会員数や登録者数を増やすことが目的になったコミュニティには、どこか違和感があります。 本当に大切なのは、何人集まったかではなく、その関係性の中から何が育ったかではないでしょうか。
最近、「コミュニティをつくる」という言葉をよく目にします。 企業がオンライン上で場をつくり、会員を集め、情報を届け、接点を持ち続ける。 こうした取り組み自体を否定するつもりはありません。 ただ、その一方で、どこか引っかかる場面があるのも事実です。 それは、コミュニティが関係性を育てる場ではなく、 登録者数を増やすための器や、 広告宣伝を流すための面になってしまっているケースが少なくないからです。
人数が多いことと、価値が生まれることは同じではない
企業がコミュニティ運営に力を入れるとき、どうしても目に見えやすい数字に意識が向きます。 会員数、登録者数、投稿数、参加率、PV、エンゲージメント率。 もちろん、こうした指標は運営状況を把握するうえで必要です。 ですが、それらはあくまで場の状態を示しているにすぎません。 そこから本当に価値が生まれたかどうかまでは、数字だけでは見えてきません。
たとえば人数が多くても、参加者が企業からの発信を受け取るだけで終わっているなら、 その場は「接点」にはなっていても、「価値を共につくる関係」にはなっていません。 逆に、人数が少なくても、企業と生活者が丁寧に対話し、 その中から新しい気づきや企画の芽が生まれているなら、 そこには確かな意味があります。
「集めるコミュニティ」と「育てるコミュニティ」
企業がつくるコミュニティには、大きく分けて二つの方向性があるように思います。 一つは、より多くの人を集め、継続的に接触し、ブランド想起や購買、継続利用につなげていく 集めるためのコミュニティです。 もう一つは、参加者を単なる受け手ではなく、 価値づくりに関わる相手としてとらえる 育てるためのコミュニティです。
集めるコミュニティ
- 登録者数・接触頻度が中心になる
- 企業からの告知や販促が主になりやすい
- 参加者は「管理される会員」になりやすい
- 場はあるが、価値創造は起きにくい
育てるコミュニティ
- 関係性の質や対話の深さを重視する
- 参加者の声が企業側の見方や企画に影響する
- 参加者は「共に考える相手」になる
- 少人数でも意味のある変化が起きやすい
前者にもビジネス上の意味はあります。 ただ、それを「共創の場」として語ってしまうと、違和感が生まれます。 なぜなら、そこで起きているのは価値づくりというより、 会員基盤づくりや接触効率の向上であることが多いからです。
「共創を広告や演出で終わらせないために、何が必要なのか」をもう少し踏み込んで読みたい方は、 こちらの記事もおすすめです。
👉 共創は広告ではない──本当に良いものを育てる力本当に見るべきなのは「何人いるか」ではなく「何が変わったか」
コミュニティを評価するとき、多くの場合は数字で測りやすいものに目が向きます。 しかし、本当に大切なのは、参加の結果として何が変わったかです。 参加者の声によって企業の見方が変わったのか。 商品やサービスの改善のヒントが見つかったのか。 参加者自身が、「ここに関わる意味がある」と感じられたのか。 そうした変化こそが、場の価値を物語ります。
たとえば、こんな変化が起きているか
- 生活者の本音が、表面的なアンケート以上の深さで見えてきた
- 企業側の視点や思い込みがほぐれた
- 商品やサービスの改善・開発のヒントが生まれた
- 参加者同士の共感やつながりが育った
- 「このブランドに関わりたい」という気持ちが強くなった
逆に、登録者数は多くても、企業側の発信しか流れておらず、 参加者の声は拾うだけで終わり、企画や関係性に何も反映されないのであれば、 その場は価値共創の場とは言いにくいでしょう。 見た目の賑わいだけでは、場の本質は判断できません。
私たちが大切にしてきたのは「大きさ」ではなく「深さ」
私たちはこれまで、ネット上で大規模なコミュニティを運営してきたわけではありません。 むしろ、リアルな場で、少人数でも企業と生活者が向き合い、 その関係の中から価値を生み出すことを大切にしてきました。
それは、広告宣伝のために人を集めることが目的ではなかったからです。 商品やサービスのヒントを見つけること。 生活者の声を表面的な意見としてではなく、 その奥にある感情や背景ごと受け取ること。 企業の担当者が、自分たちの見方を問い直すこと。 そうした時間の積み重ねの中で、 単なる調査では見えにくい気づきや、意味のある関係性が育ってきました。
もちろん、このやり方には派手さがありません。 会員数や投稿数のような、見えやすい数字は出しにくいですし、 実施後にそのまま販促へつなげる力も強くはありません。 ですがその代わりに、深く向き合うことでしか生まれない価値があります。 本音が出る場。 企業の見方が変わる場。 生活者を「ターゲット」ではなく「共に考える相手」として捉え直す場。 その中から生まれる企画の芽や、意味ある気づきこそが、私たちが大切にしてきたものです。
実際の共創セッションがどのような空気感から始まるのか、 もう少し具体的にイメージしたい方は、こちらの記事もご覧ください。
👉 価値共創セッションは企業と生活者の“ワイガヤ”から始まるコミュニティを広告の器にしてしまう、もったいなさ
企業がコミュニティを持つと、「何か発信しなければ」と考えやすくなります。 そして発信の中心が、商品の案内、キャンペーン、新着情報、お得な情報になっていく。 これは自然な流れでもありますが、そればかりになると、 参加者は次第に気づきます。 「ここは結局、広告の延長なんだな」と。
そうなると、参加者は“関わる相手”ではなく“届け先”になってしまいます。 せっかくコミュニティという形を取っていても、 価値が育つ余地が小さくなってしまうのです。
本来、コミュニティの良さはどこにあるのか
- 広告では拾えない、ちょっとした違和感やつぶやきが見える
- 誰かの体験に、別の誰かが反応し、新しい気づきが生まれる
- 企業が想定していなかった意味づけや使われ方が浮かび上がる
- 「売るため」だけではない関係が育ち、信頼の厚みが増す
だからこそ、コミュニティを単なる広告の器としてしか使わないのは、非常にもったいないことです。 もし場をつくるなら、その場から何が育つのか、どんな声が生まれるのか、 そして企業側がその声によってどう変わるのかまで含めて考えたいところです。
これから必要なのは「広く集める」ことより「どう関わるか」
情報があふれ、表面的なメッセージが簡単に見抜かれる時代において、 企業と生活者の関係は、ますます「一方的に伝える」だけでは成り立ちにくくなっています。 だからこそ大切になるのは、どれだけ広く集めるかだけではなく、 どう関わるかです。
生活者を数として見るのではなく、一人ひとりの文脈を持った存在として向き合えるか。 声を集めるだけで終わらず、その声によって企業の見方や企画が変わるか。 参加者にとって、その場にいる意味があるか。 こうした問いに向き合うことが、コミュニティの本質を決めていくのだと思います。
まとめ
私たちは、コミュニティとは単に人を集める仕組みではなく、 関係性の中から意味や価値を一緒に育てる場だと考えています。 人数の多さや、賑わいの見えやすさだけでは測れないものがあります。 本当に大切なのは、そこでどんな対話が起き、何が育ち、何が変わったかです。
派手ではなくてもいい。大規模でなくてもいい。 でも、関わることで何かが前に進む。 企業にとっても生活者にとっても、 「参加して終わり」ではなく「関わることで価値が育つ」。 そんな場こそが、これからのコミュニティのあるべき姿ではないかと思います。
価値共創マーケティングの進め方を、貴社に合わせてご相談いただけます
「生活者との対話を、単なる広告や一時的なイベントで終わらせたくない」 「少人数でも、本音が出て価値が育つ場をつくりたい」 そんな課題をお持ちでしたら、こらぼたうんにご相談ください。
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