ファンマーケティング × 共創マーケティング
ファンマーケティングと共創マーケティングの本質的な違い
コミュニティをつくる。イベントを開く。アンバサダー制度を入れる。SNSで関係を築く。
こうした施策は大切です。ですが、そこに企業の立ち位置や関係の思想が入っていなければ、
うまくいっているように見えても長続きしません。まさに、「仏作って魂入れず」です。
最近、「ファンマーケティングをやりたい」という相談が増えています。背景には、企業と生活者の関係の変化があります。 生活者は、情報量そのものに疲れているというより、企業の発信ににじむ“空気”に敏感になっています。
上から説明される感じ。正しさを押しつけられる感じ。どこか説教じみた世界観。 こうした微妙な違和感は、数字に表れにくい一方で、じわじわと心の距離を広げます。
なぜ、施策から入るとうまくいかないのか
ファンマーケティングの相談は、多くの場合「何をやればいいですか?」から始まります。 コミュニティ、イベント、アンバサダー、SNS運用――どれも間違いではありません。実際、関係づくりの手段としては有効です。
しかし、施策だけでは本当のファンは育ちにくい。参加者は集まる。投稿も増える。けれど、深く語られない。熱が広がらない。 その理由は、やり方から入ると企業が無意識のうちに「売る側の論理」へ戻りやすいからです。
- 成果を出そうとするほど、説明が増える
- 正しさを伝えようとするほど、温度が下がる
- 関係を築こうとするほど、管理や演出が前に出る
最初に必要なのは施策の設計ではなく、企業がどの立ち位置で生活者と向き合うのかという“土台の設計”です。
最初に決めるべきは、企業の「立ち位置」
本来、先に定めるべきなのは「自社が何を売るか」だけではありません。もっと根本にあるのは、 企業が社会の中で何者として存在するのかという立ち位置です。
ただ商品を提供する存在として立つのか。あるいは、そのブランドや価値観を本気で愛し、 生活者と同じ地平で語り合う当事者として立つのか。ここが決まると、関係の構造が変わります。
つまり、施策の前に必要なのは「どう見せるか」ではなく、「どこに立つか」です。
ファンマーケティングの強みは、「好き・応援・拡散」の構造をつくること
ファンマーケティングの中心にあるのは、ブランドとの関係を深めることです。 生活者に「このブランドが好きだ」「応援したい」「誰かに話したい」と思ってもらえる状態をつくる。 そこから自発的な発信や紹介が生まれ、ファンがファンを呼ぶ流れができていきます。
この点で、企業の立ち位置・距離・温度を整えるという考え方はとても重要です。 企業が一方的に広げるのではなく、生活者が自分の言葉で語りたくなる構造をつくる。ここにファンマーケティングの大きな価値があります。
共創マーケティングは、その先の「価値づくり」まで踏み込む
では、共創マーケティングは何が違うのでしょうか。共創マーケティングも、生活者との距離を縮め、 上から目線ではなく同じ目線に立つことを大切にします。その意味で、良いファンマーケティングと重なる部分は少なくありません。
ただし、共創マーケティングはそこで終わりません。関係を深めたその先で、生活者を単なる受け手や応援者としてではなく、 価値を一緒につくる相手として迎え入れます。
- 生活者との対話から気づきを得る
- インサイトを深める
- アイデアや試作に参加してもらう
- 商品・サービス・伝え方を一緒に磨く
- 新しい意味や文脈を共に育てる
違いを整理すると、重心が見えてくる
好き・応援・拡散を育てる
生活者との距離を縮め、共感や熱量を高め、自発的に語りたくなる関係をつくる。 ブランドへの好意や応援を広げることに重心があります。
- 応援したくなる関係を育てる
- ファンが語る流れを生む
- 共感の連鎖で広がる
対話・参加・価値創造まで進む
関係づくりを土台にしながら、生活者と一緒に新しい価値や選ばれる理由を生み出していく。 商品・サービス・文脈づくりに生活者が関わる点に重心があります。
- 生活者を価値づくりのパートナーとして捉える
- 試作・改善・発信を共に磨く
- 新しい意味や文脈を一緒につくる
| 比較項目 | ファンマーケティング | 共創マーケティング |
|---|---|---|
| 中心テーマ | 好意・応援・自発的な拡散 | 対話・参加・価値創造 |
| 生活者の位置づけ | 応援してくれる存在 | 一緒に価値を育てるパートナー |
| 主なゴール | 語られるブランドになること | 選ばれる理由を共につくること |
| 施策の例 | コミュニティ、SNS、イベント、アンバサダー | 共創セッション、観察、試作、共同改善、文脈開発 |
| 本質 | 関係の熱を育てる | 関係を土台に価値そのものを育てる |
本当に大事なのは、「やり方」よりも「あり方」
ここまで見てくると、ファンマーケティングと共創マーケティングは対立するものではないとわかります。 むしろ、良い共創マーケティングには、生活者と同じ目線に立つ姿勢や、距離と温度への配慮が欠かせません。
ただし、ファンマーケティングの議論が施策の話だけで終わってしまうと、どうしても表面に寄りがちです。 コミュニティを作った、イベントを開いた、制度を導入した――それでも関係が深まらないとすれば、 問い直すべきは施策の数ではなく、企業のあり方です。 実際、共創マーケティングでも、成果を左右するのは手法そのものより、生活者と向き合う企業の姿勢です。 この点は、 価値共創マーケティングの成否を左右する:企業姿勢の重要性 でも詳しく触れています。
そこが定まって初めて、器に魂が入り、生活者との関係が本物になっていきます。
まとめ
- コミュニティやイベントなどの施策だけでは、本当のファンは育ちにくい
- 先に必要なのは、企業の立ち位置と関係の思想を定めること
- ファンマーケティングは「好き・応援・拡散」の構造づくりに強い
- 共創マーケティングは、その関係を土台に「価値を一緒につくる」ところまで進む
- 施策を並べる前に、“仏作って魂入れず”になっていないかを見直すことが大切
生活者との関係を、表面的な施策で終わらせないために
もし今、コミュニティ運営や情報発信、イベント開催を続けているのに、手応えが浅いと感じているなら、 見直すべきは施策の量ではなく、企業の立ち位置かもしれません。
こらぼたうんでは、生活者との距離の取り方から見直し、 企業と顧客が一緒に価値を育てる共創マーケティングの実践を支援しています。