値下げしても楽にならない…中小企業が「脱・価格競争」に踏み出す3つの共創戦略
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「この価格じゃ利益が残らないのは分かっている。でも、値下げしないと仕事が取れない…」
多くの中小企業の社長さんから、そんな本音をうかがいます。一度でも値下げの味を覚えてしまうと、そこから抜け出すのは簡単ではありません。
そんな状況から一歩抜け出すための「共創×脱・価格競争」の考え方をまとめました。
1.なぜ値下げしても状況が良くならないのか?中小企業が陥りがちな3つのワナ
値下げは一時的に受注を増やしても、長期的には「さらに値下げを求められる土俵」に自ら乗ってしまう危険があります。
値下げは「楽になるため」ではなく「追い詰められて」やってしまう
本来、価格は「戦略として決めるもの」です。しかし実際には、
- 競合他社の見積もりを聞いてから、慌てて下げる
- 大口取引先から「今回はこれでお願い」と言われ、断り切れずに下げる
といった、「追い込まれてからの後出し値下げ」になっているケースが少なくありません。
この状況が続くと、
- 利益が圧迫される
- 社内に「また値下げか…」という空気が広がる
- 新しい投資やチャレンジができなくなる
という悪循環に陥ってしまいます。
大手と同じ土俵で戦うと、体力勝負になってしまう
価格競争のもう一つの怖さは、土俵そのものが大手向きであることです。
- スケールメリットで原価を下げられる
- 宣伝・販促に大きな予算をかけられる
- 値下げしても当面は耐えられる資金力がある
大手が得意な土俵に、中小企業が正面から飛び込んでしまうと、どうしても体力勝負にならざるを得ません。
「うちももう少し頑張れば…」と踏ん張ってしまうほど、じわじわと体力が削られていく。これが価格競争の怖いところです。
「とりあえず安く」の先にある、さらなる値下げ要求
そして一番つらいのは、「値下げしても、また次の値下げ要求が来る」という現実です。
- 一度「この会社は値段を下げてくれる」と認識される
- 取引先にとっては「交渉すれば下がる会社」というポジションになる
- 値下げに応じるほど、次の交渉でのスタートラインが下がる
結果として、「安さ」以外の理由で選ばれにくくなり、ますます価格以外での会話がしづらくなっていきます。
▼ ここまでのポイント
- 「追い込まれてからの値下げ」は、会社の体力をじわじわ削る
- 大手が得意な土俵(スケール・資金力)に乗ると、中小企業は不利になる
- 一度「値下げしてくれる会社」のラベルが付くと、次の交渉も値下げ前提になりやすい
2.こんなサインが出ていたら要注意――価格競争に巻き込まれている会社の特徴
営業・商品企画・経営会議のいたるところで「価格が主語」になっていたら、すでに価格競争の土俵に乗っているサインかもしれません。
「うちも価格競争に巻き込まれているのだろうか?」 そう感じたら、次のようなサインが出ていないか一度振り返ってみてください。
営業現場から「値引き前提」の見積もりが出てくる
見積もりの段階で、すでに
- 「ここから◯%までは下げられます」
- 「とりあえずこの価格で出して、反応を見てから…」
と、値引き込みで価格を組んでいるケースがあります。
この状態が続くと、営業の役割が「値段調整係」になってしまい、本来の「価値を伝える仕事」が後回しになってしまいます。
新商品会議で「競合より◯円安く」が最初に出てくる
新商品の企画会議で、
- 「競合Aより◯円安い価格で出しましょう」
- 「今より10%安いラインを狙いたいですね」
といった話が真っ先に出てくる場合、価値よりも価格が主役になっている可能性があります。
本来は、
- 誰の
- どんなシーンで
- どんな“困りごと”を軽くするのか
といった「価値の設計」が先にあるべきですが、そこを飛ばして「いくらで出すか」だけに意識が向いてしまうと、どうしても価格勝負になりがちです。
値上げの話が出ると、社内が一斉に黙り込んでしまう
原材料費や物流費の高騰で、本当は値上げが必要だと分かっている。 しかし、会議で値上げの話題が出た瞬間に、
- 「お客様が離れてしまうのでは」
- 「営業現場が大変になる」
- 「自分が矢面に立ちたくない」
という不安から、場が急に重くなる。こうした「値上げタブー」の空気が強い会社も、価格競争に巻き込まれやすい状態です。
▼ 価格競争に巻き込まれているかチェック
- 見積書に「最大◯%値引き可」と最初から書いてしまっている
- 会議で最初に出るのが「競合よりいくら安くするか」の話になっている
- 値上げの話題が出ると、場の空気が重くなり話が先に進まない
3.「脱・価格競争」は特別な会社だけの話ではない――中小企業が持っている強み
脱・価格競争のカギは特別なノウハウではなく、中小企業ならではの小回り・顧客との近さ・決断の速さといった、すでに持っている強みです。
ここまで読むと、
「理屈は分かるけれど、うちのような小さな会社に“脱・価格競争”なんてできるのだろうか?」
と感じられるかもしれません。
しかし、こらぼたうんがこれまでご一緒してきた中小企業の事例を見ると、むしろ 価値共創マーケティングの視点で見れば、 中小企業だからこそ持っている強みが、脱・価格競争の鍵になっていると感じます。
少量生産・小ロットだからできる柔軟さ
大手メーカーにとっては「割に合わない」小ロットの仕事でも、中小企業にとっては十分な商機になることがあります。
- 試作品や限定品に、すぐに対応できる
- 「まずは小さく試してみる」がやりやすい
- 仕様変更にも柔軟に応じられる
こうした柔軟さや小回りの良さは、価格以外の価値として、お客様にとって大きな安心につながります。
顔が見える距離で顧客とつながれる強み
中小企業の多くは、
- 社長自身が現場のお客様と直接話す
- 営業と製造の距離が近い
- お客様の声が、そのまま社内に届きやすい
という特徴があります。
これは、共創マーケティングの言葉でいえば「顧客と一緒に価値をつくる」ための土台そのものです。 大がかりな仕組みをつくらなくても、少人数で深く対話する場から始められるのは、中小企業ならではの強みです。
社長の意思決定が速く、「ストーリー」を一気に変えられる
大きな組織では、価格戦略やブランドの方向性を変えるのに、社内調整だけで何ヶ月もかかることがあります。
一方、中小企業では、
- 社長の「これでいこう」の一声で
- 商品の打ち出し方や売り方を、短期間で変えられる
というスピード感があります。
「安い会社」から「この価値ならこの価格で納得」と思ってもらえる会社へ。 その“ストーリーの転換”を一気に進められるのも、中小企業の大きな武器です。
4.中小企業が今すぐ始められる「脱・価格競争」への3つの共創戦略
いきなりすべてを変えるのではなく、お得意様との対話・小さな共創商品・伝え方の見直しという3つの一歩から始めるのが現実的です。
まずは、この3つから始めてみませんか?
- お得意様と一緒に「選ばれている理由」の言葉を探す
- 小さな共創商品・共創企画を1つだけ試してみる
- 値段ではなく「文脈・ストーリー」で価値を伝える
では、具体的に何から始めればよいのでしょうか。ここでは、こらぼたうんが現場でご一緒してきた中から、 比較的取り組みやすい3つの共創戦略をご紹介します。
STEP1:お得意様と一緒に「選ばれている理由」の言葉を見つける
まず取り組んでいただきたいのは、「うちの強み」を自社だけで決めてしまわないことです。
長くお付き合いいただいている取引先や、お得意様の中から2〜3社を選び、
- 「なぜ他社ではなく、うちを選んでくださっているのか」
- 「どんな場面で、うちの商品・サービスが“助かった”と感じたか」
- 「もし、うちがなくなったら何が一番困るか」
といったテーマで、じっくりと話す機会をつくってみてください。
ここで大切なのは、「アンケート調査」ではなく、一緒に言葉を探す“共創の場”にすることです。
- 顧客の言葉を、その場でホワイトボードに書き出す
- 社長や担当者も「そういう場面は気づいていませんでした」と素直に受け止める
- 「この価値をもっと前面に出していきましょう」と、その場で仮の方向性を共有する
こうしたプロセスを通じて、価格ではなく「納得の理由」で選ばれるためのキーワードが見えてきます。
STEP2:小ロット・一点物・試作を活かした共創商品を1つ試してみる
次の一歩としておすすめなのが、共創型の商品・サービスを1つだけ試してみることです。
例えば、
- 取引先と一緒に仕様を考えた「共同開発モデル」
- 一定期間・数量限定で出す「共創企画品」
- 生活者と一緒にアイデアを出して形にした「ストーリー付き商品」
など、小さくても構いません。
ここでのポイントは、
- いきなり大きな売上を狙わない
- 利益率だけで評価しない
- 「価格以外の価値で選ばれる手応え」を感じることを重視する
ことです。
実際に試してみると、
- 営業担当が「この商品は値下げ交渉されにくいですね」と感じる
- 取引先との会話が「いくらで入るか」から「どう売るか」「どう魅せるか」に変わる
- 社内で「次はこんな共創ができるのでは?」というアイデアが出てくる
といった変化が生まれてきます。
STEP3:価格ではなく「ストーリーと体験」で価値を伝える
最後の戦略は、伝え方を変えることです。
カタログや提案書が「機能・スペック・価格」の表だけになっていないか。 WEBサイトやパンフレットで、「どんなお客様の、どんな場面で役立っているか」が伝わっているか。 営業トークが「安くします」「頑張ります」で終わっていないか。
一度、見直してみてください。
「価格以外の価値」を伝えるためには、
- 典型的なお客様像(ペルソナ)と、その一日の使い方
- 利用シーンのストーリー(どんなときに、どんな気持ちになるか)
- 他社ではなく「御社だから」選ばれた具体的なエピソード
といった文脈や物語を、分かりやすく見せていくことが大切です。
これは、こらぼたうんが「文脈価値」や「共創価値」と呼んでいる部分ともつながります。 価格そのものではなく、その価格に込められた意味を、きちんと伝えていくイメージです。
5.共創マーケティングで「脱・価格競争」を進めると、社内にもこんな変化が起きる
共創マーケティングで価格以外の価値を見える化すると、営業・開発・経営の会話が「いくらで売るか」から「どんな価値を届けるか」に変わっていきます。
「脱・価格競争」は、単に価格の付け方を変える取り組みではありません。 価値共創マーケティングの考え方を取り入れていくと、 社内の空気や役割の捉え方にも変化が出てきます。
営業が「値引き交渉役」から「価値を一緒につくるパートナー」に変わる
共創の場に営業が参加することで、
- 顧客の本音や現場の声を、直接聞けるようになる
- 「あの会社はこういう場面でうちを頼ってくれている」と実感できる
- 「その価値なら、この価格で納得してもらえるはずだ」という自信が持てる
ようになっていきます。
すると、商談の場でも、
- 「まずは値下げ前提で…」ではなく
- 「この価値を実現するために、この価格にしています」という話がしやすくなります。
開発・製造が「言われたものを作る」から「お客さまと一緒に考える」に変わる
共創商品や試作企画を通じて、開発・製造のメンバーも現場の声に触れるようになると、
- 「このひと手間が、あのお客さまの安心につながっている」
- 「ここはあえてコストをかけてでも守りたいポイントだ」
といった感覚が共有されていきます。
結果として、「安く作ること」だけでなく、「価値を最大化するための設計」が会話に上るようになるのです。
「値上げの話」が前よりも冷静にできるようになる
そして何より大きいのは、社内で値上げの話題がタブーではなくなっていくことです。
- 「この部分に、これだけの価値を感じてくださっている」
- 「共創企画で、こんな反応をいただいている」
という事実があると、「それに見合う価格にさせていただく」という話がしやすくなります。
もちろん、値上げは簡単なことではありません。 それでも、「ただの値上げ」ではなく、共創から生まれた価値をきちんと説明したうえでの価格改定なら、お客様の受け止め方も変わってきます。
6.まとめ――値下げを前提としない商談に変える第一歩として
最後に、この記事でお伝えしたポイントをもう一度整理します。
ポイント
- 値下げは一時的に受注を増やすことがあっても、長期的には「さらに値下げを求められる土俵」に自ら乗ってしまう危険がある。
- 中小企業には、小回りの良さ・顧客との近さ・意思決定の速さといった、脱・価格競争に向いている強みがすでに備わっている。
- その強みを活かすための第一歩として、
- お得意様と共創的な対話を持つ
- 小さな共創商品・共創企画を試す
- 価格ではなく「文脈・ストーリー」で伝える売り方にシフトする
「いきなりすべてを変える」のではなく、ひとつの取引先、ひとつの商品、ひとつの企画から試してみるだけでも、見えてくる景色は大きく変わります。
「脱・価格競争を、もっと体系的に整理して考えたい」 「自社の場合、どこから手をつけるのが現実的か相談したい」
と感じられた方に向けて、こらぼたうんでは、
- 脱・価格競争と文脈価値・共創価値の整理
- 具体的な共創プロジェクトの組み立て方
- 社内を巻き込むための進め方
をまとめたガイドや、オンライン相談もご用意しています。
次の一歩を一緒に考えてみたい、と思われたタイミングで、ぜひお気軽に声をかけてください。
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