「お客さまと一緒に価値をつくる共創マーケティングを始めたい」。 そう考える中小企業の社長さんは増えています。
しかし実際にプロジェクトを動かしていくと、
- 企画や開発は前向きだが、営業がいまひとつ乗ってこない
- 共創で良いアイデアが出ても、商談では従来どおり「値引き合戦」に戻ってしまう
- ワークショップの場は盛り上がったのに、具体的な売上や提案に結びつかない
この記事でお伝えしたいこと
こらぼたうんの実務経験から言えるのは、企画・開発だけでなく、少数でも良いので営業担当者を共創チームに入れること。 そして、その営業が発売後の「立ち上げエンジン」になるということです。
- 共創チームに営業を入れると何が変わるのか
- 営業が感じている本音・抵抗パターン
- 営業を“共創パートナー”に変える3つのステップ
- 導入時に営業部門と決めておきたいポイント
中小企業の社長・マーケティング担当の方が、「営業を味方にした共創マーケティング」に踏み出すためのヒントとしてお読みください。
1.なぜ営業を共創チームに入れると、発売後の動きが変わるのか
1-1 共創プロジェクトは「発売してから」が本番
共創マーケティングのプロジェクトでは、生活者との対話やワークショップ、企業側の企画・開発メンバーとのディスカッションを通じて、新しいコンセプトや商品案が生まれていきます。
しかし、どれだけ良い企画が生まれても、それを実際のお客様に届けていくのは営業の役割です。
- どんなお客様に
- どのようなタイミングで
- どんな言葉で提案するか
これらを一番よく知っているのは、日々現場に立っている営業の方々です。 企画会議の中では「良さそうだね」で終わってしまうアイデアも、営業の視点が入ることで具体的な「誰にどう届けるか」のイメージに変わっていきます。
1-2 関わった営業担当者は、「当事者」として本気で動く
こらぼたうんが企業と生活者の共創マーケティングをお手伝いする中でも、企画担当・開発担当に加えて、1人〜数人の営業担当者にチームメンバーとして参加してもらうことがあります。
すると、発売後の動きが明らかに変わります。
- 生活者と一緒にアイデアを出した経験がある
- 試作段階から、仕様の議論にも参加してきた
- 「自分の一言が、この商品のポイントになっている」と実感している
こうした営業担当者は、リリース後に自分の子どものような感覚で商品を動かし始めます。
- 「この背景ストーリーを聞いてほしいんです」と自らプレゼンする
- 社内の営業会議で「どう売るか」を積極的に提案する
- 他の営業メンバーからの質問に、企画側の代わりに答えてくれる
つまり、共創に関わった営業が、発売後の社内の“牽引役”になるのです。
1-3 ごく少数でも、立ち上がりの“火種”になる
もちろん、全営業担当者が企画段階から関わる必要はありません。中小企業の場合、リソースも限られるため、むしろ
- 部門やエリアを代表する形で、1人〜数人だけ参加してもらう
- プロジェクトメンバーとして「名前を出す」
- 発売後は、そのメンバーに社内で説明役・旗振り役を担ってもらう
という形の方が現実的で、動きやすいことが多いと感じています。
▼ こらぼたうんの現場で感じる一番の効果
- 関わった営業担当者は、発売後に「当事者」として本気で動く。
- 人数は1人〜数人でも、その動きが周りの営業に波及し、全体の空気を変えていく。
- 企画・開発だけで進める共創よりも、「立ち上がりのスピード」と「浸透の深さ」が大きく違ってくる。
2.営業からよく出る本音・抵抗パターンを理解する
一方で、営業の立場から見ると、共創プロジェクトにはこんな本音もあります。ここを理解しておくと、巻き込み方の工夫がしやすくなります。
2-1 「お客様、そんな時間取れませんよ」
共創セッションや座談会、インタビューなどを依頼すると、最初に出てくることが多い言葉です。
- 「忙しいお客様に、わざわざ時間をお願いするのは気が引ける」
- 「まだ関係が浅い顧客には頼みにくい」
こうした遠慮や不安が背景にあり、営業の頭の中では「お客様に嫌われたくない」という気持ちが強く働いています。
2-2 「そんなことより、今月の売上が…」
営業は常に短期的な数字に追われています。
- 「共創が大事なのは分かるが、まずは今月の予算をクリアしないと」
- 「来期の新商品より、目の前の案件が優先」
この状況では、どうしても「将来のための活動」は後回しになりがちです。 「共創=長期」「営業評価=短期」というギャップが、心理的ブレーキになっています。
2-3 「現場の声なんて、どうせ活かされない」
過去に、アンケートやヒアリングに協力したのに、
- その後の報告が何もなかった
- 意見を出しても「検討します」で終わり、何も変わらなかった
という経験があると、営業は「また同じでは?」と冷めてしまいます。 「出した声がどう活かされたのか」が見えないと、人は次第に協力しなくなる、というごく自然な反応です。
2-4 「うまくいっても、自分の評価にはつながらないのでは」
静かな本音として多いのが、この感覚です。
- 「企画のプロジェクトに協力するだけで、自分の評価は変わらないのでは」
- 「むしろ、本業の数字が落ちたらマイナス評価になりそう」
この気持ちがあると、営業はどうしても“様子見”に回ります。 だからこそ、「共創に関わること自体が、ちゃんと評価される」というメッセージが必要になります。
3.営業を“共創パートナー”に変える3つのステップ
こうした本音や抵抗感を踏まえたうえで、こらぼたうんでは次の3ステップで営業を巻き込むことをおすすめしています。
ステップ1:まずは「営業がすでに持っている知恵」を取りに行く
最初のステップは、営業を説得することではありません。 それよりも先に、営業が日々の現場で感じていることを丁寧に聞きに行くことです。
- 最近のお客様との会話で、気になった一言は?
- 「うちならではだな」と感じた場面は?
- よく出る不満や、「本音っぽい一言」は?
こうした問いかけを通じて、営業が頭の中に持っている「現場のインサイト」を一緒に整理していきます。
▼ ポイント
- 「情報を出してください」ではなく、「現場の知恵を一緒に整理させてください」という姿勢で臨む。
- ホワイトボードやメモに、営業の言葉をそのまま書き出し、「この一言が大事ですね」とフィードバックする。
- 営業の経験や気づきが、企画のスタート地点になる構図をつくる。
ステップ2:「売上」ではなく「お客様の成功体験」を共通のゴールにする
次に大切なのが、共創プロジェクトの目的の伝え方です。 「売上アップ」や「新商品のヒット」だけで語ってしまうと、営業からは
「それなら、今までどおり値引きやキャンペーンで頑張ればいいのでは?」
と受け取られてしまうこともあります。
そこで、共通のゴールを「お客様の成功体験」や「現場での“ありがとう”の数」に置き直します。
- 値引きではなく、「お客様の成功体験」で選ばれる商談を増やしたい
- 営業の皆さんが、お客様から感謝される場面をもっと増やしたい
このように、営業の日常の喜びと結びつけて目的を共有すると、共創への関わり方が前向きなものに変わっていきます。
ステップ3:少数の営業に“当事者体験”をしてもらい、発売後の牽引役にする
そして何より重要なのが、少数の営業メンバーに、企画段階から当事者として関わってもらうことです。
- 生活者との共創セッションに同席してもらう
- 試作品のチェックや仕様検討の場に参加してもらう
- 「このお客様ならどう受け取るか?」を一緒に議論する
こうした経験を通じて、営業は
「この商品には、自分の経験やお客様との会話が入っている」
という実感を持つようになります。
そのうえで発売を迎えると、関わった営業担当者は、
- 率先して既存顧客に提案を持っていく
- 営業会議の場で、商品の背景ストーリーを説明する
- 他の営業の質問に、自分の言葉で答えてくれる
といった形で、立ち上げ期の“推進リーダー”になってくれます。
▼ ここが肝心
- 「全員を巻き込もう」としない。最初は1人〜数人が本気で動いてくれれば十分。
- その少数メンバーの動きが社内に伝わり、「次は自分も参加したい」という営業が出てくる循環をつくる。
4.共創導入時に、営業部門と決めておきたいこと
実際にプロジェクトを立ち上げる際には、営業部門と次の3点を話しておくとスムーズです。
4-1 役割分担をざっくりと言葉にしておく
まずは、誰がどの部分を担当するかを“ざっくり”でも良いので共有します。
- 生活者・顧客の候補リストアップ:営業
- 共創セッションの設計・ファシリテーション:企画・マーケティング
- 共創で生まれたコンセプトの検証・提案:営業+企画の共同
「何でもかんでも現場に投げるわけではない」という安心感を持ってもらうことが目的です。
4-2 営業の負担を増やしすぎない参加設計にする
- 全営業が毎回参加するのではなく、代表メンバーだけにする
- 参加回数や期間をあらかじめ区切る(例:今回のプロジェクト中に2回だけ参加)
- お客様への声かけは、既存の訪問の中でできる範囲にする
こうした工夫で、「仕事が増えるだけ」という印象を和らげることができます。
4-3 成果の“見える化”と評価の仕組みを共有する
- 共創から生まれた気づきや成果を、社内報・社長メッセージなどで共有する
- 発売後の成功事例では、関わった営業メンバーの名前をきちんと出す
- 評価面談の場で、「共創への貢献」も話題にしてもらうよう上長と共有する
「共創に関わること自体が、ちゃんと評価される」という土台をつくることで、次のプロジェクトへの参加もスムーズになります。
5.まとめ:まずは一人の営業、一つの共創テーマから
本記事のポイント
- 共創マーケティングは、企画・開発だけで進めるよりも、営業をチームに入れることで「発売後の動き」が大きく変わる。
- 特に、1人〜数人の営業担当者が、立ち上げ期の“牽引役”として本気で動くことの効果は非常に大きい。
- 営業を巻き込むには、
- 現場の知恵を丁寧に聞きに行く
- 売上ではなく「お客様の成功体験」を共通のゴールにする
- 少数の営業に当事者体験をしてもらい、発売後の旗振り役になってもらう
営業を巻き込んだ共創マーケティングは、「値引き前提の商談」から「お客様と一緒に価値をつくる商談」へとシフトしていくための、強力なきっかけになります。
いきなり全社を巻き込もうとする必要はありません。まずは、
- 信頼できる営業を1人〜数人だけ招き入れる
- そのメンバーと一緒に、小さな共創テーマから試してみる
ここから始めるだけでも、営業の表情や会議の空気は少しずつ変わっていきます。
「営業をもっと巻き込んで共創を進めたいが、どこから手をつけるべきか」。 もしそんなお悩みがあれば、こらぼたうんでご一緒してきた事例も交えながら、御社ならではの「最初の一歩」の設計を一緒に考えていくこともできます。
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