サービスドミナントロジックとは――価値共創の考え方

この記事は価値共創マーケティングの全体像(基本・ポイント・導入法)で紹介しているテーマの一部を掘り下げた内容です。実務で使えるコツや事例を中心に解説します。

「いいモノを作れば売れる」という時代から、「使ったときにどんな体験や意味が生まれるか」を重視する時代へ。
その考え方の土台が サービスドミナントロジック(SDL) です。そしてSDLを実践するカギが、企業と生活者が一緒に価値を作る 価値共創。です。ここでは、SDLと価値共創のつながりを解説します。


なぜいま「サービス中心」の考え方が必要?

いま、世の中にはモノがあふれています。スマホもスニーカーも、どれを選んでも性能は十分。だから「性能が高い」「価格が安い」だけでは選ばれにくくなりました。
そこで注目されるのが、「使ったときにどんな体験や意味があるか」を重視する考え方。これがSDLです。

ポイント: モノの価値=「買った瞬間の価値」より、使っているときの「体験・意味(Value-in-Use)」が大事。

サービスドミナントロジック(SDL)とは

SDLは「価値は企業が一方的に作って渡すのではなく、使う人とのやりとりの中で生まれる」という考え方です。ここでいう「サービス」とは、接客業だけを指すのではなく、人の課題を解決する行為ぜんぶのこと。モノ(商品)は、そのサービスを届けるための「手段」に過ぎません。

  • Value-in-Use: 価値は「使っているとき」に生まれる
  • 共創: 企業と生活者は価値づくりのパートナー
  • モノは媒体: モノ自体ではなく、使い方・体験が本質

図解&比較表:モノ中心 vs サービス中心

図1:価値の生まれ方のちがい(フロー図)

上が「モノ中心(PDL:Product-Dominant Logic=モノ主導の考え方)」、下が「サービス中心(SDL)」。 SDLでは、使う人とのやりとりの中で価値が立ち上がります。

(モノ中心:価値は企業→顧客へ一方通行)


(サービス中心:価値は「使う場面」で共創される)


比較表:モノ中心(PDL)とサービス中心(SDL)

観点 モノ中心(PDL) サービス中心(SDL)
価値の考え方 価値=製品の機能・性能 価値=使ったときの体験・意味(Value-in-Use)
企業と顧客の関係 企業→顧客(片方向) 企業↔顧客(対話・共創)
差別化の軸 機能・価格 体験・物語・共感(ブランドの世界観)
モノの位置づけ 価値そのもの 価値を届ける媒体(手段)
開発の姿勢 社内で企画し完成後に提供 途中から生活者と一緒に磨く(価値共創)
ロイヤリティ 価格・ポイントに依存しやすい 「好き・共感・応援したい」心理ロイヤリティが育つ

身近な例(カフェ/ゲーム/学校行事)

1) カフェ

同じコーヒーでも、コンビニとカフェでは体験が違います。スターバックスなどは「居心地」「会話の場」「自分らしさ」を含む体験が価値に。

2) ゲーム

ゲームソフト自体はモノ。でも「友達と協力できた」「世界観に浸れた」という体験が価値を高めます。

3) 学校行事(文化祭)

指示通りにやるより、みんなで企画から作る方が達成感がある。これが「共創」に近い体験です。


価値共創とは?どう実践する?

価値共創は、企業と生活者が「対話しながら」「一緒に」価値をつくること。やり方の例を3ステップで示します。

STEP 1
声を集める

SNSやイベントで「困りごと」「あったらいいな」を聞く。

STEP 2
一緒に試す

試作品を使ってもらい、感想をもらって改良。

STEP 3
物語を共有する

「どうやって一緒に作ったか」を発信し、仲間を増やす。


なぜ価値共創が解決策になるのか(効果)

  • 価格競争から抜け出せる:「一緒に作った体験」は真似されにくい。
  • ファンが育つ: 参加した人は応援者になりやすい(心理ロイヤリティ)。
  • 失敗しにくい: 途中で意見を聞くので、ズレを早めに修正できる。
  • 社会的価値: 地域や環境の課題解決にもつながる。

共創のむずかしさと乗り越え方

  • 短期成果を焦らない: 小さく始めて学びをためる。
  • 縦割りを越える: 企画・デザイン・営業が同じ場で顧客の声を聞く。
  • 声の扱い: 要望をそのまま採用するのではなく、企業の知識と合わせて価値に変える。
ミニチェック
「最近、実際の使い方(シーン)を見に行った?」「お客さんの言葉で課題を書ける?」――YESが少なければ、共創のチャンスがあります。

まとめ:SDL → 価値共創という流れ

サービスドミナントロジックは、「価値は使うときに生まれる」「企業と生活者で一緒に作る」という考え方。
その実践が価値共創です。モノの性能だけで差がつきにくい時代でも、「体験」「物語」「共感」を育てることで、選ばれる理由が生まれます。


「自社でも試してみたい」方へ:
小さな共創から一緒に設計できます。まずはオンラインで現状ヒアリング→小さな実験→学びの共有、の3ステップで伴走します。

この記事は全体像の一部です。中央をクリックすると、全体の解説ページに戻れます。

価値共創マーケティング|サイト設計ロードマップ 中央に価値共創マーケティング(基本・効果・導入法)、周囲に8クラスタ。中央をクリックするとピラー記事へ移動します。 価値共創マーケティング (基本・効果・導入法) インサイト発見 観察・対話・行動データで隠れた欲求を発見 ワークショップ設計 設計/進行/心理的安全性/失敗回避 差別化・独自化 価格競争から脱却し“選ばれる理由”を設計 商品開発:成功と失敗 失敗パターンと成功へ導く9つのヒント 顧客ロイヤリティ 継続購入・推奨を生む仕組み 理論・フレームワーク S-Dロジック/プロシューマー/文脈価値 事例系 地域住民×店舗づくり など サポート記事 読み物・補足(各クラスタの土台)

💡 無料オンライン相談はこちら

共創マーケティングの導入・実践についてお気軽にご相談ください。
20年以上の支援実績をもとに、御社に合わせたアドバイスをいたします。

👉 無料相談フォームへ

🗒️ コラム・運営視点 一覧へ

共創事例|こらぼたうん
おすすめの記事
最近の記事
  1. 「対話のネタ」で掘り起こす、観察・対話・行動データから見える「隠れた欲求」10選

  2. 比較で戦う「差別化」から、選ばれる「独自化」へ

  3. グループインタビュー vs 共創セッション──“意見収集”から“発想・改善”へ進める方法”

  4. 中小企業と価値共創──大企業との対比で浮かび上がる“速さ”と“近さ”の競争力

  5. 会議で沈黙、カフェで熱弁──人はどこで本音を語るのか

  6. 大手に勝てない理由は「真似」しているから─中小企業が描く独自の成長曲線

  7. 分断の時代を乗り越える鍵─共創型マーケティングとは何か

  8. 子供と親、両方の声を聞く─価値共創の現場から見えること

  1. お客様の声を“そのまま”使っていませんか?ヒット商品に変える3ステップ

  2. 共創アイデア創出力チェック|発想の柔軟性を10問でセルフ診断

  3. 共創価値発信力チェック|共感を広げる伝える力を10問でセルフ診断

  4. 新商品アイデアが浮かばないときのヒント|中小企業でもできる“顧客と共につくる”発想法

  5. 共創マーケティング導入・実践ステップ|準備から成果活用まで

  6. 失敗事例から学ぶ商品企画:調査バイアス/価格設定ミス/顧客ミスマッチ

  7. 「対話のネタ」で掘り起こす、観察・対話・行動データから見える「隠れた欲求」10選

  8. 調査では高評価でも買われない──購買行動ギャップを共創で埋める方法

よく読まれている記事
  1. 1

    インサイト発見とデザイン思考|共創で「選ばれる理由」をつくる実践ガイド

  2. 2

    共創アイデア出しワクショップ10選──社員・顧客と価値を生み出す実践手法

  3. 3

    社員の働き方を変え、人材の可能性を引き出す。組織を超えた価値共創。

  4. 4

    文脈価値で差別化する ─ 商品が売れない時代の共創マーケティング戦略

  5. 5

    「ゴリラの鼻くそ」はなぜ売れたのか?―価格競争を超えて“意味”で選ばれる商品のつくり方

あなたへのおすすめ記事