“美味しい”だけでは選ばれない。食品のキャッチは「気分」で決まる
食品の魅力を伝えようとすると、素材や製法、栄養、受賞歴など「正しい情報」を盛り込みたくなります。
もちろん重要ですが、成熟した市場ではそれだけで“選ばれる理由”になりにくいのも事実です。
本記事では、こらぼたうんが価値共創プロジェクトで行っている「メーカー担当者 × 生活者セッション」による
キャッチコピーの磨き方を、食品を例に整理します。
こらぼたうんの現場では、キャッチを“会議”ではなく“生活者セッション”で磨く
こらぼたうんの価値共創プロジェクトでは、メーカー担当者と生活者が同じテーブルにつき、 商品の捉え方・選び方・迷い方を対話から引き出しながら、キャッチコピーをブラッシュアップすることがあります。
目的は、言葉を上手にすることではありません。
生活者が商品を買う直前に抱えている「気分(欲求・心理状態)」をつかみ、
その気分に刺さる“ひと言”へ落とし込むことです。
① 万能ワードの渋滞
「おいしい・安心・簡単」を全部盛りにして、結局“どれでもいい”状態になる。
② 特徴の羅列
素材・製法・栄養は語れるが、生活者の“買う理由”に変換できていない。
③ 誰向けか曖昧
「健康志向」など広すぎる設定で、買う瞬間の気分に刺さらない。
いつ/どこで/何に迷い/何が背中を押したのか――ここにキャッチの核があります。
1. 属性で絞らない。食品は「気分」で絞る
「30代女性」「共働き家庭」「健康志向」といった属性(デモグラフィック)でターゲットを決めても、 食品では刺さりが弱くなることがあります。同じ属性でも、買う理由がバラバラだからです。
そこで有効になるのが、欲求・心理状態(サイコグラフィック)=“いまの気分”での絞り込みです。 たとえば同じ惣菜でも、買う気分は次のように分岐します。
- 今日は疲れた。失敗したくない
- 手は抜きたい。でも罪悪感は減らしたい
- 子どもには安心して食べさせたい
- 急いでいる。でもちゃんとして見せたい
この「気分」が定まると、キャッチの方向性は一気に鋭くなります。 逆に曖昧だと、「美味しい」「安心」「簡単」といった万能ワードの渋滞になり、誰にも刺さりません。
食品キャッチの「気分タグ辞書」(まずはここから)
生活者の言葉を束ねると、よく出てくる“気分”があります。まずは以下のタグのどれが強いかを見立てます。
2. セッションで拾うべきは“買う直前の瞬間”
生活者セッションで最初に聞くのは「美味しかったですか?」ではありません。 先に拾うべきは、買う直前に頭の中で起きていたことです。
ここを掘ると、価値が「味」から「暮らしの解決」へ立ち上がります。
キャッチは“商品の説明”ではなく、“生活の意思決定”を助ける言葉へ変わっていきます。
3. 言葉を「気分タグ」で束ねると、勝ち筋が見える
セッションで出てきた言葉は、そのままコピーにしません。いったん「気分タグ」で束ねます。 そして、最も行動を動かすタグを1つ選び、キャッチの芯に据えます。
- 「今日はもう頑張れない」
- 「でも、ちゃんと食べたい」
- 「手抜きだと思われたくない」
- 「外したくない」
- 「選ぶのがしんどい」
どの気分が「買う理由」になっているかを特定し、そこに合わせて言葉を組み立てます。
“誰にでも”ではなく、“この気分の人に刺さる”へ。
Before / After(キャッチはこう変わる)
特徴の説明から入ると弱くなりがちです。買う直前の気分に寄せると、言葉が一気に“行動寄り”になります。
「国産素材を使用。こだわり製法で、安心・おいしい・簡単。」
ーー良さは伝わるが、買う瞬間の迷いを動かしにくい。
迷った夜は、これでいい。
温めるだけで、ちゃんと満足できる一品。
ーー「選ぶのがしんどい」「外したくない」を代弁し、背中を押す。
4. キャッチは「1行+補助1行」で仕上げる
食品は情報を盛りすぎると弱くなります。強くするコツは、気分を1つに絞って1行で刺し、 誤解を防ぐために補助1行で安心させることです。
5. 「好き」ではなく「買う/推す」で判断する
セッションでやりがちな落とし穴が、「どれが好きですか?」で決めることです。 好きと買うは違います。こらぼたうんでは、行動に近い問いで判断します。
- 「これ、誰に言いたくなる?」(推奨の芽)
- 「いまの自分なら買う?」(行動)
- 「引っかかる言葉はどこ?」(違和感=改善点)
- 「買わない理由が残るなら何?」(摩擦の特定)
コピーは“正解当て”ではなく、生活者の迷い(摩擦)を減らし、選びやすくするための設計です。
6. キャッチが磨かれると、独自性は“後から”立ち上がる
気分で絞ってキャッチを磨くと、「独自性」を無理に作らなくても、結果として立ち上がります。 それは、生活者の気分を理解しているブランドとして、“分かってくれる”という信頼が生まれるからです。
「特徴をひねり出す」のではなく、「買う直前の気分」を掴む。
その結果、言葉・訴求・提案が一貫し、比較されにくい“世界観”が形成されます。
まとめ|食品のキャッチは「買う直前の気分」から作る
- 万能ワードや特徴の羅列から入ると弱くなる(よくある失敗を回避)
- 属性ではなく、欲求・心理状態(気分)で絞り込む
- 言葉を「気分タグ辞書」で束ね、勝ち筋を1つ決める
- キャッチは「1行+補助1行」で刺して安心させる
- 「好き」ではなく「買う/推す」で判断し、迷い(摩擦)を減らす
- 独自性は“狙う”より、気分理解の結果として立ち上がる
生活者セッションで、キャッチの“勝ち筋”を見つけたい方へ
メーカー担当者と生活者が同席し、「買う直前の気分」からキャッチを磨き上げます。 企画・販促・EC・店頭まで一貫する言葉の軸をつくりたい場合はご相談ください。
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