失敗事例から学ぶ商品企画:調査バイアス/価格設定ミス/顧客ミスマッチ

商品企画の現場では「売れるはずが売れない」が起きがち。大切なのは、失敗を 早く・小さく・安く 検知して修正する仕組みです。ここでは、特に陥りやすい ①調査バイアス ②価格設定ミス ③顧客とのミスマッチ を、導入説明→原因→症状→対策→ミニテンプレ→チェックリストの順でやさしく解説します。

1. 調査バイアスの罠 ― アンケートを“信じすぎる”落とし穴

調査は重要ですが、質問の仕方や回答者の偏りで結果は簡単に歪みます。数字は“事実”ではなく“測定結果”にすぎません。 観察・対話・行動データと組み合わせて、解釈のブレを小さくしましょう。

よくある原因

  • 誘導的な設問(例:「どちらが好きですか?」先に選択肢を提示)
  • 回答者の偏り(年代・常連ユーザーに片寄る)
  • 宣言と実行のギャップ(言うこと≠やること)

こんな症状が出る

  • 調査は高評価なのに購入が伸びない
  • 「欲しい」と言われた機能が実際は使われない

すぐできる対策(ミニステップ)

  • 観察・対話を先に:アンケ前に利用シーン5件の観察3件の対話
  • 事実を聞く:「買いますか?」より「最後にいつ・いくらで・なぜ買ったか
  • 定量×定性の併用:数字の裏にある言葉と状況を必ず確認
ミニテンプレ: 観察メモ(1枚)
  • ①シーン(いつ/どこ/誰と)
  • ②行動(どの順序で使ったか)
  • ③困りごと(手が止まった瞬間/代替手段)
  • ④ユーザーの一言(口ぐせ)
  • ⑤気づき(改善仮説:例「初回設定が長い→プリセット用意」)

チェックリスト(アンケ前の確認)

  • 観察5件+対話3件を先に実施した
  • 回答者属性が想定ターゲットと一致している
  • 「過去の行動」を聞く設問を入れている

2. 価格設定ミス ― 原価計算だけでは価値が伝わらない

価格は“価値のシグナル”。安すぎれば不安に、高すぎれば手が出ません。原価+利益だけで決めず、 お客様が感じる価値・比較基準・ストーリーで納得を作りましょう。

よくある原因

  • 原価+希望利益だけで決定
  • 競合価格に機械的に合わせる
  • 「なぜこの価格か」の説明が無い

こんな症状が出る

  • 値下げすれば売れるが利益が残らない
  • 安いのに品質が不安と言われる

すぐできる対策(ミニステップ)

  • 比較基準を固定:同カテゴリーの上中下3商品と自社の強み(時短・安心・見た目 等)を明文化
  • 3価格テスト:同一訴求で A:安め/B:基準/C:高め を少数・短期間で検証
  • 価格の理由を言語化:国産素材・保証・○回分… を商品名付近に明記
ミニテンプレ: 価格テスト計画(30分で作成)
  • ①目的:最初の許容価格帯を絞る
  • ②設定:A(-10%)/B(基準)/C(+10〜20%)
  • ③指標:購入率/返品率/レビュー内の価格言及
  • ④期間・サンプル:1〜2週間/各 n=20〜50 目安
  • ⑤判断:利益×継続率の総合点が最大を採用

チェックリスト

  • 価格の根拠文(素材・工数・耐久性等)を用意した
  • 3価格テストの設計ができている
  • 「高すぎ/安すぎ」時の加点・削減案を準備した

3. 顧客とのミスマッチ ― 想定した人≠実際に買う人

ペルソナは“仮説”です。初月の購入データを見るだけで、実際の顧客像は大きくズレていることがあります。 「買う人」と「使う人」を分け、現実に合わせて訴求を素早く更新しましょう。

よくある原因

  • 作ったペルソナを更新しない
  • 決裁者(買う)と利用者(使う)に同時に刺さらない訴求
  • 初期の購入データを早期に見ない

こんな症状が出る

  • 想定はZ世代だが、実際はミドル層が購入
  • 店頭では動くが、ECでは伸びない(チャネル不一致)

すぐできる対策(ミニステップ)

  • 実購入層の把握:初月の購入上位50件だけでOK(年代/同時購入/レビュー語彙)
  • 1ページ簡易ペルソナを更新:「買う人」「使う人」を分ける
  • メッセージ2案の並走:想定層A/実購入層B を2週間テスト
ミニテンプレ: 1ページ簡易ペルソナ
  • ①誰が買う?(決裁者)/②誰が使う?(利用者)
  • ③利用シーン(いつ/どこ/誰と/何と一緒に)
  • ④“なくて困る瞬間”
  • ⑤買わない理由(面倒/高い/不安)
  • ⑥刺さる一言(例:「朝5分短縮」「肌にやさしい根拠あり」)

チェックリスト

  • 初月購入データで実購入層を確認した
  • ペルソナを1ページで更新し共有した
  • 訴求A/Bとチャネル(店頭/EC等)を分けて検証した

まとめ:失敗は“正しく活かす”

調査は「見る→聞く→数える」の順に、価格は「価値の理由」とセットで小さく検証、 顧客像は「買う人/使う人」を分けて現実に合わせて更新。
週30分の「失敗メモ」で、数字(定量)+お客様の言葉(定性)を残せば、学習速度が上がり同じ失敗を繰り返しにくくなります。

明日からの5アクション
  1. 観察5件+対話3件を先に(アンケは後)
  2. 3価格テストを1〜2週間のミニ企画で
  3. 初月購入者50件の事実(属性・同時購入・語彙)を確認
  4. 1ページ簡易ペルソナを更新・共有
  5. 失敗メモを週30分で継続(定量+定性)
共創事例|こらぼたうん
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