モノがあふれる現代、企業が提供すべきは「商品」そのものではなく、それを取り巻く文脈や共感です。本記事では、“共創”と“サステナブル・マーケティング”の関係を掘り下げ、持続的に選ばれるブランドを育てるためのヒントをお届けします。
目次
1. はじめに──“選ばれる理由”は共創の中にある
かつて、モノが不足していた時代には、商品そのものの品質や価格が市場での勝敗を決めていました。「安くて便利」「高性能で長持ち」──そうした分かりやすい価値が評価されていたのです。しかし、社会の成熟とともに、生活者の価値観は大きく変わってきました。今や「いい商品だから売れる」とは限らず、どれだけ魅力的な機能を備えていても、思うように売れないという状況に多くの企業が直面しています。
なぜ、いい商品が選ばれないのか? そこには、単なる品質やスペックだけでは計れない、新しい評価軸が存在しています。それが「意味」や「共感」といった、生活者の内面と結びついた価値です。つまり、「この商品は、自分の価値観と合っているか」「このブランドは、信頼できる存在か」という問いに、企業がどう応えるかが問われるようになっているのです。
今の時代、生活者はただ「買う」だけではなく、購入を通じて「何かに参加している」「応援している」という実感を求めています。価格や性能を超えた“意味”が、ブランドとの関係性を深める鍵となっているのです。
ここで重要になるのが、「共創(Co-Creation)」という考え方です。共創とは、企業と顧客、あるいは社会や地域が、共に価値を創り出す姿勢を指します。商品やサービスの設計だけでなく、メッセージの伝え方、社会課題への取り組みまでを含めて、生活者と一緒に考え、形にしていく。このプロセスそのものが、ブランドへの信頼や共感を醸成するのです。
マーケティングの役割もまた、かつての「売るための仕組みづくり」から、「共感を生む関係性づくり」へと進化しています。売上を一時的に上げるだけのキャンペーンではなく、生活者の共感を得ながら、長期的な関係性を築くことが、これからのマーケティングに求められる視点です。
その流れの中で、注目を集めているのが「サステナブル・マーケティング」です。環境や社会への配慮を、単なるイメージ戦略ではなく、企業の本業に組み込んでいくこの取り組みは、価値共創の本質と深く結びついています。
企業が生き残り、選ばれ続けるためには、社会的な意義と経済的成果を同時に追求できる“共創の場”をつくることが不可欠です。ブランドが持続的に支持されるには、生活者・社会・従業員を巻き込んだ「共創のエコシステム」を構築する必要があるのです。
この連載では、サステナブル・マーケティングと価値共創の接点を軸に、実務に活かせる具体的な視点と事例を交えながら、“意味あるブランド”をどう育てていくかを一緒に考えていきたいと思います。
単にモノを売るのではなく、「共に価値を育てる」──そんな視点から、これからのマーケティングを読み解いていきましょう。
2. サステナブル・マーケティングとは何か?
サステナブル・マーケティング──この言葉を聞いたとき、あなたは何を思い浮かべるでしょうか?「環境にやさしい」「社会貢献している」そんなイメージを持つ方が多いかもしれません。確かにそれも間違いではありませんが、サステナブル・マーケティングの本質は、もっと深いところにあります。
従来のCSR(企業の社会的責任)やESG(環境・社会・ガバナンス)投資といった概念は、企業活動とはやや“別物”として扱われてきました。つまり「いいことをしているけど、本業とは少し離れている」そんな位置づけになりがちだったのです。
しかし、サステナブル・マーケティングは違います。それは、社会や地球に配慮した活動を、企業の“本業”そのものの中に組み込むという考え方です。単に“社会にやさしいふり”をするのではなく、“持続可能な価値”を企業の中核に据える。この姿勢が、今の生活者に選ばれる大きな理由となっているのです。
では、どのようにそれをマーケティング活動に落とし込むのか。ここで重要になるのが、「誰と価値をつくるか?」という問いです。サステナブル・マーケティングでは、顧客、地域社会、パートナー企業、従業員など、あらゆるステークホルダーと共に価値を創ることが基本となります。
つまり、社会や環境との関係性を切り離した“自社中心型”のマーケティングから、共創(Co-Creation)を前提とした循環型の価値創造へとシフトしていくのです。
例えば、ある製品を開発する際に、その商品が「環境負荷を減らせるかどうか」「地域経済にどう貢献できるか」「生活者が誇りを持って選べるか」といった観点が自然と入ってくるようになります。
このような企業は、結果として生活者からも「信頼できる」「応援したくなる」という評価を受けやすくなります。マーケティングが一方通行の「伝える活動」ではなく、双方向の「共につくる関係性」になるのです。
また、サステナブル・マーケティングは、単なる“良心”から生まれるものではありません。しっかりと経済的成果にも結びつけられるという点が、企業の経営戦略として注目されている理由でもあります。「いいことをしている」だけではなく、「それが結果につながっている」というストーリーが求められているのです。
たとえば、価格競争に巻き込まれがちな中小企業にとっても、「この商品には社会的な価値がある」「このブランドには意味がある」と伝えられることで、“価格ではない理由”で選ばれる土台を築くことができます。
サステナブル・マーケティングとは、表面的な取り組みではありません。それは、企業と社会が“対話”しながら、共に価値を生み出すための戦略的フレームワークであり、未来に向けてブランドを育てる長期視点のマーケティングなのです。
3. なぜ今、“共創視点”が必要なのか
私たちが今直面している社会は、急速な変化と複雑な課題に満ちています。気候変動、少子高齢化、地域経済の縮小、情報過多による信頼の揺らぎ……。こうした時代背景の中で、従来の「企業が一方的に価値を提供し、消費者が受け取る」というモデルでは、もはや通用しなくなりつつあります。
その代わりに求められているのが、「共創視点」です。共創とは、企業と顧客、企業と地域、企業と従業員、さらには企業と社会全体が、“対話しながら価値をともに創り出す”というアプローチです。つまり、売り手と買い手、作り手と使い手という対立構造ではなく、共に未来を構想するパートナーとしての関係性が重視されているのです。
この背景には、生活者の意識の大きな変化があります。かつては、「便利」「安い」「早い」が購買の決め手でした。しかし、現代の生活者はそれだけでは動きません。「共感できるか」「自分ごととして関われるか」「社会にプラスか」といった視点が重視されるようになっています。
このような動きは、エシカル消費や共感消費といったキーワードにも表れています。たとえば、「この商品を買えば、環境保護に貢献できる」「このサービスは、地域の支援につながる」という実感があることで、生活者は積極的にそのブランドを支持します。つまり、ただ“モノを買う”のではなく、“想いを持って選ぶ”という行動が主流になりつつあるのです。
また、企業の内側でも、従業員の意識が変わってきています。特にZ世代を中心とした若い世代は、給与や福利厚生といった条件面だけでなく、「この会社で働く意味」を強く求めています。社会課題に向き合い、生活者と誠実に向き合う企業姿勢は、社員のエンゲージメントにも直結しているのです。
さらに、デジタル技術の進化によって、生活者の声をリアルタイムで反映できる環境が整いました。SNSやレビューサイト、オンラインアンケートなどを通じて、企業と生活者の距離は以前にも増して近づいています。この環境を活かして共創の場を設けることは、マーケティングの信頼性とスピードを高めるうえでも非常に有効です。
共創視点が必要とされるもう一つの理由は、「社会的信頼・売上・組織力」を一体で高められるという三位一体の効果があるからです。共創によって生活者からの信頼を得ることができれば、自然とブランドの好感度や売上にもつながります。また、従業員が共創プロジェクトに関わることで、組織全体に主体性と創造性が生まれます。
このように、「共創視点」は単なる流行ではなく、現代社会の変化に適応し、持続的に企業価値を高めていくための本質的なアプローチです。
マーケティングの役割は、生活者の欲望を喚起することではなく、生活者とともに社会の未来を構想することへと変わりつつあります。その第一歩が、共創視点を持つことなのです。
4. 価値共創マーケティングとの共通点と相違点
ここまでサステナブル・マーケティングと共創の必要性について触れてきましたが、では「価値共創マーケティング」とは何が同じで、何が違うのでしょうか?
まず、大きな共通点として挙げられるのは、どちらも「企業が生活者や社会と共に価値をつくる」という視点を持っていることです。どちらも、“売り手が一方的に価値を定義して届ける”という従来のアプローチを脱し、生活者との対話と協働を重視しています。
また、共通しているもう一つの要素は、商品開発だけでなく、マーケティング活動全体を共創の対象としている点です。広告、販売チャネル、アフターサポート、そしてブランドの存在理由に至るまで、すべてを“誰とつくるか”という問いから見直すという姿勢が根底にあります。
しかし、両者には明確な違いも存在します。それは「共創の起点となる相手」の違いです。
価値共創マーケティングは、どちらかというと顧客や生活者との共創(C2B:Consumer to Business)が中心です。たとえば、ユーザーの声を反映して新商品を開発したり、顧客参加型のイベントやワークショップを通じてブランドの魅力を一緒に作り上げたりといったアプローチが取られます。
一方で、サステナブル・マーケティングでは社会との共創(SX:Sustainability Transformation、CSV:Creating Shared Value)が重視されます。ここでは環境問題、地域課題、教育、福祉といった社会的テーマと向き合いながら、その解決に寄与する形で価値を創出していきます。生活者に加えて、行政やNPO、地域団体といった幅広いステークホルダーとの連携が求められるのです。
このように、C2B的な共創(価値共創)と、SX的な共創(社会的価値共創)は、それぞれ異なる起点を持ちながらも、実践においては融合していくことが理想的です。
たとえば、新商品の開発において、生活者の声を取り入れるだけでなく、「この商品が地域や社会にどう貢献するのか」という視点も同時に考慮されることで、より厚みのあるブランドが形成されていきます。顧客と共に考え、社会に向けて発信する。そうした多層的な共創の設計が、今後のマーケティングにおける鍵となるのです。
両者をうまく統合するためには、企業の中に“構想力”が必要です。単に共創の枠を設けるだけでなく、「何を目指して共創するのか」「どのような物語を紡ぐのか」といった、ビジョンと戦略の両立が求められます。
そのうえで、生活者や社会の視点を受け入れ、柔軟に自社の在り方を再構築できる企業こそが、真の意味で選ばれ続けるブランドへと成長していくのです。
5. 成功事例に学ぶ:共創型サステナブル・マーケティング
理論だけでは、マーケティングの本質を掴むことはできません。実際に現場で何が起きているのか、共創型のサステナブル・マーケティングがどのように成果につながっているのか──ここでは、代表的な3つの成功事例を通じてその実践のリアリティを掘り下げていきましょう。
事例1:akippa × 地域交通課題(長野県諏訪市)
スマート駐車場サービス「akippa」は、長野県諏訪市の花火大会で発生していた交通混雑の課題に対し、行政・住民・企業の三者が連携する形で解決策を共創しました。従来は無料で先着順だった臨時駐車場を、akippaの予約システムを用いて有料化し、事前登録制に変更。これにより交通渋滞は緩和され、収益は地域に還元される仕組みとなりました。
この取り組みは、単なる交通整理ではなく「地域の社会課題とビジネスの融合」として評価され、生活者からも「納得してお金を払えるサービス」として高く支持されました。
事例2:カルビー × 粟島浦村(新潟県)
スナック菓子「miino」シリーズの開発において、カルビーは新潟県粟島浦村の青大豆「一人娘」を活用しました。単なる産地使用ではなく、社員自らが現地に赴き、農作業や住民との交流を通じて共創的な関係を築きました。この取り組みは、商品の品質向上と地元経済の活性化を同時に実現しただけでなく、「社員の誇り」や「企業文化の醸成」にもつながりました。
このように、価値共創のプロセス自体がブランド体験となり、商品に物語と意味を与えている好例です。
事例3:大塚製薬 × 京都市 × 若者の朝食習慣
大塚製薬は京都市と連携し、市営地下鉄構内で主力商品「カロリーメイト」を受験生に無償提供する施策を実施しました。これは単なる販促ではなく、文部科学省や農林水産省が掲げる「朝食欠食率の改善」という社会課題と、若年層の栄養サポートという企業パーパスが交差した取り組みです。
商品そのものの価値だけでなく、「その商品を選ぶことで社会に良い影響を与えている」というストーリーが、生活者に深い共感を生みました。
これらの事例に共通しているのは、単に「売る」ことを目的としていないという点です。いずれも、企業が生活者や地域、行政と共に課題に向き合い、その過程の中で自然と商品やサービスが「社会的に意味ある存在」として受け入れられています。
また、共通してKPIの裏に「社会的成果」を含めている点も見逃せません。単なる売上ではなく、「地域との関係構築数」「生活者の納得感」「メディア露出における共感度」など、多面的な評価指標が設けられているのです。
このような共創型のアプローチは、特に中小企業にとって大きなヒントになります。資金や人材が限られていても、共感と信頼をベースにした関係性づくりからスタートすれば、他社には真似できない独自の価値提案が可能になるからです。
サステナブル・マーケティングの本質は、“社会貢献を目的にする”ことではなく、“社会と一緒に意味あるビジネスを創る”という姿勢にあります。そこには、押しつけでも偽善でもない、生活者との誠実な対話と協働が存在しているのです。
6. 社内も巻き込む:共創は社外だけの話ではない
共創というと、どうしても「企業と顧客」「企業と社会」という“外”との関係性ばかりが注目されがちです。しかし、真に力強い共創を実現するには、まず企業の“内側”から始めることが欠かせません。
社内における共創とは、部署の枠を越え、立場の違いを乗り越えて、全員が“同じ目的”に向かって協力し合うこと。特にマーケティング部門だけが戦略を考え、営業部門がただ売るという縦割りの体制では、価値共創は実現しません。
むしろ、営業・開発・製造・人事・広報などがフラットにつながることで、「顧客にとって何が本当に価値なのか」を多面的に捉えることができるのです。
たとえば、新商品の企画段階から営業が参加すれば、現場での声をリアルタイムに反映でき、販売施策との整合性も取れます。広報が巻き込まれれば、開発の背景にあるストーリーが効果的に伝わりやすくなります。
このような組織横断型の共創は、従業員一人ひとりに「自分の仕事がブランド価値に貢献している」という実感をもたらし、仕事へのやりがいや主体性を育みます。
特に若手社員にとっては、「意味のある仕事」に対する期待が強くなっています。共創型のプロジェクトに参加することで、「自分の意見が反映された」「社会に役立っている実感がある」という感覚が、強いロイヤリティやモチベーションにつながるのです。
また、共創を進める企業には、自然と「心理的安全性」が高まる傾向があります。違いを受け入れ、対話を通じて価値を生み出す文化が根づくと、社員同士の信頼関係が強くなり、結果として創造性や生産性も向上します。
たとえばある中小企業では、毎月1回、全社員が参加する「共創カンファレンス」を実施しています。そこでは営業からの現場の声、製造現場での気づき、新人のアイデアまでが対等に議論され、実際の商品改善や販促施策に活かされています。
このように、社内共創の文化を築くことは、単に社外との関係を良くするだけでなく、企業内部のエネルギーと一体感を高めるためにも重要なのです。
共創とは、外に向けた戦略であると同時に、内に向けた組織づくりの哲学でもあります。経営層から現場まで、一人ひとりが「共に価値をつくる」当事者であるという意識を育てること。それが、選ばれ続けるブランドを支える力になるのです。
7. ブランドの持続的価値は「共創」で育つ
現代のマーケティングにおいて、“ブランド”とは単に企業ロゴやキャッチコピーを指すものではありません。それは、生活者がその企業や商品に対して抱く感情・信頼・期待・共感といったすべての“関係性”の総称です。そして今、そのブランドの価値を継続的に高めるには、「共創」が欠かせないキーワードとなっています。
ブランドは、広告やSNSの発信だけで形成されるものではありません。むしろ、どのような姿勢で社会と関わっているか、どんな物語を誰と紡いでいるかといった、行動と体験の積み重ねによって形づくられていくのです。
たとえば、共創を通じて開発された商品には、ただのモノではなく「背景」や「ストーリー」が宿ります。「このお菓子は、○○地域の農家さんと一緒に作られた」「このアパレルは、環境に配慮した素材を使い、職人と対話しながら仕上げた」──こうした体験価値が、ブランドに“意味”を与え、選ばれる理由になります。
生活者は、こうしたブランドに納得感を持ちます。そして、その納得が共感を呼び、共感がやがて“応援したくなる”という感情につながります。この感情の蓄積こそが、ブランドの持続的価値を高める最大の要素です。
このような「意味あるブランド体験」は、単なる消費を超えて、“参加”や“共感”を伴う購買行動へと変化します。言い換えれば、生活者は「買う人」から「共に育てる人」へとシフトしているのです。
この変化は、企業にとってはチャンスでもあり、覚悟を問われるポイントでもあります。なぜなら、共創を掲げる以上、生活者の声に耳を傾け、誠実に対応し、時には批判や改善要望を正面から受け止めなければならないからです。
しかしその姿勢こそが、長期的に選ばれるブランドをつくる土台となります。生活者は、完璧さよりも、“対話し続ける姿勢”に信頼を寄せます。完璧な製品よりも、共に育てていける関係性に価値を感じるのです。
さらに、共創型ブランドはLTV(顧客生涯価値)の観点からも大きな強みを持ちます。共創を通じて生まれるエンゲージメントは、リピート購入や口コミ、ファン活動を促進し、結果として売上や収益性にも好影響を与えます。
つまり、“共創消費”とは、生活者との協働によってブランドを育て続ける循環の仕組みでもあるのです。それは売って終わりの関係ではなく、買ってからが本当の関係の始まりであるという発想の転換です。
今後、持続可能なブランドを育てていく上で、「何をつくるか」よりも「誰とつくるか」、そして「どう共に歩んでいくか」という視点が、ますます重要になっていくでしょう。
8. まとめ:これからのマーケティングは「社会と共創する構想力」へ
ここまで、サステナブル・マーケティングと価値共創マーケティングの接点、そしてその可能性についてお伝えしてきました。共通して言えるのは、いずれも“売る”ための戦術ではなく、“信頼され、応援されるブランド”を育てる戦略であるということです。
これからの時代においては、売上や短期的な数値成果だけを追いかけるだけでは、企業もブランドも選ばれ続けることはできません。生活者はますます「意味」や「姿勢」、そして「共感」を重視するようになってきています。
では、私たちは何をすべきか。その答えの一つが、“社会と共創する構想力”を企業として持つことです。
構想力とは、単にプランを描く力ではありません。それは、未来を見通し、社会の課題や変化を捉え、誰と、どのように価値をつくっていくのかというビジョンを描ける力のことです。目の前の売上ではなく、5年後、10年後に選ばれ続けるブランド像を思い描き、それに向かって行動を積み上げていく姿勢です。
このような構想力があれば、マーケティングは単なる販売促進ではなく、社会との対話となり、ブランドは生活者の人生に寄り添う“共創のパートナー”としての地位を築いていけます。
そして、共創とは決して難しいものではありません。日々の現場で、生活者の声に耳を傾け、社員同士が目的を共有し、地域や社会との関係性を丁寧に育てていく。その積み重ねこそが、共創型ブランドの基盤となります。
特に中小企業や地方企業にとっては、大手にはない柔軟性や近接性という強みを活かしながら、共創による独自価値を発揮できるチャンスが広がっています。規模や予算ではなく、誠実な姿勢と共感の輪がブランドの未来を決めるのです。
「誰に売るか」ではなく、「誰とつくるか」──この視点こそが、これからのマーケティングにおける本質です。そしてそれを実現するのは、決して特別な能力ではなく、“人と人との関係を大切にする姿勢”なのです。
最後に、あなたのブランドが、生活者や社会とともにどんな未来をつくっていきたいのか──その構想を言葉にし、行動に移す一歩を、今日からぜひ踏み出してみてください。それこそが、共創の始まりなのです。