アンケートに頼らない!本音を引き出す生活者インサイトの見つけ方

アンケートに頼らない!本音を引き出す生活者インサイトの見つけ方

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アンケートに頼らない!本音を引き出す生活者インサイトの見つけ方

「顧客の声を集めよう」と言われて、多くの企業が最初に着手するのがアンケート調査です。しかし、定量調査によって数値化された回答は、時として期待した通りの商品開発やマーケティング施策につながらないことがあります。

その原因はどこにあるのでしょうか?

実は、アンケートで得られるのは「表面的なニーズ」であり、生活者の「無意識に隠された本音=インサイト」にはたどり着きにくいのです。本記事では、アンケートに頼らずに生活者の本音を引き出すための考え方と、実践的な手法について、7つの章立てで解説します。

第1章:インサイトとは何か?ニーズとの違い

インサイトという言葉は

近年、SNS上での共感やシェアといった行動も、実は生活者インサイトに基づいたものが多くあります。 「これ、わかる!」という感情が発火するのは、自分の中の価値観とマッチしているからこそ。 つまり、インサイトは企業と生活者のあいだに“感情の橋”を架ける存在でもあるのです。

たとえばあるコスメブランドは、20代後半の女性が感じていた「もう若くはないけど、年齢を気にしたくない」という微妙な心理に寄り添い、 『変わる準備は、すでに始まってる』というメッセージを打ち出しました。結果、広告はSNS上で多くの共感を呼び、商品認知も一気に高まりました。 このように、インサイトに根ざしたコミュニケーションは、ただ売るためではなく“伝わる”ために必要なのです。

マーケティングの現場で頻繁に使われますが、その本質を正確に理解している人は意外と少ないものです。インサイトとは、表面上の「ニーズ」や「要望」を超えた、生活者の深層心理にある“気づき”です。

たとえば、「もっと安い商品がほしい」という声は、明確なニーズです。しかしその裏には、「安いもので妥協する自分は嫌だけど、家計の都合で仕方ない」というようなジレンマが潜んでいることもあります。こうした無意識の葛藤や価値観に気づくことができれば、単に安い商品を出すだけでなく、“納得感のある価格で手に入る自分らしさ”を提供するという新たな価値提案が可能になります。

インサイトの氷山

第2章:なぜアンケートではインサイトが見えにくいのか

アンケートは便利で効率的な情報収集ツールです。しかし、形式があらかじめ決まっているため、回答者の思考や感情を枠に押し込めてしまう危険性があります。

多くの設問は「あなたは〇〇に満足していますか?」というようにYes/Noで答える形式か、「1〜5で評価してください」といったスケール形式です。これでは、その人がなぜそう感じているのか、どんな背景があるのかまでは見えてきません。さらに、人は無意識のうちに「世間的に好ましい答え」を選びがちで、本音が反映されにくいのです。

定量調査 vs 観察・対話・共創|対比表

項目 定量調査
Quantitative Research
観察・対話・共創
Qualitative & Co-creative
主な目的 傾向・規模・割合の把握 本音・動機・文脈の深掘り
調査手法 アンケート/スケール評価/集計 観察/インタビュー/ワークショップ
対象の特徴 多人数(100人以上) 少人数(5〜20人)
データの性質 数値/定型的な回答 言葉/非言語(表情・行動)/対話からの発見
主な利点 客観性が高い/全体傾向がわかる 本音が出やすい/背景や感情も読み取れる
見つかるもの 顕在ニーズ/トレンド 潜在ニーズ/インサイト/感情の揺れ
活用タイミング 市場の把握、仮説の裏付け 仮説の発見、企画初期、アイデア創出の源泉
注意点/限界 質問設計のバイアス/本音が見えにくい 主観的になりやすい/定量的裏付けが必要な場面もある

第3章:インサイトを見つける「観察と対話」の力

本音を引き出すには、生活者の行動を観察し、自然な対話の中で心の動きを探ることが重要です。たとえば、主婦の買い物行動を観察してみると、チラシでチェックした特売品よりも「いつも買っている安心感のある商品」を手に取ることがあります。その背景には、価格以上に“失敗したくない”という感情が働いているのです。

インタビューの際も、「なぜそう思ったんですか?」と深掘りしていくことで、本人も気づいていなかった価値観が浮かび上がることがあります。重要なのは、“情報を聞き出す”のではなく、“一緒に気づく”という姿勢です。

第4章:生活者インサイトを引き出す5つの質問術

以下のような質問は、生活者の本音を引き出すうえで効果的です:

  1. 最近「これいいな」と感じた商品やサービスはありますか?
  2. それを選んだとき、どんな気持ちでしたか?
  3. その商品・サービスを使ってみて、どんな気づきがありましたか?
  4. 「これはちょっと違うな」と思った経験はありますか?
  5. あなたにとって“ちょっと贅沢”とは、どんなときですか?

これらの問いを通じて、単なる意見や評価を超えた“物語”を引き出すことができます。

第5章:共創型アプローチでインサイトを“共に発見する”

生活者を単なる調査対象ではなく、「共に価値をつくるパートナー」として関わることで、より本質的なインサイトに出会うことができます。共創型のワークショップでは、参加者自身が考え、発言し、他者と意見を交わす中で、自分でも気づいていなかった価値観に出会うことがあります。

企業側も、生活者の語りに耳を傾けることで、“売れる理由”だけでなく“選ばれる意味”を再発見できます。

消費者インサイトの重要性は、今やマーケティングだけにとどまらず、商品開発やブランディング、さらには組織文化の醸成にも広がりつつあります。 インサイトを理解するとは、単に売れるポイントを探すことではなく、「その人がどう生きたいのか」「どんな選択を大切にしているか」を知ることに他なりません。 それは、短期的な売上ではなく、長期的なファンづくりの土台となります。

たとえば、とある地方の調味料メーカーでは、地元の主婦と共創型のワークショップを行い、「料理をすることそのものが“心の余裕”と結びついている」 という深いインサイトを発見しました。それ以降、同社は「手間を楽しむレシピ」と「語りかけるパッケージ」を展開し、 “買って使って気持ちが豊かになる調味料”としてファン層を獲得。結果的に、首都圏での販路拡大にもつながっています。

第6章:インサイト発見の落とし穴と注意点

インサイトを探る過程では、いくつかの落とし穴に注意が必要です。まず最も多いのが、「答えを先に決めてしまう」ことです。 生活者の声を聴くつもりでも、企業側が「こう言ってくれるはずだ」「この方向がベストに違いない」と期待していると、 それに合う意見ばかりを拾いがちになります。

また、インタビューや対話の場で緊張感やプレッシャーがあると、本音が引き出せません。 「聞き出す」のではなく、「話してもらう」ための空気づくりや関係構築が不可欠です。 さらに、言葉の一部だけを切り取り、都合よく解釈することも、意図しない誤解を招く原因になります。

第7章:インサイトを“活かす”ために必要な組織の変化

せっかく得られたインサイトも、社内で理解・共感されなければ実行に移せません。 「本音ベースの気づき」は、ときに既存の戦略や数字と矛盾することもあるため、 現場・マーケティング・経営陣のあいだに“共感の通訳”が必要になることがあります。

たとえば、共創ワークショップで得られた「価格ではなく物語に惹かれている」という声を 開発・営業と共有するには、その声の背景やストーリーを語ることが重要です。 数値で納得を促すのではなく、「人の思い」を共有していく姿勢が、組織の変革を促します。

インサイトは組織で共有

まとめ::生活者の“無意識の声”と向き合う姿勢

インサイトとは、生活者の内面に潜む“まだ言葉になっていない価値”です。それを掘り起こすには、観察と対話、そして共創という地道なプロセスが必要です。

アンケートでは届かない本音に光をあてる。その先に、選ばれるブランド、愛される商品、そして意味のある企業活動が生まれていくのです。

共創事例ギャラリー|こらぼたうん
こらぼたうん代表 中間祥二

中間 祥二(なかま・しょうじ)

株式会社こらぼたうん 代表取締役

2001年の創業以来、農業からサービス業まで幅広い分野で「共創型マーケティング」を支援。
生活者とともに“選ばれる仕組み”をつくり、売上向上や市場創出をサポートしています。

💻右下に現れる「生成AI」が、いつでもご質問にお答えします(パソコン版のみ対応)。

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リアルな共創の記録。

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