人は理屈ではなく感情で動く――だから商品開発に共創が必要になる

価値共創マーケティング / 商品開発 / 生活者視点

良い商品をつくったはずなのに、なぜか選ばれない。機能には自信があるのに、思ったほど響かない。 そんなときに見落とされがちなのが、「人はまず感情が動き、そのあとで理由を探すことが多い」という視点です。 これからの商品開発に必要なのは、機能の設計だけでなく、生活者の感情がどう動くかまで含めて考えること。 そして、そのためにこそ共創が役立ちます。

「良い商品をつくれば売れる」と思っていたのに、実際には思うように広がらない。 そんな経験は、多くの企業にあるのではないでしょうか。

市場を調べ、競合を分析し、機能を磨き、価格も検討する。 そのプロセス自体は間違っていません。むしろ、商品やサービスを形にするうえで欠かせない大切な取り組みです。 ただ、それだけでは届かない領域があります。

それが、人の感情が動く領域です。 人は理屈だけで選ぶのではありません。 まず「なんとなく気になる」「好きかもしれない」「自分に合いそう」「ちょっと違和感がある」といった感覚が先に働き、 その後で「機能が良いから」「価格に納得できるから」と理由づけをすることが少なくありません。

つまり、商品開発で本当に大切なのは、何ができるかだけではなく、 それが使う人の心にどう触れるかまで含めて考えることです。

人は理屈の前に、まず感情で動いている

このことを考えるうえで大切なのが、モチベーションの生まれ方です。 人の行動意欲は、いつも理屈から始まるわけではありません。 むしろ多くの場合、最初に感情が動き、その後に思考が意味づけをするという流れで動いています。

たとえば、夜道を歩いているときに足元で「ガサッ」と音がしたとします。 その瞬間、人は冷静に観察してから逃げるかどうかを判断するわけではありません。 考えるより先に、体が反応します。

その後で、よく見たらゴミ袋だったと分かれば恐怖は落ち着きますし、蛇だったと分かればさらに恐怖は強まります。 つまり、まず感情が立ち上がり、思考はその感情を確認したり、補完したりするように働くのです。

これは商品選びにも通じます。 生活者は、最初からすべての機能や価格を冷静に比較しているとは限りません。 まず「好きかも」「自分に合いそう」「ちょっと違うかも」といった感情が動き、 その後で理由を探していることが多いのです。

商品が選ばれる理由は「正しさ」だけではない

企業の中で商品を考えていると、どうしても「何が優れているか」「どこが競合より良いか」という見方が強くなります。 それは当然です。つくり手としては、自社商品の価値を明確にし、正しく伝えたいと考えるからです。

しかし、生活者は必ずしもその文脈で商品を見ていません。 毎日の暮らしの中で、限られた時間の中で、数多くの選択肢と並べながら、 感覚的に「これがいい」「これは違う」と判断している場面が非常に多いのです。

生活者が実際に見ているのは、こんなポイントです

  • 手に取ったときに気分が上がるか
  • 見た目や言葉づかいに惹かれるか
  • 自分の暮らしの中に自然に入りそうか
  • 使ったときの気分が想像しやすいか
  • 誰かに話したくなるか、すすめたくなるか

こうした要素は、スペック比較表には載りません。 けれど、実際にはこうした感覚が、購買や継続利用を大きく左右しています。 だからこそ、商品開発では「正しいものをつくる」だけではなく、 心が動くものをつくるという視点が欠かせません。

感情は曖昧だからこそ、開発現場でこぼれ落ちやすい

感情は、機能や価格のように整理しやすいものではありません。 数字で測りにくく、本人も言葉にしきれず、会議資料にも落とし込みにくい。 だからこそ、企業の開発現場では後回しにされやすい面があります。

たとえばアンケートでは、「満足しています」「便利です」「価格は妥当です」といった答えは得られるかもしれません。 しかし、本当に重要なのは、その手前にある微妙な感情の動きです。

本当は、こうした“言葉になる前”の反応が重要です

  • 便利だけど、なぜか使いたくならない
  • 悪くはないのに、心が動かない
  • なんとなく好きだが、理由はうまく言えない
  • 少し引っかかるが、どこが気になるのか説明しづらい
  • 自分向きではない感じがする

こうした曖昧な反応こそ、実は「選ばれるかどうか」に直結しています。 しかし、それは定量調査や社内会議だけでは拾いきれません。 だからこそ、生活者との接点の持ち方そのものを見直す必要があります。

共創は「意見を集める場」ではなく、感情に触れるための実践

共創というと、「みんなでアイデアを出すこと」や「生活者参加型の企画会議」と受け取られることがあります。 もちろんそれも一つの形ですが、本質はそこだけではありません。

共創の価値は、企業が一方的に仮説を立てて答えを取りに行くのではなく、 生活者と同じ場に立ち、同じ目線で対話しながら、その奥にある感情や文脈に触れられることにあります。

実際に対話の場では、アンケートには出てこないような言葉が出てきます。

「この商品、便利なんだけど台所に置くとちょっと気分が下がるんです」

「機能は十分なんですけど、なんだか“自分向き”じゃない感じがして」

「悪くないんです。でも、友達にすすめたい感じではないですね」

こうした言葉には、単なる評価以上のものが含まれています。 そこには、暮らし方、美意識、価値観、気分、家族との関係、使う場面の空気感など、 商品のスペック表には表れない選択の背景がにじんでいます。

共創とは、単に意見を集めることではありません。 商品が入り込む生活の文脈ごと受け取り、人の感情がどこで動くのかを理解するための実践です。

感情が動いた瞬間に、商品開発のヒントとしてピンをさす

企業が見がちな機能・価格・競合比較と、共創セッションで見えてくる生活者の感情や違和感を対比し、感情が動いた瞬間を商品開発のヒントにつなげる流れを示したグラフィックレコーディング
感情が動いた瞬間を受け取り、商品開発のヒントへつなげる流れを整理したグラフィックレコーディング

感情が動く場面をつくり、その感情が高まった瞬間に意味づけをする。 この考え方は、リーダーシップや研修設計だけでなく、商品開発にも応用できます。

たとえば、ある会社の表彰式で、社員の家族を招いて永年勤続表彰を行ったとします。 表彰される姿を見た家族は嬉しくなり、本人も誇らしい気持ちになります。 その場にいる他の社員も、「自分も頑張りたい」「家族に喜んでもらいたい」という感情が動きます。

その感情が高まったタイミングで、「来年はどんな挑戦をしたいか」を付箋に書いてもらう。 すると、その目標は単なる業務目標ではなく、感情と結びついた行動目標になります。 心理学では、こうしたきっかけづくりを「アンカリング」と呼ぶことがあります。

商品開発における共創セッションも、これに近い役割を持っています。 生活者の表情が変わった瞬間、思わず言葉が出た瞬間、少し身を乗り出した瞬間、逆に違和感で手が止まった瞬間。 そこに、商品が選ばれる理由、または選ばれない理由の手がかりがあります。

大切なのは、その反応を「ただの感想」として流さないことです。 「なぜ今、表情が変わったのか」 「何に反応したのか」 「どんな記憶や暮らしの場面と結びついたのか」 その場で丁寧に問いかけ、感情が動いた瞬間にピンをさす。

そうすることで、生活者自身もまだ言葉にできていなかった価値が見えてきます。 共創の場は、意見を回収するためだけの場ではありません。 感情が動いた瞬間を見逃さず、商品開発のヒントとして受け取る場でもあるのです。

現場ストーリー|実際の支援事例

「高い」の一言を、価格の問題だと思っていました。

ある商品について生活者と対話したとき、最初に出てきたのは「高い」という反応でした。 企業側は、価格を下げるべきか、容量を変えるべきかという問題として受け止めかけました。

しかし、その言葉が出た場面や理由を丁寧にたどると、 生活者が見ていたのは価格だけではありませんでした。 自分用なのか贈り物なのか、日常の商品なのか特別な日の商品なのか、 作り手の背景を知っているかどうかによっても、感じ方は変わっていました。

同じ価格でも、商品が持つ意味や使う場面が見えると、受け止め方は変わります。 「高い」という理屈のような言葉の奥に、感情や暮らしの文脈があった。 その瞬間を対話の中で捉え直し、価格ではなく価値の伝え方を考えるきっかけになった事例です。

現場ストーリー CASE023を見る →

「女性は感情で動く」と単純化しすぎないほうがいい

「女性は感情で動きやすい」「男性は理屈で選ぶ」といった見方には、たしかに一部の市場で当てはまりそうな場面もあります。 女性向けメディアで写真や世界観が重視されやすいことや、共感性の高い表現が反応を得やすいこともあるでしょう。

ただ、商品開発の視点としては、性別だけで単純に括ってしまうのは少し危うい面もあります。 同じ女性でも重視するものは違いますし、同じ男性でも感覚的に商品を選ぶ人はたくさんいます。

大切なのは、男性か女性かではなく、 その人がどんな暮らしの中で、何に心を動かされるのかを見ることです。

年齢、家族構成、仕事、価値観、過去の経験、日常の習慣。 そうした文脈の中で感情は動きます。 だからこそ、属性で切るだけでなく、一人ひとりの背景に目を向けることが重要です。

これからの商品開発には「感情設計」が必要になる

いま、多くの商品やサービスで機能差がつきにくくなっています。 一定以上の品質は当たり前になり、価格競争に入れば消耗しやすい。 そうした時代に選ばれる理由になるのは、単純なスペックの優位性だけではありません。

選ばれる理由になりやすい“感情を伴う価値”

  • 使うと気分が良い
  • 自分らしさに合う
  • 共感できる
  • 応援したくなる
  • 人にすすめたくなる

つまり、これからの商品開発は、機能開発だけでは足りません。 感情設計が必要になります。 どんな気持ちで商品と出会い、どんな印象を持ち、どんな気分で使い続けるのか。 そこまで含めて考えることで、ようやく「選ばれる理由」が見えてきます。

では、その「感情」はどこから生まれるのでしょうか。

🌿 感情が動く理由は、どこから生まれるのか?

人の感情は、単なる好みだけで決まるものではありません。 その人の暮らしや経験、価値観といった「背景」や「文脈」の中で動いています。

👉 同じ商品でも、人によって響き方が違うのはなぜなのか。

文脈価値で差別化する ─ 商品が売れない時代の共創マーケティング戦略

社内会議だけでは見えにくいこと、共創で見えてくること

視点 社内会議で見えやすいこと 共創で見えてくること
商品価値 機能・価格・競合との違い 暮らしの中でどんな意味を持つか
生活者の反応 意見・評価・改善要望 表情・違和感・小さな本音
判断材料 データ・経験・社内の仮説 感情・文脈・使う場面の空気感
開発の方向性 正しさや優位性の確認 選ばれる理由や違和感の発見

社内会議では整理しやすい情報が見えます。一方、共創では、生活者の感情や文脈など、商品が本当に選ばれる理由に近い手がかりが見えてきます。

だからこそ、企業の中だけで決めないほうがいい

企業の中には、経験も知見もあります。市場を見る力も、技術も、実行力もあります。 ただし、企業の中だけで考えていると、どうしても「売りたい側の論理」に寄りやすくなります。

すると、 「ここが強みだから伝わるはず」 「この機能があるから選ばれるはず」 「競合より優れているから響くはず」 という見方が中心になります。

しかし、生活者はそこまで丁寧に比較してくれるとは限りません。 暮らしの中で、感覚的に、他の選択肢と並べながら判断しています。 だからこそ、企業の中だけで決めきらず、生活者と一緒に考えることが大切です。

共創を通じて、企業の思い込みを少しずつやわらかく崩しながら、 実際に心が動くポイントを探っていく。 その積み重ねが、表面的ではない、本当に届く商品やサービスにつながっていきます。

まとめ|人の心が動くところから、商品開発を考える

人は理屈だけでは動きません。まず感情が動き、そこに意味が生まれ、最後に理屈が追いついてくる。 これは、消費者にも生活者にも共通する自然な反応です。

だからこそ、商品やサービスの開発では、「何ができるか」だけではなく、 「どんな気持ちになるか」「なぜ惹かれるのか」「どこに違和感があるのか」まで見ていく必要があります。

そして、その感情は机上ではつかみきれません。 生活者との対話、場の共有、言葉にならない反応の受け取り。 ときには「高い」といった一言の奥にも、価格だけでは説明できない感情や暮らしの文脈があります。 そうした共創のプロセスの中ではじめて見えてくることがたくさんあります。

人は感情で動く。だから商品開発には、生活者との共創が必要になる。
この視点を持つだけでも、商品づくりの景色は大きく変わってくるはずです。

生活者の感情に触れる商品開発を、一緒に考えたい方へ

こらぼたうんでは、生活者との対話や共創の場づくりを通じて、 机上の仮説だけでは見えにくい「本音」「違和感」「小さな反応」を受け取りながら、 商品やサービスの可能性を一緒に探るお手伝いをしています。

「機能はあるのに響かない」「顧客理解を深めたい」「感情が動く商品開発に切り替えたい」 そんなときは、ぜひお気軽にご相談ください。

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