Field Stories  |  CASE 001

箱を開けるまでの時間を、私たちは見ていませんでした。

商品そのものに大きな不満はない。それでも、なぜか使い続けてもらえない。 生活者との対話から見えてきたのは、機能でも価格でもなく、 「使い始める前」に生まれていた小さな迷いでした。

テーマ:顧客理解・利用定着 形式:生活者との共創セッション ※企業名・商品名は非公開

Prologue

「特に不満はありません」から、対話は始まりました。

その商品は、決して評価が低いわけではありませんでした。 アンケートを見ても、大きな不満は出ていません。 機能について尋ねれば「使いやすい」、品質について尋ねれば「問題ない」という回答が並んでいました。

それでも、企業担当者には引っかかるものがありました。 一度は購入してもらえても、思うように利用が定着しない。 商品のどこかに、まだ見つけられていない問題があるのではないか。

そう考え、生活者との対話の場が開かれました。 けれど、その日に見つかったのは、商品の欠点ではありませんでした。

Scene 01

ある日の相談

「商品自体は悪くないと思うんです」

打ち合わせの冒頭で、企業担当者はそう話しました。 競合商品と比べても、機能が大きく劣っているわけではない。 価格にも極端な差はない。利用者から強い苦情が寄せられているわけでもありません。

社内では、機能を追加する案、パッケージを変更する案、 価格を見直す案などが挙がっていました。 けれど、どの案にも決め手がありませんでした。

「何を直せばよいのか、その前に、どこで止まっているのかを知りたいんです」

企業担当者の言葉

そこで、商品の評価を聞くだけではなく、 購入してから日常の中で使われるまでの時間を、生活者と一緒に振り返ることにしました。

企業担当者と支援側メンバーが、商品サンプルや資料を見ながら課題を整理している事前打ち合わせの様子
企業担当者と課題を整理する、事前打ち合わせの場面

Scene 02

生活者との対話

丸いテーブルを囲み、企業担当者と生活者が同じ目線で座ります。 最初に尋ねたのは、商品の良い点や悪い点でした。

「特に不満はありません」 「普通に使えました」 「商品は悪くないと思います」

返ってくるのは、アンケートでも見たことのある言葉でした。 企業担当者は手元の資料に目を落とし、 参加者も、これ以上何を話せばよいのか迷っているように見えました。

そこで、質問を変えました。

「買った日のことを、覚えていますか。家に持ち帰ってから、最初に何をしましたか」

進行役からの問い

商品の評価ではなく、暮らしの中で起きた出来事を、 一つずつ思い出してもらうことにしたのです。

企業担当者と4人の生活者が丸テーブルを囲み、商品を前に意見を交わしている共創セッションの様子
生活者の言葉が生まれ始める、丸テーブルでの対話

Scene 03

空気が変わる瞬間

一人の参加者が、少し考えてから話し始めました。

「実は、買ってからすぐには使わなかったんです」

生活者の何気ない一言

箱は開けたものの、最初に何をすればよいのか確信が持てなかった。 説明を読んでも、自分のやり方で合っているのか少し不安だった。 失敗したくなくて、数日そのまま置いていたというのです。

すると、別の参加者が続きました。

「私もです。家族に説明しようとしたけれど、うまく言えなくて。結局、後回しになりました」

別の参加者の言葉

それまで資料を見ていた企業担当者が、顔を上げました。 ペンを置き、参加者のほうへ体を向けます。

商品を使ったあとの不満ではない。 使い始める前の、小さな不安。 そこに、利用が定着しない理由が隠れていたのかもしれません。

「私たちは、使った人の評価ばかり見ていました。使い始められなかった時間は、見ていませんでした」

企業担当者の言葉
生活者の発言に耳を傾け、企業担当者が新たな気づきを得た瞬間の共創セッション
生活者の一言に、企業担当者の見方が変わった瞬間

Scene 04

企業担当者の見方が変わる

それまで企業側が見ていたのは、商品を使ったあとの評価でした。 機能は十分か。使いやすいか。満足しているか。

けれど生活者にとっての商品体験は、 実際に使い始めた瞬間から始まるわけではありません。

店頭や画面で商品を見つける。 購入する。 家に持ち帰る。 箱を開ける。 説明を読む。 家族に話す。 置き場所を決める。

その一つひとつの場面で、 「これで合っているだろうか」 「失敗しないだろうか」 という小さな迷いが生まれていました。

A change in perspective

見直すべきなのは、商品の機能ではなく、商品と生活者が出会う最初の時間でした。

「商品に何を加えるか」という議論から、 「生活者はどこで立ち止まっているのか」という議論へ。 企業担当者の中で、商品の見方が変わり始めました。

Scene 05

その後

対話のあと、社内では改善の優先順位が変わりました。

大きな機能追加を急ぐのではなく、 箱を開けた直後に何を伝えるか。 最初の一歩をどのように示すか。 家族にも説明しやすい言葉になっているか。

パッケージ、案内文、初回利用までの導線。 これまで脇役だと思われていた部分が、 商品体験の大切な入口として見直されていきました。

すぐに大きな答えが出たわけではありません。 けれど、企業担当者が次に見る場所は、以前とは変わっていました。

企業担当者とチームメンバーが、生活者との対話で得た気づきを付箋や資料で整理し、改善の方向性を検討している様子
対話後の気づきを、改善の方向性へ整理する企業チーム

What we found

選ばれない理由は
商品の中だけにあるとは限りません。

生活者が立ち止まった、その少し前の時間に、
次の改善につながる手がかりが残されていることがあります。

Free consultation

まだ言葉になっていない理由を、生活者との対話から探してみませんか。

商品やサービスに大きな問題は見つからない。 それでも、なぜか選ばれない、続かない、伝わらない。 そのような段階からでもご相談いただけます。