顧客インサイトを引き出す5つの質問

共創マーケティングで本音を探る

「顧客インサイト」とは、表面的なニーズや要望の奥にある、顧客の本当の思いや行動の動機を指します。

本記事では、共創マーケティングの実践を通してインサイトを深掘りするための「5つの質問」をご紹介します。


目次


1. なぜ、それを選んだのですか?

この質問は、顧客の選択の背景にある感情や価値観を探るためのものです。

「価格が安かったから」などの表面的な回答の裏には、「〇〇な理由で予算を抑えたい」「過去に失敗した経験がある」などの動機が隠れていることが多いです。

共創の場では、他の参加者との対話を通じて、こうした内面の思いが自然に言語化されやすくなります。

2. 他に迷ったものはありますか?

「他に迷った選択肢」を聞くことで、比較基準や「選ばれなかった理由」が明らかになります。

たとえば「A社は魅力的だったけど、アフターサポートが不安だった」など、競合の弱点と自社の強みを対比できます。

こうした情報は、サービス改善やポジショニング戦略に役立ちます。

3. 最後の決め手は何でしたか?

「決め手」は、顧客の購買行動における最終的な感情や信頼に根ざしています。

「直感で」「スタッフの対応が良かった」など、数字に現れにくい要素こそがインサイトの宝庫です。

共創の場では、その感情を他者と共有しながら整理するプロセスが重要になります。

4. 実際に使ってみてどうでしたか?

購入前と購入後のギャップを聞くことで、真の満足度や「期待と現実のズレ」が見えてきます。

たとえば「思ったより簡単だった」「使い始めてから安心感が増した」などの反応から、コミュニケーション改善のヒントが得られます。

顧客の体験を物語として語ってもらうことで、ブランドのストーリーづくりにもつながります。

5. なくなったら困りますか?

この質問は、自社商品・サービスの生活への定着度を測るために有効です。

「代わりが見つからない」「日常の一部になっている」といった反応は、ブランド愛着やリピートの可能性を示唆します。

共創マーケティングでは、こうした「なくてはならない理由」を顧客の口から語ってもらうことで、より深い信頼関係を築けます。


共創マーケティングがインサイト発見を後押しする理由

共創マーケティングとは、企業と顧客が対等な関係でアイデアや価値を共につくるプロセスです。従来のように企業が「調査する側」、顧客が「答える側」という構造では得られなかった、本音や深層心理に根ざしたインサイトを引き出すことができます。

たとえば、一般的なアンケート調査では、あらかじめ用意された選択肢の中から答えを選ぶ形式が多く、顧客自身が気づいていない動機や価値観は表面化しにくい傾向があります。対して共創マーケティングでは、ワークショップや対話セッションを通じて、顧客が自らの体験や感情を語る機会が増えます。

このような場面では、他の参加者の発言を聞くことで「自分もそうだった」「言葉にできていなかったけど、まさにそれ」といった共感や気づきが連鎖し、結果としてインサイトが自然に言語化されやすくなります。これは、共創の場が“気づきの触媒”となっている証拠です。

さらに、企業側が“教える立場”ではなく“聴く姿勢”を貫くことで、顧客は「本当に自分の声が反映される」「この会社は話を聞いてくれる」という安心感を得ます。これが、心理的安全性の高い環境を生み、より本質的な言葉が引き出される土台となります。

加えて、共創の中では単に要望を聞くだけでなく、「なぜそう思うのか」「なぜそれが必要なのか」といった背景にあるストーリーや経験を掘り下げることができます。これによって、顧客が自覚していなかった価値観や、行動の動機が明らかになります。

つまり共創マーケティングは、「顧客の声」以上の“顧客の想い”を拾うプロセスなのです。ここで得られたインサイトは、単なるマーケティングデータではなく、ブランドの方向性や商品開発の核として活用できます。

今の時代、情報はあふれ、製品は溢れ、差別化が難しい中、「顧客の深層とつながること」そのものが競争優位になります。共創を通じて得たインサイトは、顧客との関係性を強化し、共感されるブランドの土台となるのです。


まとめ:質問で「共感」を掘り起こす

顧客インサイトを引き出すには、質問の質対話の場づくりが鍵を握ります。

  • なぜ選ばれたのか?
  • 迷った選択肢は?
  • 決め手は何だったのか?
  • 使った後のリアルな声は?
  • なくなったらどう思うか?

これらの問いを、共創の場で丁寧に投げかけ、受け止めることが、インサイト発見への第一歩につながります。

あなたの会社でも、明日から始められる「共創の問いかけ」。
まずはお客様とじっくり話す時間をつくってみてください。

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