エフェクチュエーション(Effectuation)
定義
エフェクチュエーションとは、先が読めない状況(不確実性が高い状況)で、「予測して当てにいく」よりも
「手元の資源から、実現できることを増やしていく」意思決定の考え方です。
具体的には「いま何があるか/誰と組めるか」を起点に、小さく試しながら学び、協力者を増やしつつ、
結果として市場や価値提案を育てていくアプローチといえます。
エフェクチュエーションは、“正解を探す”というより、“正解を育てる”ための考え方。
新商品・新サービス・新規顧客開拓など、調査だけでは当たりにくい領域で特に力を発揮します。
5つの原則(マーケ実務での要約)
- 手中の鳥(Bird-in-Hand):「誰であるか/何を知っているか/誰を知っているか」から始める(強み・顧客接点・既存資産が出発点)。
- 許容可能な損失(Affordable Loss):期待利益ではなく「失っても耐えられる範囲」で試す(小さく区切って学ぶ)。
- クレイジーキルト(Crazy Quilt):計画より先に協力者を増やす(共創相手・パートナーが増えるほど可能性が広がる)。
- レモネード(Lemonade):想定外を“事故”ではなく“材料”として活かす(反応のズレやクレームが次の価値になる)。
- 飛行機のパイロット(Pilot-in-the-Plane):未来は予測するものではなく“つくるもの”(コントロールできる行動に集中する)。
価値共創マーケティングとの関係
価値共創マーケティングは、生活者・顧客・現場と対話しながら価値を“共につくる”アプローチです。
その点でエフェクチュエーションは、共創マーケを意思決定の型として支えます。たとえば、
「調査で結論を出してから動く」のではなく、手元の資源(関係性・強み・現場)から
小さく試し、学び、協力者を増やしながら価値提案を育てる──この動きが自然に噛み合います。
実務での活用例
- 新商品・新サービス:最初から完璧を狙わず、許容可能な損失内で試作・テスト販売・共創会を回し、価値提案を育てる。
- 価格競争からの脱却:機能・価格の比較ではなく、利用文脈の中で「選ばれる理由」を共創で発見し、実装して差をつくる。
- BtoCメーカーの市場開拓:既存顧客や販売現場の関係性を起点に、協力者(小売・生活者・専門家)を増やしながら新しい売り方を設計する。
- 支援機関の伴走支援:事業者の“現状資源”から始め、無理のない実験計画(期間・予算・対象)を作って、学びを次に繋ぐ。
具体例
例)差別化が難しい食品カテゴリで新商品を検討しているメーカーが、従来のように「市場調査→勝てるコンセプトを決める」ではなく、
①既存の強み(原料調達・製造技術・既存顧客)と、②協力者(小売・生活者・現場担当)を起点に、小さな共創実験を実施。
すると「商品スペック」よりも、選ぶ場面の迷い(比較の軸が分からない/続け方がイメージできない/家族の反応が気になる など)が
購入の壁になっていることが見えた。
そこで、商品そのものを大改造する前に、選びやすさを支える情報設計(食べ方提案・量の目安・利用シーン)から改善し、
反応を見て次の実験へ──という形で価値提案を育てていく。
こうした「予測ではなく、実験と協力者で市場をつくる」流れが、エフェクチュエーション的な進め方です。
FAQ
- Q. エフェクチュエーションと「計画(予測)」の考え方は、どちらが正しいのですか?
-
A. どちらが正しいというより、状況によって使い分けが現実的です。
既存市場で変数が読みやすい場合は計画が効きます。一方、新規性が高く不確実性が大きい場合は、 エフェクチュエーションのように小さく試して学ぶ方が前に進みやすいです。 - Q. 「コーゼーション(Causation:目的から逆算する計画)」との違いは何ですか?
-
A. コーゼーションは目標(ゴール)を定め、必要な手段を逆算して選ぶ発想です。
エフェクチュエーションは手元の資源・関係性から出発し、協力者や学びによってゴール自体も育てる発想です。
共創マーケは後者と相性が良く、実務では両者を状況に応じて行き来します。 - Q. 中小企業でも実践できますか?むしろ向いていますか?
-
A. はい、むしろ向いている面があります。大規模投資で勝負しにくい環境ほど、許容可能な損失で試し、
協力者を増やしながら前進する価値が大きいからです。
まずは「期間・予算・対象」を小さく切ったテスト(例:既存顧客10名との対話+試作品)から始めるのがおすすめです。
👉 他の用語も調べたい方はこちら