「味には自信があるのに、売り場で手に取ってもらえない」「商品の特徴を並べても、似たようなキャッチコピーになる」――食品メーカーの企画や販促では、そんな悩みが生まれます。
食品のキャッチコピーで大切なのは、商品の良さを説明するだけでなく、生活者がどんな場面で、なぜその商品を選ぶのかを言葉にすることです。
この記事では、食品のキャッチコピーが伝わりにくくなる原因、生活者の声を活かした作り方、改善例、確認方法を紹介します。
食品のキャッチコピーが伝わりにくい3つの理由
商品の特徴が優れていても、その説明が生活者の「買う理由」につながっていないと、売り場では埋もれてしまうことがあります。
1. 「おいしい・安心・簡単」を詰め込みすぎる
どれも大切な特徴ですが、多くの商品に当てはまる言葉だけでは違いが見えにくくなります。まず「どんな場面で役立つか」を一つ明確にします。
2. 素材・製法の説明で終わっている
国産素材、製法、栄養成分などは購入判断の根拠になります。ただし、その特徴が生活者にとってどのような良さにつながるのかも示す必要があります。
3. 「誰が・いつ・なぜ買うか」が曖昧
「30代女性」「健康志向」といった属性だけでは、利用場面までは見えません。同じ人でも、忙しい平日とゆっくり過ごす休日では、食品を選ぶ理由が変わります。
食品のキャッチコピーの作り方|5つの手順
いきなり印象的な言葉を考えるのではなく、商品と生活者を結びつける材料を集めることから始めます。
手順1|商品の特徴と、その先にある価値を整理する
まず商品の事実を洗い出します。例えば「温めるだけ」という特徴からは、「忙しい日に調理の負担を減らせる」という価値が考えられます。
ただし、特徴から連想した価値は、まだ企業側の仮説です。本当に生活者がそう感じるかを確かめます。
手順2|誰が、どんな場面で選ぶかを具体化する
年齢や家族構成などの属性に加えて、食べる時間、食べる相手、購入場所、食事を用意する負担などを考えます。
「どんな人か」だけでなく、「その人の、どんな一日に入る商品か」を想像することが出発点です。
手順3|買うときの気持ちや迷いを確かめる
商品の購入には、価格や品質、味だけでなく、その日の気持ちや状況も関わります。例えば次のような場面です。
| 生活場面 | そのときの気持ち | 伝え方の方向性 |
|---|---|---|
| 疲れて帰宅した夜 | 手間をかけず満足したい | 手軽さと食事としての満足感 |
| 家族の食卓 | 家族に喜んで食べてもらいたい | 味の好みや食卓での使いやすさ |
| 週末のひと息 | 自分を少し労いたい | くつろぎや楽しみの時間 |
| 贈り物を選ぶとき | 相手に喜んでもらいたい | 贈る理由や商品の背景 |
| 忙しい朝 | 短時間でもきちんと食べたい | 準備のしやすさと利用場面 |
これらは考え方を示す例であり、すべての商品に当てはまるわけではありません。
手順4|中心となる価値を選び、短い言葉にする
生活者の発言をそのままキャッチコピーにする必要はありません。背景にある困りごとや期待を読み取り、その商品が届けられる価値を一つ選びます。
短いメインコピーに、商品内容が誤解なく伝わる補助説明を添える方法も有効です。言葉の長さや組み合わせは、売り場・パッケージ・EC画面などに応じて調整します。
手順5|伝わり方と購入時の反応を確かめる
「好きなコピー」を投票で選ぶだけでは、実際に選ばれるかは分かりません。候補の意味が伝わるか、商品に合っているか、価格やパッケージを見たときにも魅力が伝わるかを確認します。
可能なら、同じ条件で複数案を比べ、店頭やECなど購入に近い環境でも試します。コピーだけでなく、価格・写真・売り場などの影響もあるため、結果は切り分けて考えます。
食品のキャッチコピー改善例|特徴説明から「選ぶ理由」へ
以下は考え方を説明するための架空の例です。実在の商品で効果が検証された表現ではありません。
例1|忙しい日の惣菜
Before|特徴を並べる
国産素材にこだわった、おいしく手軽なお惣菜。
素材の良さは伝わる一方、使いたくなる場面が見えにくい。
After|利用場面を伝える
忙しい夜にも、ほっとする一皿を。
温めるだけで食卓に出せるお惣菜。
手間を減らしたい気持ちと、食事を楽しみたい気持ちを結びつける。
例2|週末に楽しむお菓子
Before|製法を中心に伝える
こだわり製法で作った本格スイーツ。
どのような時間に楽しんでほしいかが伝わりにくい。
After|食べる時間の価値を伝える
週末の午後に、小さなご褒美を。
お茶の時間に楽しみたい、丁寧に仕上げたお菓子。
「いつ、どんな気分で食べるか」を具体的に想像しやすくする。
重要なのは、気分に合わせた言葉を作ること自体ではありません。 その商品に実際に備わっている良さと、生活者の感じる価値が一致していることです。根拠のない「安心」「健康」「必ず満足」といった訴求は避け、事実に基づいて表現します。
生活者と対話すると、キャッチコピーの材料が変わる
社内でコピーを考えると、素材や製法など企業が詳しく知っている情報から発想しがちです。そこで生活者と同じテーブルを囲み、商品の使われ方や選ばれ方を話し合うと、別の視点が見えてくることがあります。
例えば、「おいしかったですか」という評価に加えて、「どんなときに食べたいか」「普段は何と比べて選ぶか」「買わないとしたら何が理由か」と尋ねます。
予定していなかった会話にも、商品を伝える言葉のヒントが隠れていることがあります。ただし、参加者の発言をすべて採用するのではなく、商品との相性や購入の実態を確かめて判断します。
こらぼたうんの現場ストーリー CASE022
試食の途中から、味の話ではなくなりました。
実際の共創セッションでは、食品の試食・試飲で味や香りを確かめるうちに、食べる時間、家族、仕事の合間、量、容器、贈り物といった話題へ会話が広がりました。
その結果、味の評価だけでなく、商品をどんな生活場面で選んでもらうかという視点から、商品の伝え方を考えるヒントが見えてきました。
現場ストーリー CASE022を読む →作ったキャッチコピーを確認する4つの質問
社内で案を比較するときは、印象の良さだけで決めず、次の問いを確認すると検討しやすくなります。
- 誰に向けた言葉か:具体的な利用場面や買う人を想像できるか。
- 商品の事実と合っているか:コピーの約束を商品が満たしているか。
- 一目で意味が伝わるか:難しい表現や説明不足はないか。
- 選ぶ理由につながるか:価格や競合商品と比較したとき、選択を助ける情報になっているか。
意見が分かれたら、社内投票だけで決める前に、対象となる生活者に複数案を見せて、理解や受け止め方を確認するのも一つの方法です。
よくある質問
Q. 食品のキャッチコピーは短いほどよいのでしょうか?
短さ自体が目的ではありません。売り場で一目で伝える必要があるなら短い方が有利な場合がありますが、ECでは補助説明を加えるなど、接点に合わせて調整します。
Q. 「おいしい」「安心」という言葉は使わない方がよいですか?
使ってはいけないわけではありません。ただ、その言葉だけでは違いが伝わりにくい場合があります。商品の具体的な特徴や、利用場面と組み合わせて考えます。「安心」などは根拠のない印象訴求にならないよう注意します。
Q. 生活者セッションを実施しないと改善できませんか?
いいえ。まずは既存の問い合わせ、店頭での質問、レビュー、営業担当者が聞いた声などから、購入場面や迷いを整理できます。そのうえで判断しきれない点があれば、生活者との対話や小規模な検証を検討します。
Q. キャッチコピーだけ変えれば売上は上がりますか?
必ずしもそうではありません。購入には価格、味、商品力、パッケージ、売り場なども関わります。コピーの改善は、商品の価値を正しく伝えるための一つの手段です。
まとめ|食品のキャッチコピーは「商品」と「暮らし」を結ぶ言葉
食品のキャッチコピーを考えるとき、商品の特徴を説明することは大切です。しかし、それだけで生活者が選ぶ理由まで伝わるとは限りません。
誰が、いつ、どんな気持ちでその食品を選び、どんな価値を感じるのか。 その背景を確かめることで、伝えるべき言葉が見えてきます。
まずは自社の商品の「特徴」と「選ばれる場面」を書き出し、現在のキャッチコピーがその両方を伝えられているか、見直してみてはいかがでしょうか。
商品の良さが、うまく伝わっていないと感じたら
「味や品質には自信があるのに、伝え方が決まらない」「社員だけでは、お客様の選ぶ理由が見えにくい」。そんな段階からでもご相談いただけます。
こらぼたうんでは、企業と生活者の対話を通じて、商品の価値や選ばれる場面を一緒に確かめ、企画や伝え方の改善につなげています。大がかりな準備をする前に、まず課題を整理するところから始められます。
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