AIを使えば、市場データを分析し、顧客像を整理し、これから起こりそうなことを予測することもできます。 口コミやSNSの大量の投稿を読み込み、そこからニーズを見つけたり、企画案をいくつも作ったりすることも、以前よりはるかに簡単になりました。
購買履歴やWeb上の行動データを組み合わせれば、 「誰が何を買ったのか」「どんな人が離脱したのか」「次に何が売れそうなのか」まで見えてきます。
では、ここまで顧客について分かるようになった時代に、 わざわざ時間をかけて顧客と直接話す必要はあるのでしょうか。
AIやデータで「分かること」は確実に増えました
AIの進化によって、企業が顧客を理解するために使える情報は大きく増えました。
大量のデータを短時間で分析し、人間だけでは見つけにくかった小さな変化や傾向を発見する。 そこから仮説を作り、複数の顧客像を描き、商品やサービスの企画案を考える。
こうした作業は、AIが非常に得意とするところです。
これまで数日、場合によっては数週間かかっていた分析や企画の初期作業が、 短時間でできるようになった企業も多いでしょう。
AIによって顧客理解が不要になるのではなく、 むしろ企業が顧客について「知る能力」は、これまで以上に高まっているとも言えます。
それでも、最後に「なぜ?」が残ります
例えばデータを分析して、 「A商品を購入した人は、B商品も購入する確率が高い」 という傾向が見つかったとします。
これは企業にとって非常に有用な情報です。 しかし、そこにはもう一つの問いが残ります。
なぜ、その人はA商品を選んだのでしょうか。
価格が安かったからかもしれません。 使いやすかったからかもしれません。 家族や友人に勧められたのかもしれません。
あるいは、企業側がまったく想定していなかった理由かもしれません。
データには、人が取った行動が残ります。 しかし、その行動がその人の暮らしの中でどんな意味を持っているのかまで、 すべてがデータとして残っているわけではありません。
顧客自身も、最初から「答え」を持っているとは限りません
では、選んだ理由をアンケートやインタビューで聞けばよいのでしょうか。
もちろん、それによって分かることもたくさんあります。 しかし実際には、私たちは自分が商品やサービスを選んだ理由を、 いつも明確に言葉にできているわけではありません。
「なんとなく良かったから」
「いつもこれを使っているから」
「こっちの方が好きだから」
最初は、そんな答えしか出てこないこともあります。
ところが、実際の商品を前にしながら話したり、 使っている場面について詳しく聞いたり、 他の生活者の話を聞いたりしているうちに、 「そういえば……」と話が広がることがあります。
そこで企業側が、 「それはどういうことですか?」 「なぜ、そう感じるのでしょう?」 と問い返す。
そのやり取りの中から、 生活者自身もそれまで意識していなかった価値や、 企業側が想定していなかった商品の意味が見えてくることがあります。
顧客から「正解」を聞き出すことが、対話なのではありません。
企業と生活者が一緒に「なぜだろう?」と考える。 その過程そのものに、直接話す意味があります。
AIが答えを増やすほど、「何を選ぶか」が難しくなる
AIが普及する以前、企画の現場では 「良いアイデアが出ない」ということが大きな悩みの一つでした。
しかし今では、AIに条件を与えれば、 10個でも50個でも企画案を出すことができます。
すると、別の問題が生まれます。
たくさんのもっともらしい案の中から、最後にどれを選べばよいのでしょうか。
A案も市場データから見れば正しい。 B案にも十分な可能性がある。 C案も顧客ニーズに合っているように見える。
選択肢が増えれば、必ずしも意思決定が簡単になるわけではありません。
むしろAIによって可能性を大量に作れるようになったからこそ、 「自社の顧客にとって、本当に意味があるのはどれなのか」 を確かめることの重要性は高まっているのではないでしょうか。
予測するだけでなく、一緒に「これから」を考える
従来の商品開発やマーケティングでは、 企業が企画を考え、商品やサービスを作り、 最後に顧客へ評価してもらうという流れが一般的でした。
企業が考える
↓
商品・サービスを作る
↓
顧客に見せる
↓
評価してもらう
しかし、顧客との関わり方はそれだけではありません。
仮説を作る
↓
生活者と話す
↓
気づく
↓
企画を変える
↓
小さく試す
↓
また確かめる
顧客を「出来上がったものを評価してもらう人」ではなく、 これからの価値を一緒に考える相手として捉える。
こうした関わり方が、共創の大切な部分です。
AI時代に、人と直接話す意味はなくなるのでしょうか
AIがさらに進化すれば、 「調べる」「まとめる」「分類する」「予測する」「案を作る」 といった仕事は、これからもっと速くなっていくでしょう。
だからこそ企業にとって重要になるのは、 出てきた答えをそのまま採用することではなく、 その意味を考えることなのかもしれません。
この商品は、誰にとって、どんな意味があるのか。
なぜ、この人はこれを選ぶのか。
私たちは、本当に大切な価値を見ているのか。
こうした問いに対して、企業だけで答えを出す必要はありません。
実際に商品やサービスを使う人と話し、 一緒に考え、仮説を確かめていく。
AIが高度になるほど、 こうした人と人とのやり取りが不要になるのではなく、 むしろその役割がはっきりしてくるように思います。
AIか、人か、ではありません
AIで顧客を理解するのか。 それとも、顧客と直接話すのか。
これは二者択一ではありません。
AIでデータを分析する。
AIで仮説を作る。
AIで可能性を広げる。
そのうえで人と会い、話し、 「この人にとって、これはどんな意味を持つのだろう」 と一緒に考える。
そして、そこで得た気づきを商品やサービス、 営業やコミュニケーションに戻し、また確かめていく。
AIによって、顧客について「分かること」はこれからますます増えていくでしょう。
だからこそ、その情報の先にいる一人ひとりの生活者と向き合い、 行動の背景にある意味を考えることが、 これまで以上に大切になるのかもしれません。
AIで予測できる時代だからこそ、 顧客と話す意味はなくなるのではなく、 むしろ変わっていくのではないでしょうか。
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