Field Stories|CASE 019
本音を引き出したのは、
質問ではなく友人との会話でした。
高齢者の方々から、暮らしや商品について話を聞くことになりました。 ただし、年齢だけを条件に、初対面の人を集めることはしませんでした。 長い社会経験を持つ方々が、知らない人の前ですぐに戸惑いや困りごとを話すとは限りません。 そこで、普段から付き合いのある友人同士で参加してもらいました。 誰かの一言に友人が補足し、笑いが起こり、思い出話が広がる。 用意した質問を超えて、本当によく話してくれました。
Prologue
高齢者向けに質問を簡単にすればよい、とは考えませんでした。
高齢者の方々に、 暮らしの中で感じていることや、 商品・サービスについての考えを聞く機会がありました。
企業側が知りたいことを整理し、 分かりやすい質問を用意することはできます。
しかし、質問を分かりやすくするだけで、 本音が自然に出てくるとは限りません。
Scene 01
長い経験があるからこそ、簡単には弱さを見せません。
高齢者の方々には、 これまで仕事や家庭、地域の中で積み重ねてきた経験があります。
自分なりの考え方や判断の基準があり、 日々の暮らしにも、それぞれの工夫があります。
初対面の人の前で、 分からないことや困っていることを、 すぐに話すとは限りません。
こんなことを言ったら、できない人だと思われないかしら。
自分だけが困っているのかもしれない。
人に頼らなくても、自分なりに何とかしている。
年齢だけで一括りにせず、 一人ひとりが持つ経験や自信を尊重する必要がありました。
Scene 02
知らない人同士ではなく、友人同士で参加してもらいました。
そこで、年齢が近い人を無作為に集めるのではなく、 普段から付き合いのある友人同士で参加してもらいました。
互いの人柄や暮らしを知っているため、 最初から無理に自己紹介をしたり、 緊張をほぐしたりする必要はありませんでした。
周囲の反応を気にしながら、 一人ずつ慎重に答える会話になりやすくなります。
相手の経験を知っているからこそ、 補足や反論、思い出話が自然に生まれます。
Scene 03
最初に出てきたのは、商品への意見ではなく近況の話でした。
セッションは、 いきなり企業側の質問から始めませんでした。
最近あったことや、 家族のこと、 普段の生活について、 友人同士で話してもらいました。
すると、一人の話に、 別の人が自然に言葉を重ねました。
あなた、前にも同じことで困っていたでしょう。
そうそう。私は家では、こうしているの。
私はそこまでは気にならないけれど、別のところが困るわ。
それ、うちの家族には言っていないのよ。
質問に回答するというより、 いつもの会話の延長で、 暮らしの実感が次々と出てきました。
Scene 04
友人の一言が、記憶や経験を引き出しました。
一人で質問に答えていると、 すぐには思い出せないことがあります。
しかし、友人の話を聞くと、 自分の経験がよみがえります。
また、本人が当たり前だと思っている工夫を、 友人が代わりに説明してくれることもありました。
一人の経験がきっかけとなり、 共通する困りごとや違いが見えてきました。
本人が説明しきれない習慣や工夫を、 普段を知る友人が言葉にしてくれました。
相手との関係があるからこそ、 遠慮せずに異なる考えを伝えられました。
深刻な告白ではなく、 日常の失敗談として自然に話すことができました。
Scene 05
「困っていますか」と聞くだけでは、見えないことがありました。
企業側が直接、 「困っていることはありますか」と尋ねても、 「特にありません」と答えることがあります。
実際には、 不便を感じていないのではなく、 自分なりに工夫して対処していることもあります。
友人同士の会話では、 その工夫が自然に表れました。
見えにくいから、いつも同じ場所に置いているの。
忘れないように、玄関の近くへ出しておくのよ。
説明書は読まないけれど、前に教えてもらった通りに使っているわ。
家族に頼むところと、自分でするところを分けているの。
使えているように見えても、暮らしの中で工夫して合わせていました。
不満の有無だけを聞いていたら、 こうした工夫は見えなかったかもしれません。 友人との会話を通じて、 商品やサービスに生活を合わせている場面が見えてきました。
Scene 06
必要だったのは、高齢者向けの特別な質問ではありませんでした。
企業側は当初、 高齢者にも分かりやすい質問の作り方を考えていました。
しかし、実際に会話を深めたのは、 質問の言い換えだけではありませんでした。
友人と一緒であれば、 完璧に説明しようとしなくても構いません。
言葉が足りなければ誰かが補い、 記憶が曖昧なら一緒に思い出し、 違う考えがあれば笑いながら伝えられます。
本音が生まれる条件は、 質問票の中だけにはありませんでした。
Scene 07
高齢者という一つの集団ではなく、一人ひとりの暮らしが見えてきました。
年齢が近くても、 暮らし方や考え方は同じではありません。
一人暮らしの人、 家族と暮らしている人、 人に頼ることへ抵抗がある人、 新しいものを積極的に試す人。
友人同士の会話では、 共通点だけでなく、 一人ひとりの違いもはっきり表れました。
年齢が同じだからといって、困っていることは同じではない。
できないことだけでなく、続けている工夫にも目を向ける。
高齢者としてではなく、一人の生活者として話を聞く。
それぞれの暮らし方が見えてきました。
What We Found
本音は、質問の上手さだけでは生まれませんでした。
気心の知れた友人がいることで、 戸惑いや失敗、暮らしの工夫を自然に話せました。
一人の話をきっかけに、 他の参加者の経験や異なる考えが次々と表れました。
高齢者という分類だけでは見えなかった、 それぞれの価値観や工夫、関係性が見えてきました。
高齢者だから話してくれないのではありませんでした。 初対面の人の前で、簡単に自分の弱さや戸惑いを見せなかっただけでした。 気心の知れた友人と一緒になると、 笑いながら、互いの記憶を補いながら、本当によく話してくれました。
Free Consultation
聞きたいことだけでなく、話せる関係から設計してみませんか。
本音を聞くためには、 質問項目を整えるだけでなく、 誰と参加するか、どのような場で話すかも大切です。 対象となる生活者の経験や関係性を尊重しながら、 自然な会話が生まれる場を一緒に設計します。