調査では高評価でも買われない──購買行動ギャップを共創で埋める方法

実務の位置づけは 価値共創マーケの基本と導入ガイド をご参照ください。

この記事のポイント:
・調査で好評価でも「売れない」典型理由を整理
・心理バイアス/状況文脈/競合比較という3視点で理解
・共創セッションで「数字と本音」をつなぎ、失敗を未然に防ぐ

はじめに:数字に安心していませんか?

「購入意向が高い」「好意的な反応が多い」。そんな調査結果が出ると、つい安心したくなりますよね。ところが、いざ商品を発売してみると「思ったほど売れなかった」という話は珍しくありません。調査での好意的な反応と、実際の購買行動の間には深いギャップがあるのです。

なぜ「調査=売れる」にならないのか

1. 調査回答の心理的バイアス

  • 社会的望ましさ: 否定的な回答を避けたくて、つい無難に答えてしまう。
  • 設問の影響: 質問の順番や言い回しひとつで、回答が誘導されることも。
  • 未来バイアス: 「買うかも」と思った気持ちが、いざ財布を開く場面では変わってしまう。

2. 購買は「状況文脈」に強く依存

購買行動は、その場の条件に強く左右されます。

  • 棚での競合品との並びや価格差。
  • キャンペーンやポイント還元の有無。
  • 持った瞬間の重さ、置き場所のイメージ、家族の反応。

3. 「好き」と「買う」は別物

「いいと思う」と「実際に買う」の間には大きな壁があります。価格・手間・習慣・自己像との適合など、ちょっとした要因の積み重ねが「やっぱりやめよう」という判断につながってしまうのです。

売れなかった商品の典型例

実際に現場でよく耳にするケースを挙げてみます。

  • 新フレーバー飲料: 「おいしそう」とは思われても「高いし飽きそう」でリピートされない。
  • 高機能家電: 「便利そう」でも「価格が高い」「自分に使いこなせるか不安」で購入に至らない。
  • デザイン雑貨: 「かわいい」と言われても「部屋に合わない」「すぐ飽きる」で見送られる。

調査だけでは見えない“隠れた真実”

数字だけでは拾えない小さな違和感が、購買を止める大きな要因になることもあります。

  1. 微妙なサイズや重さ、触れたときの感覚。
  2. 毎日使う上での手間や収納の問題。
  3. その場での競合比較や口コミの影響。
  4. 「自分らしくない」といった感情的なズレ。

こうした声は、アンケートの数字には表れにくいのが現実です。

図解1:態度(好き)と行動(買う)のギャップ

態度と行動のギャップ 「好き」の態度から「買う」の行動へ移る際に、価格・手間・競合・文脈などの壁が存在することを示す図 態度(好き) 良さそう/欲しい 購買の壁 ・価格 ・手間/習慣化 ・競合の存在 ・置き場/サイズ ・気分/自分らしさ 行動(買う/続ける) 購入・リピート
「良いと思う」から「実際に買う・続ける」までにある具体的な壁を可視化。

解決策:生活者と一緒に検証する「共創」

  • 実際に触れてもらう: 商品を手にした瞬間の「うーん」「いいかも」を拾う。
  • その場で深掘り: 担当者が「なぜ?」を重ねることで背景が浮かび上がる。
  • 相互作用: 他者の発言が触発となり、新たな視点やアイデアが生まれる。

調査で得た“点”の情報を、共創を通じて“物語”にする。数字に血が通い始める瞬間です。

図解2:ギャップを埋めるワークフロー(調査+共創)

調査+共創ワークフロー 調査で方向を掴み、ギャップを特定し、共創で具体化して改善・検証へ回す循環図 調査 意見収集/傾向把握 ギャップ特定 ・バイアス/設問影響 ・状況文脈の欠落 ・競合/棚/価格感覚 共創セッション 触れる/深掘る/相互作用 商品改善・小規模検証 仕様/体験/伝え方の微調整 学びを次の調査へ反映
調査→ギャップ特定→共創→小規模検証を循環させ、失敗確率を下げる。

まとめ:調査+共創で失敗を防ぐ

調査は欠かせませんが、それだけでは「買われ続ける」保証にはなりません。態度と行動の間にある壁を見極め、共創で具体的に取り除いていくことが効果的です。新商品の検討時には、「調査+共創」をセットで取り入れてみることをおすすめします。

よくある質問(FAQ)

Q1. 調査だけではなぜ不十分なのですか?

A. 調査は意向や印象を測るのに有効ですが、購買の瞬間には文脈要因(価格差や競合比較など)が大きく作用します。意向=行動とは限らないのです。

Q2. 共創セッションとは具体的に何をするのですか?

A. 実際に商品に触れてもらい、その場で感じた違和感や本音を深掘りします。参加者同士の会話から新しい気づきが生まれることも多いです。

Q3. 導入は難しそうですが?

A. 小さく始めることが可能です。例えば新しいフレーバーやデザイン案を少人数で検証するだけでも大きな学びになります。

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