価値共創やってて良かったな──現場で心が動いた瞬間

COLUMN / COCREATION STORY

共創セッションの終盤、いくつもの意見が飛び交ったあとで、あるメーカーの社長がふっと息をつきながらこうつぶやきました。

「……やっぱり、直接聞きに来て良かったですね。正直、耳が痛いことも多かったけれど、
“まだ伸ばせるところがある”って分かって、ちょっとワクワクしてきました。」

その瞬間、会場の空気が少しやわらぎ、参加していた生活者の表情にも笑顔が広がりました。 「モノの評価会」だった場が、「これから一緒に良くしていく場」に変わった瞬間でした。

こうした場面に立ち会うたびに、私はしみじみと「価値共創やってて良かったな」と感じます。

この記事でお伝えしたいこと

価値共創マーケティングの“本当の手応え”は、売上や数字の前にある、人の表情が変わる瞬間にあります。

  • 生活者のひと言で、企画担当の目の色が変わった瞬間
  • 営業が「これなら自信を持って売れます」と言ってくれた瞬間
  • 社内の空気が少し柔らかくなった瞬間 …など

こらぼたうんの現場で実際にあった場面を通して、「価値共創やってて良かったな」と感じた瞬間を振り返ります。

「価値共創マーケティングって、本当に効果があるんですか?」 はじめてお会いする方から、よくいただく質問です。

私はいつも、数字や事例でお答えする一方で、心のどこかではこう思っています。

正直なところ、“やってて良かったな”と思うのは、数字の前に『人の表情』なんです。

このコラムでは、価値共創の現場に立ち会う中での、私の「心が動いた瞬間」をいくつかご紹介します。 どれも特別な会社だけに起きたことではなく、小さな一歩の積み重ねで生まれた出来事です。

1.生活者のひと言で、企画担当の目の色が変わった瞬間

ある共創セッションでのことです。 いつもは社内の会議室で、数字や資料と向き合いながら商品企画をしている担当者が、 生活者の方と同じテーブルで話をしていました。

そのとき、生活者の方からこんなひと言が出てきました。

「この商品、実は“こういうとき”に一番助かるんですよ。」

担当者の方は、一瞬ポカンとした表情になり、次の瞬間、ペンを持つ手を止めてこう言いました。

「そんな使われ方、正直、考えたこともなかったです…。」

そこから、その担当者の表情が目に見えて変わっていきました。 「30〜40代女性」という抽象的なターゲット像ではなく、 目の前に座っている“ある一人の生活者”の暮らしが、具体的な情景として浮かんだ瞬間でした。

セッションのあと、その担当者は社内に戻ってからも何度もこう話してくださいました。

  • 「あのときの〇〇さんみたいな使い方をする人にとって、どう役立つかを考えたい」
  • 「あの場で出た“この一言”を、企画書のタイトルにしてみたい」

数字だけを見ていたときには生まれなかった会話です。 こういう場面に立ち会うと、私はいつも静かにこう思います。

▼ ここで感じたこと

  • 価値共創は、「ターゲット像」ではなく“目の前の生活者の物語”に触れる時間でもある。
  • その体験が、企画担当の中で「数字ではない判断軸」を育てていく。

2.企業と生活者が「対等に」楽しそうに話している瞬間

数々のプロジェクトの中で、個人的にいちばん「価値共創やってて良かったな」と感じるのは、 企業の担当者と生活者が、対等な立場で楽しそうに商品やサービスの話をしている瞬間です。

最初のうちはどうしても、

  • 企業側は「説明する側」「聞き出す側」
  • 生活者側は「答える側」「評価する側」

という雰囲気になりがちです。 ところがセッションが進むにつれて、ふとしたタイミングで空気が変わります。

「それ、うちの現場でも同じなんですよ。実はこんな困りごとがあって…」

「えっ、そっちはそう見えていたんですね。じゃあ、こういう形ならどうですか?」

気づけば、誰かが一方的に“ヒアリング”しているのではなく、 企業の担当者も生活者も、同じテーブルを囲むひとりの参加者として対話を重ねている。

メモを取る手があちこちで動き、笑い声も混じりながら、 「こうだったらもっと使いやすい」「その発想は面白いですね」と、やり取りが自然に転がっていきます。

▼ 私が一番「やってて良かった」と感じる場面

  • 企業と生活者が、“上・下”ではなく横並びのパートナーとして話している。
  • どちらかが正解を教えるのではなく、「日常の困りごと」を一緒にほぐしている。
  • アイデアや方向性が、「対話の延長線上」で自然に形になっていく。

その光景を少し離れたところから眺めながら、私はよくこう感じます。

「ああ、これこそ価値共創だな。商品やサービスだけでなく、“関係性”も一緒につくっている時間だな。」

たとえその場で完璧な答えが出なかったとしても、 このような対等な対話の経験は、企業側にも生活者側にも、静かに長く残っていきます。 それが、次のプロジェクトの土台になっていく――そんな手応えを感じる瞬間です。

3.営業が「これなら自信を持って売れます」と言った瞬間

別のプロジェクトでは、営業担当の方にも共創のセッションに入っていただきました。 事前の打ち合わせで、その営業の方はこんな本音を話してくれました。

「正直、値段の話ばかりで…。本当は“良さ”を伝えたいんですけど、なかなか時間がなくて。」

ところが、生活者の方々と一緒に 「どんな場面で、この商品が“助けになる”のか」を話し合う中で、 その営業の方の口から、こんな言葉が出てきました。

「この使い方の話、商談のときにそのまま伝えたいですね。値引きの話じゃなくて、

“こういうときに役立つんです”って言えそうです。」

プロジェクトが終わった後、その方はこう続けました。

「これなら、自信持って売れますね。“安くします”じゃない話ができるので。」

この瞬間、私は 「営業の役割が“値下げ調整”から“価値を一緒に届ける人”に変わりつつあるな」 と感じました。

▼ ここで感じたこと

  • 共創の場に営業が入ることで、「値段以外の会話のネタ」が増える。
  • 「自信を持って売れる」という感覚が、価格交渉のスタンスを変えていく。

4.社内の空気が、少しだけ柔らかくなった瞬間

共創の場で、私が密かに楽しみにしている時間があります。 それは、ワークショップの最後の「ふりかえり」です。

ある会社で、部門横断メンバーを集めて共創ワークをしたときのこと。 普段はほとんど発言されない現場の方が、最後の一言コメントで、こうおっしゃいました。

「今日みたいに、立場関係なく話せる場が、もっとあってもいいなと思いました。」

それに対して、別の部署の方がすかさずこう返されました。

「ですよね。普段、メールだと“お願い”ばかりなので…。こうやって一緒に考える時間があると、ちょっとホッとしますね。」

このやり取りを聞いた瞬間、それまで少し張りつめていた空気が、ふっと柔らかくなったように感じました。

共創の場は、何か“すごいアイデア”を出すためだけにあるわけではありません。 同じ会社の中で、 「相手もちゃんと考えてくれているんだな」 とお互いに気づき合う時間でもあります。

▼ ここで感じたこと

  • 価値共創は、マーケティング手法であると同時に、社内の関係性を少し良くするきっかけでもある。
  • 空気が変わると、次のプロジェクトや新しい挑戦の始め方も変わっていく。

5.社長の「この仕事やってて良かったな」がこぼれた瞬間

商品が完成し、いよいよ売り場に並んだとき。 共創に関わったメンバーは、みんな少しソワソワしています。

あるとき、社長と一緒に売り場を見に行ったことがありました。 すると、その商品を手に取ったお客さまが、何気なくこう言ったのです。

「あ、これ。この前買ってみたら、すごく良かったんですよ。」

その様子を見た社長は、少し照れたように笑いながら、私に小さな声でこう言いました。

「いやあ…こういう顔を見ると、この仕事やってて良かったなって思いますね。」

その一言に、これまでの苦労や試行錯誤がギュッと詰まっているように感じて、胸が少し熱くなりました。

売上や利益ももちろん大事です。 でも、その奥にある 「誰かの生活の中に、ちゃんと入り込めた」という手応えこそ、 価値共創の一番の報酬なのかもしれません。

6.「また一緒にやりましょう」が自然に出てきた瞬間

プロジェクトが終わるとき、最後のまとめの場で、クライアントの担当者の方から、こんな言葉をいただくことがあります。

「次は、あのテーマでも共創やってみたいですね。」

「このプロジェクトが終わってよかった」ではなく、 「次はこうしてみたい」という言葉が自然に出てくる。

そのとき私は、

「価値共創が、その会社の“特別な取り組み”から、少しずつ“当たり前の選択肢”になりつつあるのかもしれない。」

支援者として関わっている身としては、それは何よりうれしい瞬間です。

本記事でお伝えしたかったこと

  • 価値共創の魅力は、KPIや売上だけでなく、現場の表情の変化にこそ表れる。
  • 生活者・企画・営業・現場・経営、それぞれの立場で「やってて良かった」と思える瞬間がある。
  • そうした瞬間は、少人数でも、小さなプロジェクトからでも必ず生まれる。

価値共創マーケティングというと、「新しい手法」「難しそうなこと」と感じられるかもしれません。 けれど、現場に立ち会うたびに思うのは、価値共創の本当の魅力は、

  • 企業と生活者が、対等に楽しそうに商品やサービスの話をしている瞬間
  • 生活者のひと言に、企画担当がハッとさせられる瞬間
  • 営業が「これなら自信を持って売れる」と目を輝かせる瞬間
  • 社内の空気が少しだけ柔らかくなる瞬間
  • 社長が「やってて良かった」と心から言える瞬間

といった、人の表情が変わる場面にこそある、ということです。 なかでも、個人的には、企業と生活者が対等な仲間として笑いながら対話している光景に出会えたとき、 「価値共創を続けてきて本当に良かった」と強く感じます。

あなたの会社では、どんな瞬間に「やってて良かったな」と感じるでしょうか。 もし、そんな瞬間を増やしたいと感じていただけたなら、価値共創というやり方も、 ひとつの選択肢として思い出していただければうれしく思います。

👀 あなたの現場では、どんな「心が動いた瞬間」がありましたか?

  • お客さまのひと言で、方向性がガラッと変わった場面はありましたか?
  • 厳しいフィードバックをきっかけに、「もう一度やってみよう」となった経験は?
  • 社内の誰かの姿勢を見て、「このチームはまだ伸びる」と感じた瞬間は?

そんな瞬間をチームで振り返ってみることが、次の共創プロジェクトの種になります。

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