Field Stories | CASE 003
売り場で聞こえたのは、質問への答えではありませんでした。
企業担当者が質問し、生活者が答える。その形を離れ、仲の良い友人同士の買い物に少しだけ同席させてもらいました。売り場を歩く自然な会話の中から、ネーミング、サイズ、デザイン、パッケージを見直す新しい仮説が生まれました。
Prologue
知りたかったのは、商品への評価だけではありませんでした。
企業には、確かめたいことがありました。商品の名前は伝わっているのか。サイズは選びやすいのか。デザインはどのように見えているのか。パッケージの言葉は読まれているのか。
その目的に対して、会議室で質問するよりも、実際の売り場を一緒に歩く方が見えることが多いのではないか。そう考え、買い物同行を行うことになりました。
参加してもらったのは、普段からよく話す仲の良い友人同士です。そこへ企業担当者も加わります。ただし、企業担当者が質問を続ける場ではありません。
いつもの買い物と会話を、少しだけ横から見せてもらう。今回の現場は、そこから始まりました。
Scene 01
会議室ではなく、売り場へ
事前に企業側と確認したのは、何を聞くかだけではありません。何を見たいのか、どのような場面に注目したいのかを整理しました。
例えば、商品を手に取る前にどこを見ているのか。同じ棚の中で何と比較するのか。サイズや色を選ぶとき、何を基準に迷うのか。パッケージのどの言葉に目が止まり、どの言葉は読まれないのか。
「答えを聞くより、選ぶ場面を一緒に歩いてみましょう」
買い物同行を選んだ理由売り場には、質問票では拾いにくい情報があります。商品を見る順番、立ち止まる場所、棚へ戻す速さ、友人へ見せるしぐさ。言葉だけでなく、行動そのものが判断の背景を教えてくれます。
Scene 02
企業担当者対参加者にしない
企業担当者が正面から質問すると、生活者はどうしても、きちんと答えようとします。商品の良い点と悪い点を整理し、相手に伝わる言葉を選ぼうとします。
しかし、友人同士の買い物では違います。商品を手に取り、隣の商品と比べ、思ったことをそのまま口にします。一人の言葉に、もう一人がすぐ反応します。
「これ、どう思う?」
「私はこっちかな」
「でも、そのサイズだと家では少し大きくない?」
企業担当者は、その会話から答えを取り出そうと急ぎません。何を選ぶかだけでなく、なぜ友人に見せたのか、どの一言で判断が変わったのかを静かに見ていきました。
Scene 03
会話が、会話を連れてくる
売り場を歩いていると、一人が商品を手に取りました。商品名を見て、少し首をかしげます。
「これ、名前だけだと何の商品か分かりにくくない?」
「あなたの家なら置けそう。でも、私の家だと少し大きいかな」
「この説明、もっと短くても伝わるんじゃない?」
一人の発言に、友人が自分の暮らしを重ねます。その返答を受けて、最初の人がさらに言葉を足します。誰かが答えを求めたわけではないのに、会話が次の会話を連れてきます。
その中で、企業側が最初に想定していなかった見方が次々に現れました。
商品名から用途が想像しにくく、手に取る理由が弱くなっていた。
大きさそのものより、家のどこに置くかが選択基準になっていた。
好みだけでなく、誰と使うかによって選ぶ色や形が変わっていた。
詳しい説明より、最初の数秒で分かる短い言葉が求められていた。
企業担当者が見ていたのは、商品への評価ではなく、会話と行動がつながる瞬間へと変わっていきました。

Scene 04
見るものが、商品から選ぶ場面へ変わる
企業担当者は当初、商品がどのように評価されるかを知ろうとしていました。しかし、売り場で見えてきたのは、評価よりも前に起きていることでした。
どの商品と比べるのか。どの瞬間に手が止まるのか。誰かの一言によって判断がどう変わるのか。説明を読む前に、何を見て通り過ぎるのか。
「商品の良し悪しだけを聞いていたら、ここまでは見えなかったと思います」
買い物同行後の企業担当者の実感生活者の発言だけを記録しても、その言葉が出た背景までは分かりません。行動、売り場、比較対象、友人との関係。それらが重なったとき、言葉の意味が初めて見えてきます。
Shift in perspective
意見を集めるのではなく、選ぶ場面を理解する。
生活者の言葉をそのまま答えとして採用するのではありません。何を見て、誰と話し、どの瞬間に判断が動いたのか。会話と行動を一緒に見ることで、新しい仮説へ組み替えていきます。
Scene 05
売り場で見つけたことを、企画へ戻す
買い物同行で出てきた言葉を、そのまま商品へ反映するわけではありません。企業側と一緒に、会話と行動の背景を整理します。
商品名は何を先に伝えるべきか。サイズは寸法ではなく、置く場面から示せないか。デザインは誰と使うかまで想像できるか。パッケージの言葉は、最初に何が伝わればよいのか。
一つひとつの発言を、企画の答えではなく、新しい仮説の入口として扱います。売り場で見えた選び方を、商品、デザイン、伝え方の改善へ戻していきました。
生活者に正解を尋ねたのではなく、選ぶ場面を一緒に歩いたことで、新しい仮説が生まれました。
買い物同行から見えてきた価値What we found
本音は、質問されたときだけに現れるものではありません。
友人同士で売り場を歩くと、商品への率直な反応が、会話と行動の中に自然に現れます。何を手に取り、何と比べ、どの言葉で迷い、友人の一言によって判断がどう変わるのか。答えを聞くのではなく、選ぶ場面を一緒に歩く。そこから、会議室では見つけにくい新しい仮説が生まれました。
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