六次化は「加工」で失速する|生活者視点×共創で“選ばれる理由”をつくる

更新日:2026.08.04

六次化の商品づくりで立ち止まったときに

地域の農産物を使った加工品が完成した。
パッケージもできた。
展示会にも出した。

ところが、思ったように注文が入らない。

「味には自信がある」
「素材も良い」
「地域の物語もある」

それでも選ばれないとき、さらに別の加工品を増やそうとしていないでしょうか。

六次化が失速するのは、加工技術が足りないからとは限りません。
誰が、どんな場面で、なぜ選ぶのかを確かめないまま、商品化が先に進んでいることがあります。

この記事で考えること

  • 六次化が「加工」で止まりやすい3つの理由
  • 地域資源の価値を、生活者の暮らしから見直す方法
  • 商品・容器・言葉・売り場をどう切り分けるか

1. 加工品は完成した。それでも、なぜ選ばれないのか

六次化に取り組む現場では、商品が完成することが一つの大きな目標になります。

原料を選び、加工方法を決め、試作を繰り返し、容器やパッケージを整える。 ここまでたどり着くには、多くの時間と労力が必要です。

しかし、商品が完成したことと、選ばれる理由ができたことは同じではありません。

商品化した後に起こりやすい迷い

  • 展示会では評判が良いのに、継続注文につながらない
  • 試食では「おいしい」と言われるのに、売り場では動かない
  • 地域の物語を伝えても、自分ごととして受け取ってもらえない
  • 販路を増やしても、どの売り場が合うのか分からない
  • 売れない原因が、味・価格・量・容器・説明のどこにあるのか判断できない

この段階で、新しい加工品を追加したり、パッケージだけを変えたりしても、 原因が分からないまま選択肢を増やすことになります。

必要なのは商品数を増やすことではなく、 生活者がその商品を選ぶ場面を具体的にすることです。

2. 六次化が「加工」で止まりやすい3つの理由

理由1|余っている素材から考えている

「この作物が余るから、ジャムにしよう」 「規格外品が出るから、粉末にしよう」と、 生産側の事情から商品企画が始まります。

理由2|加工方法が先に決まっている

瓶詰め、乾燥、冷凍、粉末など、 設備や委託先の都合で形が決まり、 誰がどう使うのかが後づけになります。

理由3|「おいしい」「珍しい」で止まっている

試食では評価されても、 いつ食べるのか、誰と食べるのか、 どこで買うのかまで確かめられていません。

共通していること

商品を作るところまでは具体的でも、 生活者の暮らしへ入る場面が曖昧なままです。

素材がある

加工方法を決める

完成してから売り方を考える

ではなく

誰の、どんな場面に届けるか

必要な量・形・使い方を考える

加工方法と届け方を決める

素材を活用すること自体は大切です。 ただし、素材を加工する理由と、生活者が選ぶ理由は同じではありません。

3. 六次化の目的は、商品数を増やすことではない

六次化は、農林漁業に加工や流通、販売、サービスを組み合わせ、 地域資源から新しい付加価値を生み出す取り組みです。

現在は、農林水産物だけでなく、文化、景観、観光、人材なども含めて地域の価値を生み出す考え方として、 「農山漁村発イノベーション」という言葉も使われています。

ただし、呼び方が変わっても、地域側にある資源を商品化するだけでは十分ではありません。

加工は手段であって、目的ではありません

六次化の目的は、加工品の種類を増やすことではなく、 地域にある資源を、生活者が価値を感じられる形へ変えることです。

生活者は「地域の事情」だけで買うわけではありません。

自分の暮らしのどこに入るのか。 どんな時間に使うのか。 誰と一緒に楽しむのか。 似た商品がある中で、なぜこれを選ぶのか。

地域の良さが、生活者の暮らしで役立つ形に翻訳されて初めて、 付加価値が「選ばれる理由」になります。

4. 地域資源の価値は、生産者だけでは見つけにくい

生産者にとって日常の一部になっているものが、 生活者には新鮮な価値として映ることがあります。

反対に、生産者が大切にしているこだわりが、 そのままでは生活者に伝わらないこともあります。

だからこそ、地域資源の価値を考えるときは、 作り手の視点だけで決めず、生活者が何に反応するのかを見る必要があります。

この事例が示しているのは、 価値は素材の中に固定されているのではなく、 生活者との関係の中で見つかるということです。

5. 試食では、味の先にある暮らしを確かめる

食品の試作では、「おいしいですか」「どちらが好きですか」と聞きがちです。

しかし、味の評価だけでは実際の購入場面は見えてきません。

試食で確かめたいこと

  • いつ食べたいと思うか
  • 誰と一緒に食べたいか
  • 一度にどのくらいの量がよいか
  • 自宅用か、贈答用か
  • どこで売っていたら買いやすいか
  • 何と比べて選ぶか
  • 食べ終わった後、どんな気持ちになりたいか

「おいしい」という言葉は、商品評価の終点ではありません。

その先にある生活場面を聞くことで、 内容量、容器、価格、売り場、伝え方を見直す手がかりが生まれます。

6. 商品・容器・言葉・売り場を切り分ける

商品が売れないとき、原因をすべて「商品力の不足」と考える必要はありません。

  • 1 商品
    味、品質、素材、保存性などに本当の問題があるのか。
  • 2 量と容器
    一度に使い切れるか。保管しやすいか。贈りやすいか。
  • 3 言葉
    地域側の説明ではなく、生活者が自分の場面を想像できる表現になっているか。
  • 4 売り場
    どの商品と並び、どんな目的で来た人に見つけてもらうのか。
  • 5 使い方
    買った後の使い方や食べ方が自然に想像できるか。

売れない原因が言葉や売り場にあるのに、商品そのものを作り直せば、 時間も費用も余計にかかります。

反対に、味そのものに課題があるのに、物語やパッケージだけを変えても根本的な解決にはなりません。

生活者との対話や観察は、 答えをそのままもらうためではなく、 どこを変えるべきかを切り分けるために行います。

7. 商品化する前から、届け方まで考える

六次化では、商品が完成してから販路を探すことがあります。

しかし、どこで誰に売るのかが決まっていなければ、 適切な量、容器、価格、説明も決めにくくなります。

誰に届けるか

年齢や性別だけでなく、 どんな生活場面にいる人なのかを具体的にします。

どこで出会うか

道の駅、百貨店、専門店、EC、飲食店など、 買う目的に合う場所を考えます。

誰が説明するか

生産者、販売員、バイヤー、Webサイトなど、 伝える人と必要な情報を整理します。

小さくどう試すか

少量の試作品や簡易パッケージで、 実際の反応を見ながら修正します。

販路を都市部へ広げる前に

「都市で売る」ことを先に決めるのではなく、 誰のどんな暮らしへ届けるのかを決めます。

地域側の思いを押し出すだけでなく、 生活者の暮らしにどう入るのかを一緒に確かめることが、 加工で終わらない六次化につながります。

私自身もこれまで、福島の企業と横浜の生活者をつなぎ、 地域資源を商品や伝え方へ落とし込む取り組みに関わってきました。

その中で感じるのは、六次化は商品開発だけでは完結しないということです。

商品をつくり、使い方を確かめ、言葉を整え、売り場へ届け、 反応を見ながら修正する。

そこまでつながって初めて、地域資源が継続して選ばれる価値になります。

8. まとめ|六次化は、暮らしの中に居場所をつくること

この記事の要点

  • 六次化は、加工品の種類を増やすことが目的ではない
  • 素材や加工方法から始めると、使う場面が後づけになりやすい
  • 「おいしい」「珍しい」の先にある暮らしを確かめる
  • 商品・量・容器・言葉・売り場を切り分けて考える
  • 商品化前から届け方まで設計し、小さく試しながら修正する

六次化は、地域資源を加工することではありません。

地域にある素材、技術、文化、人の営みを、 生活者の暮らしに届く形へ翻訳することです。

加工品を作る前に、誰のどんな時間に入るのかを確かめる。 商品ができた後も、容器、言葉、売り場、届け方を見直す。

その積み重ねによって、地域の商品は暮らしの中に居場所を持ち、 継続して選ばれる理由を育てていきます。

加工品はできた。でも、誰にどう届ければよいか分からない。

素材にも味にも自信がある。
展示会や商談にも出している。
それでも、継続して選ばれる理由が見えない。

そのような段階から、 生活者が使う場面、量、容器、伝え方、売り場を一緒に確かめ、 商品・販路・提案方法のどこを見直すべきかを整理します。

事業の「仕立て図」を、共創で整理しませんか?

①知る→②初回→③再訪→④ファン化・紹介。どこで止まっているかを可視化すると、次の一手が明確になります。
生活者の視点を入れて、行動が進む仕掛けを一緒に組み立てられます。

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