人は理屈ではなく感情で動く――だから商品開発に共創が必要になる

価値共創マーケティング / 商品開発 / 生活者視点

良い商品をつくったはずなのに、なぜか選ばれない。機能には自信があるのに、思ったほど響かない。 そんなときに見落とされがちなのが、「人はまず感情が動き、そのあとで理由を探すことが多い」という視点です。 これからの商品開発に必要なのは、機能の設計だけでなく、生活者の感情がどう動くかまで含めて考えること。そして、そのためにこそ共創が役立ちます。

「良い商品をつくれば売れる」と思っていたのに、実際には思うように広がらない。 そんな経験は、多くの企業にあるのではないでしょうか。

市場を調べ、競合を分析し、機能を磨き、価格も検討する。 そのプロセス自体は間違っていません。むしろ、商品やサービスを形にするうえで欠かせない大切な取り組みです。 ただ、それだけでは届かない領域があります。

それが、人の感情が動く領域です。 人は理屈だけで選ぶのではありません。 まず「なんとなく気になる」「好きかもしれない」「自分に合いそう」「ちょっと違和感がある」といった感覚が先に働き、 その後で「機能が良いから」「価格に納得できるから」と理由づけをすることが少なくありません。

つまり、商品開発で本当に大切なのは、何ができるかだけではなく、 それが使う人の心にどう触れるかまで含めて考えることです。

商品が選ばれる理由は「正しさ」だけではない

企業の中で商品を考えていると、どうしても「何が優れているか」「どこが競合より良いか」という見方が強くなります。 それは当然です。つくり手としては、自社商品の価値を明確にし、正しく伝えたいと考えるからです。

しかし、生活者は必ずしもその文脈で商品を見ていません。 毎日の暮らしの中で、限られた時間の中で、数多くの選択肢と並べながら、 感覚的に「これがいい」「これは違う」と判断している場面が非常に多いのです。

生活者が実際に見ているのは、こんなポイントです

  • 手に取ったときに気分が上がるか
  • 見た目や言葉づかいに惹かれるか
  • 自分の暮らしの中に自然に入りそうか
  • 使ったときの気分が想像しやすいか
  • 誰かに話したくなるか、すすめたくなるか

こうした要素は、スペック比較表には載りません。 けれど、実際にはこうした感覚が、購買や継続利用を大きく左右しています。 だからこそ、商品開発では「正しいものをつくる」だけではなく、 心が動くものをつくるという視点が欠かせません。

感情は曖昧だからこそ、開発現場でこぼれ落ちやすい

感情は、機能や価格のように整理しやすいものではありません。 数字で測りにくく、本人も言葉にしきれず、会議資料にも落とし込みにくい。 だからこそ、企業の開発現場では後回しにされやすい面があります。

たとえばアンケートでは、「満足しています」「便利です」「価格は妥当です」といった答えは得られるかもしれません。 しかし、本当に重要なのは、その手前にある微妙な感情の動きです。

本当は、こうした“言葉になる前”の反応が重要です

  • 便利だけど、なぜか使いたくならない
  • 悪くはないのに、心が動かない
  • なんとなく好きだが、理由はうまく言えない
  • 少し引っかかるが、どこが気になるのか説明しづらい
  • 自分向きではない感じがする

こうした曖昧な反応こそ、実は「選ばれるかどうか」に直結しています。 しかし、それは定量調査や社内会議だけでは拾いきれません。 だからこそ、生活者との接点の持ち方そのものを見直す必要があります。

共創は「意見を集める場」ではなく、感情に触れるための実践

共創というと、「みんなでアイデアを出すこと」や「生活者参加型の企画会議」と受け取られることがあります。 もちろんそれも一つの形ですが、本質はそこだけではありません。

共創の価値は、企業が一方的に仮説を立てて答えを取りに行くのではなく、 生活者と同じ場に立ち、同じ目線で対話しながら、その奥にある感情や文脈に触れられることにあります。

実際に対話の場では、アンケートには出てこないような言葉が出てきます。

「この商品、便利なんだけど台所に置くとちょっと気分が下がるんです」

「機能は十分なんですけど、なんだか“自分向き”じゃない感じがして」

「悪くないんです。でも、友達にすすめたい感じではないですね」

こうした言葉には、単なる評価以上のものが含まれています。 そこには、暮らし方、美意識、価値観、気分、家族との関係、使う場面の空気感など、 商品のスペック表には表れない選択の背景がにじんでいます。

共創とは、単に意見を集めることではありません。 商品が入り込む生活の文脈ごと受け取り、人の感情がどこで動くのかを理解するための実践です。

「女性は感情で動く」と単純化しすぎないほうがいい

「女性は感情で動きやすい」「男性は理屈で選ぶ」といった見方には、たしかに一部の市場で当てはまりそうな場面もあります。 女性向けメディアで写真や世界観が重視されやすいことや、共感性の高い表現が反応を得やすいこともあるでしょう。

ただ、商品開発の視点としては、性別だけで単純に括ってしまうのは少し危うい面もあります。 同じ女性でも重視するものは違いますし、同じ男性でも感覚的に商品を選ぶ人はたくさんいます。

大切なのは、男性か女性かではなく、 その人がどんな暮らしの中で、何に心を動かされるのかを見ることです。

年齢、家族構成、仕事、価値観、過去の経験、日常の習慣。 そうした文脈の中で感情は動きます。 だからこそ、属性で切るだけでなく、一人ひとりの背景に目を向けることが重要です。

これからの商品開発には「感情設計」が必要になる

いま、多くの商品やサービスで機能差がつきにくくなっています。 一定以上の品質は当たり前になり、価格競争に入れば消耗しやすい。 そうした時代に選ばれる理由になるのは、単純なスペックの優位性だけではありません。

選ばれる理由になりやすい“感情を伴う価値”

  • 使うと気分が良い
  • 自分らしさに合う
  • 共感できる
  • 応援したくなる
  • 人にすすめたくなる

つまり、これからの商品開発は、機能開発だけでは足りません。 感情設計が必要になります。 どんな気持ちで商品と出会い、どんな印象を持ち、どんな気分で使い続けるのか。 そこまで含めて考えることで、ようやく「選ばれる理由」が見えてきます。

だからこそ、企業の中だけで決めないほうがいい

企業の中には、経験も知見もあります。市場を見る力も、技術も、実行力もあります。 ただし、企業の中だけで考えていると、どうしても「売りたい側の論理」に寄りやすくなります。

すると、 「ここが強みだから伝わるはず」 「この機能があるから選ばれるはず」 「競合より優れているから響くはず」 という見方が中心になります。

しかし、生活者はそこまで丁寧に比較してくれるとは限りません。 暮らしの中で、感覚的に、他の選択肢と並べながら判断しています。 だからこそ、企業の中だけで決めきらず、生活者と一緒に考えることが大切です。

共創を通じて、企業の思い込みを少しずつやわらかく崩しながら、 実際に心が動くポイントを探っていく。 その積み重ねが、表面的ではない、本当に届く商品やサービスにつながっていきます。

まとめ|人の心が動くところから、商品開発を考える

人は理屈だけでは動きません。まず感情が動き、そこに意味が生まれ、最後に理屈が追いついてくる。 これは、消費者にも生活者にも共通する自然な反応です。

だからこそ、商品やサービスの開発では、「何ができるか」だけではなく、 「どんな気持ちになるか」「なぜ惹かれるのか」「どこに違和感があるのか」まで見ていく必要があります。

そして、その感情は机上ではつかみきれません。 生活者との対話、場の共有、言葉にならない反応の受け取り。 そうした共創のプロセスの中ではじめて見えてくることがたくさんあります。

人は感情で動く。だから商品開発には、生活者との共創が必要になる。
この視点を持つだけでも、商品づくりの景色は大きく変わってくるはずです。

生活者の感情に触れる商品開発を、一緒に考えたい方へ

こらぼたうんでは、生活者との対話や共創の場づくりを通じて、 机上の仮説だけでは見えにくい「本音」「違和感」「小さな反応」を受け取りながら、 商品やサービスの可能性を一緒に探るお手伝いをしています。

「機能はあるのに響かない」「顧客理解を深めたい」「感情が動く商品開発に切り替えたい」 そんなときは、ぜひお気軽にご相談ください。

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