暮らしの現場で見つけた収納の本音|自宅訪問の現場ストーリー CASE004

Field Stories|CASE 004

その商品は、キッチンの上にはありませんでした。

企業側は、すぐに手に取れる場所に置かれていると考えていました。 しかし、実際に会員の自宅を訪ねてみると、 その商品はキッチンの上ではなく、引き出しの中にしまわれていました。 「使いやすさ」を考えていた企業と、 「暮らしをすっきり見せたい」と考えていた生活者。 実際の置き場所を見たことで、 商品のデザインに対する優先順位が変わり始めました。

テーマ:暮らしの観察・商品デザイン 形式:生活者宅への訪問 企業名・商品名は非公開

Prologue

話を聞くだけでは、まだ見えていないことがありました。

その企業とは、すでに生活者を交えたセッションを何度か行っていました。 商品の使い方や感じていることについても、さまざまな話を聞いていました。

けれど、対話の中で語られる使い方と、 実際の暮らしの中で起きていることが、 必ずしも同じとは限りません。

「この商品は、普段どこに置かれているのだろう」

そう考え、生活の中での使われ方を具体的に見てみたいと 参加者へ話したところ、返ってきたのは気負いのないひと言でした。

「いつでもどうぞ。」

企業担当者と一緒に、会員の自宅へ伺うことになりました。

Scene 01

企業が想定していたのは、すぐに手に取れる場所でした。

その商品は、日常的に使うキッチン用品でした。 企業側は、使いたいときにすぐ手に取れるよう、 キッチンの上や目につきやすい場所に置かれていると想定していました。

機能や使いやすさを考えれば、ごく自然な見立てです。 わざわざ収納し、使うたびに取り出すよりも、 出したままにしておく方が便利だと考えていたからです。

しかし、実際の暮らしの中では、違う選択がされていました。

Scene 02

引き出しを開けた瞬間、見方が止まりました。

キッチンを見せてもらいながら、 普段どこに置いているのかを尋ねると、 会員の方は自然に引き出しを開けました。

えっ?ここに入れてるんですね。

企業担当者から、思わず声が出ました。

その反応は、単に収納場所が予想と違っていたからではありません。 「すぐに使える場所へ置くはず」という企業側の前提が、 目の前の暮らしによって一度止められた瞬間でした。

Scene 03

便利さよりも、キッチンをすっきり見せたい。

なぜ引き出しにしまっているのかを尋ねると、 会員の方は、特別な不満を訴えるのではなく、 普段の感覚をそのまま話してくれました。

出しておくと、すぐ使えるんですけどね。

でも、置いておくとごちゃごちゃして見えるので、 出しておきたくないんです。

商品そのものに大きな不満があったわけではありません。 使いにくいわけでもありません。

それでも、キッチンの上には置かれなかった。

生活者は商品の便利さだけでなく、 キッチン全体の見え方や、自分が心地よく過ごせる状態まで含めて、 置き場所を決めていたのです。

Scene 04

「使いやすさ」と「暮らしやすさ」は、同じではありませんでした。

企業側は、それまで機能性や取り出しやすさを中心に商品を見ていました。 しかし、生活者の自宅で実際の置き場所を見たことで、 商品単体の便利さだけでは足りないことが分かりました。

出しておけば便利でも、暮らしの中で邪魔に感じられれば収納されます。 収納されれば、使うまでの小さな手間が増えます。

つまり、デザインは見た目を整えるためだけのものではなく、 「出したまま使い続けてもらえるかどうか」にも関係していました。

Before

使いやすさを中心に考える

機能、取り出しやすさ、使用時の便利さを優先していました。

After

外に出しておける存在にする

キッチンに置いても邪魔にならず、 暮らしになじむデザインを最優先にしました。

Scene 05

見たことが、商品の優先順位を変えました。

自宅訪問のあと、企業側が最優先に考えたのは、 外に出しておいても邪魔にならないデザインでした。

これは、デザインをきれいにするという単純な話ではありません。 生活者が商品を収納してしまう理由を知り、 暮らしの中でどのような存在なら使い続けてもらえるのかを 考え直した結果です。

セッションで収納場所を聞くだけでも、情報は得られたかもしれません。 しかし、企業担当者自身がキッチンへ入り、 引き出しを開ける場面に立ち会ったからこそ、 「ここに入っている」という事実が実感を伴って伝わりました。

答えを聞いたのではなく、暮らしの中にある答えを一緒に見た。

その体験が、商品の見方を動かしました。

自宅訪問で得た気づきをもとに、企業担当者がキッチン用品のデザインを見直している様子

What We Found

暮らしを見たことで、商品だけを見ていたことに気づきました。

聞くだけでは、実感まで届かない

収納場所を言葉で聞くことと、 企業担当者自身が実際の引き出しを見ることでは、 気づきの深さが異なります。

生活者は、暮らし全体で判断している

商品単体の便利さだけでなく、 空間の見え方や心地よさまで含めて、 使い方や置き場所を選んでいました。

デザインは、使い続けられる環境をつくる

外に出しておけるデザインは、見た目の問題だけでなく、 商品を日常的に使い続けてもらうための条件にもなります。

企業は「使いやすさ」を考えていました。
生活者は「暮らしやすさ」を選んでいました。

Free Consultation

会議室では見えないことを、暮らしの現場から一緒に探します。

商品やサービスについて話を聞くだけでなく、 実際にどこで、どのように使われているのかを見ることで、 社内だけでは見つからなかった仮説が生まれることがあります。 まだ相談内容が整理されていない段階でも構いません。