を先に考えるようになりました。

技術の説明が不要になったわけではありません。 むしろ、生活者が価値を理解したあとに技術の話をすると、 その技術がなぜ必要なのか、なぜすごいのかまで届きやすくなりました。

技術の価値が変わったのではなく、生活者が受け取れる形になりました。

対話後に見えてきたこと

What we found

技術の価値は、生活者の暮らしにつながったとき、初めて伝わります。

企業にとっては、技術の新しさや性能の高さそのものが価値です。 しかし生活者が知りたいのは、その技術によって自分の暮らしがどう変わるのかということでした。 技術を簡単な言葉に置き換えるのではなく、生活者が受け取れる価値へ翻訳する。 そこから、伝え方の見直しが始まりました。

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