この記事は価値共創マーケティングの入口ガイドで紹介している 「顧客理解・リサーチ」の実践テーマを掘り下げた内容です。 まず全体像をやさしくつかみたい方は入口ガイドを、より詳しく整理して読みたい方は 価値共創マーケティングの全体像(基本・ポイント・導入法)もあわせてご覧ください。
アンケートの“建前”ではなく、現場のふるまいや会話の行間に現れる“本当の決め手”。 こらぼたうんのワークで使う 対話のネタ を起点に、 観察対話行動データの3つの視点で整理しました。 大切なのは、一度きりの聞き取りではなく、生活者との継続的な対話と関係性の中から、まだ言葉になっていない欲求を見つけていくことです。
この記事でわかること
- アンケートだけでは見えにくい「隠れた欲求」とは何か
- 顧客理解を深めるために、何を観察し、どう対話すればよいか
- 商品企画や改善に活かしやすい10の着眼点
はじめに
商品企画やマーケティングの現場で、よく使われるのがアンケートや数値データです。もちろん大切な方法ですが、そこで分かるのは「お客様が自分で言葉にできること」が中心です。
でも実際に人がモノを選ぶとき、決め手になっているのは意外と言葉にされない小さな気持ちや習慣だったりします。
- 「値段が一番大事」と言いつつ、最終的には家族が安心できるかで決めていたり
- 「デザインが気に入った」と答えながら、店頭では手触りや使いやすさを確かめていたり
こうした「隠れた欲求」は、アンケートだけではなかなか見えてきません。だからこそ、実際の使い方を観察したり、対話の中でポロっと出てくる本音に耳を傾けたり、行動データを追ってみることが大事になります。
そして、これを企業側だけで分析するのではなく、お客様と一緒に考える“共創”の場に取り入れると、もっと自然に本音が引き出せます。こらぼたうんでは、その入口として小さな問いとヒントの束である「対話のネタ」を配布し、会話のきっかけづくりから設計します。
ここで重要なのは、対話を一度きりのヒアリングで終わらせないことです。隠れた欲求は、その場で答えてもらって終わるものではなく、観察や試行、やり取りを重ねる中で少しずつ輪郭をあらわします。だからこそ、聞き取りの継続ではなく、関係の継続という視点が欠かせません。
「対話のネタ」とは?
「対話のネタ」は、ワークショップで配布する会話のきっかけツールです。参加者が自然体で話し始められるよう、短い問いや観点をピース状にまとめています。
- 「これって意外と面倒じゃない?」
- 「家族にすすめたいかどうかがポイントだよね」
- 「時間がかかると続かないなあ」
こうした素朴な一言から、“隠れた欲求”が浮かび上がります。会話で得た気づきを、観察や行動データと照らし合わせることで、企画や改善の根拠に変わっていきます。
なぜ「対話のネタ」が効くのか
1) 自然に本音を引き出す
アンケートは「正解」を書こうとしがちですが、対話では無意識に出る感情や具体的な困りごとが表れます。
2) 視点が混ざり合う
他の人の一言をきっかけに、「なるほど、その見方があったか」という新しい発見が生まれます。
3) データとつながる
会話から出た仮説を観察やログで検証し、「だから売れた/離脱した」の筋道が見えます。
4) 内製化しやすい
問いと観点の形式なので、自社の文脈に合わせて増やす・差し替えるがしやすいのも特長です。
5) 継続的な関係の中で変化を追える
隠れた欲求は、その場で一度聞いただけでは見えきらないことがあります。対話を重ね、使い方や感じ方の変化を追うことで、最初は曖昧だった本音が少しずつ明確になります。
💡 以下は、ワークショップで配布する 「対話のネタカード」を使って整理した例です。
観察・行動・対話の気づきをカードに書き込み、そこから浮かび上がった示唆をまとめています。
実際のセッションでは、こうしたカードが 200〜300枚以上積み重なり、参加者の多様な視点から
「隠れた欲求」や「共通のパターン」が立ち上がってきます。
1. 時短への無意識のこだわり
観察のサイン
- レジ行列の短い売場へ移動する/セルフレジを選ぶ
- ワンアクションで開封できる包装を好む
対話での手がかり
- 「忙しくて続かない」「片付けが面倒だと使わない」
行動データの兆候
- “クイック”や“簡単”訴求のLPからのCVRが高い
機能より「手間が減る実感」をUIや演出で伝える。
2. 安心・安全への配慮
観察
- 原材料・期限・製造地の裏面確認が長い
対話
- 「子どもに安心」「肌に優しいなら」
行動
- “無添加/安全”タグ商品のレビュー閲覧率が高い
3. 手触り・感覚重視
観察
- 店頭で“触って”判断(握り直し・滑りやすさを確認)
対話
- 「なんとなく気持ちいい」「しっくりくる」
行動
- 動画・写真枚数が多い商品ほどCVR↑
4. 習慣化しやすさ
観察
- 取り出しやすい定位置、片手で操作、洗いやすさを重視
対話
- 「続かないのは面倒だから」「出しっぱなしにしたい」
行動
- 継続購入(サブスク)への移行率が“置きやすいサイズ”で↑
5. 感情的価値への反応
観察
- 家族や同僚の反応を気にする素振り
対話
- 「褒められた」「気分が上がる」
行動
- レビューで“嬉しい/楽しい”といった情緒語が上位
6. 見栄え・シェア欲求
観察
- 写真を撮ってから購入検討
対話
- 「これ映える」「人に勧めたい」
行動
- 画像ギャラリー閲覧深度が高い人ほどCVR↑
7. 安心のサポート期待
観察
- 保証・修理・問い合わせページを事前確認
対話
- 「困った時にすぐ聞けるなら」
行動
- 購入前にFAQ/チャット接触→CVRが上がる
8. 自己表現・特別感
観察
- 限定色・刻印・数量限定に反応
対話
- 「人と被らないのが良い」
行動
- 限定版LPの滞在時間・直帰率が通常より良い
9. 家族・周囲との調和
観察
- 子ども/パートナーの反応で最終決定
対話
- 「家族が気に入れば」「共有しやすいなら」
行動
- “家族で使える”訴求の反応が良い
10. ストレス回避(失敗しない・面倒を避けたい)
観察
- 複雑操作の展示では滞在が短い/離脱が早い
対話
- 「間違えたくない」「設定が不安」
行動
- “かんたん設定”動画視聴→購入が多い
使い方|現場チェックリストとして活かす
各プロジェクトで、以下の3列を埋めるだけでも“隠れた欲求”の仮説検証が回しやすくなります。
- 観察サイン:現場で見えた振る舞いは?
- 対話メモ:言い淀み・矛盾・比喩は?(対話のネタ から得た言葉)
- 行動ログ:閲覧深度・滞在・CVの差は?
重要なのは、ひとつの情報だけで決めないことです。観察・対話・行動データを重ねることで、企画や改善の精度が上がっていきます。さらに、単発で終わらせず、継続的な対話の中で変化を見ていくことで、“最初は見えなかった本音”にも近づきやすくなります。
顧客理解を、アンケートだけで終わらせたくない方へ
こらぼたうんでは、生活者との対話や観察を通じて、 本音や隠れた欲求を商品企画・改善につなげる共創マーケティング支援を行っています。
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