「ゴリラの鼻くそ」と検索されてこの記事へ辿り着いた方の多くは、商品情報を探しているかもしれません。
ですが本記事では、このユニークなお菓子がなぜ“中身が同じなのに価格を倍にできたのか”を、
共創マーケティング・文脈価値・ネーミング戦略の視点から解説します。
「意味のつけ方」「売る場所の文脈」「話題性のつくり方」など、
中小企業の商品開発・売り方に役立つヒントとして読みご活用ください。
✅ 価格競争から抜け出すには「意味づけ」の再設計が不可欠
✅ ネーミング・パッケージ・売る場所の“文脈”が価値を倍化する
✅ 顧客のユーモア感覚まで商品に取り込むのが「共創」
20年以上前の事例ですが、マーケティングの本質が詰まっていて、今でも十分通用します。
当時、黒豆甘納豆はどれも似たような見た目・味で差別化が難しく、スーパーの棚では完全な価格競争でした。
そんな中、ある“名前と売る場所を変えただけ”の黒豆甘納豆が、
価格を2倍にしても売れ続ける商品へと変貌しました。
この背景には“生活者とともにつくる意味づけ=共創マーケティング”が存在していました。
1. 「普通の商品」が選ばれなくなった理由
「黒豆甘納豆」と聞いて、多くの人が思い浮かべるのは、
昔ながらのお菓子・少し渋め・価格は200〜300円といったイメージでしょう。
しかし、この固定概念を一瞬で覆したのが「ゴリラの鼻くそ」というネーミングでした。
中身は同じなのに、なぜこんなに売れたのか?
その理由を紐解くと、現代のマーケティングにも通じる重要な視点が見えてきます。
2. 中身が同じでも“意味”が変わると価値は2倍になる
「ゴリラの鼻くそ」の中身はごく普通の甘納豆。
しかしネーミング・パッケージ・販売チャネルによって、商品の“受け取られ方”が一変しました。
| 要素 |
通常の黒豆甘納豆 |
ゴリラの鼻くそ |
| 商品内容 | 甘納豆 | 甘納豆(同じ) |
| ネーミング | 一般的 | 強烈で記憶に残る |
| パッケージ | 和風 | インパクト大 |
| 販売場所 | スーパー | 動物園・観光地 |
| 購入理由 | 自家用 | お土産・話題・SNS |
これはまさに文脈価値(コンテクスト・バリュー)の典型例です。
“どこで・誰が・どんな気持ちで買うか”が変われば、商品はまったく別物になるのです。
3. 売る場所が変われば、商品の“意味”は劇的に変わる
スーパーは比較の場であり、価格が最優先されがちです。
しかし動物園は“非日常の体験の場”。
お客さまの心理は「ここでしか買えないものを探したい」に切り替わっています。
そのため、同じ甘納豆でも、
動物園では“思い出と一緒に買う商品”として価値が跳ね上がります。
“売る場所の文脈”が商品の意味を変えた好例(商品同様に人気の岡 社長)
4. “意味の再設計”を支えた、開発者の共創姿勢
商品が成功した理由は戦略だけではありません。
生みの親である岡社長が、自ら商品を持ち歩き、出会う人ごとに笑顔で紹介していった
“語り手”としての姿勢こそ、共創の実践そのものでした。
打ち合わせの喫茶店では、店員さんにも「ゴリラの鼻くそ」を手渡しては、
パッケージを見たときの驚きや笑い声、味の感想まで一つひとつ確かめていました。
また、都内出張が増えたことをきっかけに借りたマンションでは、
なんと全世帯に「お世話になります」とゴリラの鼻くそを配って挨拶回りをしていました。
こうした「とにかく人に見せて、反応を一緒に楽しむ」姿勢が、
商品そのものだけでなく、ネーミングやストーリーに対する確信を深め、
結果として大きな口コミとファンづくりにつながっていきました。
後には類似商品も数多く登場しましたが、長い時間をかけて育ててきた物語と関係性は揺らぐことなく、
むしろ「ゴリラの鼻くそ」ならではの世界観を際立たせる結果になりました。
人の思いが宿った商品は、ただの「ネタ」ではなく、
“愛される存在”へと成長します。
5. この事例から学べる「脱価格競争」のヒント
この事例は中小企業にとって多くの示唆があります。
- 価格ではなく「話したくなる理由」をつくる
- 売る場所の文脈を変えることで価値を高める
- 顧客が受け取る“意味”を再設計する
あなたの商品にも、まだ眠っている「鼻くそ的ポテンシャル」があるかもしれません。
「価格競争から抜け出したい」「文脈価値をつくりたい」「ネーミングや世界観を見直したい」
そんなご相談が増えています。
こらぼたうんでは、中小企業の状況に合わせて、
共創マーケティングの視点から課題整理 → 戦略づくり → 実行支援まで伴走しています。