対話が起こすパラダイムシフト──共創の原点を見つめなおす
更新日:2025年8月12日
私たちこらぼたうんが実践する「共創マーケティング」の中心には、いつも企業と生活者の“対話”があります。
ここでいう対話とは、アンケートや一方向的なヒアリングではありません。数字や言葉を「集める」ことよりも、相手の価値観や感情に触れ、お互いの前提を揺さぶり合いながら、新しい意味や可能性を発見する場です。
これは、単なる意見交換ではなく“価値の共発見”のプロセスであり、創造的な価値を生み出す最初の火種なのです。
■ 共創における「対話」の本当の力
日常の中で行う会話と、共創の場で行う対話は似て非なるものです。
共創における対話は、情報や知識に“新たな意味”を与える創造的なコミュニケーションであり、その意味づけが変わることで、企業の意思決定や戦略の方向性までも変化します。
例えば、生活者が「この商品は便利」と語ったとき、そこで止まってしまえばただの満足度情報です。しかし、対話を深めて「なぜそう感じたのか」「その便利さがあなたの生活にどんな影響を与えているのか」を掘り下げると、その背景には家事時間を短縮して家族との時間を増やしたいという価値観が見えてくるかもしれません。
商品開発やブランド戦略は、この“価値観の発見”によって初めて方向づけられます。
一方的な提供ではなく、生活者とともに価値を育てる“共創の対話”こそ、持続可能な成長の礎なのです。
■ 「議論」と「対話」は似て非なるもの
共創を語る上で、まず整理しておきたいのは「議論」と「対話」の違いです。
議論(ディスカッション) | 対話(ダイアログ) |
---|---|
目的は「勝つこと」「説得すること」 | 目的は「理解すること」「共感すること」 |
相手の主張に反論し、自分の正当性を示す | 相手の視点を受け入れ、自分の考えも開く |
結論ありきで進行する | プロセスを重視し、結論は開かれている |
議論は「正しさの競争」ですが、対話は「可能性の探索」です。
特に共創の場では、意見の違いこそが新しい発想の源泉になります。違いを否定するのではなく、差異を材料に変える姿勢が必要なのです。
■ 対話が生むパラダイムシフトの瞬間
共創の場では、単に双方の意見を足し合わせただけでは生まれない、まったく新しい視点やアイデアが誕生します。
例えば、ある家電メーカーが主婦層と話し合っていたとき、「見られると恥ずかしいから隠す」という発言から、デザイン家電という新市場の発想が生まれました。
これは、議論の場では出にくい“感情の奥底にある価値観”が、安心できる対話の中だからこそ引き出された例です。
こうした経験は、企業にとってパラダイムシフト(価値観の劇的転換)をもたらします。
自社が「当然」としていた前提が揺らぎ、「本当に届けるべき価値とは何か?」という問いが浮かび上がる瞬間こそ、共創の醍醐味なのです。
■ 対話による“共創価値”の創発
こらぼたうんでは、生活者との対話を通して、以下のような情報を引き出します。
- 商品の背後にある“使い方のストーリー”
- サービスを選ぶ“意味や背景”
- 日常に埋もれた“隠れたインサイト”
これらは単なる「声」ではなく、企業と生活者が一緒に見つけ出した価値です。
対話によって引き出されたストーリーは、商品企画やブランドコミュニケーションの軸となり、生活者にとっても企業にとっても意味のある価値へと育っていきます。
■ 最後に──共創の出発点は「対話」から
かつては「商品を作り、売る」だけで関係が終わっていました。
しかしこれからは、企業と生活者が継続的な関係性の中で価値を育てていく時代です。
求められるのは「聞く力」だけではありません。
「共に考える力」、そして「気づきの交換」がブランド価値を根底から変えていきます。
対話が創る、関係性から生まれる価値。
それこそが、これからの時代に求められる共創マーケティングの真髄なのです。