皆さんは日々の仕事の中で、上司や仲間に相談するとき、つい「どうすればいいでしょうか?」と問いかけてしまうことはありませんか?
私が若い頃、金融機関で働いていた時代もまさにそうでした。しかし返ってきたのは「お前はどうしたいんだ?」という冷たい一言。
当時は戸惑いましたが、今振り返るとこの経験こそが「主観を持つことの大切さ」を教えてくれた原点だったのです。
客観データは“誰でも使える武器”になった
企業活動において、客観的・理論的なデータは必要不可欠です。市場調査や消費者インサイト、購買動向データなどは商品企画やマーケティングの基盤となります。
しかし今日では、これらのデータは誰でも容易に手に入れることができるようになりました。分析手法も標準化され、同じデータから導かれる結論も似通っています。
結果としてA社もB社もC社も、ほとんど差が見えない商品やサービスを展開してしまうのです。
つまり、客観データだけを頼りにしていては「独自性」や「らしさ」を生み出せない時代になってしまったのです。
主観とは「好き嫌い」ではない
では主観とは何でしょうか?単に「私はこの色が好きだから」「この味が好みだから」という感覚的な好悪の話ではありません。
大切なのは、自分とは異なる価値観や多様な意見にしっかり触れ、それを自分の感性というフィルターを通して煎じ詰めた上で、「私は(私たちは)こうしたい」という強い意志に昇華させることです。
このプロセスを経た主観には、熱量と独自性が宿ります。そこに「〜らしさ」がにじみ出ることで、他社にはない独特の存在感を持つ商品やサービスへとつながっていきます。
AIに任せられる“客観”、人にしか出せない“主観”
今後、AIの進化によって客観的・理論的な分析や判断はますます自動化されていきます。誰が見ても正しい「平均的な答え」は、AIが一瞬で導いてくれるでしょう。
そうなると、人間の価値は「間違えない正解を出すこと」ではなく、「どうしたいか」「なぜそうしたいか」を語れる主体的な意志にあります。
AIが導けないもの──それは人の感情や経験からにじみ出る“尖った主観”です。
主観を磨くことがブランドを育てる
企業においても、個人においても「主観を持つこと」は避けて通れません。組織全体で「私たちはこういった価値を届けたい」という想いを共有することで、ブランドの独自性が確立されます。
主観がないブランドは、ただの「機能と価格の比較対象」に過ぎません。しかし主観を尖らせたブランドは、顧客に「その企業らしさ」を感じさせ、共感と支持を集めることができます。
共創マーケティングにおける主観の力
私たちが支援する共創マーケティングの現場でも、主観は重要な役割を果たします。
生活者と企業担当者が一緒に未来を考えるセッションでは、「自分たちはどうしていきたいのか」という主観的な意志を持つことが、イノベーションの芽を育てる原動力になります。
客観データを超えた「人の想い」と「人の感性」こそが、共創によって価値を生み出す土壌なのです。
まとめ──主観で尖らせる勇気を持とう
今の時代、客観的・理論的な情報だけでは差別化できません。AIが客観を担う未来において、人間が果たすべきは「主観で尖らせること」です。
好き嫌いの話ではなく、多様な価値観を自分のフィルターに通して「私はこうしたい」と言える主体性。これが、独自性のある商品やブランドを生み出し、企業と顧客を強く結びつける力になります。
主観を恐れず、堂々と表現していくこと。そこにこそ新しい価値創造の可能性が広がっているのです。
※本記事は、最新の状況に合わせて加筆・再編集しました(更新日:2025年8月28日)。