組織横断し寄ってたかって
組織横断し、寄ってたかって挑むことで生まれる本気と成果
商品企画において、企業と生活者が共に取り組む「共創」のプロセスを実施する際、企画部門だけでなく、営業部門や技術開発、製造現場、さらにはカスタマーサポートなど、さまざまな部署の人々が関わるケースが増えています。
つまり、「寄ってたかって」知恵と経験を出し合いながら、企業全体として課題に向き合い、生活者と共に解決策を生み出していく。このような組織横断型の共創体制が整えば、商品やサービスの質だけでなく、企業のチームワークや企業文化にまでポジティブな影響をもたらします。
この“寄ってたかって”の精神は、単なる掛け声ではなく、組織が本来持っている多様な視点や能力を再統合する力です。営業部門は市場のリアルを、開発部門は技術の可能性を、顧客対応部門はユーザーの本音を、それぞれ持っています。これらが結集することで、アイデアの質も実現性も飛躍的に高まります。
さらに、部署をまたぐ連携が日常的に行われることで、部署間の壁が徐々に取り払われ、相互理解や信頼が育まれていきます。これにより、企画段階だけでなく、ローンチ後の改善活動にも自然と協力体制が生まれ、継続的に価値を磨き上げる組織文化が育ちます。
そして、ここで重要なのは、関わった社員が本気でその商品やサービスを「自分ごと」として捉えるようになるという点です。自分が関わった商品だからこそ、営業現場でも心からその価値を伝えようとする。その結果、売上にも直結するケースが非常に多いのです。
「自分が作った商品だから、責任を持って売る」──そんな姿勢は、単なる営業トーク以上の説得力を持ち、顧客の信頼を勝ち取ります。つまり、共創の過程に関わった社員ほど、売ることにも本気になれる。これが、共創マーケティングの隠れた強みです。
このような体制では、従来の“担当者任せ”の発想から脱却し、企業全体が一つのチームとして価値創造に挑む姿勢が育ちます。
部署をまたいだ共創が当たり前になることで、「この件はうちの部署の範囲外です」といった受け身の姿勢が減り、責任感と積極性が自然と醸成されていきます。
また、こうした体験を通じて社員同士のリスペクトも高まり、日常業務における横の連携や相談のハードルも下がるようになります。
共創というプロジェクト単位の活動が、結果として職場風土そのものを前向きに変えていくのです。
縦割りの弊害を超えて、スピードと創造性を両立する
従来の縦割り組織では、企画担当者がどれだけ優れたアイデアを持っていても、社内の調整・承認・伝達などに多くの時間と労力がかかってしまいます。
しかし、最初から開発部門や営業担当者など他部署のメンバーがプロジェクトに関与していれば、生活者との共創プロセスと社内調整が同時進行できるようになります。これにより、タイムロスが激減し、スピーディーかつ柔軟な対応が可能になります。
とくにスピードが求められる現代市場において、社内の意思決定が迅速かつ現場のリアルに即したものであるかどうかは、競争力のカギになります。部門間の事前連携は、対応の遅延や後戻りを防ぎ、ユーザー対応の質も向上させます。
さらに、「寄ってたかって」多様な視点から対話を重ねる中で、それぞれの部署が持つ経験やナレッジが化学反応を起こします。その結果、これまでにないユニークな視点や新しい着想が生まれ、従来の発想の枠を超えた本質的な課題解決が可能になるのです。
たとえば、開発側のこだわりが顧客ニーズとズレていた場合でも、共創の場で顧客の声を直接聞いた営業メンバーがすかさずフィードバックすることで、方向修正が即時に行えるようになります。これが“共創のスピード”です。
そして、このようなプロセスに携わった社員たちは、自らの提案がカタチになる喜びを実感し、自然と「この商品は絶対に売れる」と本気で動き始める。それが、組織全体のパワーとなって成果を押し上げていくのです。
さらに、部門間での相互理解が進むことで、情報の行き違いや手戻りといった無駄も大幅に減少します。
たとえば、マーケティング部が打ち出したコンセプトに対し、技術部がすぐに実現可能性を検証することで、最初から“現実的で魅力的な提案”が生まれます。
こうした協働の仕組みを整えることで、開発からローンチ、改善に至るまでの一連のPDCAが高速化し、事業の成果をより早く実感できるようになります。
共創は、スピードと創造性という、時に相反する要素のバランスを絶妙にとるための有効なフレームワークでもあるのです。
組織と商品、どちらも変わる共創の力
「企画と販売がかみ合っていない」「あの部署が企画した商品なんて売れない」といった社内の温度差は、多くの企業で見られる課題です。それは、縦割り組織が生んだ“情報の断絶”と“目的のズレ”に原因があります。
だからこそ、企画段階から営業・開発・現場のメンバーが関与し、生活者との共創にも一緒に参加することで、目的が共有され、視点が重なり、本当の意味での一体感が生まれます。
この“共通の目的を持つ”ということこそ、社内の分断を乗り越える鍵です。各部署が自部門の成果だけを追い求めるのではなく、ユーザーの満足という共通のゴールに向けて協働することで、摩擦が減り、協力関係が自然に生まれます。
試作品、パッケージ、キャッチコピー、売り方──すべてのプロセスを組織横断で練り上げる中で、それぞれの立場を超えて協力し合う風土が育ち、商品開発と同時に「組織改革」も進むという、大きな副産物が得られるのです。
これまでぎくしゃくしていた部署同士が、共創プロジェクトを通じてお互いの強みや価値観を理解しはじめ、次第に「また一緒にやりたい」という空気が生まれます。つまり、共創は社内の関係性を変える“仕掛け”でもあるのです。
加えて、共創活動の中では、普段関わることのない部署や役職のメンバーと協働する機会が増えます。
これは、社内のネットワークを強化し、社員一人ひとりの視野を広げることにもつながります。
部門を越えた信頼関係が構築されることで、新たなプロジェクトの立ち上げや改善提案が社内でスムーズに通るようになり、結果として社内の意思決定スピードも上がります。
また、共創の経験を持つ社員は、顧客や取引先との外部交渉でも一歩踏み込んだ対話ができるようになり、企業の“顔”としての信頼感を高める存在になります。
本気の共創が、最大の成果を引き出す
社員一人ひとりがプロジェクトに“当事者”として関わり、生活者と一緒に知恵を絞りながら、企画から販売までを一気通貫で進める──。こうした共創体験を通じて、関わった社員たちは商品に誇りを持ち、「絶対に売る」という本気の気持ちを持って市場に向き合います。
これは、単なる販促スローガンとは違います。共創の現場にいたからこそ、「この商品は世の中の誰かのためになる」「このサービスには価値がある」と実感している社員の言葉には力が宿ります。そして、その熱量こそが、顧客の共感を呼び、最大の成果へとつながる原動力になるのです。
実際に、共創型のプロジェクトでは、参加した営業メンバーが自主的に提案資料を作成したり、SNSで情報発信を始めたりと、“売ること”に前のめりになる事例が数多く見られます。
さらに、共創の経験が社員自身のキャリアや価値観にポジティブな影響を与え、「次も関わりたい」「もっとユーザーと対話したい」といったモチベーションの循環が生まれるのです。
本気で関わった社員は、本気で売る。このサイクルが回りはじめたとき、共創マーケティングは単なる手法ではなく、企業文化として根付いていくのです。
こうした経験は、チームや個人の自信にも直結し、次のプロジェクトにも好循環を生み出します。
社員が本気で売りたいと思う商品は、自然と“口コミ”や“紹介”という形で外部にも伝播し、広告では得られない信頼と共感を呼び起こします。
また、共創の実績を蓄積することで、企業は「現場主導で価値を生み出せる集団」として市場からの評価も高まります。
このように、共創は売れる商品づくりのためだけでなく、企業ブランドや社員の働きがいを高めるうえでも大きな役割を果たしているのです。