機能には自信がある。価格も決して高すぎない。それなのに、なぜか選ばれない。
そんなとき、商品の性能だけでなく、使う人が何を感じ、どんな気持ちで選んでいるのかを確かめることが大切です。
この記事では、商品選びにおける感情の役割と、生活者との対話・共創を商品開発に活かす方法を考えます。
1. なぜ機能が優れた商品でも選ばれないのか
企業は、商品の機能、品質、価格、競合との違いを時間をかけて検討します。その努力は欠かせません。しかし生活者は、企業が想定した順番で商品を評価するとは限りません。
「使いやすそう」「なんだか好き」「自分の家には合わないかも」。商品を見たときや手に取ったとき、そんな感覚が生まれます。
例えば便利なキッチン用品でも、生活者が「台所に出しておきたくない」と感じたら、機能の説明を増やすだけでは解決しないかもしれません。置き場所や見た目、使う場面まで含めて考える必要があります。
商品のよさを伝えるには、「何ができるか」と同じくらい「暮らしの中でどう感じられるか」を知ることが大切です。
2. 商品選びには、感情と理屈の両方が働いている
人は理屈だけで商品を選んでいるわけではありません。機能や価格を比較する前に、あるいは比較している最中にも、「好き」「安心する」「自分に合いそう」といった感情が判断に影響します。
もちろん、すべての買い物で感情が先に来るわけではありません。価格を慎重に比較する人もいますし、性能を最優先する場面もあります。感情と理屈は対立するものではなく、互いに影響しながら選択を形づくっています。
ここで考えたいのは、企業が説明できる商品のよさと、生活者が実際に選びたくなる理由は、必ずしも同じではないということです。
「機能には満足している。でも買う気にならない」という反応には、まだ言葉にできていない理由が隠れているかもしれません。
3. アンケートだけでは見えにくい、生活者の小さな感情
アンケートは、多くの人の評価や傾向を知るうえで役立ちます。しかし、本人もはっきり説明できない迷いや違和感を、質問項目だけで十分に捉えるのは難しいことがあります。
例えば、次のような反応です。
以下は説明のための例です。
- 「便利なんだけど、なぜか使いたくならない」
- 「悪くないけれど、うちの家には合わない気がする」
- 「ちょっと気になる。でも何が気になるのか分からない」
そんな言葉が出たら、「そう感じたのはどの場面ですか」「普段はどこに置いていますか」と、暮らしの状況を一緒に確かめてみます。
表情や手の動きも手がかりになります。ただし、笑顔だから必ず気に入った、手が止まったから嫌いだ、と決めつけてはいけません。見えた反応の理由を、本人との対話で確かめることが重要です。
4. 共創だからこそ発見できる「選ばれる理由」
生活者の本音を知るために、必ずしも最初から大掛かりな共創プロジェクトが必要なわけではありません。調査や観察にも、それぞれ大切な役割があります。
共創ならではの強みは、気づいたことを企業が一方的に持ち帰って終わらせず、企業と生活者が一緒に考え、試し、見直していけることです。
企業担当者が生活者の反応を目の前で受け取ると、「この機能をもっと説明しよう」ではなく「そもそも使う場面を間違えて考えていたのかもしれない」という新しい問いが生まれることがあります。
現場ストーリー|CASE023
「高い」の一言を、価格の問題だと思っていました。
生活者から「少し高い」と言われたとき、企業は値下げを考えていました。しかし、素材を選んだ理由や省かなかった工程を伝えると、受け止め方が変わりました。
ここで見直すべきだったのは、価格そのものだけではなく、まだ生活者に届いていなかった商品の価値でした。「高い」という言葉を結論にせず、背景を確かめることの大切さが分かります。
生活者の感情を企業側が思いどおりに操作するのではなく、何を感じたのかを理解し、その人にとって意味のある商品体験を一緒につくっていく。そこに共創の意義があります。
5. 生活者の感情を商品開発に活かす4つのステップ
では、実際の開発現場では何から始めればよいのでしょうか。次の4つの流れが一つの方法です。
ステップ1|生活者が商品に触れる場をつくる
説明を聞いてもらうだけではなく、商品を見てもらう、選んでもらう、試作品を使ってもらうなど、自然な反応が表れやすい場を用意します。
ステップ2|言葉と行動の両方を観察する
迷った場所、手に取った順番、ためらい、思わず出た言葉に注目します。その場で良し悪しを判断せず、何が起きたかを丁寧に記録します。
ステップ3|感情が動いた理由を本人に確かめる
「今、何を感じましたか」「いつもの暮らしではどうしていますか」。答えを誘導せずに尋ねます。企業の思い込みと異なる答えが出たときこそ、考え直す機会になります。
ステップ4|発見を商品や伝え方に反映し、もう一度確かめる
出てきた反応を単なる感想で終わらせず、使い方、形状、パッケージ、伝え方などの改善案に変えます。できれば同じ生活者と再び確かめ、必要に応じて修正を重ねます。
大切なのは、生活者の言葉をそのまま商品仕様にすることではなく、なぜそう感じたのかを一緒に考え、企業が判断を深めることです。
6. まとめ|人の心が動く理由を、商品づくりに活かす
商品の機能や価格を検討することは、もちろん大切です。しかし、それだけでは生活者が選ぶ理由を十分に説明できない場合があります。
商品を手に取ったときの気持ち、使う場面への想像、言葉にならない違和感。そうした小さな反応に向き合うことで、企業の見方が変わることがあります。
そして、発見したことを生活者と一緒に考え、試し、直していく。その繰り返しが、ただ一つの商品を改善するだけでなく、生活者の視点から商品を考え続けられる企業へとつながっていくのだと思います。
商品のよさが伝わらない。その理由を一緒に考えてみませんか?
「機能には自信があるのに選ばれない」「生活者が何を感じているのか、もう少し深く知りたい」。そんな段階からでも構いません。こらぼたうんでは、生活者との対話や共創の場づくりを通じて、商品やサービスの新しい可能性を一緒に探ります。
🗒️ コラム・運営視点 一覧へ